「外資系トップの思考力」出版記念セミナー
セミナーレポート
ISSコンサルティング主催
「外資系トップの思考力」 出版記念セミナー
グローバルで活躍する
ビジネスリーダーの思考力
セミナーレポート
『外資系トップの思考力』の出版を記念いたしまして、書籍に登場されましたトップをお招きしたセミナーを開催しました。
将来のビジネスリーダーを目指す皆様に、パネルディスカッションを通して外資系トップから語られる「思考力」、「仕事感」、「キャリア」を、直接聞くことで体感していただきました。
PROFILE
-
ダイソン株式会社
代表取締役社長 麻野 信弘 氏
1965年大阪府生まれ。88年関西学院大学卒業。P&Gに入社、国内セールスや本社でのセールスプランニングに携わる。ジレット買収で発足したグローバル規模の統合プロジェクトメンバー選抜され、その後ブラウンの日本国内販売責任者。10年にダイソンへ入社。セールスディレクターを経て、12年(47歳)より代表取締役就任。
ダイソン株式会社の企業・求人情報はこちら -
レノボ・ジャパン株式会社
代表取締役社長 留目 真伸 氏
1971年東京生まれ。94年早稲田大学卒業。トーメン、モニターグループ、デル、日系製造会社を経て、2006年レノボ・ジャパン入社常務執行役員。11年よりNECパーソナルコンピューター取締役を兼任。12年レノボ・グループ米国本社の戦略担当部門エグゼクティブ・ディレクター。13年、レノボ・ジャパン執行役員専務。15年(44歳)より日本のレノボ・グループ社長。
レノボ・ジャパン株式会社の企業・求人情報はこちら
-
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
代表取締役社長 日色 保 氏
1965年愛知県生まれ。88年静岡大学卒業。ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。医療機器の営業、マーケティング、トレーニング等を担当。外科用機材部門と糖尿病関連事業部事業部長を経て2005年に、グループ会社オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社長に就任。10年、ジョンソン・エンド・ジョンソン成長戦略担当副社長に就任。12年(47歳)より代表取締役社長に就任し、メディカルカンパニー代表取締役プレジデントも兼務。
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の企業・求人情報はこちら
経営トップ(グローバルリーダー)の思考力
書籍のタイトルでもある思考力に関しての質問から始まりました。「経営トップが考える思考力とはどのようなものか」を中心にディスカッションが展開されます。
1経営トップが考える思考力とはどのようなものか
パネリストの方に共通していたのは思考力の前提として数字なり、事柄なりをそのまま見るのではなく、ご自身がそれぞれ持たれている軸を持ってみるということです。
思考力の前提として物事はまず疑ってみるという視点から入るという麻野氏。そのデータが正しいのかどうかをしっかり見極める必要があり、重要な事柄はご自分でその数字を確かめることもされています。
続く日色氏は、同じ数字を見るにしても、表面的な数字を見て分かったつもりや、出てきた情報を鵜呑みにするといったことをしないと言います。その数字、情報が「本当にそうなのか」「どうしてそうなのか」を突き止めることが重要なのです。
さらに留目氏はロジックの限界に関して言及されます。ロジックが破綻する一つは「前提が違うところでロジカルシンキングを行おうとすることにある。」本質から外れて、間違った前提からスタートすると、いくら論理的に追求をしていっても方向性のずれた結論となってしまいます。
では数字や物事に対してどのように取り組めばよいのか。そこに必要なものは「知見」とそのための常日頃からの「情報のインプット」であると語っています。インプットが増えていくと、ぼやっとしか見えなかったものが見えてくる。思考の解像度が上がっていくのです。
2経営トップの実際の仕事内容
思考力を使って行動することが重要である。そこで経営トップの仕事内容について伺いました。この質問ではパネリストの方からのそれぞれの異なった考え方をお聞きすることが出来ました。
麻野氏は仕事内容に対してはリソースの配分を決めて腹をくくる、という決意を持って望む姿勢が窺えます。留目氏はまず事業の本質は何か、何をすべきかを掘り下げ考えるといいます。また、迷ったら楽しい方をとり、経営者に必要なのはゲームに強いこと、と大変なことではあってもご自身のミッションを楽しんでいらっしゃる様子が伝わります。日色氏は考え抜いて決めたらしっかり実行し、失敗してもああしておけばよかったと後悔するより、リカバーする方法に注力すると語ります。覚悟も含めて思考力であり、ヘッドとハートとガッツがリーダーには必要であるという話が展開されました。
グローバルで活躍できるビジネスリーダーの条件
次にグローバルで活躍できるビジネスリーダーの条件についてお伺いしました。ここでは「グローバル」という言葉の定義やトップという立場をパネリストの方がどのように感じていらっしゃるのかをお話しいただいています。
1グローバルの定義とは
「グローバルで活躍できるビジネスリーダーの条件」とはいうものの、ではグローバルという言葉をどのように捉えているのでしょうか。3名の回答は言葉は違えど、見解は同じでした。
グローバルというのは国という枠にはまっていないボーダレス状態のことであり、世界的な課題を解決しようと考えている人や企業こそがグローバルなビジネスパーソン、企業であるという見解です。
2経営トップとして活躍するなかでの喜びと苦難
ここではオーディエンスの方にも興味深い話が展開されました。トップとして活躍され、それこそグローバル企業を率いている人はどのようなことを日々感じているのでしょうか。ここでも三者三様の意見が飛び交いました。
麻野氏は、トップとして仕事をするのはしんどくて当然であるといいます。山登りにたとえると、高い目標に達することは決して楽ではない。しかし、その分、到達したときの達成感は素晴らしいものがあるということから、リーダーとして常に目標を見据えて登る姿勢が強く感じられます。
逆に他のお二人はつらくないとのことでした。留目氏は、ご自身が楽観的なのであまりつらいと感じることがないそうです。ただ、バックグラウンドが違う中、グローバルで理解を求めることは手間がかかるとのこと。しかし、何よりも世界規模の課題解決に取り組み、「共創」できることが何よりも楽しいとのこと。ここでもリーダーとしての役割を楽しまれているのが伝わりました。
日色氏は、人やチームの成長を実感したときに喜びを感じられ、それが楽しさになっているとのこと。リーダーの役割が人をエンゲージしてひっぱっていくことだとすれば、まさにリーダーの役割を全うしていることに楽しさを感じている様子が伺えます。
グローバルリーダーを目指すために
最後の質問では、会場の皆様の今後のキャリアの参考になるディスカッションが展開されました。
1どのような思考で仕事に取り組むのか
ここでのディスカッションでポイントとなったのは「実績を残す」「ゴールイメージを持つ」「ストレッチする」ということでした。
「実績を残す」ことは3名ともかなり強調されていました。
麻野氏はどれだけ経験を積めるかという課題に対しては、実績を残さなくては新たなチャンスは巡ってこないといいます。実績を残すためには、必死で勉強することも必要で、他国では日本人よりももっと勉強していますから、皆さんももっと勉強が必要です。その他にも様々な手段をとることで達成ができます。どのような手段をとれば達成できるのか、達成するための手段を考えることが重要となるとのこと。
日色氏は、ある時からインプットする情報の質を変化させました。限られた時間を効率的に活用するために、マンガやテレビドラマが、新聞や経済情報などに置き換えられていったとおっしゃっていました。
留目氏は、夢を持つことが大切であるとおっしゃっていました。ゴールのイメージを持ち、どのような存在になっていたいのかをイメージするのです。その上で、経営者はゲームに強くなければならないので、ゲームに勝つことが必要とのこと。
3名から共通して出てきたことに、「ストレッチ」という言葉がありました。ストレッチは出来るようになってからは遅く、できないからこそストレッチを課し、自身で伸びなければなりません。
ストレッチな目標があれば自然と人はその目標へ向かって駆け上がるものです。そして、ストレッチするにはストレッチする筋肉が付いてからするのではなく、筋肉がない状態の時にストレッチすることで次のステップへ上がる筋肉が付き、ステップアップすることができるのです。
「期待されていることは何かを考え、その期待を「大幅に超える」にはどうすればいいかを考えることが大切。大幅に超えることで新たなストレッチがやってくる」と日色氏は言います。
社長になるべくストレッチをして、社長になれば、次は社長としての役割を果たすべくまたストレッチが必要となる。つまり「社長になることと、社長としてミッションを果たせるかは別のこと」なのです。
グローバルリーダーになるためにはゴールイメージを持ち、それに向けてストレッチをし、実績を残すことが求められています。
2グローバルリーダーとして活躍するためには何が必要か
麻野氏からは
「打席に立つ・・・機会をつかみ日本の中でエキスパートになる」
「努力・・・Uncomfortable、やったことがない方を選ぶ」
「condition・・・高いパフォーマンスを発揮できるよう体調管理を行う」の3つ。
留目氏からは
「グローバルの定義を理解する/考える」
「リーダーとしてビジョンを再定義し続ける」
「ゲームに勝てる力を持つ」の3つ。
日色氏は
ドラッガーの名言「マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しい事を行うことである」を引用。「何が正しいか定義し、正しいことを行う」
ということがグローバルリーダーとして活躍するために必要なことであるとお話いただきました。行動、思考、そして努力がグローバルリーダーになるためには必要です。
Q & A
Q行っているルーティンはありますか?
麻野氏:有楽町から会社まで30分歩いています。最初は体調管理でしたが、今は30分仕事の段取りなどを考える時間として使っている。オフィスに着くと雑音が入るので、雑音のない考える時間として使っています。
留目氏:神頼み。全てやりきったら後は神頼み。やりきる前は気がひけて行かないが、やりきったら神頼みしています。
日色氏:体調管理。パフォーマンスを発揮できるよう、体調管理に注意しています。
Qビジョンを聞かせてください
麻野氏:正しいことが正しく評価される世の中へ。
留目氏:世界を良くして行きたい。
日色氏:次世代のリーダーを育てる。
Q世界から日本はどのように見られていますか?
麻野氏:素晴らしい消費者がいる。(バリューを見極められる消費者)ただ、仕組みは遅れている。
留目氏:日本は魅力的。単価が高い。利益率が高い。
日色氏:あまりサプライズがない国。
Q経営判断をする時の基準はありますか?
麻野氏:戦略に合うもののなかで、確率の高いものを選択する。
留目氏:長期的なトレンドも加味する。・間違えたら判断し直せばよい。・事業の使命・目的に合っているかどうか。
日色氏:ジョンソン・エンド・ジョンソンのOur Credoに沿って判断と優先順位を決める。
Qお客様、社員、投資家に対して心がけていることはありますか?
麻野氏:お客様:既存のお客様には徹底的に手厚くする。この方たちがダイソンを広めてくれる。
留目氏:未来へのコミット。
日色氏:ジョンソン・エンド・ジョンソンのOur Credoにもお客様→社員→地域→の次に投資家となっている。
お客様、社員、地域に貢献していればおのずと投資家へ満足のいくリターンができていると考えている。
ここの順番は崩さない。
Q思考力の鍛え方で何か良い方法はありますか?
麻野氏:違うことに接することが大切。自分の例では毎日違うところに食事にいこうとした。小さなことでも頭を使う習慣は大事。
留目氏:違うことに接することが大切。
大前研一さんの例:時間配分を変える、住む場所を変える、つきあう人を変える。のように違うことに接することが大切。
日色氏:思考力は意識していないが、インプットする情報ソースを変える。20代後半から30歳くらいにかけてアンテナを変えて取る情報を変えていった。
Q社員へ仕事にオーナーシップを持たせるための良い方法はありませんか?
麻野氏:外的なプレッシャー。とんでもないプレッシャーがかかることではじめて問題を自分のものとして捉えることができ、オーナーシップが生まれる。
留目氏:仕事だけじゃなく、自分の人生そのものに責任を持つ。というところからじゃないでしょうか。
日色氏:what(何を)とhow(どうやって)だけではなく、why(なぜ)を語る。whyを語りかけることで、目的意識が芽生えてくる。
< 参加者の皆様からいただいたコメント >
- ●事業の本質を考えること、リソースの配分、ロジックの整合、の大切さ、参考になりました。
- ●「思考力」に対するコミットが様々で面白かった。具体的な実践から生まれた生の言葉で新鮮。
- ●楽しいとき、つらいときのくだりは表面的な話ではなく、実寸大の姿が見えて勉強になった。三者三様で、とても楽しくお話を伺えました。ありがとうございました。
- ●外資トップの思考力というと、ロジカルが重視されるのかと思っていたが、それぞれの経営者の皆さんが情緒的なことに意義を見ていることが興味深かったです。ソフト面が大事だということが分かってよかった。
- ●外資系トップ3人の考えも三者三様で正解は1つもない、と今後自分が迷ったときもまずは自分の信じたもの(事)をやってみようと思えたこと。
- ●現在自分のできる範囲で仕事をしてしまっているなと感じました。ストレッチ、響いた言葉でした。今一度、自分の目的/目標を見つめなおして、どういうストレッチができるのかを考えたいと思いました。
- ●マインドセットをどうするべきかのイメージがつかめた。自分の仕事をする上で、何が何でも実績を出してやろうという気持ちになれた。キャリアを切り開くには実績を作ることが大事。など、お三方の意見が一致した瞬間、本当に大事なのだと分かった。
- ●目的のためには勉強することが大事という言葉が印象的でした。わかってはいるものの実際に多くのことをご経験されているパネリストの皆様から聞くと改めて実感します。日々の努力を続けたいと思いました。
- ●本に書かれた言葉でなく、実際にお話を聞くことで、一層理解が深まりました。意志、熱意がひしひしと伝わってきました。
- ●三者三様でのメッセージで非常に興味深く、勉強させていただきました。「社会はlogicで動かない」響きました。