「企業価値」と「自分価値」を高める
ファイナンス 実施レポート
会社の業績達成に何ができるのか、企業価値を高める人材になって自分の価値も高めるには?!
P&G出身・外資系企業元CFOの講師2名による、全3回のオンライン勉強会を行いました。
※本セミナー実施時の御所属・役職名にて記載させていただいております。
第1回
事業部門の業績目標達成を支援する
Gusetゲスト講師
池側 千絵氏
米国企業でCFO部門に属するFP&A(Financial Planning & Analysis)という仕事があります。今回の講師を務める池側千絵と鷲巣大輔は、P&GでともにFP&Aとして勤務した元同僚です。
米国企業では、FP&Aがビジネスパートナーとして事業部と一緒になって事業戦略の構築や戦略転換の検討に参加・貢献し、事業上の意思決定に貢献します。日本企業では経営企画・事業企画部門、経理部門で管理会計を担当する方々にあたります。とても重要な仕事ですが、日本企業では複数の部門に散らばっていて、職種として確立されていない企業が多いのではないでしょうか。米国企業の「FP&Aビジネスパートナー」について学んで、みなさんの仕事に生かし、「会社の企業価値」を高める仕事ができれば、自然に「自分の価値」も高めることができます。
FP&Aの仕事の目的は次の2つです。
① 支援する組織の業績目標を達成する
② 支援する組織の意思決定の質を高める
第一回は、①の業績目標達成の支援について、米国の管理会計士協会が紹介している、FP&Aのベストプラクティスを学んでディスカッションを行いました。
業績がよい会社のFP&Aのベストプラクティス 12の原則 | ||
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基本FP&Aの仕事の基盤を整備する | 中級Accountabillity(説明責任)を明確にする文化を醸成 | 上級ドライバー(KPI)を定めてFinancial Plannningに結び付ける |
1.中長期戦略を作成し、それを短期間で実行できる施策やプロジェクトに落とし込んで実行を促す。 | 6.財務目標だけでなく適切な非財務目標を設定し、現場の担当者が実行できるレベルまで落とし込む。 | 9.事業の成功をもたらすドライバーが何かを特定し、適正な目標を設定する。 |
2.プロジェクトを実行に移せるように、リソース(ヒト・モノ・カネ)を算定して予算に入れ込んで実行を促す。 | 7.計画を実行する現場の人間の担当者に財務目標を達成するための適切でわかりやすい責任(Accountability)を持たせ、報酬と関連付けて、実行を促す。 | 10.事業の成功をもたらすドライバー(KPI)を設定し、さらに短期、中期、長期に目指すべき、適切な目標を設定する。 |
3.業務の実行プランがどのように会社の財務業績に影響を与えるのかを把握しており、進捗管理をし、成功を促進する。 | 8.現場の担当者に非財務の目標を達成する責任(Accountability)を持たせ、それが達成されれば自然に財務目標も達成できるように設定する。 | 11.事業の成功をもたらすドライバーの目標をセットしたら、それを短期に達成するための施策も決める。 |
4.プランと実績の間になぜ乖離が起こったのか、結果の数値の差だけでなく、その背景にある非財務・ビジネスの理由を特定できる。 | 12.事業の成功をもたらすドライバーの目標達成度合いをモニターし、その達成度に伴って適切なインセンティブを設定し、プランの実行者の達成を促す。 | |
5.財務目標だけでなく非財務目標も同時に追いかけ、目標との乖離があれば、その原因を早期に発見して改善アクションを促す。 |
出所:Serven, L. 2017. 12 Principles of Best Practice FP&A: High-performing companies use these principles to implement best practice FP&A that drives business results. Strategic finance 99 (5): 32. より池側訳
すでにできていることもありますが、とことん最後までやっていますか?もっと事業部門の方々を巻き込むにはどうすればいいでしょうか?外資系企業でFP&Aをされている方、日本企業の事業部門で働かれている方、多様な経験から興味深い意見が出ました。
第2回
事業部門の意思決定の質を高める
Gusetゲスト講師
池側 千絵氏
第2回は、FP&Aの仕事の目的の二つ目、「②支援する組織の意思決定の質を高める」について学んでディスカッションを行いました。
事業部門の責任者は、日々事業に関する意思決定を行います。大きな設備投資の案件、宣伝広告や販売促進費を使う判断、価格設定、商品をどこで作ってどこで売るか、など様々です。その意思決定に寄り添って、会計とファイナンスの専門家として、選択肢を数値で示して最善の案を見つけることを支援します。もちろん数値だけでなく事業を理解してアドバイスをします。意思決定のための管理会計の手法を学んで、それをどう使うかディスカッションを行いました。
第3回
ファイナンス・ビジネスパートナーになろう
~経理財務パーソンに送る、FP&Aキャリアへの招待状~
Gusetゲスト講師
鷲巣 大輔氏
ファイナンス・ビジネスパートナーとは、CEO/事業部長の戦略参謀(パートナー)として意思決定を支えるのが役割。その際に、ファイナンスのプロフェッショナルとして、株主・債権者といったファイナンシャル・ステークホルダーの期待値を意識・想像しながら、CEO/事業部長の決断をサポートすることが重要です。
ファイナンス視点での「経営」とは・・・
債権者・株主の期待以上のリターンを、ビジネスで生み出し、それを債権者・株主に還元すること。
ファイナンス・ビジネスパートナーが、経営者を支えてファイナンス視点での「経営」を実現するために利用すると有効な経営指標であるEVAなどの意味、使い方について学びました。また、それを使いながら、予算を策定し、月次でモニタリングをしていく手法、ファイナンス・ビジネスパートナーとしての貢献の仕方、心構えなどについても学び、ディスカッションを行いました。
Profileゲスト講師プロフィール
Gusetゲスト講師
池側 千絵氏
新卒でP&Gジャパン入社後、日本マクドナルド、レノボ・ジャパン、日本ケロッグ、ウォルマートといった外資系企業の日本法人ファイナンス部門で、CFOなどを歴任。現在は、ストラットコンサルティング(株) 代表取締役(http://strat.jp/)として日本企業の経理・企画部門のFP&Aへのトランスフォーメーションを支援。また、上場企業2社の社外取締役、一般社団法人日本CFO協会 主任研究委員をつとめる。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(EMBA)修了、中小企業診断士、現在は会計大学院博士課程在学中。
Gusetゲスト講師
鷲巣 大輔氏
一橋大学商学部卒業後、一貫して管理会計をベースとした経営戦略策定、事業部コントロールに従事。米系消費財メーカーのコーポレートファイナンスからスタートし、プライベートエクイティ業務、国立大学のCOEプロジェクトへの参画、ベンチャー企業のCFO、米系消費財企業のアジア・パシフィック地区のCFOを務めた後、ファンド投資先企業の経営企画を担当。グロービス経営大学院でファイナンス科目担当教員としても活躍。管理会計の力で組織を強くすることをミッションに活動をしている。
《 参加者の皆様からいただいた
コメント(一部)》
- ●FP&Aの役割を知り、管理会計としてこれまでレポートを出すことしか考えていませんでしたが、これから自分がやるべき仕事が見えました。
- ●オフィスに引きこもっているだけではだめで、ファイナンスのプロとして数字で示しつつ、事業部門の方ともっとコミュニケーションをとるように、行動を変えていきたいです。
- ●事業部門ではファイナンスリテラシーの高い人材が少ないので、ファイナスリテラシーを高めれば自分の価値を高められることに気が付けました。
- ●経理を担当していますが、管理会計・FP&A・経営企画など実際に関わっている人たちの意見を聞くことができて、実務をイメージするヒントになり、大変勉強になりました。
- ●経理、財務セミナーは多くあるものの、FP&Aに特化したセミナーはなかなかないので大変貴重でした。
- ●1回限りではなく複数回の勉強会で理解が深まりました。
- ●グループワークがあり、他社がどのような課題を持ち、どのように予実管理や事業部管理をしているのか知れたのが良い勉強になりました。
- ●FP&Aとしての自分の強みをより認識できた。FP&Aとしてビジネスリーダーを支援していくことで、事業部の業績向上、最終的には企業価値向上に携わっていきたい。
- ●非常に学びの多い勉強会でした。グループワークで参加者同士交流し、悩みや難しいと思っている点など共有してディスカッションできたのも非常に良かったです。
- ●どういった視点やスキルを持っていることで自分価値を高められるのか気づけました。意識しながらこれからも学びを深めたいと思います。