様々なキャリアを経て、「人が頑張れる仕組み作り」が大切だと気がついた
これまでのキャリアについてお聞かせください。
海外に関わる仕事がしたいと考え、大学卒業後はセイコーエプソンに就職しました。最初は希望通り海外事業の部署へ配属されましたが、半年足らずで国内に新しくできた販売子会社へ出向することになり営業企画部で四年半、取引先を地道に回り新規商品を売り込みました。「会社ってヒドいことをするなぁ」というのが、社会人一年目の印象でしたね(笑)。しかし、この地道な営業経験を若いうちにできたことは、自分のキャリアにとってプラスだったと思います。その後、海外事業部に戻り、ヨーロッパ地域本社の新規立ち上げメンバーとしてオランダに海外赴任し、各国から集まったバックグラウンドの全然違うスタッフ20名くらいをまとめるという経験をしました。コミュニケーションを何度も重ねてこちらの想いをかなり正確に伝えることでやっと相互理解を得る。コミュニケーションの大切さと「ダイバーシティ、多様性の中で働く」ことを初めて実感した経験でしたね。その後アメリカでの新規事業の立ち上げに事業企画の責任者として携わるなどエプソンでは非常にユニークな経験を沢山させてもらいました。その後、この経験が生きる仕事の一つとしてコンサルタントはどうかとおぼろげに考えていたところ、ご縁があってプライスウォーターハウスクーパース(以下PwC)へ転職しました。
製造業からコンサルティングファームへの転職、ずいぶん環境も違っていたのではないでしょうか。
大きなキャリアチェンジになりましたね。すでに38歳でしたから「この歳で転職してコンサルタントとして通用するのか?」と半年ほど悩みましたが、やらないで後悔するより、やってみて失敗した方が前向きだと考えて最終的に転職を決意しました。
実際にPwCに入ると、想像以上に苦労しましたね。最初の3カ月で辞めようと考えたほど大変でした(笑)。前職でも新規事業の立ち上げなど社内でコンサル的な仕事をやってきましたが、それを専門に「お金をいただいて」やることの難しさを痛感したのです。高い対価をお客様に払っていただくわけですから、高いレベルの提案や違う視点の考えを出さないと、「それなら私たちにもできるよね」となってしまう。極めて、当たり前のことではあったのですが、プロフェッショナルで専門性の高い、とんでもない世界に入ったと思いました。しかし、周りに非常に恵まれていたんです。PwCの仲間はもちろんサポートしてくれましたし、お客様から教えていただくこともありました。だからこそ「きちんと結果を出さなければならない」と奮起したのです。
今でもコンサルタントによく言うのですが、コンサルティングには、サービスを買う人たちの気持ちが分かるということが非常に重要です。ただ、ずっとコンサルティングだけをやってきた人には想像もつかないこともあるんですね。その点、私はもともと買う側にいた人間ですから「お客様が求めているのはコレだ」とか「ここをもう少し深掘りした提案が必要だ」という感性はあると自負しています。そこで、PwCには優秀なコンサルタントはたくさんいるのだから、私に不足する部分は彼らにサポートしてもらい、彼らに不足した感性は私がインプットしてチームとして結果を出していけばいい、と割り切ったのです。この割り切りが大きかったと思います。それからシニアマネージャーとなり、入社2年目にパートナーになりました。その後、2002年にPwCがIBMと統合し、日本IBMとIBMビジネスコンサルティングサービスという二つの会社両方に席を置いて役員兼務したり、プロジェクトの現場に戻りたいと手を上げて、テレコムビジネスでの大型案件のあったアトランタに赴任することができたり、責任ある立場で、エキサイティングで大きな仕事をたくさんさせて頂きました。
会社とコンサルタント。両方の魅力を高めることで、マーケットにおける圧倒的な存在感を目指したい
その後、2014年8月にマーサージャパン代表取締役社長に就任されました。なぜマーサージャパンだったのでしょうか。
マーサージャパンへ入ろうと決断した理由に、日本企業が現在、直面している、グローバル視点での人材の育成・活用、という大いなるチャレンジに対する問題意識がありました。どんなビジネスにおいても実行するのは「人」です。ですからどれだけ「人」、しかも、国をまたがったモデルの中で、多様な「人」が効果的に頑張れる仕組みを作れるかが重要ですし、そこに問題意識があったのです。日本企業は既に多くが、海外でそのブランドや製品価値を認識されているとおり、多くの市場に進出し、グローバル化への道筋を歩んでいますが、それを次なるステップへと大きく前進させなければいけない段階にきていると考えています。そのなかで人材というのは非常に重要な要素であり、マーサージャパンのような人事、組織、人材に力点を置く会社で、私の経験をふまえて、そうした企業の活動の支援を行うことに社会的意義があると考えて入社を決めました。
マーサージャパンは、「人」や「組織」に関わるコンサルティングと、年金や福利厚生など、それに付随する「お金」に関するサービスを提供しており、それぞれ非常に高い専門性が求められる領域を広範囲にわたってカバーしています。一人ひとりのコンサルタントやアナリストが、それぞれ確立した深い専門性を有し、マーサーとしては人事組織という分野で多様なケイパビリティを持っているわけです。また、その活動を支えるプロダクトやデータサービスを、グローバルレベルで持っていることも大きな差別化の要素になります。
そうした個々の専門家としての知見を生かしたサービスを提供することに加え、異なる領域の専門性や、プロダクトを統合的に束ねること、これを私はプラットフォーム化すると呼んでいますが、より複雑化したお客様の大きな経営課題にアプローチし、それを解決するサービスを提供できることに大きなビジネス・チャンスがあると考えています。
今後、マーサージャパンをどんな会社にしたいと思われますか?
人事組織のコンサルティングにおいては、すでにマーケットリーダーだと自負しております。今後は経営者が困ったときに「相談するならマーサージャパンだ」と思っていただける圧倒的な存在になりたいですね。
お客様の経営課題は産業を問わずどんどんクロスボーダー化していきます。我々は非常に力強い多様な専門性を持っていますから、それを束ねて経営者の方が抱える、より目線の高い課題の解決に、グローバルのマーサーの持つネットワークや知見も統合しながら、チャレンジしていくべく、解体制や提供サービスの強化に取り組んでいます。
マーサージャパンは35年以上ビジネスをさせていただいておりますから、前任者たちが築き上げてきたこの会社の強みや良さを大切にし、維持(Sustain)する領域と、今までの活動をより強化(Strengthen)すべき領域、さらに新しい考え方を持ち込む(Develop)領域の三つに分けて築き上げていこうと、社員たちにメッセージとして伝えています。これらを数年かけて確実に築き上げていく一方で、市場は目まぐるしく変化しますから、それに併せて会社も適切に変わっていくことが大事です。多様な変化に対応していくためには、お客様の声とともに、我々の現場のメンバーの声が非常に重要なインプットになります。コンサルティングは現場が命です。マネジメントとして、現場からの提言や、実際に現場で起きていることをどれだけ吸い上げていけるかにかかっていると思います。
そして、「この人がいるからマーサーと仕事をする」と言われるほどのプロフェッショナルを育てることで、会社とコンサルタントへの信頼感とが相乗効果を生むのが理想です。現在、確立した専門性を持ち、スキルの非常に高いコンサルタントが揃っていますが、彼らがより成長していくには、今経験していることの延長線上にはない経験をすることも必要です。私自身、コンサルタントとして成長した過程には極めて難易度の高いプロジェクトで苦労したことや海外での経験が大きかった。今よりも背伸びをした経験をする機会を提供する、そういった人材育成も行っていこうと考えています。日本人コンサルタントが海外のプロジェクトでよりダイナミックな経験や、多様なメンバーの中で、生きたダイバーシティ環境を経験できる機会も、今以上に作りたいですね。
チャレンジ精神とチームワーク。両方を大切にできる人と仕事をしていきたい。
これまでダイバーシティの中で働いてこられた経験から、ダイバーシティの素晴らしさとは、どのような点だとお考えしょうか?
極めてシンプルですが、多様性とは、多様な見方ができることです。必ずしも一方向から見たことが真実ではなく、多面的に物事を見て議論できることは、特にコンサルティングの仕事において不可欠だと思います。アメリカで仕事をしていたときに学んだのは、「マイノリティの意見を積極的に聞く」ということでした。ピント外れなことを言うかもしれなくても、積極的に聞いていいものは取り入れる。特に議論に煮詰まって新しい意見や新しい考え方、視点を変えたいというときには「日本ではどうなの?」と意見を求められましたね。自分たちとは違う様々な考え方や情報を持っているということを知っていて、積極的に取り入れる環境を作っているんですよ。
現在、我々もグローバルも含めたマーサー全体としてダイバーシティを取り入れる活動に力を入れており、日本においても、よりダイバーシファイしたワークスタイルを実現する仕組みづくりに取り組んでいます。弊社は女性の割合が比較的多く、彼女たちが活躍できる場が多くありますし、マーサージャパンの中にもっと日本人以外のコンサルタントがいていいと思います。そして先ほど言った様に日本人コンサルタントが海外のプロジェクトに参加できるような環境を整えたいと考えています。やはり原点は「実際に経験すること」だと思いますね。
今後、どのような方にマーサージャパンに入社してもらいたいですか?
チャレンジ精神があって、新しいことに積極的に挑戦しようとする方ですね。加えて、私たちの仕事はあくまでチームワークですから、自分とは異なる意見でも耳を傾け、リスペクトできる姿勢が重要です。最後は結論を見出すために、自分の信念をしっかり持っていることも大事です。それがないと結局、誰かの意見に引っ張られてしまいます。プロとしての軸を持ちながら、自分の意見に固執せず、人の意見を聞けることが大事です。キャリアとしては、この業界で長く働いてきて専門性が高い、という方たちも即戦力として魅力的ですが、マーサージャパンでの採用はそういう人だけに限っているわけではありません。私自身もユニークな経験をしてたどり着いていますから(笑)。お客様側にいたからこそ課題認識の能力が高く、培った専門性をコンサルティングに生かしていくこともできます。会社には両方のバランスが必要ですから、それぞれの長所を上手く混ざり合わせてさらに高いレベルでコンサルティングサービスやデータ・インフォメーションサービスを提供していきたいですね。
そして、「企業はどうやって動いていくか」ということに大きな興味をもてる方。例えばある人事のプロジェクトを任されたとき、社内で他にも改革の取り組みが行われていないかということに感度を上げ、そうした活動が、今、自分たちが参画しているプロジェクトや今後のそのお客様の戦略にどう関係してくるのか、など、少し目線を上げて全体に起きている変化を知ることが重要です。
また、人事は会社の要となるファンクションですから、将来、経営者になりたいという方が弊社での経験を積み、よりプロフェッショナルな経営者としての自身の能力を高めていく、というような方向性に興味を持ってチャレンジしてきていただくケースも、私は歓迎したいですね。これから入社される方に転職を勧めるわけではないですが(笑)、マーサージャパン出身の社長や経営幹部を輩出して、いろんなフィールドで活躍してもらうのが理想です。そういう意味では、コンサルティングだけでなく様々なことに興味を持っている方にとって大変良い環境だと思います。
最後に、転職を考えられている方へメッセージをお願いします。
日本において、従来型のサービスを提供するだけのコンサルティングは、市場も成熟していると言えます。その中で、大きく成長する機会のある会社というのは、そんなに多くないでしょう。今、一段ステップを上げたグローバル化に本気で取り組まれようとしている企業が多く、その中でも、その活動を支える「人」に大きな注力がされる時代だからこそ、人事、組織、人材に特化しているマーサージャパンは、まだまだ飛躍的な成長機会を持つ会社です。会社が成長するということは様々なプロジェクトができ上がっていくことになりますから、既定路線ではない難しさがあるかもしれません。ですが、だからこそ弊社へ来ていただければ、会社の成長とともに個人としても大きく成長できます。会社として明確な成長戦略がありますから。次のステージに上がるグローバリゼーションを進める企業の方たちと課題に果敢に取り組んでいくことで、われわれ自身もグローバルタレントとなるコンサルタントを育て、皆さんとともに勢いよく成長していきたいと思います。