お客様の顔を直接見て仕事がしたい、
その希望を叶えるためにマイクロソフトへ
マイクロソフトに入社されるまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、金融系のSIerにSEで入社しました。SEという職種が注目されてきた時期でしたが、当時、女性の配属先としては珍しい、インフラ系のチームに配属され、インフラ設計や構築などに携わりました。金融系だったので、非常に大きなシステムにも関わりましたが、どうしてもパーツというか、自分の担当する一部分しか仕事が見えない。もっと大きな視野で全体を俯瞰しながら仕事がしたいと考え、中規模クラスのITベンチャーに転職しました。
ITベンチャーでは、技術以外の仕事もいろいろ経験しました。ソフトウェアの使用許諾の文面を作成するために法務部門や弁護士に確認したり、イベント会場でセールスのようなことをしたり。自分で企画して、売って、作って、納品して、サポートする。この経験のおかげで、仕事の全体の流れを理解し、全体を見渡す視野が持てました。また、セールス系の視点で、どう見せれば売れるか、どうすれば次の仕事をいただけるかということを考えるようになりました。
最初のうちは、自分は技術者だという思いがどこかにあったので、「営業的な仕事は、本来の自分の仕事じゃない」って思っていました。その固定観念が抜けるまではしんどかったですね。それでも場数を踏んで仕事を取れるようになると、自分で取ってきた仕事に思い入れが生まれるんです。それが仕事のモチベーションになって、次第に営業系の思考を理解できるようになりました。営業の人たちの考え方や主張を理解し、受け入れられるようになったことは今でも活きています。営業の気持ちを考えながら、技術者としてお互いがうまくいくように話を持っていけるのは、この経験のおかげだと思いますね。
マイクロソフトに入社された経緯をお聞かせください。
ベンチャーには4年ほどいましたが、直接ユーザーとなるクライアントと一緒になってシステムをつくり上げていくタイプの仕事が少なかったんです。やはりベンチャーだったので、仕事をいただく相手が一次請けで、そこから仕事だけが流れてくるということが多かった。自分たちがつくったものを誰がどう使っているのか、よくわからなかったんです。それで直接、お客様の顔をちゃんと見たい、本当のニーズをちゃんと聞いて仕事がしたい、と思って、転職を考えました。
当時は大阪にいたので、大阪で働けるところを探したら、ちょうどマイクロソフトが募集をしていたのです。マイクロソフトは大きな会社だから、面接では上から目線で一方的に質問されるんだろうなと思っていたら、入社後に上司になる人との面接のときに、彼らが目指しているものを熱く語ってくれたのです。それがすごく新鮮で、しかもその内容が、自分たちはユーザー志向を徹底していて、お客様のニーズをしっかり聞き取ってサービスをデリバリーする、というものでした。それだったら自分の価値観と一緒だ、と思いマイクロソフトへの転職を決断したんです。
テクニカルアカウントマネジャーの仕事について教えてください。
マイクロソフトの法人年間契約サービスであるプレミアサポートでは、「プロアクティブサポート」という「予防保守」に重点を置き、想定外のトラブルをも未然に防ぐ保守サービスに取り組んでいます。その全般を司り、会社の代表としてお客様とコミュニケーションをとりながら様々な技術課題を、社内リソースを最大限に活用して解決していくのが、TAM(テクニカルアカウントマネジャー)です。お客様からの質問や疑問に答える問題解決型の保守サービスだけでなく、問題の萌芽を探し、見つけたら先回りして解決する提案型の保守サービスを提供しています。
「予防保守」というコンセプトは欧米では一般的ですが、日本ではまだ定着しているとは言い難いです。日本人全般の意識傾向として、再発防止には徹底して取り組むけれど、何も発生していない段階で、トラブルの発生を未然に防ぐ意識はまだまだ薄いという問題があります。信頼関係が薄いうちに「予防保守」といきなり言っても、すぐには理解していただけないことが多いのですが、リレーションシップを構築し、信頼を得た上でお客様の具体的なケースに当てはめてロジカルに説明すると、その重要性や費用対効果についてもわかってもらえます。担当するお客様との信頼関係の中でその考えを深めていき、システム構築の段階から障害を未然に防ぐためのサポートをしていければと思っています。
言外を察して行間を読む
信頼関係を築くために、お客様への対応で心がけていることは何でしょうか。
お客様に言われてからやるのではなく、お客様の言外の気持ちを察して、行間を読み、その上で最適なサービスを提案し、提供すること。信頼して頂く為にはそれが重要と考えています。そのためにもお客様がマイクロソフトの製品をどう使っているか、その使い勝手をどう感じ、評価しているか、不満に感じていることは何か、といったことを担当TAMとしてしっかり把握していなくてはいけません。お客様に関する引き出しを増やす感じでしょうか。
また、新しい製品が年々出てきますから、お客様から新製品について質問されたときにある程度は答えられるよう、広く浅くではありますが、一通り勉強しておくようにしています。また、海外の技術動向やソリューションのトレンドなどについて聞かれることが多くあるので、ちゃんと話ができるように最新の情報を押さえるように心がけています。そのためにも、社内での人脈を広く作ることがTAMとして必要不可欠ですね。
一番いけないのは、知ったかぶりをして、その場しのぎの受け答えをすること。それをすると今まで積み上げてきた信頼を一気になくしてしまいます。例えば、新製品についてわからないことがあっても自分だけで何とかしようとするのではなく、お客様にとって必要であれば「もしよろしければ、詳しい者を会社から連れてきて説明させます」と提案する。そうすれば、マイクロソフト社内のリソースを把握していてちゃんと回せる人なんだ、ちゃんと適任を連れてこられる人なんだ、と思っていただけ信頼に繋がるのです。そうやって信頼関係を築いていくと、いろいろ相談を持ちかけられるようになってこの仕事の醍醐味が増えていきます。お客様とダイレクトに関わり、お客様の抱える課題を解決し、信頼関係を構築していく。非常にやりがいがある仕事だと思います。
女性だから苦労する、と感じられたことはありますか?
私自身は仕事上で、男だから、女だからという性差を感じることはほとんどありませんが、男性同士のような、仕事のあとに軽く一杯、といったような気さくな関係を、業務を離れて男性のお客様との間で築くことがなかなかできないので、仕事モードで話をしている時に信頼関係を築いていくしかないことに難しさを感じることはあります。まだ社会人としても経験が浅かったころは、女に技術職が務まるのか、どこまで技術の話がわかっているんだ、という目で見られることもありましたが、いまはIT業界全体に女性の技術者が増えましたし、自分も経験を積んできて、お客様のどんな話題にでもある程度ついていけるようになったので、そういうことは少なくなりましたね。
経験を積んだ今でも、大きな障害が起きたりしたら、先方のトップマネジメントの方たちに囲まれて「いったいいつになれば直るんだ」「キミはTAMなんだろう」と怒られることはもちろんありますよ(笑)。そういうときの開き直りというか、切り替えは、男性より女性のほうが得意かもしれませんね。起きてしまったことはしょうがない、お客様が納得できる形で、最低でも障害を直すところまでもっていく。ゴールは明確なのでそこに最短でどうやって行くか、そのために自分にできることは何か、できないことは誰の力を借りればいいかを整理し、ひたすらゴールに向かうんです。お客様にひどく怒られても、そういうときでなければ会えないような偉い人たちに会えたのだから、よかったじゃないぐらいに考えます(笑)。
もちろんトラブルはないに越したことはないのですが、そこから始まるものは大きいと思うのです。トラブルを解決していく過程で、お客様との間に同志的な連帯感が生まれたり、一緒にやっていこうという気持ちが芽生えたりする。大きな問題を一緒に解決したときほど、得られる信頼は大きくなると思います。
TAMをサポートしてくれる社内体制はありますか。
マイクロソフトという会社は、たとえ面識がなくても、わからないこと、教えてほしいことをメールで尋ねると、教えてもらえるんです。しかも、それがグローバルでもできる。最初はびっくりしましたけど、そういうカルチャーができています。
TAMは通常、1人で複数のお客様を抱えていますから、どこかでトラブルが起きると仕事がうまく回らなくなったりもする。そんなときに解決法をアドバイスしてもらったり、救いの手を差し伸べてもらえると、本当に助かります。もちろん、誰かに何かを聞かれたり助けを求められたりした場合は私も全力で応えます。TAMは、お客様とのコミュニケーションと社内でのコミュニケーション、両方が非常に重要なポジションですね。
ダイバーシティの大切さを感じられることはありますか。
数か月の間、欧州のマイクロソフトへ、現地の「プロアクティブサポート」を学ぶためにインターンシップとして行っていたのですが、初日から考え方や仕事の仕方の「違い」を実感する毎日でした。予防保守に関しては向こうが一歩も二歩も進んでいますので、その考え方や知見を見聞きするだけでも仕事の幅が広がります。また、メールの書き方といったことでも、日本で普通だと思っていたやり方が向こうでは異質に見える、そしてその逆もあったりと、違いを知るだけでも非常に興味深かったですね。「どうして日本は○○なんだ?」と聞かれることも多かったです。向こうの概念にないことを、どうやってうまく伝えるかということには苦労しましたね。
一番印象に残っているのが提案書の違いです。日本の場合は、今年の実績と共にその経緯と分析を詳細にレポート、その前提をベースとして来年の提案をするという形式で結構ボリュームのある提案書を作ることが多いと思います。しかし向こうは違うんですね。実績報告はありますが、それを分析してどうこう、ではなく、今年は今年として置いておいて、来年こういう予定でやりませんか、その為に何が必要か、というとてもシンプルな提案なんです。「なぜこんなにボリュームが必要なんだ、過去の分析にかける時間がもったいないだろう。そもそも、こんなにボリュームのある資料を読まなければ理解できないエグゼクティブはダメなエグゼクティブだ」という指摘を受けて説明に苦労しました。日本ではそうすることが至極当たりまえで、その理由を深く考えたこともなかったですから。結論としてたどり着いたのが、欧米とは違い、日本では私たち一担当がエグゼクティブに直接提案できる機会はほとんどなく、まずクライアント側の担当者に説明し、その担当者がその上司に説明、その上司が更にその上司に、そしてその上司がようやく最終決定者であるエグゼクティブに説明する、と場合によっては何人も間に介すことになるため、最終決定者にちゃんと提案内容が伝わるよう、提案書に盛り込む必要がある。ということでした。こういった文化や風習、社会的構造の違いからくる異質感というものは、実際に向こうの人たちと交わってみなければ絶対に気が付かないことでしたね。
また、マイクロソフトは中途入社者が多いのですが、同じ日本人でも新しく入ってきた人から外のやり方を聞くと、なるほどなって勉強になることも多い。たとえば、元ホテルマンだったという人がいますが、サービスの考え方とか、お客様への対応の仕方なんかを聞くと本当に勉強になります。いろいろなバックグラウンド、キャリア、カルチャーの人がいることで個人としても、組織としても幅が広がるので、ダイバーシティは重要だと考えています。
最後に、マイクロソフトで働きたいと考えている方たちにメッセージをお願いします。
女性、男性を問わず、マイクロソフトは自分で望む働き方を実現できる会社です。もちろん、それを実現したいという本人の意志の強さは必要ですが、その意志を大切にする文化があります。女性だからどうこうということは、何もありません。チャンスは平等に与えられています。制度面でも男女同一で、女性だけというのは産休ぐらい。育児休暇や時短勤務といったバックアップ制度は男女の差なく、誰でも取得できます。逆に言えば、女性だからって甘く見てもらえることはありません。仕事に対する厳しさも男女同一です(笑)。自分はこういう仕事をして、こうやって生きていきたいという目標を持っている方には、とてもやりがいのある会社だと思います。お互いに高め合えるように仕事をしたいと思っていますので、ぜひマイクロソフトにいらしてください。