INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
スリーエム ジャパン株式会社 デニース・ラザフォード

成長する企業のビジネス戦略 Vol.29

スリーエム ジャパン株式会社

代表取締役社長

デニース・ラザフォード

コロラド州立大学で高分子有機化学博士を取得後、1989年10月に3M入社。ライフサイエンス・セクター(現:コーポレート・リサーチ・ラボ) 素材研究所 上級研究者、産業材および消費材セクター研究所 リサーチスペシャリスト、ボンディングシステム事業部 ラボマネジャー、工業用テープ・接着剤製品事業部 テクニカルディレクターを経て、2004年6月に3Mベルギー 代表取締役に就任。その後、航空宇宙および航空機保守製品部 事業部長、航空宇宙および航空機保守製品事業部 副社長 兼 事業部長、ラテンアメリカ地域担当 副社長、グレーター・チャイナ地域(中国・香港・台湾)担当 副社長 兼3M中国 代表取締役を務めた後、2016年10月より、スリーエム ジャパン ホールディングス 社長、スリーエム ジャパン 代表取締役社長、スリーエム ジャパン プロダクツ 代表取締役会長となる。

公開日:2017年4月10日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

研究者からビジネスサイドへ転身して日本へ

日本法人の代表取締役に就くまでのご経験を教えてください。

biz30_03大学では一番興味とパッションが持てた化学を学び、大学院では有機化学を専攻しました。大学院を修了する際には、アカデミックの世界に残るか、就職するかの選択に悩んだのですが、一度5年間企業で働いてみてから、改めて2つの道について考えるという決断をしました。

就職活動の際、企業を選ぶ基準は次の4点でした。(1)研究者としてどういったプロジェクトに取り組めるか(2)私が一員となって楽しめるチームと文化があるか(3)オフィスが楽しく生活できる場所にあるか(4)妥当な給与かどうか、です。

最終的に、いくつかの企業からオファーをいただきましたが、すべての面で3Mがベストでした。入社して5年後には、アカデミックの道に戻り大学教授になる意志はまったくなくなっており、以来27年間、3Mで働き続けています。

入社後はまず6年間、バイオマテリアルを専門とするリサーチャーとなり、ドイツなどでプロジェクトを経験しました。その後2年ほど、ボンディングシステム事業部のラボマネジャーを経て、「リーン・シックスシグマ(製品やサービスの品質向上を果たすためのマネジメント手法)」のプロジェクトをリードしました。これは、当時の3Mで特に重要なプロジェクトでした。さらに、接着剤チームのリーダーにもなりました。

2004年、3Mに入社してから15年ほどたった頃になりますが、私に大きな転機が訪れました。3Mベルギー 代表取締役に就任することになったのです。このとき、私は自分の意志でテクニカルサイドからビジネスサイドへの転身を果たしました。なぜビジネスサイドへの異動を希望したかといえば、お客様に関わることに興味を持ったからです。ビジネスを進める上で、テクニカルサイドとビジネスサイドは常にお客様のために協業しています。技術部門にいたときは、テクニカルサイドからプロジェクトを推進していましたが、実は、お客様をしっかりと理解し、お客様からアイデアを得て、新商品を創っていくプロセスが最も楽しかったのです。しかし、ラボをリードしている限り、お客様に関わる機会には限界があります。それなら、ビジネスサイドに移り、もっとお客様と接する時間を増やそうと考えたのです。

3Mは確かにテクノロジーとイノベーションに巨大な投資を行う会社ですが、それはすべてお客様のため。イノベーションを起こすには、お客様のニーズがどこにあるか、どう引き出すかがとても重要で、私はその点でビジネスに貢献したいと思ったのです。それ以来、そのビジネスはどのくらい成長するのか、その製品はどこで販売するのがよいのか、その製品を他の業界に適応できないかといったことを、私は常に熱心に考えています。

ビジネスサイドに移ってからはどうでしたか?

biz30_07グローバル規模のエアロスペース事業(航空宇宙分野向け素材を扱うビジネス)を担当した後、ラテンアメリカ地域担当 副社長、グレーター・チャイナ地域(中国・香港・台湾)担当 副社長 兼3M中国 代表取締役を務めて、日本にやってきました。

個人的には、インターナショナルな環境で、さまざまなお客様、さまざまな社員と仕事ができる立場が気に入っています。ローカルチームの成功例に耳を傾け、それをグローバルでシェアしたり、さまざまな文化に適応すべくチャレンジしたりするのが好きなのです。各国の文化によって、モチベーションの源泉は異なります。彼らのモチベーションを高め、ベストの力を引き出すには何ができるのかを考え、行動を起こすのが、私の使命だと考えています。

グローバルで成功する上で日本が重要

スリーエム ジャパンをどのように見ていますか?

日本に初めて来たのは、20年ほど前です。エレクトロニクス分野のリサーチプロジェクトの一環で訪れました。そのときは、スリーエム ジャパンには、素晴らしい人財がいて、社員は一生懸命に働き、高品質な製品を提供することに熱心だと感じました。20年経った今も印象はまったく変わりません。

3Mにとって、日本は重要な現地法人の1つで、3Mがグローバルなマーケットで成功する上で不可欠な存在です。なぜなら、セールスやマーケティングだけでなく、コーポレートリサーチや製造といった機能を持っており、人財も揃っているからです。スリーエム ジャパンは、グローバルで活躍する人財のいわば「供給元」で、アジアやアメリカ本社などで活躍する日本人リーダーが何人もいます。さらに、日本はイノベーションのエンジンでもあります。スリーエム ジャパンから生まれた製品が、世界規模で大量に流通・販売されている例がいくつもあります。グローバルビジネスにかなり大きく貢献しているのが、スリーエム ジャパンです。

一方で、スリーエム ジャパンがこの先も成功を収めるためには、取り組むべきことが数多くあります。高齢化が進み、労働人口が減り、経済の発展が安定し成熟市場ににある日本で、私たちが結果を出すためには、いったいどのような製品を生み出せばよいのか、どのような人財を育成すればよいのか、会社としてどのような制度が必要なのか―そうしたことをじっくりと考えなくてはなりません。スリーエム ジャパンには、変革すべき点もいろいろとあるのです。

具体的に、どのような変革を進めているのでしょうか?

biz30_04たとえば、注力していることの1つに、「ダイバーシティ&インクルージョン」があります。その中心は、やはり女性の活躍の推進です。現在は、女性ユーザーが多い製品のマーケティング担当に女性をアサインし、女性ならではの視点を活かして、彼女たちの洞察力を製品企画に反映しやすくしているのは一例と言えます。また、女性のリーダーをさらに増やす取り組みも進めています。コラボレーションは3Mのコアバリューの1つです。社員やリーダーの多様性が増し、コラボレーションの多様性が増すことは、必ず組織にも良い成果をもたらすでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンは、単に女性のためだけに行っているわけではありません。幼い子どものいる社員が、男女の分け隔てなくきちんと子育てをしながら活躍できる組織、ファミリーフレンドリーな組織の形成にも努めています。私自身、夫が子育てや家事に協力してくれたおかげで、今のキャリアがあると思っていますから、男性の家庭参加が進むことを切に願っていますし、そうしやすい環境を作るのが私の務めだと考えています。

また、子育てや介護をする社員だけでなく、若手社員のなかには柔軟な働き方を望む人が多くいます。彼らは、親世代とは異なるライフスタイルを求めているのです。彼らのためにたとえば、上司の了解が得られれば、リモートワークを可能とする制度を導入しました。このリモートワーク制度は、他国ではすでに長く実施していますから、スリーエムジャパンが取り入れることに大きな支障はありませんでした。私たちは、こうした制度の変更を通じて、働く場所や時間をフレキシブルに選べる環境を整えていきます。

テクノロジーの面ではどのようなことに力を入れているのでしょうか?

テクノロジーの観点からいえば、私たちは今、3つの方向で重点的な投資を行っています。1つ目は、専門性のさらなる強化です。私たちのビジネスの基盤とも言える46のテクノロジープラットフォームには、毎年欠かさず投資を続けています。

biz30_052つ目は、1つのテクノロジーをさまざまなマーケットに適用するチャレンジです。たとえば、接着剤やテープは、家庭向け製品だけでなく、建築、医療など、さまざまな分野で応用が可能です。このようにして、あるイノベーションが生まれたら、他の領域でも利用できないかを模索していくことが大変重要です。

3つ目は、異なるテクノロジーを組み合わせた相乗効果から、新たなアプローチを探すことです。一例を挙げると、3Mには「3M™ キュービトロン™ Ⅱ研磨材」という製品があります。これは、私たちの最も古いコアプロダクトの1つである研磨材に、新たにナノテクノロジーを組み合わせて生み出したもので、作業性、生産性といった点で優れた研磨材として評価されているものです。このように、新たにテクノロジーを組み合わせることで、イノベーションを生み出せる可能性があるのです。

3Mにはキャリアの柔軟性がある

今後のスリーエム ジャパンについて教えてください。

もちろん、ビジネスを引き続き成功させたいですし、社員には毎日楽しく働いてもらいたいと願っています。フレンドリーでオープンな職場づくりに努めており、Great Place to Work® Institute Japanが実施した2017年「働きがいのある会社」ランキングで今年初めて、第20位に選出されました。ビジネスの成功には人財が欠かせませんから、育成にも一層力を入れていきます。優れた人財を育て、お客様との関係をさらに強固にして、そこから生まれたイノベーションを大事に育んでいけたらと思っています。日本には、いち早く高齢化を迎える国だからこそ生み出せるイノベーションがあります。これこそ、世界各国にも適用が可能で、また世界をより良い場所に変えていくイノベーションになると考えています。

どのような人材を求めていますか?

私たちはいつも、イノベーションに興味のある方、世界をより住みやすい場所にするチャレンジをしたい方を採用しています。

3Mには、「15%カルチャー」というものがあります。執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよいという不文律です。特に、ラボメンバーの多くが15%カルチャーを利用し、そのときどきに最も関心のあるプロジェクトに熱中しています。私もラボにいた頃は、15%カルチャーを駆使して、プロジェクトのメインではないけれど、個人的に時間をかけたい領域にのめり込んだことがあります。さらに3Mには、15%カルチャーなどから生まれたアイデアを支援するために資金を提供する「ジェネシスプログラム」などの制度もあります。ポスト・イット® ノートをはじめとするさまざまな製品が、15%カルチャーやジェネシスプログラムから生まれました。

ぜひ、この話を聞いて、「自分もイノベーションを生み出すために、業務時間の15%を使いたい」と感じる方に来ていただきたいと思います。

最後に、メッセージをお願いします。

biz30_063Mには「キャリアの柔軟性」があります。たとえば、私のように国や部門をまたいで、働く環境を変えていく社員が数多くいます。自分が望めば、そのチャンスは十分にあります。しかし、全員がそうしなければならないわけではありません。日本国内に留まることも、ラボで専門性を磨き続けることも可能です。3Mでは、キャリアを自ら選ぶことができるのです。いずれにしても、好奇心を持って一生懸命に働き、3Mに貢献していただけたらと思います。

最後にお伝えしておきたいのは、「リーダーシップ」と「チームワーク」の重要性です。3Mは、マネジメントとは関係なく、社員全員をリーダーと考え、あるべき姿として「Leadership Behaviors」を定めています。リーダーシップを持つことが大変重視されているのです。一方で、周囲の皆をリスペクトし、周囲と積極的に関わっていくチームワークもコアバリューの1つです。その両方を大事にできる方と一緒に働くことができたら嬉しい限りです。

スリーエム ジャパン株式会社

3M(本社:米国ミネソタ州)は、Science(サイエンス)をベースに生み出されるイノベーションを通して、人々の生活を豊かにすることを目指します。環境保全、企業責任、社会的責任、経済発展を通じて地球の持続可能性に貢献しながら、サイエンスとイノベーションを活かして、世界中のすべての人々の生活に深く関わっています。スリーエム ジャパン(株)は 1960 年、3Mのアジア初の現地法人として創業しました。粘着テープや反射材、接着剤、研磨材などの輸入販売を行い日本の高度成長に貢献するとともに、1961 年には相模原事業所を設立し、現在の研究開発活動の拠点となっています。1970 年にはスリーエム ジャパン プロダクツ(株)山形事業所(旧・山形スリーエム(株))を設立し、国内最大の製造拠点として3Mジャパングループはもとより、グローバルの「スーパーハブ」として海外の3M各社へも製品を提供しています。現在は社員数約 2800 人、グローバルの中核を担うとともに、進展著しいアジア市場全体を支援する地域のリーダーとしての役割も果たしています。

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