ビジネスをドライブするFinance:
FP&Aワークショップ 実施レポート
全3回
激しく変化する市場において、新しいイノベーションを産み出すために、様々な業界・企業で新たな経営戦略検討がされています。Finance部門へは、経営陣・事業部門TOPのビジネスパートナーとして、業績向上への貢献が期待されています。外資系企業を中心に、FP&A(Financial Planning & Analysis)職の募集も増えています。
ビジネスをドライブするFinance:FP&Aワークショップは、全3回、3名の外資系企業CFOなどFinance経験豊富なゲスト講師から直接レクチャーを受け、短時間でケーススタディに取組む、実践形式で開催いたしました。「非常に具体的で分かりやすかった」「とても勉強に刺激になった」など、参加者の方々から満足の声をいただき、非常に盛況裏に開催することが出来ました。
全3回のポイントを、第3回講師 池側千絵氏に文筆ご協力いただき、お伝え致します。
※本セミナー実施時の御所属・役職名にて記載させていただいております。
第1回Financeがビジネスを
ドライブするためには?
第一回は、“Financeがビジネスをドライブするためには?”と題して、レノボ・ジャパン株式会社の山口仁史COO, 執行役員にお話しいただいた。山口氏は、キャリアの出発点はP&Gのファイナンス部門だが、モルソン・クアーズではファイナンス・HRを含む管理部門全体を担当し、続くアクアでは日本代表を、レノボ・ジャパンでは日本事業全体のオペレーションを担当している。ファイナンスを離れ、より大きな視点で経営を担う山口氏が提唱するのは、「ファイナンスは数字だけを扱うのではない。どうすれば売上と利益を向上し、ビジネスをドライブすることができるのか。まずはその方策について仮説を立てて、それを数字をもって裏付けて、経営陣と一緒に実行に移していくことが重要」であるということだ。モルソン・クアーズ時代に、既存のあるブランドについて、「仮説を立て、それを実証する数字的裏付けを見出し、実行に移した」ことによって大きく売上と利益を伸ばすことができた例を具体的に語った。それを受けて、現職のパソコン事業について、受講者と共に、「仮説を立て」、「それの実現を数字をもって検証していく」手法をワークショップで確認した。短時間で3カ年PL、3つのActionを考えるワークショップは、限られた時間に苦慮しながらも、初対面の参加者同士で白熱した議論を展開。各チームの発表に、山口氏から、さまざまな質問、Feedbackが入り、参加者は、実践を通しながら、仮説を立ての重要性、仮設の考え方を学んだ。

ゲスト講師

レノボ・ジャパン株式会社
オペレーション本部 本部長
山口 仁史氏
2001年にP&G入社。サプライチェーンファイナンス、カテゴリーファイナンス、CBD(カスタマー・ビジネス・ディベロップメント)ファイナンス、カスタマーチーム・ファイナンスマネジャー、流通戦略担当を経験。その後、2011年にモルソン・クアーズ・ジャパンのCFOに就任、バックオフィス全体を管轄。
2014年、ハイアールアジアグループに移り、アジア全体のファイナンスVPや日本のマネージングダイレクターなどを歴任。2017年8月から現職。
第2回戦略策定の武器となる
Finance(今後の事業戦略)
第2回は、現在TASAKIで戦略統括部を率いる鷲巣大輔氏。鷲巣氏も、キャリアの出発点はP&Gのファイナンス部門だが、日系ベンチャーのCFO、外資系企業のアジア・パシフィック地区担当CFO、自ら起業した経験を含め、幅広い経験を持つ。鷲巣氏は「戦略策定の武器としてのファイナンス」を議題に話を進めた。議論のテーマは、彼がベンチャー社長を支えるCFOとして、成長ステージのさなかで持ち掛けられた大手企業が保有する東京の店舗の営業譲渡案件を引き受けるか否か。通信販売を主軸事業とする中で、成長スピードを加速化するための事業買収における意思決定。財務上の制約条件、不可能に思えた資金調達、限られた人的資源という大きな壁にぶつかりながらも、戦略として非常に魅力的なこのディールをどのように達成するのか。ワークショップで参加者に問う。各グループが話し合いの末に出した結論は、引き受ける・引き受けない、両論あり、その決断に至った各グループの発表を聞きながら、鷲巣氏から、鋭い指摘、新しい視点など、Feedbackを受け、活発な議論の場となった。

ゲスト講師

株式会社TASAKI
戦略統括部 シニアマネジャー
鷲巣 大輔氏
一橋大学商学部卒業後、一貫して管理会計をベースとした経営戦略策定、事業部コントロールに従事。米系消費財メーカーのコーポレートファイナンスからスタートし、プライベートエクイティ業務、国立大学のCOEプロジェクトへの参画、ベンチャー企業のCFO、米系消費財企業のアジア・パシフィック地区のCFOを務めた後、日系ラグジュアリー企業の戦略統括部門のヘッドに転身。管理会計の力で組織を強くすることをミッションに活動をしている。
第3回営業利益率を高め、
企業価値を向上させるFinanceの仕事
第3回は、日本ケロッグの池側千絵氏。池側氏は、一貫して外資系企業子会社のファイナンス部門に勤務し、現在は子会社のCFOとして、業績向上に取り組んでいる。「営業利益率を高め、企業価値を向上させるFinanceの仕事」と題して、外資系企業のファイナンス部門が、いかに営業利益率の向上に貢献しているのか、一般的な日本企業の経理財務部の機能との違いと、日本企業への提言を語った。昨今は、記帳・支払いなどの業務の自動化、シェアードサービス化、RPA利用などで、業務の簡素化が進み、経理財務部員は、より「ビジネスパートナー」として業績向上を支援する活動への参画が求められている。外資系企業では、ファイナンス(経理財務)のスキルのある人員が事業部に配置されて、財務的意思決定を支援し、クロスファンクショナルチームの一員としてチームの目標達成に貢献する。その具体的手法について、参加者とのワークショップで意見を持ち寄り、議論した。ファイナンス(経理財務)として数値を扱うだけでなく、マーケティング・営業も含めた経営目線の発言も飛び交い、まさしくクロスファンクショナルチームの議論が実現した。各グループの発表では、ビジネスをドライブするFinance的観点から考えられた意見が多く、より大きな視点で考える議論にまで及び、非常に学び深い有意義な機会となった。

ゲスト講師

日本ケロッグ合同会社
執行役員 経営管理・財務本部長
池側 千絵氏
新卒でP&Gジャパン(株)に入社して以来、一貫して外資系企業のファイナンス部門に勤務。P&Gでは、家庭用洗剤・紙製品・ビューティケア事業部門などで担当事業の財務業績向上に取り組み、また日本支社全体の利益・資金管理と報告、経理、税務、アジアHQでの研究開発・販売管理費管理業務など幅広いファイナンスの専門業務も歴任。その後日本マクドナルド(株)でのフランチャイズ事業担当財務部長、レノボ・ジャパン(株)のCFOを経て、現職。
講師の池側様、鷲巣様、山口様、参加者の皆様、大変ありがとうございました。
《 参加者の皆様からいただいた
コメント(一部)》
第1回
- ●Financeの面白さを再発見できました。
- ●実例を交えた話がとてもリアルで、ワークショップも交えて、楽しく学べました。
- ●具体的な事例がありがとうございます。、そこから、クリアなsuggestionがあり、大変新しい学びのある楽しい2時間でした。
- ●ファイナンスとして、どのようなキャリアを積み、どのようなことを成し遂げてこられたのか聞け、参考になりました。
- ●他の事例も聞いてみたかった。また、山口さんのご意見ももっと伺いたかったです。
第2回
- ●経営層の考え方、CFOとしての考え方を学ばせていただきました。
- ●大変内容が濃く刺激を受けました。短い時間でよくまとまっていました。ありがとうございました。
- ●ワークショップは考えさせられるポイントが多く、お話も示唆深く面白かった。決断する難しさを実感しました。
- ●参加できて満足です。別のケースも聞いてみたかった。その後、ワークショップだと、より考えやすかったかも知れません。
- ●同じFinanceやFP&Aの方々とのディスカッションが刺激になりました。
第3回
- ●ワークショップでは他業界・他職種の方々の話を聞けて、参考になりました。
- ●今回のセミナーテーマを会社の人たちにも共有したいと思える程、とても参加できてよかったです。
- ●講師の視点を聞けて面白かった。通常自分では見えない視点が多く、とても勉強になりました。
- ●Financeの仕事の醍醐味を感じれてよい経験になりました。また、仕事人としての心の持ち方を学べる機会でした。
- ●講師の方のお話をもっとお聞きしたかったし、もう少し深堀しやすいワークショップテーマだと考えやすかった。