インド人の同僚たちからハングリー精神を学んだ
ServiceNow Japanに入るまでのご経歴を教えてください。
私の人生の最初のターニングポイントは、小学校3~4年生の2年間、父親の転勤によりカナダで暮らしたことです。当初英語がまったく分からず、何を聞かれても「yes!」しか話せない子でしたが、子供の順応性は高いもので2カ月後には現地のカナダ人の友達の家で楽しくキャンプをしていました。それ以前の私はおとなしい子だったらしいのですが、この2年間で元気で話好きな性格に変わったと聞いています。自分ではよく覚えていないのですけどね。
大学では経営工学を学びました。さまざまな人と接点を持ちながら、論理的に課題を解決していくコンサルティングに興味を持ったからです。新卒で株式会社TKCに入ったのも、システムコンサルタントという職種を募集していたから。1年目はプログラマーとして配属されたのですが、もっと人に接したいと思い、社長に直談判し、2年目から営業にしてもらいました。このときの社長の判断には感謝しています。そのこともあって、自分が社長となった今は、若手社員に「どんどん意見してほしい」と伝えており、その意見にできるだけ耳を傾け、彼らの成長の後押しをしたいと思っています。ふり返ると、この頃の営業時代がこれまでのキャリアで最も大変でしたね。特に序盤は、ひたすら飛び込み営業をしては断られる日々。しかし、営業所の先輩からさまざまなスキルを学んだこともあって、数カ月後には新規顧客を獲得できるようになり、3~4年目にはエリアの社内ベスト3の営業成績を上げられるようになり、ハワイの表彰旅行に行かせて頂きました。
TKCでの営業を6年ほど続けた30歳目前で、父を超えたいと一念発起し、インド本社のグローバルITサービス企業・iGATE Global Solutions Limitedに転職しました。父は20代でアメリカのダートマス大学に留学してGEとの共同研究を行いながらマスターを取得し、日系製造業の技術者として世界を相手に活躍しました。その父のように、自分もグローバルで活躍できるキャリアを歩みたいと思ったのです。
iGATEでは大手企業向けのアプリケーション開発、ITアウトソーシングの営業を担当しましたが、最初は営業プロセスの違い、文化の違いに戸惑いました。TKCも含めて、従来の日本企業は、お客様の担当者から入ってボトムアップで営業するのが通常でしたが、iGATEはいきなり大手企業のシニアマネジメントにコンタクトを取り、ソリューション提案を行い、大きな契約を成立させていくスタイルのベンダーでした。グローバルベンダーでは一般的ですが、当時の私には衝撃的でした。ただ、やってみると理に適っていた。大手企業のシニアマネジメントのコンタクト先も急激に増え、営業としての自分のキャリアが大きく変化したタイミングでした。
iGATEは、入社当時は日本法人も周囲はほぼインド人社員で、グローバルのセールストレーニングに世界中から集まってくるのもインド人ばかりという環境でした。当初英語でのディスカッションをする力がまだ乏しかった私は会話についていけずに、「自分は役に立ててない」と感じ、相当悔しい思いをしました。「絶対、グローバルな環境でも活躍できる日本人になってやる」と決意したのも最初の1年目でした。努力は裏切らず、最終的には社長賞を獲得してグローバルエリートプログラムを受け、マネジメントとして日本法人の営業組織をまとめる立場に立ちました。結果的に10年も在籍したのですから、私に適した場所だったのでしょう。日々インド人社員と触れ合うことで、彼らのハングリー精神、臆せずにアピールする気質、ネゴシエーションを楽しむ姿勢を学ぶこともできました。この10年で、私はそれまで以上に積極的になったと思います。
iGATEに入ってからは、ワークライフバランスも気にかけるようになりました。TKC時代は当時の日系企業にありがちな長く働いて結果を出すワークスタイルが自分にとっての「正」でしたが、iGATEのインド人同僚たちは効率よく働き、休みはしっかり取る働き方をしていました。彼らの働き方を真似したら、そのほうが人生は楽しく、結果的に自分の市場価値も高まることに気づき、生き方(働き方)をガラリと変えました。
2009年に日本HPに移ったのは、iGATEで最もお世話になり、最も尊敬するインド人上司に誘われたからです。ソフトウェア事業のプロフェッショナルサービスのカントリーマネジャーとして入社しました。その後、iGATEでの経験も活かしながら、日本のHPSW内のビジネス変革をリードし、2014年にはソフトウェア事業統括の執行役員となりました。HPはHP Wayという素晴らしい創業者の思想を掲げた巨大なグローバルIT企業であり、日本の組織のリーダーとして貴重な経験を重ねる事ができたのですが、自分がやりたいことを更に追求できる環境を求めて、2016年にServiceNow Japanの社長に就任しました。
ServiceNowは「人々の働き方を変える会社」
ServiceNow Japanはどのような会社ですか?
ごく簡単にいえば、ServiceNowは業界最先端のテクノロジーを採り入れたクラウドベースのプラットフォームとデジタルワークフローを提供することで、「人々の働き方を変える会社」です。
創業者Fred Luddyの原点は、自分がアルバイトをしていた若い頃に、膨大な入力業務をする事務の女性社員のために過去の入力伝票を複製する機能を作ったところ、涙を流して喜んでもらえたという「感動を与えた成功体験」にあります。2004年、Fredは標準的なワークフローを用意したクラウドベースのプラットフォームを構築しました。ボタンを押せば、クラウドのプラットフォーム上ですぐに新たなサービスが立ち上がる。ServiceNowは設立の2004年から一貫して、クラウドベースのワークフローによりお客様の業務効率化を、社員のみなさんが生産的に働ける環境を提供することで実現し、ビジネス貢献を続けてきたわけです。
わかりやすい例を挙げると、ServiceNowを使えば、会社内の申請・承認行為が非常に簡単かつスムーズになります。私たち自身が、このデジタルワークフローを日々使っていますから、自信を持って言えます。通常の申請・承認処理はメールやエクセルベースで行うのが一般的ですが、メール・エクセルベースだと進捗がわかりにくく、いつ何を承認したのか、未決済はどれで、いつまでに何を判断しなければならないのかを忘れてしまうことが良くあります。ところがServiceNowであれば、コンシューマーの世界で我々がスマホで体験しているような優れたユーザー体験を業務環境で実現できます。未承認の案件も一目瞭然ですし、ServiceNow側から、いつまでに何を決裁しなければならないかを逐次教えてくれるのです。過去においてはその時々にある最新のテクノロジーを使うために人が振り回されていたわけですが、今はテクノロジーを使えるのは当たり前ですので、とうとうテクノロジーが人に仕える時代になった訳です。会社内の社員の無駄な作業をServiceNowで徹底的に排除し、対話・コラボレーション・クリエイティブといった本来人々が行うべき(人にしか出来ない)業務に時間を充てられるんですね。私たちはこうしたデジタルワークフローをIT業務領域、従業員向け領域やカスタマーサービス業務領域において用意しています。また、お客様・パートナー様が自由にアプリを作って頂けるアプリケーションプラットフォームの機能も上記のデジタルワークフローの基盤として提供している訳です。
ServiceNowは本当にさまざまな場所で活用していただけるデジタルプラットフォームです。たとえば、あるオーストラリアの病院においては、看護師の働き方を改善するため、音声認識と自然言語理解の技術を活用して、ナースコールをボタンから音声入力に変更し、音声による「患者からナースへのリクエスト」をテキストに変換してServiceNowのワークフローとつなげた事例があります。音声によるナースコールがあった時点で、リクエストの内容や重要度がわかるようにしました。命に関わる事態であれば看護師の方々はすぐに駆けつけ、逆に「水を持ってきてほしい」といったようなリクエストであれば順番に対応することを可能にしました。リクエストの重要度・緊急度がわかるだけで、看護師のストレスがかなり少なくなったといいます。また患者の満足度も飛躍的に向上しました。さらに、ナースコールの頻度などを分析して、各曜日・時間の看護師の最適人数を割り出すことで、看護師の人数減少、勤務時間の短縮にも成功しています。このようにして、ServiceNowは看護師の働き方改革と同時に、患者の満足度向上にも役立っているのです。
また、ServiceNowの大きな特徴の1つは、「主体性はServiceNowのユーザー」だということです。現在、Now Platform上では数多くのデジタルワークフローをSaaS形態で提供していますが、その多くは私たちではなく、ユーザーがもともと開発していたものです。私たちは毎年、世界中のServiceNow ユーザーが一堂に会する「Knowledge」というカンファレンスを開催していますが、昨年のKnowledge 2019には約20,000人がラスベガスに集い、事例を中心とした全部で800ものセッションが開催されました。ユーザー主体でこれだけ大きな規模のイベントが行われるほど、ServiceNowではユーザーが主役となっています。さらに、日本にも「ServiceNow User Group(SNUG)Tokyo」というユーザー会があり、活発に活動されています。
日本では2013年9月からビジネスを始めました。私が就任した2016年1月当時は社員数十名の小さな組織でしたが、営業力を強化し、本社とのつながりを太くすることでビジネスと組織の規模をこの4年間で急拡大してきました。現在の日本法人の社員数は就任当時の5倍以上。2017年後半にはアメリカ本社から最重要投資対象マーケットと選定され、大きな投資を受けており、2019年には東京・大阪に自社のデータセンターを設置、新しいオフィスも構え、さらなる人材採用も積極的に行っています。また、ServiceNowは世界各地で「Now at Work」というグローバルでのシリーズイベントを開催しているのですが、2018年からは日本でも「Now at Work Tokyo」を開催しており、2018年は約1,000名、2019年は約2,000名ものユーザーやパートナーの方々に参加していただきました。今後もこうした活動をさらに拡大し、日本でのアウェアネスをあげていきたいと考えています。
社長として、いま取り組まれていることを教えてください。
重要なキーワードは「Connect」です。ServiceNowはユーザー主体ですから、ユーザー同士、パートナーとユーザー、パートナー同士をつなげることが、新たな付加価値になります。私たちServiceNow Japanは、そのハブとなって、もっと盛んに皆さんをつなげていく必要があると考えています。
たとえば、私たちはいま、トレーニングや認定資格試験を極めて重視しています。なぜなら最近、ServiceNow のトレーニングを受けたいというパートナー企業やユーザー企業のエンジニアが爆発的に増えているからです。ServiceNowを使えることが、エンジニアの仕事やキャリアに直結してきているのですね。ServiceNowを使って、社内外の働き方改革を進めるエンジニアが重宝されるようになってきている、というわけです。そこで私たちはいま、トレーニングや認定資格試験の強化を図っています。もちろんトレーニングだけでなく、バリューチェーン全体の理想的な姿を構想しながら、各部署が連携して、さまざまな面でビジネスの強化に当たっています。これにはDigital Literacyといった国内の40-50代層でデジタル変革に乗り遅れてしまった世代の方々に新たなスキルを身につけてもらい、新たなキャリアパスを描き、人生100年時代を実現するイニシアティブも含まれています。
一方で、より良い組織風土をつくるため、私はオフィスを歩き、多くの社員と話すことを心がけています。また、私は「全員が適材適所で働き、その成果をRecognitionすれば、社員のモチベーションが高まり、結果としてビジネスは必ず上向く」という持論を持っており、それを実現するために社員全員と年に一回、個別で直接キャリアディスカッションをする機会を設けています。社員一人ひとりに対して、何を大事にして働きたいのか、将来どうなりたいかをインタビューし、それに沿ったポジションとチャンスの後押しができればと思っています。また私たちは、社員の家族の皆さんとも積極的にコネクトしたいと思っており、「ファミリーデー」を開催しています。ファミリーデーでは、ServiceNowがどのように社会に貢献しているか、どのような職場環境なのかを、家族の皆さんにわかりやすく理解してもらえるよう、個別のアプリを開発して楽しく遊んでいただくような工夫もしています。
日本の企業・社会・経済を良くすることに直結する仕事
ServiceNowで働くことのメリットはどこにありますか?
ServiceNowは、「奇跡的なほどやりがいのある会社」だと思います。なぜなら、いま日本企業は、働き方改革とデジタルトランスフォーメーションを何より本気で取り組まなくてはならないからです。働き方を変えるServiceNowのデジタルワークフローは、いま日本企業と日本社会に最も必要なものです。これを広めることは、日本企業、日本社会、日本経済を良くすることに必ず直結しているんですね。
その証拠に、ServiceNow Japanの社員満足度はグローバル平均を超えています。日本人は総じて社員満足度の数値がかなり低い傾向があると言われていますから、本当に素晴らしいことだと思います。その一番の理由は、ServiceNowでの業務のやりがいの大きさにあると思っています。日本企業の働き方を変えたい、日本をもっと良い社会にしたいと願う方にとって、こんなに意義のある職場はめったにないはずです。実際、ServiceNowにはハッピーカスタマーが圧倒的に多く、「我が社はServiceNowを使って、こんなに良くなった」という声を日常的に現場で耳にすることができます。人や社会に貢献できている充実感でいっぱいです。
どのような方を求めていますか?
やはり第一に、日本企業の社員の働き方を変えたい、日本社会を良くしたいという「志」を持っている方です。その部分は譲れません。
その上で言えば、自分が何をしたいかが明確で、自律的に動くことができ、働き方を柔軟に変えていける方が適していると思います。たとえば、まだ入社1年に満たないのですが、いきなりグローバルトップ3の営業成績を上げた若手社員がいます。彼は臆せずに大企業のトップへ直接提案し、超大型案件を今年獲得しました。彼がこれを実現できたのは、ボトムアップで進めるという日本的営業の常識にとらわれず、お客様の経営層に向けて、ServiceNowだけが提供できる価値を、大きな絵図を描きながらしっかりと提案できたからです。また、私を含めたマネジメント層を上手に巻き込み、チームプレイで動ける長所を発揮したからです。こうしたことができる方は活躍のチャンスが多いにあります。
先ほども触れたとおり、ServiceNowには、キャリアディスカッションなどの場で希望すれば、やりたいことにチャレンジできる環境があります。実際、本人の強い希望でインサイドセールスから大手企業担当のアカウントエグゼクティブに異動し、結果を出している人もいます。私は、適材適所がモチベーションと生産性を最も高めると確信しています。ですから、これから入社する方も、ご自身のやりたいことをぜひ主張していただき、この奇跡的なほどやりがいのある会社で、家族や自分自身に誇れるキャリアを一緒に歩みましょう。