日本法人を一つのチームにすることに腐心してきた
キャリア観について教えてください。
これまでのキャリアを通して、ずっと変わらずに大切にしてきたことが2つあります。一つは学び続けること、もう一つは信頼関係です。
学び続ける点に関しては、キャリアの初めから営業職で常にお客様と話をする立場にあり、お客様との会話から様々なことを学んできました。例えば、2005年にSAS Institute Japanに営業統括本部長として移った際には、それまでのハードウェアメーカーとは営業スタイルが異なり、価値訴求が極めて重要なソフトウェアを扱っていましたから、このシフトの経験では、学ぶ意欲を一層掻き立てられました。この時期には、お客様からだけでなく、多くの優秀なメンバーからも刺激を受けることが多かったです。メンバーは、自分たちの商品価値と、その訴求ポイントを熟知し、お客様に合わせた最適な営業シナリオを描くことができ、私のような上司にも臆せずに意見してきました。私は今も昔も、そうした真剣な生意気さが大好きです。
2013年から社長職に就いていますが、社長になって実感しているのは、大企業の上層部の方々とお会いするチャンスが一気に増え、学ぶ勢いがさらに増しているということです。たとえば、彼らとお話ししていると、いまものすごい速さで世の中が変化していることがよくわかります。世界的企業の将来に対する危機感は非常に強いですよ。彼らがあれほど強い危機感を抱いているのですから、私たちももちろん呑気にはしていられません。
次に信頼関係という点に関しては、どの仕事でも、お客様、パートナー様、チームとの信頼を築くことがすべての基盤だという信念を持ち続けています。SAS時代の大切な仕事はトラブル対応・クレーム対応で、私はどのようなトラブルやクレームも丸く収めて、逆に営業のチャンスにしてしまうため、「尾羽沢マジック」とよく言われました。しかし、それができたのは、営業部門に加えて、開発部門・サポート部門の心強い協力があったからこそ。本当は、私のマジックではなく、組織全体のマジックだったんです。本当にチーム一丸となり、皆が信頼関係で結ばれていました。
インフォアジャパンの代表取締役社長に就任した際にも、カントリーマネジャーとして力を入れたのは、「チームになる」ことです。インフォアも、次のJDAソフトウェア・ジャパンもそうでしたが、多くの外資系企業の日本法人は、全員がカントリーマネジャーにレポートを上げるわけではなく、本社と直接つながっているメンバーが何人もいます。つまり、カントリーマネジャーとコミュニケーションを取らなくても、仕事が成立してしまうメンバーが少なくないんですね。ですが、日本法人として一丸とならなければ、組織やビジネスは決してうまくいきません。そこで私は、自分のレポートラインにいないメンバーのマネジメントにも力を入れ、日本法人を一つのチームにすることに腐心しました。この姿勢はいまも変わっていません。
インフォアジャパンの後、JDAソフトウェア・ジャパンの代表取締役社長を務めて、2019年4月に、私はシトリックスの代表取締役社長に就任しました。
「お客様の働き方改革を支援する会社」である
シトリックスはどのような会社ですか?
以前からシトリックスをご存じの方は、「VDI(デスクトップ仮想化)の会社」というイメージが強いだろうと思いますが、(※VDIとは、OSやアプリケーションなど、業務で活用するデスクトップ環境をサーバー側に集約・実行する技術のことです。これにより、ユーザーは時間や場所を問わず、どこからでも安全にアプリケーションやデータにアクセスすることが可能になります。)現在、市場のニーズに応じて、Citrix は Workspace という、より幅広い領域にソリューションを拡大しています。
お客様とお話しをしていると、現状の仮想デスクトップやシンクライアントシステムに対するパフォーマンスや使い勝手の不満をよく聞くことが多いのですが、こういった課題に対して、シトリックスのVDIのみならずSaaSやモバイルアプリやコラボレーションツールなど業務の生産性を高めるツール、そして、パフォーマンスを最適化するネットワーク機能を統合した「Citrix Workspace」を提案しています。
また、「Citrix Workspace」のカギとなるテクノロジーとして、「Citrix Analytics」についても強調したいと思います。このテクノロジーは、ツールのパフォーマンスを解析し、かつ、従業員の行動分析をすることで、セキュリティと生産性の観点で働き方を可視化することが可能です。可視化したデータをもとに、改善点を示し、また、収集したデータを学習することにより、ユーザーにより最適な環境を提供することも可能であり、シトリックスが目指す「未来の働き方」を加速させることが可能です。
「Citrix Workspace」のテクノロジー(ユーザー視点で設計された)によって、お客様のテレワーク・リモートワークを初め、多様な働き方改革を推進していくことが可能になり、社内の情報への安全でシンプルなアクセスを実現することで従業員エクスペリエンスを向上させることができます。また、共同で行ったEconomist Intelligence Unit調査の結果でも示されたように、従業員エクスペリエンスの向上によりエンゲージメントが高まり、企業の生産性と離職率の低下に貢献します。結果的に、お客様は働き方改革を実現し、それを支援するのが、私たちの最大のミッションだと考えています。
いまはどのようなことに注力しているのですか?
営業部門でいえば、私たちは直販営業(ハイタッチ営業)とパートナー営業を両面で行っていますが、直販はCIO以外のCXOへの営業を強化している最中です。情報システム部だけでなく、他部門の悩みを直接伺って、新たな提案を進めていこうとしているんです。「お客様の働き方改革を支援する」というミッションを踏まえれば、この方向に進むのは当然のことです。パートナー営業のほうは、今後はコンサルティングファームのパートナーを積極的に開拓したいと考えています。なぜなら、彼らがお客様の働き方改革全体をサポートしているケースが多いからです。彼らとの関係を強化するのも、働き方改革を支援する会社として自然な流れです。
一方で、ユーザーの皆さんの生産性をさらに高めるような製品の開発にも注力しています。具体的には、上記で述べた「Citrix Workspace」に力を入れています。このソリューションは、一回のサインインですべてのアプリケーションへのアクセスを可能にします。マネジャーなら、メンバーの承認申請をワンストップで確認し、すぐに承認することもできます。いま、ビジネスパーソンは、アプリケーションへのサインインにかなりの時間を割いていると言われています。「Citrix Workspace」を使えば、その時間を数十分の一にでき、生産性を飛躍的に高められるのですね。私たちは今後も、こうしたソリューションを次々に打ち出していく予定です。
プロ意識を持ち、生き生きと思いを実現する
シトリックスの組織をどう変えていこうとしていますか?
お客様の働き方改革を支援する以上、まずは自分たちの働き方を最大限に生かし、自社の働き方改革をこれまで以上に進めなくてはならないと考えています。そして、社員のみんなに実際の経験を通して「良い会社だ」という誇りをもってもらいたいんです。実は、お客様の経営層の皆さんから、「シトリックスの自社事例を知りたい。御社のメンバーから、シトリックス自身の働き方改革がどれくらい進んでいるのか、何がどのように良くなったのかを具体的に聞きたい」と言われることも多く、私たち全員が、自分自身の働き方についてストーリーを生き生きと語れる会社でありたいと思っています。
自社ソリューションのより積極的な活用促進に加えて、信頼に基づく組織作りが私のトッププライオリティです。社員の家族をオフィスに招待する「ファミリーデー」や、少人数単位で社員と私が直接コミュニケーションを図る「対話会」をスタートしました。対話会を始めたのは、私が社員一人ひとりのことをよく知り、彼らとの信頼関係を築くこともまた極めて重要だと考えているからです。先ほども述べたとおり、私は「日本法人を一つのチームにすること」を重視しています。シトリックスのチームとしての結束を固めるためには、私が率先して一人ひとりと関わっていくことが大切だと感じています。
どんな方を求めていますか?
明るく楽しく働いていただける方だと嬉しいです。お客様や社内の役に立ち、エンゲージメントとモチベーションを高く保ちながら働いてもらうことが、一番だと思っています。
世界的なWorkspaceベンダーとして、働く環境の整備には力を入れています。また、お客様の働き方改革に貢献できるソリューションを揃えている、という意味でも、私たちには自信があります。さらにいえば、各自にとって生産性のあがる柔軟な働き方を尊重しています。私はいま、マネジャー層に「マネジャーの仕事は、メンバー一人ひとりの言葉に耳を傾け、ゴール達成とキャリア開発に必要な支援を提供することだ」と徹底的に伝えています。最も重要なのは、メンバー一人ひとりの意志を基点にすることです。私たちは、そうした文化・土壌を築き上げていくことに真剣に取り組んでいます。このような場と想いに魅力を感じていただける方と一緒に働きたい。ぜひお待ちしています。