爆発的に成長するためにグロービスへ
グロービスに入社するまでのご経歴を教えてください。
振り返ると、小学校から社会人まで続けてきたサッカーを通して、チームワーク、戦略論、組織のつくり方などを学びました。また、海外にはサッカー好きが多く、仲間をつくる上でもサッカー経験は役立ってきましたね。私は正しいと思ったら先輩にも遠慮なく意見するタイプで、大学のサッカー部でも先輩や仲間たちとよく話し合いました。現在は堀(堀義人氏:グロービス経営大学院 学長)と徹底的に議論する日々。その意味では、今も昔もあまり変わっていないのかもしれません。
私は小さい頃に何度か転校しており、自分が転校生だったので、その経験から他の転校生とよく仲良くなっていました。彼らの中には帰国子女が何人かいて、海外の話を聞いたんです。そのうちに海外で働きたいと思うようになり、上智大学へ進学。就職活動では商社を志望して、丸紅に入りました。
配属されたのは、建設機械部中近東課。日本メーカーの建設機械を中近東各国へ輸出するのが主なミッションです。最初の4年は日本で働き、5年目からは3年間、イランに駐在となりました。これが私の人生を大きく変えた一度目の転機でした。日本にいると、イランは何か非常に危険な国に見えると思いますが、実際に行ってみると日本との共通点も多く、思った以上に居心地の良いところでした。イランにいるうちに、欧米に対する見方も日本時代とは変わっていきました。場所が変わると、いろいろと違う見方が身につくんです。ずっと日本にいたら、こんなことはまったく体験できなかったでしょう。またこの間に、ビジネスはキレイごとや甘いものではないことも痛感しました。
イランの次は、ベルギーに5年ほど駐在。ここでは若くしてプロジェクトリーダーを任され、日本・ヨーロッパ・南アフリカ企業のコンソーシアムで、アメリカ企業とのコンペに勝利し、アフリカ銅鉱山開発への参画を実現しました。そのときに知ったのが、利害関係が必ずしも一致しない多様なメンバーをまとめるのは大変だけれど、同じ方向を向いて一丸となれたときには、ものすごいパワーを発揮するということ。私はリーダーとして全員にビジョンを共有し、相手の懐に飛び込み、ときには厳しい意見を出しあいながら、チームをまとめ上げていきました。このプロジェクトを成功させることができたのは、非常に大きな自信となりました。
久々に日本に帰ってきて2年ほどした後、グロービスに転職しました。2002年のことです。その大きな理由は、もっと成長したかったから。海外で8年働いてわかったのは、このままでは、世界で見てきた海外企業で活躍しているリーダーのようには到底なれないということでした。自分を同じレベルに引き上げるためには、職場環境を変え、爆発的に成長しなくては。そう思っていたときに、たまたまグロービスに誘われたんです。
当時、グロービスは社員100名足らず。吹けば飛ぶような小さな企業に、30代後半で初めて転職する。しかも、まったくの異業界です。自信はこれっぽっちもありませんでした。決め手になったのは、堀が「自分の可能性・組織の可能性・社会の可能性を信じよう」と強く打ち出していたことです。特に、社会の可能性を信じようという言葉に驚きました。今でこそ、社会貢献や社会起業という考え方が普通になっていますが、当時は日本経済も停滞しており、そんな前向きに未来を見据えたメッセージを投げているリーダーはほとんどいなかったんです。最後の一押しは堀の考えでした。堀の考えに惹かれて入社を決めました。
クライアントのトップが本気でない限り変革は実現できない
グロービスに入ってみていかがでしたか?
最初の2年ほどは本当に大変でした。ビジネススクールやコンサルティングのことがまったくわからず、ソリューションのナレッジがなかったからです。たとえば、そもそもなぜ3C分析をするのかさえもピンと来ていませんでした。また、パワーポイントもろくに使えず、提案書づくりに四苦八苦しました。周囲は呆れていたと思います。30代後半で転職してきて、そのレベルなんですからね。商社は直接的にモノを扱いませんが、最終的にはモノが関わるビジネスで、全体の仕組みやファイナンスを提案する、いわばハードに関わる仕事でした。そんなモノを扱うビジネスから、ソフトな人・組織に関する知識を提供する仕事への挑戦は、アプローチがまったく違う難しさがありました。シンプルな言葉で構造化して示し、未来のあるべき姿を考えて提案する。そのための、スキルも経験も圧倒的に足りませんでした。
自分の仕事の意義が本当に腹落ちし、楽しくて仕方がなくなってきたのは、入社3年目くらいの頃だったと思います。人・組織に関わる仕事は、効果がすぐに目に見えるわけではありません。ですが、次第に、私の関わった企業の社員の皆さんの言動が変わり、自社のビジネスが自分ごととなり、何より元気になっていくのを目の当たりにするようになりました。嬉しかったですね。また、さまざまな経験を積むことで、成長することもできました。思考力、クライアントに行動を促す力、ファシリテーション力、オーナーシップ、言語化能力、行動力、対応力など、さまざまな能力を飛躍的に高めることができたと感じています。
それから、私の人生を大きく変えた二度目の転機は、2008年にスタンフォード大学経営大学院SEPで学んだことです。ここでは大きく3つの想いを抱きました。
1つ目に、スタンフォードは素晴らしく有意義な勉強ができ、グロービスもいずれはこのレベルに到達させたい、到達することは可能だと、大きな目標と自信を得ることができました。
2つ目に、特に感銘を受けたのは、強い情熱と極めて高い志の講師が何人もいたことです。彼らは自身の思考や専門知識を日々徹底的に深めていて、言葉の重みや自信のほどが並外れていて、それがオーラとなり講義を白熱させていました。彼らの存在に直接触れることができたのは大きな財産となっています。
3つ目に、一見論点と外れているような“ばかげた”発言や考えをする人を受け入れ、聴く姿勢、賞賛する風土に感銘を受けました。これはとても理に適っています。なぜなら、そうした人たちがイノベーションを起こすからです。たとえば、いまではオフィス内に遊び場やカフェがあるのが珍しくなくなりましたが、最初は“ばかげた”発想だと思われたかもしれません。でも、そうした新しい発想、視点の違う発想こそが、実は世界や社会を変える。そんな発想を生み出せる人は、価値が高いんです。彼らはそのことを熟知しているんですね。しかし日本では、そのことがまだあまり理解されていません。ダイバーシティとも関わりますが、その点では彼らに一日の長がある。そう思っています。
高橋さんのミッションを教えてください。
グロービスに入って最初の10年ほど、私は企業内集合研修をクライアントに提供してきました。大手クライアントを中心にして、営業や企画提案からソリューション提供まで、すべてを自分の手で行ってきました。
その後、2013年からはGLOBIS Global Educationの事業展開に携わっています。現在は、中国・シンガポール・タイの3拠点で、グローバルリーダー育成研修を展開しています。ビジネスのグローバル化およびローカル化を進める日系クライアントに対して、現地の日本人リーダーの教育と現地法人メンバーの教育の両方を手がけています。
日本人リーダーに対しては、主に現地メンバーへの理念共有や組織文化づくりの方法論を伝えるとともに、彼らのオーナーシップ向上に務めています。重要なのは、日本人リーダーの意識を変革することです。理想的なリーダーは、就任初日から、「自分はこの組織をこう変えたい」「この現地法人のビジネスを伸ばし、この国の経済にこうやって役立ちたい」という強いメッセージを自らの言葉で打ち出します。しかし、そこまで高い意識を持ったリーダーは、決して多くないのが現状です。そこで私たちは、彼らの意識変革を大きなミッションとしています。ときには激しい議論になるくらい、彼ら一人ひとりと本気で向き合っていきます。
ただ、これはクライアントのトップが本気でない限り、実現できません。そのため、私たちは仕事を受ける際、クライアントのトップの本気度を見るようにしています。そうでない場合は、ご依頼をお受けしないという判断をすることもあります。トップのコミットなしには、その企業のビジネス発展に貢献できないと思うからです。
一方、現地法人メンバーに対しては、グロービスが得意とする「ビジョナリー・リーダー」の育成サービスを提供しています。経営学の基礎を教えた上で、クライアントの経営理念・ビジョン・ミッション・バリュー、クライアントの意思決定方法の特徴などを伝えて、このクライアントの中でどう振る舞えば活躍できるのかを伝授していきます。その際、アクションラーニングを通じてメンバー一人ひとりに考え抜いてもらい、彼らの具体的な行動を起こしていくのが、私たちのやり方です。
当然、日本と同じようにはいきません。そもそも東南アジアは、日本とは比べものにならないくらいダイバーシティが高いのです。女性メンバーも多く、宗教の違いも明確にあります。また、英語は第二外国語という方がほとんどで、言葉の障壁もある。そして何より、各国の文化がそれぞれ異なります。
だからこそ、「徹底的に知り合うこと」が重要です。具体的には、相手とのやり取りの中で違和感を覚えたら、バックグラウンドを深く確認します。卑近な例でいえば、東南アジアには、朝決まった時間に出社する習慣がない方が多い。そこで、日本文化的に感じた遅刻が多いという状況を変えたいと思ったら、まずは「なぜ決まった時間に出社しなければならないのか?」という当たり前のことをきちんと説明した上で、合意形成を行わねばなりません。説明するまでもないと思うようなことでも、双方の文化的背景理解を丁寧に行っていって、ようやく相手の意識や行動を変容できるんです。
このように、現地法人メンバーの教育も決して簡単ではありません。しかし、先ほど商社時代のエピソードでも語りましたが、利害関係が必ずしも一致しない多様なメンバーをまとめるのは大変だけれど、いったん同じ方向を向いて一丸となれたときには、ものすごいパワーを発揮します。だからこそ、私は現地法人メンバーの教育を極めて重視しています。その成否が、クライアントのビジネスを大きく左右するからです。
「自分の仕事が社会を変える」という実感を得られる
GLOBIS Global Educationと高橋さんの将来構想について教えてください。
アジアを中心としてビジネスを拡大し、アジアNo.1のビジネススクールになることを目指しています。2022年までは、日系クライアントにフォーカスします。日系企業の皆さんがグローバル化・ローカル化を推進する際、グローバルリーダー育成研修を手がける企業として、最初にグロービスの名前が上がるようにしたい。それが直近の目標です。その後は日系企業以外にもソリューションを提供し、ビジネスを大きくしていきたいと考えています。
私個人としては、第一に「発信力」を高めたいという想いを強く持っています。グローバル社会では、「発信しなければ存在しないのと同じ」だからです。そのためにいま、グロービスのオウンドメディア「GLOBIS知見録」で、私は「一般的には無名だけれど素晴らしい仕事をしている人」にフォーカスし、彼らを取り上げるインタビュー記事をつくっています。こうした活動を通じて、発信し、言語化力をより鍛えていきたいと思っています。言葉の強さが知恵の強さを強めるのだと思います。
第二に、「哲学・宗教・歴史の理解」をさらに深める必要があると感じています。なぜなら、哲学・宗教・歴史の理解が深くなければ、グローバルで重要な決断を下すのが難しいからです。たとえば、イスラム教とその布教の歴史をよく知らずして、インドネシアでビジネスを拡大することはできません。また一方で、地政学などを学んで、自分なりの世界の見方を磨く必要もあります。海外の優れたビジネスパーソンは、こうした学びや理解を徹底的に深めている。私も負けていられません。
第三に、「英語力」をもっと高めなければなりません。自分の考えや哲学をわかりやすく伝えられるだけの英語力を手にしなければ、海外への発信力を高められないからです。
どんな方と一緒に働きたいですか?
ズバリ、「自分のやりたいことがある方」で、かつ「セルフスタートできる方」ですね。「私に意見してくれる方」だと、なお嬉しいです。そうした方にとって、グロービスは間違いなく働きやすく、面白い場です。なぜなら、やりたいことにセルフスタートで向かえる環境があり、同じようにチャレンジしている仲間がたくさんいるからです。特に、知恵・行動力・巻き込み力(他者共創)で勝負したいというタイプの方にとって、グロービスは限りない可能性を秘めています。
グロービスは「自己成長」には惜しみない支援を行います。私のように、途中で海外で学ぶ機会を持つことも可能です。社員全員が自己成長にコミットしている、という意味では、おそらくグロービスは世界No.1の成長意欲が高い組織だと思います。その点では、世界中のどの企業にも決して劣っていないと、私は確信しています。その一員になりたいと思う方なら、まず入社して後悔しないでしょう。
そして、私がグロービスでいつまでも仕事をしたいと思えるのは、「心の報酬」が大きいからです。ここは「自分の可能性・組織の可能性・社会の可能性を信じる」組織で、だからこそ、社会課題解決と人の成長を真剣に考え、次の社会づくりに真剣に挑んでいる会社です。私はそこに大変なやりがいを感じています。自分の仕事が社会を変えている、という実感を得られるのです。私と同じ想いを持つ方は、きっとグロービスで仕事を続けられるでしょう。私が保証します。