日本に戻ってくることができて嬉しい
Chubb 損害保険(チャブ)に入社するまでの経緯を教えてください。
大学時代、野球で全米代表に選ばれ、日本代表とも何度か対戦しました。初めて日本にやってきたのはその試合のときです。ちょうど原辰徳さんが日本代表選手でした。原さんは本当に素晴らしいプレーヤーで、メジャーリーグでも活躍する力のある人だと感じたのを覚えています。私はその後、マイナーリーグでプレーしました。野球から学んだのは、やり抜くことの大切さ、常に本番だと思って練習に取り組むこと、失敗を恐れずに挑戦する姿勢、そしてすべてのポジションが重要だということです。野球から学んだことは、今でも非常に大切にしています。
卒業後、経営者になるべく起業し、保険代理店を始めたのが、私が保険業界に入ったきっかけです。保険商品は在庫を抱える必要がなく、チャレンジしやすいのが大きな魅力でした。当時の私は、起業して成功したいという気持ちが何よりも先に立っていて、ビジネスの内容にさほどこだわりはなかったのです。しかし、保険を学ぶにつれて、次第にその重要性を理解するようになっていき、保険を広めたいという思いを強くしました。そうして本格的に保険業界に踏み込んでいったのです。保険は人を守り幸せにすることができる。非常に魅力を感じました。
これまで30年以上、保険業界で働いてきましたが、最も長く働いたのはAIGです。タイ・韓国・マレーシア・日本など、17年間で6カ国にて仕事をしてきました。各国とも異なるところはあるのですが、私が最も重視してきたのは、まずニーズの共通性をしっかり把握することです。保険ビジネスには、どの国に行ってもあまり変わらない部分があります。共通性を理解することで、ニーズの違いも分かってきます。また、そのときどきに住む国を好きになることを心がけてきました。私は、各国の素晴らしい文化を深く理解したいという気持ちを常に持っています。もちろん、日本のことも大好きです。日本には以前住んでいたこともあり、私だけでなく妻や子供たちも日本が好きで、日本に戻ってくることができて嬉しく思っています。
売上2倍は決して不可能ではない
チャブはどのような会社ですか?
チャブは世界最大級の損害保険会社です。世界50カ国以上で、マルチナショナルにビジネスを展開して成功を収めている保険会社は数少なく、希少な存在だと自負しています。会長兼CEOのエバン・グリーンバーグ(Evan G. Greenberg)が掲げるビジョンは、「自分のひ孫が誇りに思えるような会社にしたい」ということ。ビジネスをひ孫の代までと長期的に考え、どのようなビジネス、どういった組織を次世代に残せるかを常に意識しています。チャブは素晴らしいビジョンをもつリーダーがいる会社です。
日本のチャブはまだ小さな組織ですが、実は日本でも前身会社を含め100年近くの歴史があり、昔から付き合いの深い代理店がいくつもあります。その意味では、外資系ではありますが日本的な部分もあり、特に市場理解という面では競合企業に決して劣っていません。また、小さい組織であることは、私たちの強みでもあると考えています。代理店やお客様に寄り添ったビジネスができるからです。スピードの速さや対応力が強みです。
日本のチャブをどのようにしていきたいと考えていますか?
私が就任するまでの数年間、日本の組織は組織改革を進めてきました。私の役割は、その改革の成果を活かして、ビジネスを伸ばすことです。いまのところ、市場全体よりも高いレベルで成長を遂げており、今後はさらに加速していきたいと思っています。私の在職期間に売上を2倍にするというのが、現在の最低限の目標です。そのためには優れた人材を多く確保することが重要です。採用は最重要ポイントの1つと認識しています。
また、私たちは最近、さまざまな社員から話を聴いた上で、社員全員が同意できる「共通の目的(Common Purpose)」を定めました。「お客様が困難に直面した時、確かな安心と補償を提供する」「私たちは、行いの全てを通し、後に続く者たちの良き先人となるよう努めることで、今の時代を切り開いた諸先輩方(先輩社員)やディストリビューション・パートナーが残してくれた貴重な財産に敬意を表する」「高い基準と倫理観を掲げ、その実践を通じて将来のリーダーを育成する」の3つが、私たちの共通の目的(Common Purpose)です。
この3つを大事にすることができ、加えて「ポジティブな精神」、やればできるという気持ちと、たゆまぬ向上心と探究心で自己を律する「プロフェッショナリズム」、それから「実行力」のある方は、間違いなくチャブで成功できるでしょう。
なかでも私たちが重視しているのが「実行力」です。チャブでは、「戦略10%・実行90%」とよく言われます。プロフェッショナルとして前進し続けることが、必ず成果につながっていくというのが、私たちの考え方です。
売上を2倍にするためにどのような施策を行っているのですか?
私たちにはすでに優れた組織力や戦略がありますから、伸びている市場に注目し、そこに価値ある商品を投入していけば、売上2倍は決して不可能ではないと考えています。
ただ、その大前提として、全員が自分の役割を果たす必要があります。そのためにも、私は全社員を対象にランチミーティングを定期的に行っています。毎回8名と順番にランチをしているのですが、まだ1周目ですので、今は顔と名前と仕事を一致させることを一番の目的としています。ただ、その際に必ず、「あなたの仕事が会社にとってどれだけ重要か」を伝えるようにしています。そうすることで、一人ひとりが自分の役割の意義を理解し、やりがいを感じながら、自分の役割を果たすことに力を注いでほしいと願うからです。また、他部門のメンバーがどのような仕事をしているのか、どういったことに喜び、悩み、力を合わせているかを知ってもらいたいからでもあります。チーム全体で目標達成に向け進んでいきたい。その環境づくりになればと思っています。
ランチミーティングには、他にも重要な目的があります。それは、私が社員の皆さんから直接意見を聴くことです。私は、この会社をフラットな人間関係の会社、互いに意見を言い合える会社にしたいと常々思っています。日本は、若手社員が社長に意見するのが難しい文化だということは知っていますが、だからこそチャレンジが重要だと考えています。その第一歩として「社長に意見を言いやすい会社」にするためにランチミーティングを開催している面もあるのです。私が、ことあるごとにそのメッセージを伝え、ランチミーティングを重ねてきたおかげで、少しずつ意見が上がってくるようになってきました。しかし、私の目から見ると、まだ足りていません。さらに互いに意見を言い合える会社風土に変えていきたいと考えています。
役割を果たしている社員が次に進める
どのような人材を求めていますか?
売上を2倍にするには、「成長したい」「新しいチャレンジを始めたい」「会社を大きくしたい」という気持ちのある、優れた仲間がもっと必要です。私たちは多様なメンバーを求めています。個人的には、友人として自分の家に招いてもよいと思える方と一緒に働きたいと考えています。
では、そうした方々に私たちが何を提供できるかと言えば、第一に「マルチナショナルな職場環境」があります。すぐには難しいかもしれませんが、成果を残せば、将来的に海外でキャリアを積める可能性が十分にあります。保険業界で、そうした環境が整っている会社は決して多くないはずです。
第二に、「たくさんの機会」を提供することができます。ただし、チャブでは、チャンスが与えられるのは「成果を出している社員」「役割を果たしている社員」です。順番待ちは一切なく、勝ち取った社員が次に進めるのです。何をすべきかを理解し、誰にも負けないほど実行すれば、あなたにもきっとチャンスが与えられます。私は、ここが全員にとって良い環境だというつもりはありません。しかし、努力する方にとって公正な環境であることは間違いありません。そうした環境を望む方に来ていただけたら嬉しいです。