人を元気にする仕事がしたくてヘルスケア業界を選んだ
ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社するまでの経緯を教えてください。
大学では何か新しいことを始めようと思い、ラクロス部に所属しました。しかし、部員は100人前後もいて、その中でフィールドに立てるのは12人だけ。活躍していたのは高校時代から運動部に所属していた人が多く、試合に出ることもできず、「このまま続けていても・・・」と悩むことがありました。そんな私に、あるチームメイトが「誰一人として不必要な人はいないんだよ」と言ってくれました。その言葉をきっかけに「試合でプレーできなくてもチームに貢献できるかもしれない」と考えるようになり、私は新規に戦略スタッフ部門を立ち上げました。選手のシュート率を分析したり、ゴールキーパーの弱点を分析したり、対戦相手を分析してデータを集め、リーダーやコーチがスターティングメンバーを決めるときの参考にできるようにしたのです。
今にして思えば、この経験が今の仕事にとても活きていると感じます。
大学時代、町の診療所の受付業務のアルバイトをしていました。スタッフが「お大事に」と言い、患者さんが「ありがとうございました」と言って帰っていく病院での日常をみながら、やって来た人が元気になるサポートができることがとても素敵だと感じました。この経験を通して、人に健康や安心感を与えられるような仕事がしたいと思うようになりました。
就職活動では製薬企業やヘルスケアカンパニーを中心に幅広く検討しましたが、最終的にジョンソン・エンド・ジョンソンに決めた理由は2つあります。
1つ目は、説明会や選考に進むたびに会社の魅力がどんどん見えてきたことです。ベビーオイルやバンドエイドの会社というイメージしかなかったのですが、医療機器や医薬品のビジネスをしていることや、研究開発に投資していること、社会貢献としてさまざまなプログラムを実施していることなど、企業活動の幅広さや企業理念をベースにすべての事業活動を行っていることに関心を持ちました。
2つ目は、内定者の集まりで出会った同期たちがとても優秀で、お互いに高め合っていけそうだと感じたことです。社員と接しても、自分の意見を自由に発言できそうな環境だと感じました。新卒で入社してから気が付くと15年、ジョンソン・エンド・ジョンソンに在籍しています。
入社してから現職に就くまでを教えてください。
最初に配属されたのは医療機器部門の営業でした。
当時の私は経験も専門知識もなかったので、元気さをアピールしていくしかないと思っていました。しかしあるとき、あるドクターから「あなたはケガや病気で苦しんでいる人を目の前にしても、そうやって笑っていそうだね」と言われてしまったのです。その先生が、私に何を伝えようとしてくださったのかを考え、初めて気が付きました。私が仕事をしている現場は医療の現場であり、今目の前にいるドクターやナースは手術で難しい症例に対峙した後かもしれない。患者さんのご家族に病気の告知をしてきた後かもしれない。そういう人たちの前で、私の元気さはどう映っていただろうか……。相手の立場にたった立ち居振る舞い・言葉選びを、もっと相手に寄り添った対応をしよう。これがその経験を通して私が得た学びであり、現在の仕事観にも通じています。
その後、社内公募制度で、新設のクレドー・オフィスへ異動を希望し、「クレドーを体現できる人を育てること」に従事しました。クレドーとは「我が信条(Our Credo)」のことで、ジョンソン・エンド・ジョンソンの価値観や行動規範を示したものです。クレドーに基づいたカルチャーを根付かせるべく、社員の教育トレーニングプログラムを開発したり、部署単位でクレドーに向き合う機会を設けたりしました。
その後人事部に異動になりました。途中、産休・育休を取得しながら、HRビジネスパートナーとして幅広くビジネスをサポートし、組織開発や組織カルチャーの醸成、タレントマネジメント、社員エンゲージメントといった戦略人事のエリアも経験してきました。現在は、北東アジアのコンシューマービジネスのHRヘッドとして、台湾、香港、日本、韓国の4カ国をみています。各国にHRパートナーがいますので、連携をして仕事をしています。
HRはビジネスと離れた存在であってはいけない
ジョンソン・エンド・ジョンソンのHRについて教えてください。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのHRビジネスパートナーは、以前は、採用、育成、労務対応、タレントマネジメント、カルチャー醸成、人事異動などの事務手続きまですべてをカバーしていました。しかし、体制が変わり、HRプラットフォームを導入しプロセスを最適化した上で、各分野において非常に専門性の高いCOE(センターオブエクセレンス)機能と、戦略的HRパートナーであるビジネスユニットHRが立ち上がりました。ビジネスパートナー機能を担うビジネスユニットHRでは、「組織のカルチャーをどうするか」「ビジネスを継続的に成長させるために組織をどうデザインするか」「主要ポジションの後継者となる人材をどう育成するか」「一人ひとりがいきいきと働ける職場をどうつくるか」といったことに対して、課題設定から始まり、プランニング、実践までを担っています。顕在化したニーズがなくても潜在的な課題や機会を見出し、提案することが求められますので、現在のビジネス理解はもちろん、将来の外部環境の変化も見据えながらビジネスリーダーに提案していく姿勢が求められます。COE部門にもその視点は必要で、ビジネスユニットHRと有機的に連携しながら、”One HR”として、ファンクションの垣根を越えてビジネスをサポートしています。
HRの仕事をしていくうえで私が大切にしていることは、ハートとハードのバランスをとることです。ハートとは、社員に寄り添う気持ちのことで、ハードとは、各種の人事データや社員サーベイ結果などを用いて組織を客観的に分析し、インサイトを見出すことです。社員との面談を通じてハートの部分で組織の温度感をはかりながらも、データもしっかり見ながらビジネスリーダーが客観的な意思決定ができるように働きかけています。
ビジネスリーダーや社員と面談をするときには、相手に対して多くの質問をします。相手が私の質問に答えているうちに自分の考えを整理できたり、会話のなかで新しい視点を発見したりして、はっとしたり、「わかりました!早速やってみます。」と言って帰ってもらえるのが、私にとっての理想の面談です。
報酬・報奨プログラムや福利厚生といった社員にとって魅力的な人事施策で社員のモチベーションを上げることも大切ですが、毎回の会話で一人ひとりの社員を元気にしていくこともHRの大切な役割だと考えています。面談の後、社員が「頑張ってみます!」と元気になって帰ってくれたとき、面談でキャリアについて話し合った後に自ら手を上げ海外のポジションをつかんで異動し活躍している社員を見たとき、「ああ、HRの仕事をしていてよかったな」と思います。
現場のビジネスに関わっていた人が人事に携わる利点を教えてください。
営業とクレドー・オフィスを経たことが顧客理解、社員理解を深めることにつながり、とても良かったと思います。チームの同僚を見ても、営業から異動してきているメンバー、元コンサルタントなど事業会社人事部以外での経験を積んできた仲間が増え、それぞれの経験や視点を活かして活躍しています。HRはビジネスに影響を与える存在でなくてはなりませんから、どういったことがビジネスにインパクトを与えるのかを実際に経験し、理解していることは強みになると思います。
9年前にHRの領域に異動した頃は、実はかなり劣等感や焦りがありました。HRの実務経験やバックグラウンドがなかったこと、子どもの保育園の迎えで早く帰宅しなくてはならず、他のHRBPの先輩や同僚が行っているようなインフォーマルな場での情報交換やネットワーキングもできず、成果があげられるだろうかと不安に思ったことがありました。しかし、その後上司となった人の仕事ぶりを見て、大きな気付きがありました。彼女独自のスタイルで周囲の信頼を勝ち得て成果を出しているのを見て、HRビジネスパートナーにもいろいろなスタイルがあっていいと思えるようになりました。勉強や研鑽は欠かしませんが、自分なりのスタイルでどうやってビジネスに貢献できるかを模索しようと考えるようになりました。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、そうした個々のスタイルや働き方が受け入れられ、尊重される職場であると同時に、HRプロフェッショナルとして成長するために質の高いトレーニングの機会を国内外で数多く提供しています。日々、フィードバックを求めたり提供したりすることが推奨されており、毎日が学びの機会ですので、HRの経験が浅くてもしっかり成長できます。
自分の考えをしっかり述べられる人に活躍のチャンスあり
御社の魅力について教えてください。
1つは、「我が信条」を真剣に実践しているところです。
弊社のクレドーは1943年に起草され、顧客、社員、地域、株主という4つの利害関係者に対する責任を明記しています。一人ひとりがクレドーに沿って意思決定をしようと動いていますが、クレドーは答えを直接教えてくれるものではありません。実際に様々な事象に対峙すると、上司や仲間と共にクレドーをベースに意見を交わしながら意思決定のプロセスを進めています。このようにクレドーは、会社として大切な部分がぶれず、絶えず適切な方向へと導く源泉になっています。
2つ目は、多様な人が自分らしく働き続けるためのサポートとカルチャーが整っていることです。働き方も非常にフレキシブルで、上司の許可があればwork from home(在宅勤務)が制限なしで可能です。さらに座席はHRも含めてフリーアドレスが多く採用されています。会社が社員を本当に信頼してサポートしてくれていると感じます。
どのような人がジョンソン・エンド・ジョンソンで活躍できますか?
自分でしっかりと考え、思っていることを発言することが求められます。
「私はこう考えています」と会議などのテーブルに載せることは、それだけで会社に十分貢献することです。様々な意見が出ることで新しいアイディアがうまれるのです。日本からグローバルで活躍できる人材を多く輩出したいと考えています。活躍の場は世界に広がっています。多様な仲間が働くグローバルな企業ですから、そのなかで自分の考えを伝えると同時にさまざまな価値観や意見を尊重し包括できるようなカルチャーを作っていける人をお待ちしています。
(構成 有留もと子)