マースをもっと働きがいのある会社にしたい、R&Dから人事にキャリアチェンジ
マースに入社するまでのご経歴を教えてください。
北海道の田舎に生まれ、高校から親元を離れて、男子校の寮で共同生活をしました。人間関係や協働について、多くを学びましたね。進学した北大でも友人に恵まれ、家庭教師などのアルバイトでも人間関係に恵まれました。高校・大学時代に、公平で対等な関係を数多く持てたのは、私にとって大きな財産です。
大学・大学院では、生物材料化学を専攻しました。研究室は企業との共同研究も行っており、大手外資系消費財メーカーの研究者の方も出入りしていました。こういう方と一緒に働きたいと思ったことが、この大手外資系消費財メーカーを入社先に選んだきっかけの1つです。また当時、私はその企業のシャンプーを愛用しており、この企業なら多くの方に喜んでいただける商品に関われる、という想いもありました。
大手外資系消費財メーカーでは、化学の知識を活かして、一貫して商品パッケージの研究開発に携わりました。業務範囲は広く、原材料の選定から、消費者調査、パッケージデザイン、工場での製造、サプライチェーンに至るまで、すべてに関わりました。さらに、ブランドの立ち上げやクローズ、海外工場の移転・集約といったことにも携わりました。開発者目線と消費者目線の両方を持ち合わせながら商品開発全体を見られる、多様な人とクロスファンクションに働ける仕事で、面白くてやりがいが大きかったですね。
マースに転職したのは、東日本大震災(3.11)の直後です。実はそのとき、私はシンガポールへの異動が決まり、移住の準備を進めていました。しかし、東日本大震災(3.11)を目の当たりにして、いまの日本から離れることはできないと思ったんです。タイミングよく、マースの面接を受けるチャンスを得て、話を伺ったら、私にピッタリだと感じました。直感・感性を大切に動けるマースの社風、ヒエラルキーが少なく、経営層も含めて全員がワンフロアで同じ大きさのデスクに向かっている環境、また、経営層が従業員と対等に話し合い、従業員の言葉に真摯に耳を傾ける姿勢を持っていることがステキだと思いました。冒頭で少し触れましたが、私は公平で対等な人間関係を理想と考えています。
さらに、副職OKなのも魅力でした。私は東日本大震災(3.11)直後から、アサーティブジャパンのトレーナーを始めていました。アサーティブとは、自分の気持ちや意見を、相手の気持ちも尊重しながら、誠実に、率直に、そして対等に表現することです。面接でアサーティブについて話したら、かつてのマース ジャパンの社長が「マース ジャパンはアサーティブさが課題だ」と伝えていたらしく、社内でどんどん広めてほしい、と面接者に言われました。自分の手で社内文化を変えられるのだ、と思ったことも、転職理由の1つです。
こうして13年以上働いた大手外資系消費財メーカーを離れ、私は2011年にマースに転職してきました。
マース入社後についても教えてください。
マースでも、最初の7年はパッケージの製造・開発(R&D)に携わりました。入社時は、ちょうどマース ジャパンがプロダクトアウトからマーケットインへとビジネスを変革するタイミングで、タイの協力工場との関係性を変えることが私のミッションでした。従来の少品種大量生産から、消費者ニーズに合わせた多品種少量生産に切り替えるために、イノベーションのペースを高めていきました。タイの皆さんと互いにリスペクトして深く話し合いながら、パッケージを含めた製品イノベーションを次々に起こしていきました。
2016年からはアジア リージョンのR&Dパッケージ マネジャーとしてアジア全域にチームを持って活動の幅を広げました。R&Dの仕事は楽しく、やりがいに満ちていました。ただ一方で、私は「日本の従業員として、マース ジャパン全体をもっと元気にしたい」「自分の手で社風を変えたい」「社内の全員とより深く関わりたい」という想いも強く抱いていました。マースでは人事部を「People & Organization」と呼んでいて、マースのビジネスに最適な人材を見つける重要な役割を果たすと同時に、従業員が専門的にも個人的にも学び、成長できる環境を整える役割も果たすため、私の想いを実現することができる部署だと感じていました。入社時から人事部にキャリアチェンジする可能性についても、能力開発の一部として上司や社内メンターとも相談していたこともあり、人事部のポジションが1つ空いたタイミングで、自ら手を挙げて、2018年に人事部に移りました。さらに2019年、社内公募で人事部ディレクターとなりました。
正直なところ、当時、私には人事の経験・知見が足りない点があり人事部ディレクターになってよいのか、という葛藤が大いにありました。その一方で、それまでR&D部門で経験してきた、新たな製品を生み出す際のプロセスやシステム、そして、何よりも重要視している現場感を人事のエリアでも生かすことができると確信していましたし、また、自分の強みである育成の分野、特にコーチングや上司部下のコミュニケーションの質の向上、組織内での学び合いやその共有といった具体的な取り組みを強化することで、会社をより働きがいのある場所に変えていけると感じていました。もちろんこれは私一人で成し得ることではないので、これまで以上に多くの人に助けてもらい、巻き込み、巻き込まれながら、現在進行形で実現に向けて一緒に取り組んでいるところです。
使命に向かって全社一丸となって進む「パーパスドリブン」の企業
マースの特徴について教えてください。
マースの最大の特徴は、世界80以上の国と地域で13万人以上が働き、全世界で350億ドル以上の年間売上高を上げるグローバルカンパニーでありながら、一方で「非上場のプライベートカンパニー」であり続けていることです。家族経営だからこそ、マースは中長期的戦略を柔軟に立てやすく、短期的な数字に基づく株主の意見に左右されません。私たちには、「私たちが望む世界の実現は、今日の私たちのビジネスへの取り組みから始まる」というマース全体で掲げる使命に加え、ペットケア事業部の「ペットにとってのより良い世界™(A BETTER WORLD FOR PETS™)」、スナック事業部の「おいしい時間が世界中を笑顔にする」という使命を掲げ、本当に実現したい未来のために全力を注げる環境があります。また、サステナビリティの実現にも本気で取り組んでおり、マースの事業活動の中で最大限インパクトを与えることができるエリアを、健全な地球、人々の繁栄、ウェルビーイングの充実と特定して持続可能な世界の実現を目指しています。マースは、使命を掲げ、それに向かって全社一丸となって進む「パーパスドリブン」の企業なのです。
また、マースでは、従業員のことを「アソシエイト」と呼びます。私たちは、全員が同じ価値観を共有し、使命を実現する仲間なんですね。入社して驚いたのは、皆がマースの価値観を示す「マースの五原則(品質・責任・互恵・効率・自由)」を本当に大切にしていることです。五原則が、日々の会話や会議のなかで当たり前のように使われています。価値観が全体に本当に深く浸透している会社です。
マースの使命について教えてください。
スニッカーズ®、M&M’S®、カルカン®、シーバ®、シーザー®、ニュートロ™など、マースにはよく知られたブランドが数多くあります。これらのブランド力をさらに高め、売上をアップさせることは、もちろん重要なミッションです。
しかし、私たちにとっては、ブランド力向上や売上アップと同じくらい、「使命(パーパス)の実現」が重要です。たとえば、ペットケア製品や取り組みを通して、ペットやペットペアレント(飼い主)にとってのより良い世界を実現すること。お菓子を通じて、世界中を笑顔にすること。また、温暖化防止対策や水資源保護などに力を入れて、サステナブルな地球環境をつくること。これらをグローバル規模で本気で達成しようとしています。
たとえば、実は、日本のペット寿命は世界でダントツに長いんですね。つまり、日本にはシニアの犬や猫が大変多いということです。シニアになると猫は舌の筋力も弱るため、成猫の時に食べていたフードを同じように食べることが難しくなることがあります。そのため、シニアになってもおいしい食事が食べられるように、ウエットフードに使用しているゼリーの固さを年齢に応じて食べやすいものを研究するなど、どのライフステージでも必要な栄養がおいしく摂取できるように工夫しています。これにより、シニア猫の幸せな生活も、また、いくつになっても愛猫がおいしそうに食事する姿を見る飼い主の幸せもサポートしています。私たちはこのようにして、ペットとペットペアレントの幸せを第一に考えてペットフードを開発しています。
意外かもしれませんが、ペットを取り巻く環境は、日本市場が世界の最先端を走っており、日本は世界中から注目の的となっています。実際、日本市場向けに開発したコンセプトや製品が、世界各国のマースの参考になることもあります。日本発、世界展開の製品が生まれることもあるという点も、刺激に満ち溢れた、やりがいのある職場だと思います。
また、スナックフード事業では、2020年、新型コロナウイルス感染症の治療や感染拡大防止に尽力されている医療従事者の方々へ、M&M’S®を57,600個提供しました。最前線の医療現場では、医師・看護師・病院スタッフの皆さまが、厳しい状況下で懸命に努力をしていただいていることから、M&M’S®をお届けすることで、ほんのひと時でも笑顔になるきっかけになってほしいとの思いからお届けしました。これからもお菓子を通じて人を笑顔にする機会を生み出す取組みをしていきたいと思います。
入社後は自分らしさを大切に、想いや考えを積極的に発信していただきたい
求める人材像について教えてください。
マースは、役割だけでは決して採用しません。「現時点で何ができるか」だけでなく、「今後マースで何を実現したいのか」「どうなっていきたいのか」を重視して、アソシエイトを採用しています。なぜなら、先に触れたとおり、アソシエイトは、使命を実現する仲間だからです。入社後は、昇格を目指したり、役割を変えたり、仕事の幅を広げたり深めたりしていただける環境もあります。私のように、研究開発のスペシャリストで入社して、後に人事ディレクターになっても全然かまわない会社です。キャリアチェンジのチャンスがあちこちに転がっています。
私としては、新たに入社する皆さんには、ぜひ「新たな見方」をチームや組織に提供していただきたいと思っています。マースのビジネスはおおむね好調ですが、好調時だからこそ、新しい視点をどんどん取り入れていきたい。入社後は、思ったこと、感じたこと、考えたことを積極的に発信して、自分らしさや自分だからこそ持っている発想を大切に共有し、貢献いただけたら嬉しいです。
人事戦略について教えてください。
いま私が人事ディレクターとして注力していることの1つが、「アサインメント」です。アソシエイト一人ひとりの能力を最も伸ばし活かすために、そして使命を実現するために、どのようなアサインをすればよいのか。私たちは、上司とともに、各個人のキャリアアスピレーション(次のキャリアへの意欲)を丁寧に聴く機会を設け、アサインメントを通してどのようにそのアスピレーションに近づくことができるのか、他者からどのように学ぶのかなど、個人の成長を多角的にサポートできるよう具体的なアクションを立て、その進捗を定期的に確認することで個人のアソシエイト一人ひとりの成長を支えています。
また、アソシエイトとの「エンゲージメント」も重視しています。エンゲージメントの一環として、私たちはいま、マース ジャパンの中長期目標をボトムアップで作り上げようとしています。使命達成のために大枠の方向性と戦略を立てた後は、各部署やチーム内でアソシエイト全員の意見に耳を傾け、個々人の想いを反映しながら、中長期目標が個人のアサインメントに紐づいていることを確認しています。アソシエイト一人ひとりがその紐づけを深く納得しているからこそ、全社一丸となって進むことができ、個人としても成長を実感し、他のチームとの共創のなか、新たな未来をつくることができるんですね。
他にも、マース ジャパンにはアソシエイト発信で生まれたものが数多くあります。たとえば、アソシエイトの家族をオフィスに招いて、さまざまなイベントを催す「ファミリーデー」は、アソシエイトのアイデアを会社全体で実現した例です。
コロナ禍で何がどのように変わったでしょうか?
2020年2月末から、私たちは、アソシエイトの安心安全健康を一番に考え、全員基本在宅勤務に切り替えました。その後、継続的にアンケートを取りながら、改善を進めています。アンケート結果も踏まえて、2021年以降も在宅中心で業務を行い、オフィスはコラボレーションやチームビルディングの場として活用していきたい、と考えています。製品見本を皆で確認しながら、新たなアイデアを生み出したり、チームでワイワイ話し合ったりするときに、オフィスを上手に使っていこうと思っています。
それから、実はコロナ禍中に社長が交代し、後藤真一が新社長に就任しました。彼はいま、アソシエイト全員とオンライン面談をしている真っ最中で、互いに元気を与え合っています。アソシエイトとの関係を極めて重視する新社長のおかげで、組織のエネルギーが高まっていますね。