人を育てながら、目の前にある一つひとつの仕事に全力で取り組み続けた
これまでのキャリアについてお聞かせください。
大学卒業後、数年働いた後に海外の大学院に進学しMBAを取得したいと考えていたので、比較的短期間でビジネスを叩き込むために外資系コンサルティングに就職しました。せっかくであれば、海外の仕事がしたいと考えて海外プロジェクトへの参加を希望し、最初に担当した大手外資系証券の案件で半年間フィリピンに行くことになりました。そこで担当した案件は、いわゆるデリバティブ取引の先駆けで、日本市場向けの現物株や先物株を売買するディーリングシステムの開発でした。クライアントの要望を元に、英語で書かれた仕様書を現地のスタッフにプログラミングをしてもらうのですが、私は日本で作成した仕様書に不具合があったときの調整を担当していました。文系出身だったこともあってITの知識はゼロ、加えてデリバティブ取引の知識もありませんでしたが、勉強すればするほどITと証券市場の仕組を理解することができ、それが面白くてどんどん仕事にのめりこんでいきました。
最初の案件が終わった新卒2年目のとき、新設部署として戦略部門と業務改革部門の部署を立ち上げるためのメンバーの社内募集があり、私は業務改革部門に参加したいと手を挙げました。今思えば、これが私のキャリアにおけるターニングポイントだったと思います。当時はちょうどバブルがはじけ、各業務プロセス抜本的に見直すためのBPRといった言葉が出始めた時代であり、インターネットを活用したeビジネスブームの波が迫ってきていました。そのような状況の中、業務改革部門では常に世の中の流れより一歩先を行くビジネスに取り組むことができたのです。大手通信会社の携帯電話事業の立ち上げ、インターネットサービスプロバイダの業容拡大、総合商社でのEコマース支援事業の企画など、「IT × 業務改革」の最先端事業に数多く取り組むことができました。結局、コンサルタントとして現在進行形のリアルビジネスに取り組むことの方がMBAよりも価値あるように思えて、留学はしませんでしたが、実際、MBAを取得するより多くのことを学べたと思います。
外資系コンサルといえば「アップ・オア・アウト(昇格か卒業か)」の世界とよく言われますが、私は、個人の売上や社内での競争をそこまで意識してきませんでした。私がプロジェクトを通じて得たノウハウや案件事例は積極的に社内に共有し、同様の案件が来たときには部下にもチャレンジしてもらえるようにしていました。そうやって人を育てておくことで、自分は次々に出てくる新しい領域、難しい仕事にチャレンジし続けることができる環境になっていきました。最終的にエグゼクティブパートナーとなり、ファーム経営に携わるようになりましたが、私個人に特に秀でた能力があったとは思いません。人を育てながら、目の前にある一つひとつの仕事に全力で取り組み続けたことが自身の成長に繋がったのだと思います。
少しずつ役職が上がる中で、任される業務はコンサルティングから徐々に組織のマネジメントへとシフトし、後に責任者としてCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)の部門の立ち上げを行いました。CRMとは、マーケティング、営業、カスタマーサービスなど顧客接点に関わるすべての業務を連携させることで企業と顧客との関係性を強化し、企業の収益や生産性の向上に直接的に貢献することを目指すものです。CRMの概念は昔からありますが、情報技術の進歩に伴い実現できる施策が年々と増加し、市場自体は今でもどんどん広がっています。CRM領域にどっぷり従事しながら、会社の中に新しい組織を作り育てていく、とてもいい経験をさせてもらいました。
業種・業界を横断的にカバーする日本最大のCRM部隊を目指す
その後、2013年に現在のアビームコンサルティングへ転職されました。外資系と日系のコンサルティングファームの違いはどのように感じられましたか?
大きなポイントとして3点あげられると思います。
まず、1点めですが、「人を育てる」風土が非常にしっかりしていることです。アビームでは個々人を育てることに注力しながら、それにより組織全体が成長していくことを目指しています。ですから教育・研修費の予算が各部門にしっかり割り当てられていて、計画的に人員育成をしています。単にEラーニングで自習しておけ、というだけではなく、各種の座学の研修プログラムが社内で年間を通じて実施されている上に、最新の事例が発表される外部イベントや社外研修にも日常的に参加してもらっています。また、私の部門では、お互いの経験が共有できるように、各プロジェクトの完了時、レポートをまとめ事例として共有することを奨励しています。月に2回程度行われる事例共有会や各種の勉強会は、特に若いコンサルタントには刺激の場となるようです。
次に、ワークライフバランスという点でもしっかりしていると感じました。産休・育休明けで子育て中の短時間勤務スタッフや、要介護のご家族の方がおり仕事ができる時間に制限があるスタッフの場合、通常のコンサルファームだと第一線からは離れて、バックオフィス等に異動する方が多いですよね。それをアビームでは本人が希望するなら、コンサルタントとして第一線で引き続き働いてもらっています。また、現場が好きなコンサルタントは、社歴が長くなっても現場の仕事に従事し続けてもらうことが可能です。アビームは個々人がどういう働き方をしたいのか、その希望を尊重し、誰にとっても働きやすい職場を目指しているのです。
最後に、これは意外かもしれませんが、外資系よりも日系の当社の方が海外に行く機会が多いことがあげられます。外資の場合は、各国のファームが独立採算制で運営しているので、海外の案件に直接携わる機会は意外と少ないんですよ。しかし、アビームは日本を本社として11ヶ国21拠点に展開しており、なおかつ海外拠点のマネジメントは8割が日本人です。これは、海外に進出している日本企業の中で、海外でも日本と同じように日本人のコンサルタントに日本と同等の品質で担当してほしいという案件が多いことが理由です。海外事業所での売上は将来的に日本と同等まで上げていきたいと考えていますので、海外で活躍したい方は、今が非常にチャンスだと思います。特に英語、中国語を活用したい方は、そのチャンスが存分にあります。
矢沢さんの現在のミッションについて教えてください
現在私が取り組んでいるのは、CRMサービスの拡充です。アビームは会計・経営管理、サプライチェーンなど、基幹系業務領域の改革が非常に強い会社です。それに加えて、CRMが企業の顧客接点領域の改革をしっかり強化することで、お客さまに質・量ともにベストのサービスをシームレスで提供することが可能となります。
業種・業界を横断的にカバーする日本最大のCRMコンサルティング部隊となるために、2020年までに人員・売上ともに毎年25%ずつ成長を続けるプランを遂行中です。CRMの改革の成功要因は、顧客接点に関わる領域の戦略、業務、システム、人・組織の見直しを整合を取りながら進めることです。ですから私たちは、一つの部門として包括的にサービスを提供することにこだわり、それを戦略として明確に打ち出しています。例えば、顧客接点の改革においては、オンライン、オフラインのメディア、ディバイス、チャネル毎にバラバラと打ち手を考えるのではなく、顧客の視点でそれらを連携させて考えていこうとしています。同様に、CRMの各プロセスも、変革対象も、個々に考えるのではなく、連携して考えることが重要になっています。他社では戦略、業務改革、システム導入、デジタルマーケティングなど、担当領域が細分化されていますので、クライアント企業のCRM改革に対応するために、それぞれの部門が専門性を持ち寄って対応することが多いですが、私たちは一つの部門として包括的にサービスを提供する方が、お客さまからも分かりやすく、質の高いサービスを提供できるし、従業員の成長度も満足度も高いと考えています。総合コンサルティング会社として、ブティック型のコンサル会社では提供できないような、幅が広くレベルが大きなサービスを提供することに注力する一方、競合他社との局地戦においても決して負けることがないように、メンバーたちは日々の勉強が欠かせません。
CRMへのあくなき探求心と「考え抜く力」があれば、業界経験は不問
この仕事で活躍できるのは、どんな人でしょうか?
まず、CRMのコンサルティングに強い関心があり、専門性を高め続けたいという明確な意志を持っていることが何よりも重要です。コンサルタントに必要とされるスキルや知識は、入社後にしっかり身に付けてもらうので入社時にはあまり問いません。それよりも「考え抜く力」「あきらめずにやり抜く力」といった資質がある方を求めています。この仕事は常に納期との戦いです。考えられる複数のプランのうち、どのプランが最適なのか。もしくは他に考えられるプランは本当にないのか。起こりうるさまざまな可能性をすべて考慮したか。その思考を経て「このプランが最適だ」と自信を持って理路整然とお客さまに説明ができるかが大切です。
逆に、「仕事」を言われたままの「作業」としてこなすようなタイプの人材は求めていません。お客さまから頂く金額は小さい額ではありません。その期待に応えるプロの改革請負人として仕事を任せていただくためには、お客さま以上にお客さまのビジネスの成功を考え尽くし、一つひとつの案件に誠心誠意取り組むことが求められます。私はそんな職人のような魂を持った人材を採用したいと考えています。
中途入社ではどのようなキャリアの方々が活躍されているのでしょうか?
意外かもしれませんが、中途入社されてくる方の中には、IT領域の知見がないメンバーも多いですし、まったくの異業界・異職種からの転職者も活躍しているんですよ。例えば、昨年30代半ばで日系の大手家電メーカーからシニアコンサルタントとして転職してきたメンバーがいます。企画系の経験があった彼には、少しタフそうなCRMの業務コンサル案件にチャレンジしてもらいましたが、彼はこれまで培ってきた段取り力、現場感、問題意識といったものをベースに見事にプロジェクトを完遂させました。彼もIT領域の経験はありませんでしたが、オムニチャネル化構想といったテーマの論点や要点を早々に理解し、クライアントに次々とアイデアを提案。1年足らずで早々にマネージャーに昇格して活躍しています。
ITの知識はどの程度必要ですか?
ITが嫌いでは困りますが、事前の知識としては必要ありません。その代わりにIT領域の知識がないメンバーにも、先進的な情報技術が経営改革にどのように活用できるのかは継続的に勉強してもらいます。自分でプログラムが書けるかどうかは重要なことではなく、「その情報技術はビジネスのどのような領域で役に立つのか」、また、「現在の技術ではどこまでができて、何ができないのか」を勉強することは勘所を掴めばさほど難しいことではありません。ツールについては使いこなすようになることよりも、むしろ「このツールによってAができるなら、応用してA´ができるのではないか」という発想力や、ツールの良し悪しを目利きした上でそれを分かり易く説明できる力、適用事例の応用力といったものを求めていますね。また、データを扱って分析することも必要なスキルとして勉強してもらいますが、単なる分析者になって欲しいわけではなく、そこでは情報を読み解いて施策に落とし込む力を磨くことを重視しています。
最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
CRM領域のプロフェッショナルを目指すなら、当社以上に幅広く深く経験できる会社はないと思います。部門全体では常に30?40のCRM系のプロジェクトが同時進行しているので、ひとつのプロジェクトが終了したとき、次にどの案件に携わるかは個々人のスキルや適性、それに興味がある領域を最大限に尊重してアサインしています。これも一定の規模があるからこそ実現できることです。
当社のコンサルタントは、間口を広く募集しています。先述の「考え抜く力」のようなマインドは非常に重視していますが、逆に業界経験はほとんど問いません。CRMの事業領域は非常に幅広いので、全領域をカバーした人材には、そもそも出会えないと考えています。その分、先に申し上げたように、入社後にしっかり勉強して経験を積んでもらえるよう、研修制度や勉強会を充実させるなど、「人を育てる」ことに徹底してこだわっています。そんな当社のビジネスに興味とやる気を持って挑んでいただける方には、ぜひ果敢に飛び込んできてほしいですね。