マイクロソフトのテクノロジーを中心に据えて、アクセンチュアのコンサルティング能力を活かしたい
これまでのキャリアについてお聞かせください。
大学を卒業後、団体系保険会社でIT担当としてキャリアをスタートしました。その後、外資系商社のIT担当を経て、1998年にアクセンチュアに入社しました。2002年に、アクセンチュアから新しくSIとものづくりに特化した、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズという会社が立ち上がり、そのトップとしてビジネスを軌道に乗せたあと、ITから離れてBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)事業を担当しました。様々な経験をさせていただきましたが、50歳を超え、今後はITの分野で自身のキャリアを活かし、培ってきたことを還元していきたいと思い、フューチャーアーキテクト社へ移りました。その後、アバナード前社長の石川敬氏から後継者としてお誘いを受け、非常に面白そうだと考え、お受けすることにしました。
アバナードのどのような点にもっとも可能性があり、面白そうだと感じられたのでしょうか。
アバナードはアクセンチュアとマイクロソフト(以下MS)の出資による戦略合弁企業として設立され、ソリューションの軸にMSテクノロジーを据えてサービスを提供しています。現在、多くのコンピュータ・ソフトウェア会社が、多様なソリューションを提供していますが、正直「圧倒的に優れたソリューション」というものはなかなかありません。例えば非常に優れたソフトが開発されたとしても、その良いところを真似る形で、他社もどんどん追いつき、追い越していきます。そうすると、よっぽど尖ったものがないと突出することはできない。そんな状況でMSは、世界最大という規模と実績によって、「ダントツではないが、正解に近い存在」と位置づけられます。様々なソフトが存在するなかで、何を使えばいいのか、と悩まれるお客様がいらっしゃったら、MSで間違いはないですよ、と確信を持っておすすめできる存在なのです。我々はMS製品に特化することで、「どこのソフトを導入すればいいのか」という議論に時間を割くことなく、ビジネスの方向性や具体的な問題解決方法という本来のニーズであるビジネスソリューションの“中身”の話にすぐに転換できるのです。これは、MSがコンピュータ・ソフトウェア業界で、一定の優位性を保っているからであり、我々アバナードにとって非常に大きな強みと言えます。
そしてもう一つ、オフィスと家庭生活、その両方で進化を遂げ、サービスを提供してきたのがMSだけだということも、優位性として挙げられます。現在、日本のオフィスで使われるPCの90%以上は、MSのOSを使っています。さらに、家庭生活にもPCがどんどん普及していっている。そうすると、オフィスで使うコンピュータと、家庭生活で使うコンピュータ、できれば同じデバイスで、同じように使いたいですよね? そのニーズに対して、他社に比べてMSは圧倒的な優位性があります。ウインドウズ8が売り上げを伸ばし、サーフェスが発売から間がないにも関わらず好調なのは、そういった部分が大きいはずです。
現代社会は仕事だけでなく、世の中や人生までもがコンピュータによって変わる時代です。オフィスのコンピュータが、パーソナルなコンピュータを浸食するスピードはどんどん加速するでしょう。そうなったときに、一番強くなるのはMSだと確信しています。
MSの強み、というお話が出ましたが、では、もう一つの出資会社であるアクセンチュアの強みはどんなところだとお考えですか。
やはり、圧倒的なコンサルティング能力ですね。量も質もそうですが、「お客様を変えるためにどうしたらいいのか」ということを、常に必死に考えているのがアクセンチュアです。確かな実績がありますから、「こうすればいい」だけではなく、「こうすればこのような結果につながる」ということを、事例を挙げてコンサルティングできることも強みです。説得力が違いますし、結果として、事業規模も急速に拡大しています。アクセンチュアの2002年時点の社員数は、全世界で7万5000人ほど。それが、2014年現在30万人です。信じられない成長ですよね。それだけ成長できた要因は、彼らが従業員の質にこだわり、ビジネスモデルの質にもこだわり続けてきたからだと思っています。そういう意味で、アクセンチュアから勉強する部分は非常に大きいです。彼らのいいところを吸収ながら、成長していきたいと思っています。
実は、アクセンチュアには「シックス・コア・バリュー」という社是のようなものがありますが、アバナードにも同じく「シックス・コア・バリュー」があります。そこで掲げられている考え方は、互いに尊重しあって仕事をしていくことだったり、クライアント・ファーストだったりと、どちらの会社もよく似ています。ただ一つ違うのは、アバナードには「パッション・フォー・テクノロジー」という言葉があることです。戦略コンサルティングを中心に据えるアクセンチュアに対し、我々はテクノロジーを真ん中に据えて、その周りにITコンサルティング、ビジネスプロセスコンサルティングがある。テクノロジーを会社の軸にしていることがアクセンチュアとの一番の違いであり、我が社のこだわりです。そうはいっても、我々は、コンサルティング会社です。そういう意味では、MSテクノロジーを中心に据えた、ミニチュア版アクセンチュアとも言えます。
集中と選択、そしてグローバル化が事業戦略のポイント
アバナードが目指すゴールはどんなところでしょうか。
MSやアクセンチュアが先導する案件と、アバナードがダイレクトに手がける案件、その両方を伸ばし、人員も売り上げも、3年後には飛躍的に増大させたいと考えています。現在、我々の市場における需要と供給は、明らかに需要が勝っています。「コンサルタント人数×単価」が我々の売り上げですから、そういう意味では、可能であれば際限なく人員を拡大していきたいくらいです。ただ、現在200人規模の会社が単純に新しい人を500人雇ったとしても、今ある秩序や体制が崩れてしまうだけで結果的に会社を大きくしていけません。お客様を幸せにしつつ、社員も幸せにしつつ、どのくらいのペースで規模を拡大していくべきか。それが今、我々が考えるべきことだと思っています。
会社を大きくするということは、社会に対する存在価値も大きくなるということです。世の中に対する影響力が強くなる。「あの会社が、あんな事業をやっているんだね」と言われるようになれば、それは世の中に意思を投げかけていることになります。そんな風に社会にアプローチすることを通じて、社員たちがやりがいとプライドを持って仕事ができる、そんな会社にしていきたいですね。そして、自分たちがワクワクするような仕事を職場に持ち込んで、かつ、それを十分に実現できるだけの実力を持った会社にしていきたい。そのために、人材やシステムを育成するためのトレーニングを行っていきたいです。
企業の規模拡大のための事業戦略をお聞かせください。
まず「集中と選択」で、アバナードに合ったお客様を見つけ、一緒にビジネスを成功させるというモデルを目指そうと考えています。アバナードの存在価値は、MSのテクノロジーを持ち、かつ、アクセンチュアよりもテクノロジーの最先端に敏感、というところにあり、常に新しい、最先端のテクノロジーやソリューション提案を行っています。そういうアバナードに存在価値を感じてくださるお客様と一緒にビジネスを伸ばしていきたい。アバナードが提供するシステムによってお客様の会社全体を包囲する、というと語弊があるかもしれませんが、社内の各部署でバラバラにいろんな会社のテクノロジーをお使いいただくのではなく、社内全体で一貫性のあるシステムをお使いいただく。そうすることによって結果的に、MSテクノロジーの総合的な効果を実感していただけると思います。
そして今後は、クライアント企業のIT担当者だけではなく、CEOやCMO、CSO(最高戦略責任者)に対しても、弊社のビジネスソリューションをアピールしていこうと考えています。我々の調査によると、企業のIT予算の37%が、IT部門以外で使われているという興味深い結果が出ています。つまり、企業のどんな部門でも、IT は業務の真ん中に据えられており、ITの価値は、IT部門よりも各部門のトップの方がよくわかる時代になってきているのです。さらにもう一つの調査によると、経営者が社内のIT担当に求めているのは、優秀なITブローカーである、ということです。なぜなら、ITの急速な進化に自社だけの経験で追いつくのは難しく、ITの専門家に委託するのは当たり前になっているからです。つまりIT部門には、テクノロジーの一番すばらしいソリューションをどの企業が持っているのか、それをきちんと把握したうえで、CEOやCMO、CSOが意思決定する際にブローカーとしての役割を果たして欲しい、ということです。従って、アバナードがお話をするべき相手は、IT担当だけではなくCEOやCMO、CSOということになる。そういう人たちに対して、よりよく話ができる人材を揃えていきたいですね。
グローバル企業としてのアバナードの強みはどんなところにあるでしょうか。
今日の社会において、企業が世界に市場を拡大していくことはあたりまえになってきています。従来工場拠点だったアジアが市場になる、ということも現実となり、すでに日本国内のマーケットでも、成長戦略が描けないと考え、グローバル展開を進めていらっしゃる企業がほとんどです。グローバル展開によってビジネスにどんな変化が起きるのかというと、従来必要とされてきた工場用のシステムだけではなく、営業管理や需要予測など、様々なシステムが必要になってきます。フル装備が必要になるのです。我々は世界中に拠点を持っており、その経験や知見、そして最先端のテクノロジーで多方面からお客様が世界に市場を広げていくお手伝いができるということは大きな強みです。
そして世界のどこかで考えられたシステムやソリューションを、日本のお客様のためにインポートして使うことができるということも大きな強みです。近年のボーダレス化は土地だけでなく、カテゴリーやインダストリーといった世界にも及んでいます。その中で、我々のように、世界中の仲間がお客様のために作ったシステムをいち早く導入し、日本のマーケットにしっかり適応させることができるというのは大きな強みだと考えています。
「パッション・フォー・テクノロジー」を軸にしながら、様々な能力を持った人々と一緒に働いていきたい
アバナードで求める人材像を教えてください。
一言で言えば、色々な人に来て欲しいです。その人の能力を両辺あわせて10cmになるTという文字で表現したときに、バランスよく両辺とも5cmずつ表現出来る人は、5cm×5cmとなります。ただ、その人間が1万人集まったとしても、企業の大きさは5cm×5cmのままだと私は考えます。しかし、1cm×9cmの人と、9cm×1cmの人が100人集まったとしたら、その会社の実力は9cm×9cmになると思うのです。アバナードが、独自にダイレクトなビジネスも伸ばしていくために、コミュニケーションがとれる人、ビッグデータの解析に優れた人や、プロジェクト管理の専門家など様々な能力に特化した人に来て欲しいです。ただ、「パッション・フォー・テクノロジー」を軸にすることは変わりません。テクノロジーという軸はしっかり持ちつつ、それを衛星的に、色々な専門家が支えていけたら良いと思います。
御社で活躍している方はどのような方がいらっしゃいますか。
例えば、ジャパナイゼーションラボの所長がいます。弊社では、海外の事例をただ日本向けに翻訳するだけでなく、日本の商習慣に合わせ、それをテンプレートにシステムインテグレーションしているのですが、ジャパナイゼーションラボとは、その研究や開発、展開をするための組織です。その部署の所長は、テクノロジーにすごく敏感で、新しいことをビジネスとしてドライブしていこうという視点をもっている人です。彼のような人材が、もっとも活躍しているタイプかと思います。
もちろん、まったく違うタイプもいます。例えば、SE出身でとにかく人懐っこくてお客様からの信頼も厚く、コミュニケーション能力が最大、という人材です。人に嫌われないオーラと、お互いのコミュニケーションに齟齬がないかを確認する術を持っています。コミュニケーション能力というのは、大雑把に人と仲良くなれる能力ではなく、相手が言っていることを正確に把握し、かつ、さらに間違いがないか、主語や熟語といったワーディングを駆使して、確認することができるということです。彼のこの能力は、システム作りで訓練されてきたと思いますよ。プログラミングは「言語」といわれるだけあって、論理的に考えることや、文章を書くことに非常に似ていますから。
経営者として経験を積み、さまざまな人を見てきて強く思うのは、やはり現場が大事だということです。大きなビジネスを仕掛けようとしたとき、いくら私が取引先企業のトップマネージメントと親しくなったとしても、10億20億の仕事をすぐにいただけるかというと、そうではありません。現場の人間がお客様に認めていただき、実績と信頼を積み重ねて、じゃあさらに大きな案件やろうかと進んでいくのです。色々な能力のある人材をお客様と引き合わせていくことで、一人のお客様から、また一つの企業から、様々なご相談をいただけるようになっていくのです。
最後に、御社への転職を希望する方へメッセージをお願いします。
これまでの人生経験で、何か一つでも自信を持っている方に来て欲しいですね。自信を持ちそうになっている、という方にもチャレンジして欲しいです。私が一つお約束できるのは、アバナードはこれからも、非常にエキサイティングな仕事を作っていく、ということです。弊社に来られた方には、そういった仕事に携わっていただける道を作る自信があります。やっぱり私は新しいテクノロジーが好きです。新しいビジネスを醸成創出して、お客様を引っ張っていきたいという思いがあります。
そのためにはIT野郎ばかりではダメなので(笑)、色々な力を持った、色々な人に入っていただいて、色々なことをやりたい。それが私からのメッセージですね。