国内MBA取得と米国留学の意図
「非常に恵まれた環境で、良い経験も積ませて頂き、不満はなかったのですが」
高林さんは、五年間の商社時代をそう振り返る。国際ビジネスを志して就職したが、自分が成長するための根本的なビジネススキルを身に付ける必要性を感じた。それがMBA取得に踏み切るきっかけだったという。
「国内と米国、どちらでMBAを取得するか迷ったが規模的に小さく、尊敬できる教授陣と密に交流ができるという理由で一橋大学大学院に進み、企業戦略論を専攻した。
MBAホルダーは、学位取得後即就職という道を選択する者がほとんどであるが時期はおりしも97年、シリコンバレーが最も沸き立っていた頃である。次々とニュービジネスがゼロから隆盛し上場していく経緯は、日本国内では当時まだ見られなかった。高林さんは、MBAは既に取得していたので、UCバークレーのエクステンションコースに留学し、シリコンバレーのビジネスを実体験する決心をした。
シリコンバレーでビジネスに参加するには、エクステンションコースは非常に便利なプログラムである。各授業を受講した後に出される認定証が、インターンへの切符になるからだ。 高林さんは米国滞在中、ビジネスを行うには自分の専攻以外に会計、テクノロジー、そして英語のスキルは不可欠だと確信した。 そのため国際ビジネスと情報システムのプログラムを半年ずつ受講し、加えて在学中に米国公認会計士試験に合格した。プログラム修了後、サンフランシスコでベンチャー企業専門のコンサルティングサービスを行うため起業した会社でインターンを経験した。
何を学んだか
「雰囲気のオープンさ、日本企業とのスピード差、パワフルな仕事振りは圧巻でした。」 何より刺激となったのは、閉鎖された「コネ」のような相互関係とは全く違うレベルの、オープンな人的ネットワーク社会がビジネスを支えていたことだ。やる気と能力さえあれば、他国からの参入者でも信用できるプロとして互いが紹介しあう。
当時シリコンバレーのベンチャー企業が注力していたのはB to Bテクノロジー。「この時期にITを駆使した企業間取引を学べたのはラッキーだった。」と高林さんは言ったが、まさに「ドットコム」の名がつく企業には惜しげなく資金が投資された成長期に参入し、2000年前半を境にまったく逆に転じたマーケットクラッシュの渦中にいて色々と考えさせられた事も事実である。それまではインターンから正社員として採用されるケースが非常に多かったのだが、市場縮小と同時に人員削減が行われ、高林さんの正社員採用も実現せず、米国の徹底した市場主義の厳しさを実感したと言う。
「しかし米国の場合は、新興ビジネスの興亡の経緯を経てもなお、『エンジェル』は存在し続けるのです。彼らは、若い頃自らベンチャービジネスを成功させた経験を活かし、次世代の起業家を支えるという目的の為に投資活動を行っている人々です。」 成功者から成功予備軍に機会が循環する社会では、能力が最大限発揮できるなら、働く場所はどこでもかまわない、というチャレンジングな発想が生まれる。
「自分のスキルを発揮できるポジションがあればどこにでも行く。東京をベースにしても、しなくてもいい。そう思えるようになりました。」
帰国と就職活動
しかし、その翌年に高林さんは東京に帰ってきた。きっかけは、シリコンバレーで度々耳にした米国人たちの発言だった。「日本企業から勉強することはもう何もない」グローバルスタンダードと賞賛されてきた日本が、気が付けばITの分野に遅れをとり、深い低迷の中から抜け出せないでいた。 日本に対するその評価を聞く度に悔しく思い、日本企業に貢献したいという思いのもと、帰国を決意した。 留学帰国組にとって、就職活動には多くの壁がある。情報収集の難しさ、面接をアレンジする時間とロスだ。
「まずは信頼関係のおける、良質な情報を持つ方を探すことから始めました。時時間的な制約が大きかったからです。同じ企業でもポジションがちょうどいいタイミングで空くか不確実である反面、自分の情報を提供しなければなりませんので信頼できるパートナーが必要だったのです。インターネットでは情報が分散しすぎて網羅的に当たれませんし、ヘッドハンティング会社はクライアント寄りの傾向があると聞いていました。ISSサービスセンターの場合は、年2回米国でキャリアップ個別面接会を実施していて、人材紹介コンサルタントの方と事前にお会いする機会があり、安心して任せられると判断しました。また、応募者の意向・キャリア重視でポスト情報を収集してくれた上に、帰国スケジュールに合う様、面接アレンジを代行してくれましたから、手間もかからず、本当に助かりました」
コンサルティングファームを志望した理由、そして面接
日本企業に貢献する意図で帰国したが、高林さんは、グローバルコンサルティングファームの一つ、PwCコンサルティングに入る道を選んだ。
「一般企業に入ると、その企業自身が変わるべき方向への変革を拒んでしまうリスクがあります。一方、コンサルティング会社は、企業を変革することにミッションがあります。それが選択した1番の理由です。」
コンサルティングファームの面接は、単に自信を持って「できます」というだけで雰囲気作りができてしまう甘さはない。自らのスキルとコンサルタントとしての目指す方向性を互いに確認していくので、とてもハードだったという。また、採用が決定される意思決定の速さは、一般企業と明らかに違った。6?7人面接してさらに一週間は結論を待つ、という状況では、米国にもう戻ってしまう。帰国組にとって、このタイムラグは非常に手痛いのだ。PwCコンサルティングの現場責任者が、米国出張の際に時間を割いて意思確認に丁寧に対応した点も、コンサルティングファーム選びの決め手となった。
現在、高林さんは、ERPを導入してクライアントの業態変革、業務プロセスの改善を実施するプロジェクトに携わっている。そのプロセス中の最初のステージである顧客の現状分析をする仕事だ。
「プロジェクトのチームメンバーが、各々のスキルをニーズに合わせて提供し、タスクを遂行していくところに醍醐味があります。日本企業にある’なあなあ’感がない。結果で評価されるということは、ロジカルに一人一人がタスクを貫徹させてゆけば、自ずと自らのスキルアップが、そのままキャリアアップへとつながってきますよね。」
キャリアプラン
自分からのキャリアプランに対して明確な目標を毎年設定し、その為のトレーニングも充実している環境が整うPwC コンサルティング。又、充実したデーターベースを始めとした、社内外の情報ソースを活用する事で、従来の情報検索の時間が短縮され、自らは創造的な活動に専念できるので、創造できる付加価値が違ってくる。特にPwC コンサルティングでは、世界中の同ファームのどこにどんなキーパーソンがいるか、ナレッジを網羅的に把握し、アクセスすれば適宜答えてくれる専門の「ナレッジポイント」というポストがあり、その分野のエキスパートへのナビゲーションをしてくれる。 「PwCコンサルティングという企業自体がいまだもって成長し続けているので、可能性は無限です。」
結果を出せなければ評価されない、つまり自分のバリューを常に意識し、認識し、実現し続けるというサイクルがある。「その循環を10年間ぐらいで作っていきたいですね。」と、高林さんは語る。