キャドバリー・ジャパンの科学技術本部についてご紹介ください。
科学技術本部(S&T)はいわゆる研究開発部門ですが、キャドバリー・シュウエップス・グループではすべての国において、科学技術(Science&Technology)という名称で統一しています。
S&T(科学技術本部)の組織は現在、レシピなど製品の中身を担当する製品開発グループ、パッケージや生産技術などを考える技術開発グループ、品質管理を担当する品質保証グループ、そして、それらをサポートする法規学術グループに分かれます。
製品開発グループはさらに担当するブランドにより2つに分かれ、私が所属する2グループは、「ホールズ」「ホワイティーン」「メントス」などを扱っています。 当社は“Working better together to create brands people love”という目標を掲げ、ファンクショナル・ベネフィットを軸にしたブランド価値の維持、強化に全社を挙げて取り組んでいるところです。
その中でS&T(科学技術本部)の使命は、「革新的な価値を生み出すこと」にあります。当社では製品ブランドの数はあまり多くはありませんが、ひとつひとつのブランドを非常に大切にしており、そこに新しい機能、コンセプト、味など新しい価値を付け加えていくことが求められているのです。
日本に研究開発部門を置いている目的と重要性についてお聞かせ下さい。
キャドバリー・シュウエップス・グループでは、それぞれの地域、それぞれの国で、消費者をよく観察し、何を求めているのか、どういうフレーバーが好まれるのかなどを綿密に調べて、製品に反映させています。そのため、主要市場には必ずS&T(科学技術)部門を設けているのです。たとえば、同じ「クロレッツ」というブランド名の「ペパーミントフレーバー」でも、各国の嗜好にあわせて味は異なります。
また、グローバル・カンパニーであるという強みを生かして、各S&T(科学技術)部門は各国で開発された技術を相互に取り入れ、それぞれの市場にあう製品を開発しています。例えば、日本で最初に再石灰化の機能を持つガムとして「トクホ」(特定保健用食品)の許可を取った当社の「リカルデント」は、オーストラリアのメルボルン大学の教授が開発したCPP-ACF(※)という機能性素材に、キャドバリー・シュウエップス・グループのアメリカ中央研究所が着目し、共同で基礎試験や臨床試験をおこないました。リカルデントは、その成果を世界で最初に日本に導入した製品です。
※牛乳由来タンパク質の分解物であるカゼインホスホペプチド(CPP)と、非結晶性リン酸カルシウム(ACP)の複合体。カルシウムとリンを高濃度で歯に供給することにより、歯の再石灰化を促す。「フッ素」や「キシリトール」とは異なる新しいアプローチで注目されている。
新商品を開発するプロセスは、どのようになっているのですか。
まず、マーケティング部門が消費者の動向を観察・調査し、データにまとめます。それをもとに、マーケティングとS&T(科学技術本部)が一緒になって商品の基本コンセプトを決めます。
次に、S&T(科学技術本部)の担当者が「こんなフレーバー、こんな特徴のある製品」というイメージを固めて、それをレシピ(処方)にまとめます。
そこから先は、トライ・アンド・エラーです。原料の配合を少しずつ変えたり、新しい材料を加えたり、フレーバーを少し変えてみたり、経験上、だいたい 50回ぐらいレシピを調整すると、基本的なものが出来上がってきます。また新しい製法で作る場合は、パイロットプラントテストや工場テストも繰り返し行います。途中でマーケティング担当者の意見なども聞きますが、製品仕様に関する最終的な判断は開発担当者に任せられています。
試作品が出来ると、社内全体での評価を行い、さらに一般消費者のモニター評価というプロセスを経て、製品となって市場に出て行くのです。
このお仕事で難しい点、やりがいはどこでしょうか。
ガムやキャンディは嗜好品であり、最近でこそ機能性が重視されますが、基本はやはり味や香りです。ですから、開発担当者にはサイエンティフィックなベースとともに、味や香りに対する感性が求められます。特に日本での製品開発は、味を含めた処方づくりにおいて、最終的には実際に人が味わって評価をする官能評価に依る部分も大きいので、ただ分析していればいいというわけにはいきません。
もうひとつは、決断力です。製品開発における最終判断を任されているので、特に技術的な革新を行う製品開発の場合などは難しい決断を下さなくてはなりません。
消費者の嗜好は多種多様ですが、その中で、各新製品に期待される製品の大きさ、甘み、酸味、硬さ、味の強さ、味の出方など、いくつもの項目の製品規格を決める必要があります。自分が担当したその製品が消費者に受け入られるかどうか、発売まではとても不安ですが、その一方、結果として多くの方に好まれる商品に仕上がると、仕事のやりがいを強く感じます。
海外へ出かける機会は多いのですか。
最近、日本以外での仕事がすごく増えてきました。例えば、アメリカには、ガムを中心に研究している中央研究所があり、イギリスには基礎研究所があります。グループが保有する海外の研究施設に出かけて、プロジェクトを一緒に進める場面が増えているのです。
また、キャドバリー・シュウエップス・グループではアジア・パシフィック地域を1つのビジネスのレジョンと考えていて、シンガポールにはレジョンの本部と研究所、中国とタイにはそれぞれ研究所と工場があり、そうした拠点との行き来や、テレビ電話会議は日常茶飯事になっています。
海外との行き来が多くなると、英語は必要不可欠ですね。英語はどのように身につけられたのですか。
転職前、英語文章の読み書きや外人と接する場合、辞書を持たずして、うまく対応できませんでした。ところが、入社して2ヶ月後、海外出張を命ぜられ、1人でイタリアの工場へ新製品の立ち上げに行きました。当時は外国人とうまく会話ができませんでしたが、技術的な内容であれば、身振り手振りで何とかなりました。伝えよう、聞こうという意志があれば、意思疎通が図られるものです。
その後、会社で英語のトレーニングを受けることもありましたが、仕事の中で日常的に英語を使う機会がありますので、英語はそのOJTで少しずつ身に付くものだと感じています。英語アレルギーがなく、勉強しようとする意欲があれば、全く問題はありません。
榎本さんのプロフィールについても少し教えてください。
私は大学で農芸化学を専攻し、食品化学・微生物学を学びました。その当時、食品メーカーとの共同研究を行い、食品業界に魅力を感じていましたので、卒業後は国内系の菓子メーカーに入社しました。
国内メーカーに入社して最初の数年間は、工場配属となり、チョコレート・タブレット等の新製品の量産化および品質管理の仕事を行いました。その後、研究所へ異動し、約7年間、キャンディー・チューインガムの新製品開発を行いました。工場と研究所の仕事を経験することにより、自ら創出した新製品を消費者のみなさまに味わっていただける喜び、試行錯誤を重ねながら、その製品を効率良くラインで作り上げる喜びを味わうことができました。この両部署で得た知識や経験は、今でも仕事を進めていく上で、とても役立っています。
キャドバリー・ジャパンに移ったのは3年前です。転職した理由は3つほどあります。第一に、キャドバリー・ジャパンの商品は他社から見ても技術的に魅力的なものが多く、そのような商品開発の仕事をしたかったこと、第二に、グローバルに展開する企業で活躍し、自らのキャリアアップを図りたかったこと、第三に、国内メーカーに比較して自由な環境で仕事を進めることができそうだと感じたことです。実際にキャドバリー・ジャパンはこのような希望に適う会社でした。
現在、S&T(科学技術本部)で募集されている職種を少しご紹介ください。
ひとつは、製品開発チームの担当者です。先ほど申し上げたように、製品のレシピ(処方)や製造技術を完成していくのが主な仕事で、味や香り、さらには機能性などについてクリエイティビティが求められます。また、実際はマーケティング部門や工場などと協力して進めなければならない部分も大きく、プロジェクトマネジメント的な能力も不可欠です。
これまでガムやキャンディの開発をやってこられた方なら問題ないでしょうし、そうでなくても農学系や薬学系のバックグランドがあって食品関係に携わっていた方ならすぐ慣れると思います。
もうひとつは、パッケージや生産技術などを責任範囲とする技術開発チームの担当者を募集しています。ガムやキャンディは中身とともにパッケージが非常に重要です。店頭でいかにターゲットとする消費者の購買意欲をそそるか。デザインはマーケティング部門や広告代理店から案が出てきますが、最終的に材質の選択、包み方、そのための包装機の設計などまで担当するのは技術開発チームの責務です。また生産技術に関しても、どんな新しい機械があるのか、それをどう使っていくのか、生産技術上のポイントは何かなど、製品開発の初期段階から主要チームメンバーとしてプロジェクトに携わることになります。
最後に、応募を希望する方たちへのメッセージをいただければと思います。
いずれの職種も、変化を求めない人では難しいでしょう。職人気質のスペシャリストというよりは、ジェネラルに仕事がこなせて、リーダーシップを取ることもできるような方が向いているし成功すると思います。
キャドバリー・ジャパンでは、自分の能力を常に高めるよう挑戦していく姿勢が重要です。一人ひとりの社員に求められるものは高く、みんなそれにチャレンジしています。
その分、目標に向かって前向きで、自分が成長することで会社にも貢献していこうという気持ちを持っている人なら、非常に遣り甲斐があると思います。また、外資系ですから、世界中の様々な国のスタッフと交流する機会があり、海外にもキャリアの可能性は大きく広がっています。
有難うございました。