INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
メルセデス・ベンツ日本株式会社 河野 綾

グローバル企業人事が語る PHILOSOPHY vol.02

メルセデス・ベンツ日本株式会社

1886年、世界で初めて自動車を作ったメーカー、メルセデス・ベンツ グループ。現在世界37カ所に現地法人を持つリーディングカンパニー。自動車文化を黎明期から育て、世界初のセーフティーシャーシ(1951年)、 アンチロック・ブレーキシステム(1978年)、SRSエアバッグ(1980年)など、現在の車に欠かせない安全技術を生み出してきた。2013年には完全自動運転実験に成功。市場が許す限り、2030年を待たずにEV(電気自動車)オンリーへと移行する準備を整えることを宣言し、自動車業界をけん引している。日本法人の設立は1986年。国内で乗用車の輸入・販売を手掛け、日本独自の広告・マーケティング戦略やショールーム開設などにより、2015年以来7年連続で日本国内の輸入車販売台数ナンバーワンを誇る。

河野 綾人事部 部長

米国ミシガン州立ウエスタン・ミシガン大学を1995年卒業。1996 年メルセデス・ベンツ日本に入社。技術部、販売店部、営業部、広報室(室長)を経て、2019年より現職。



公開日:2022年9月26日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

philosophy02_02社内公募制度を活用し、キャリアを形成

メルセデス・ベンツでのこれまでを教えてください。

学生時代アメリカの大学に留学し、多様性を体感しながら学びました。多様性は今も大切にする価値観です。その後、メルセデス・ベンツ日本に第二新卒で入社し、様々な部署にて経験を積みました。最初に配属された技術部に3年、次に販売店部に10年(途中、産休取得)、それから営業部の3年を経て、広報にて7年半務めました。2019年から人事部 部長を担当しています。

最初に配属された技術部では、海外技術文献の日本語翻訳のディレクションを担当しました。周囲の力を借りながら翻訳精度を高め、でき上がったら全国の正規販売店に展開する仕事です。当時は自動車のことが本当に何も分かりませんでしたが、周りの先輩方がボランタリーで一生懸命育ててくれました。必死に取り組んでいたら、あっという間に3年が経っていました。

その後、自分がさらに活躍できる場所を探して、社内公募制度を活用しました。メルセデス・ベンツ日本は、1998年から社内公募制度を導入しており、私は2人目の利用者でした。移った先は販売店部です。そこから10年、全国の正規販売店の月次決算の集計・レポート・分析を行いました。加えて、日本会計基準の決算報告値を、自動的に国際会計基準に変換する「新経営管理システム」の開発にも携わりました。当時の私は会計知識もITスキルもなかったので、グロービスで管理会計を学び、システム開発のことを自学自習しました。

この仕事で特に良かったのは、販売店経営者の皆さんと直接お話しできたことです。一つひとつの販売店の経営状況を事前によく調べて、地域特有の課題は何か、採用に困っていないか、といったところまで踏み込んで考え、「こうすれば売上が増える可能性があります」「こうしたら経費を抑えられます」と具体的に提示する。そこまでやると、若い私の話でも、経営者の方々が信用してくださいました。10年間で多くの経営者と会い、経営の勉強ができました。私にとって大きな経験でした。

ところで、私が入社した当時は、1997年にSLKを日本で発売し、1998年にAクラスを発売した頃でした。”黒塗りセダン”のイメージからスポーティな路線へと変更し始めたときに入社したのですね。その後、私が販売店部にいた10年のうちに、モデルラインアップをどんどん増やしていきました。そして2009年頃から、ショッピングモールで展示会をするなど、お客さまとの新しい出会いを探すチャレンジを始めました。私が営業部に移ったのは、そのときでした。

営業部では3年働き、年間40回の地域営業会議を企画・実行したり、静岡県のエリアマネージャーを担当したりしました。地域営業会議とは、経営陣、マーケティング責任者、商品企画責任者、ファイナンス責任者などが各地域に赴き、各地域の販売店経営者と意見交換をしたり、チャレンジや課題について話し合ったりする場です。営業部の仕事は、販売店部での経験も活かすことができ、やりがいもあり楽しかったのですが、当時の社長から指名を受けて、2012年に企業広報課マネージャーに就任しました。私のキャリアがまさにそうですが、弊社では様々な部署で経験を通じて成長するという、長期視点での人材育成をしています。

philosophy02_03ビジネス戦略と人事戦略の根底にあるPHILOSOPHY

広報時代に大きなチャレンジをいくつも遂行したと聞いています。

2012年、以前の私の上司だった上野金太郎が新社長に就任しました。そこから私たちは、一気に「攻めの広報」に舵を切りました。メルセデス・ベンツをもっと知っていただくために、ありとあらゆるチャネルを使おう、という戦略です。商品に絶対の自信があるからこそ、ブランドの展開に傾注し、ベストを尽くすチャレンジが推奨されました。

たとえば、ゴルフやトライアスロンなどのスポーツ支援のほか、新進気鋭のファッションブランド、さらにはビールや化粧品など、全くの異業種ともコラボレーションし、一緒に広報に取り組みましたね。いずれも、自動車の記事があまり載らない、幅広いメディアに取り上げていただくための戦略です。また、モデルごとの特徴や魅力を伝えるため、新車発表会の場所や演出にもこだわりました。開通前の東京外かく環状道路のトンネル内に設けた特別会場で発表会をしたり、大井競馬場で「メルセデス・ベンツDAY」を開催したり、いち早くプロジェクションマッピングを使ったり。私は観劇が趣味なので、舞台演出からの学びを活かしました。

中でも大きい仕事は、民間企業として初めて、赤坂迎賓館でイベントを開催したことです。赤坂迎賓館は国が管理する建築物ですから、交渉や配慮が多岐にわたり、本当に大変でした。その分だけメディア露出も多く、たくさんの来賓の方々が来てくださって、大きな話題となりました。私たちも社員総出でイベントに対応し、全社で力を合わせて成果を出すことができました。忘れられない思い出ですね。

以上を踏まえて、メルセデス・ベンツの人事戦略を教えてください。

私が人事部 部長として最も大事にしているのは、「ビジネス戦略と人事戦略を合致させること」です。上野をはじめとした経営陣と頻繁にコミュニケーションを取りながら、事業の方向性に合わせた人事戦略を実行するようにしています。

メルセデス・ベンツ日本は300人ほどの組織ですので、一人ひとりがキープレイヤーです。自ら考え、話し合いながら、全員でベストをつくっていくことが求められます。私たち人事部は社員がモチベーション高く働けるように常にベストの労働環境、ベストの採用を追求しています。特に採用に関しては、ベストマッチ・ベストフィットを追求しています。また、上野は日本独自のビジョンとして、「最も愛されるブランドへ」を掲げました。そのために何ができるか、ということも重視しています。

コロナ禍での具体的な施策を教えてください。

コロナ禍でのベストの労働環境づくりは難しい課題でした。ただ、以前から実現したかった「リモートワーク」と「ハイブリッドワーキング」が、むしろコロナ禍で苦労せずに実現できたのは望外でした。事前に準備していたこともあって、2020年4月、全社で速やかにリモートワークに舵を切ることができました。

最初の頃は、一定数の社員がリモートワークによって孤立感や疲労感を覚えていましたが、人事と周囲が個別にサポートし、問題を解決していきました。たとえば、ある新入社員には、いったん実家に帰って働いてもらいました。彼にとってはそれが「ベスト」だったからです。当時は彼が特例だったのですが、現在はガイドラインを変更して、全社員国内ならどこで働いてもよい、というルールに変えています。

2022年4月からはハイブリッドワーキングを本格導入し、オフィス・自宅のどちらでも自由に働けて、一人ひとりがベストな働き方を選べる仕組みを整えています。自宅で働けば、通勤時間をプライベートの充実に充てることができます。私たちは、社員一人ひとりが良い仕事を実現するために、家族や趣味や勉強にも多くの時間を使ってもらいたいのです。個人ワークに集中したいときなども、自宅勤務は有益ですよね。

ただ一方で、オフィス出社のメリットもあります。第一に、難しい課題をディスカッションするときは、全員でオフィスに集まって話すほうがよいことが分かっています。周囲に意見を促しやすく、活発な議論となりやすいからです。第二に、オフィスには「偶然の出会い」が生まれます。偶然出会った人との立ち話やランチなどから得る情報が役に立つことはよくあります。第三に、皆がオフィスで働くことで、会社の「カルチャー」ができ上がっていきます。このために、私たちはいま、オフィス勤務も推奨しています。

もちろん、出社を強要することはできません。しかし、できることなら、全員に一定の割合で出社してもらいたい、というのが人事部の願いです。なぜなら、自動車業界は大変革期にあり、私たちメルセデス・ベンツも、電気自動車への移行、そしてそれに伴うブランディングや新しい販売方法の検討など、大きなチャレンジに向かっています。そういう時期だからこそ、オフィスで深く話し合い、新たなカルチャーを醸成する必要があるのです。

社員の皆さんにそのことを理解してもらうため、人事部はこれからマインドセットのためのトレーニングイベントを開催します。商品を知り、ビジネスの方向性や戦略をできるだけわかりやすく説明し、会社全体で全員が同じ目線で考え、会社の一体感やチーム感を生み出すためのイベントです。全員でチームとしてベストを尽くして「最も愛されるブランドへ」向かうために欠かせない施策だと考えています。

philosophy02_04昔も今も重視する人材の「誠実性」

メルセデス・ベンツの人事の特徴を教えてください。

メルセデス・ベンツはグローバルカンパニーです。ビジネスは当然のこと、人事的にも常に日本と世界の両方を見ています。特に大切なのは「多様性」です。ビジネスでは、日本マーケットに固執せず、世界マーケットの動きを包括的に捉えながら、グローバルと連携して動いています。

ですから、私たちは「インターナショナルエクスチェンジ(国際異動)」を重視しています。日本法人には、外国籍社員が常に一定数在籍しています。反対に、日本からドイツ本社や各地へ移ることも奨励しています。コロナ禍では難しかったのですが、これからは国際異動も積極的に推進します。

また前半でも触れましたが、私たちは1998年から「社内公募制度」を行っており、いまやすっかり定着しています。現在、異動の約90%は社内公募制度で行われているほどです。誰もが自分で手を挙げて異動する文化があります。さらに最近、人事部では「自分のキャリアパスは自ら考えてください」とメッセージを出しています。スペシャリストを目指しても、マネージャーを目指してもいい。大事なのは、自分で決めることです。人事側はキャリアの推奨や支援はしますが、社員のキャリアを決めつけることはしないと決めています。

ただし、マネージャーのローテーションだけは話が別です。チームの多様性を高めるため、社内の風通しを良くするため、マネージャーやチームの成長につなげるため、横の連携を増やすために、マネージャーは定期的に異動してもらっています。

私たちにとって、異動は重要です。なぜなら、私たちはこのブランドで長く働いてほしいと思っているからです。メルセデス・ベンツには約135年の歴史があり、理解には長い時間がかかります。ブランドの発展・維持のために尽力した人たちの積み重ねがあります。複数ポジションを経験して視野を広げ、そうしたことがようやく見えてきます。たとえば以前、広報のスペシャリストを目指す若手社員が、5年ほど営業などのビジネス部署を経験して戻ってきました。それによってブランド理解やビジネス理解が深まり、仕事の仕方が変わり、人間関係も広がりました。私自身もさまざまな部署を経験してきましたから、ローテーションの大切さをよく実感しています。人事部 部長の今、私のこれまでの全経験が役立っています。

どんな人が活躍できる会社ですか?

スキルとしては、全体的には英語力は必須、加えて電気自動車やデジタル領域における経験などの価値が高まっています。ただ、そういうこととは別に、人材の「誠実性」を最も重視している、という面では、昔も今も一切変わりません。私たちのビジネスで最も重要な取り組みの1つは、アフターセールスです。不具合時の対応が、お客さまにブランド価値が最も伝わる瞬間です。だからこそ、誠実な対応が極めて大切です。不誠実な対応一つで、ブランド価値が壊れてしまうことがありうるのです。

それから、メルセデス・ベンツ日本は300人ほどの会社ですから、一人ひとりの守備範囲が広く、誰もがプロアクティブに行動することが求められます。全員が本気なので、話し合ううちに真剣な議論になることもよくあります。そういう組織の一員として、周囲の多様な考えを受け止め、必要に応じ自分の考えを変え、ベストを目指すために最善の選択を模索できる方に仲間になっていただきたい、と思います。

最後に、私たちが面接や昇進試験で重視している「8つのリーダーシップ原則」をお伝えします。AGILITY(機敏さ)、EMPOWERMENT(エンパワーメント)、CO-CREATION(共同作業)、PIONEERING SPRIT(パイオニア精神)、CUSTOMER ORIENTATION(お客様第一)、LEARNING(学ぶ)、DRIVE TO WIN(勝利を目指して)、PURPOSE(意味づけ)。この8つを大事にできる方なら、きっとメルセデス・ベンツで活躍できます。

Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング

メルセデス・ベンツ日本株式会社

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