INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ヤマハ株式会社 大村 寛子

PHILOSOPHY × Brand戦略 Vol.01

ヤマハ株式会社

ヤマハは「感動を・ともに・創る」を企業理念として共有し、音・音楽を通じて世界中の人々のこころ豊かなくらしに貢献することを目指しています。ブランドプロミスには、お客さまが心震わす瞬間を表現した「Make Waves」を掲げ、1887年の創業以来受け継がれてきたお客さま目線のものづくりをさらに推し進め、人々の心に響く製品・サービスを届けていく決意を示しています。

大村 寛子執行役員 ブランド戦略本部 本部長 兼 マーケティング統括部長

1992年横浜国立大学卒業。同年ヤマハ入社。IT部門、製造部門を経て電子楽器の商品企画・開発、鍵盤楽器営業等を担当した後、2018年ヤマハで初めてとなるマーケティング全社部門を立ち上げ、グローバルでの体制強化、ブランド価値向上に取り組む。2019年執行役員就任、2021年4月より現職。



公開日:2022年10月31日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

philosophy04_02物質消費の時代ではなくなり、ヤマハのビジネスも大きく変わりつつある

大村さんのご経歴を教えてください。

ヤマハ本社のある静岡県で生まれ育ちました。子どもの頃は文学好きで、星新一などを読んでは妄想を膨らませる日々でした。大学では心理学を学びましたが、その一環でプログラミングを経験したら、正解のプログラムを完成させると、誰かが便利になったり効率的になったりする点にやりがいを感じました。就職活動はIT企業を中心に受けましたが、最終的には実家に近いヤマハを選びました。

1992年の入社以来、ヤマハ一筋でここまで来ました。最初に配属されたのは情報システム部で、海外基幹システムのプログラミングを担当しました。やはりプログラミングが好きで、向いていました。その後、二児の出産・育児をしながら働きました。ターニングポイントは、2002年に楽器開発統括部で電子楽器のソフトウェア開発エンジニアになったことです。エレクトーン、クラビノーバなどのGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)開発を担当しました。チーム一体となって、高い目標と厳しい納期に向けて働き、達成したら全員で喜ぶ、というプロセスを何度も経験しました。当時はとにかく働くのが楽しかったですね。

2005年に商品企画の仕事に移り、マーケティングのキャリアがスタートしました。マーケターになってからは、自分がプロデュースした商品が世に出ることに喜びを感じるようになりました。開発部門や製造部門と一緒になって、お客さまがヤマハに期待するものを形にすることにやりがいを感じました。プログラミングと違って正解がない、という意味では苦しい部分もありましたが、今度は、正解のない中で解決法をひらめく面白さを知りました。

私のマーケティングの根本には、「ヤマハの使命」への想いがあります。たとえば、私たちはハイブリッドピアノの開発を積極的に推し進めており、「AvantGrand(アバングランド)」ブランドで既にいくつかの商品を出しています。AvantGrand(アバングランド)が一貫して目指すのは、デジタル技術を駆使して、アコースティックピアノと遜色のない表現ができるハイブリッドピアノを作ることです。私は、アコースティックピアノの素晴らしさや文化をデジタルで継承するのが、ヤマハの使命だ、と考えているのですね。ヤマハがすべきこと、ヤマハでなくてはできないことを実現することに意義があります。

その後、私は2011年に営業に移りました。ちょうど3.11やタイの大洪水があり、音源LSIなどの部品入手が難しくなったときです。ですが、営業には全世界に商品を届ける責任があります。ヤマハは今や売上のおよそ70~80%が海外で、工場も多くが海外にあります。営業は常にグローバル全体の責任を担っているのです。私たちは代替部品を揃えたり、代替商品を企画したりして、商品の供給を何とか止めずにビジネスを続けました。営業時代には、アーティストの支援活動にも力を入れました。ヤマハは以前から、世界中の将来有望なアーティストを継続的にサポートしています。私自身もアーティストに会うために、欧州など海外に何度も赴きました。

2018年、ヤマハはマーケティング全社部門を立ち上げ、私は立ち上げメンバーとしてブランド戦略本部をマネジメントしました。2019年に執行役員となり、2021年からはブランド戦略本部 本部長 兼 マーケティング統括部長を務め、ブランドマーケティング、デザイン、コーポレートコミュニケーションを全方位で見ています。ブランド戦略本部は約半分が女性社員で、管理職も約30%が女性を占めています。トップの私だけでなく、全体的に女性が多く活躍する部門です。

キャリアの中で時代の変化をどのように感じてきましたか?

私たちにとって最も大きな変化は、物質消費の時代ではなくなった、ということです。多くの人たちが、消費やショッピングよりも、社会課題解決や自己実現を重視するようになってきました。サステナビリティは守るべきマナーになり、世の中や他者のために働く人が増えました。そうなるために自らを変えようとする人たちも多くなりました。

それによって、ヤマハのビジネスも大きく変わりつつあります。端的に言えば、従来のビジネスモデルが力を失ってくる可能性があります。また、音楽教室などのお客さまの音楽生活を支えるビジネスも新しい形の必要性を感じています。次のビジネスモデルを早急に構築しなければなりません。

 

philosophy04_03ブランドプロミス“Make Waves”に基づいて「共創」を推し進めている

ヤマハのPHILOSOPHYについて教えてください。

私たちが最も大切にしているのは、ブランドプロミスの“Make Waves”です。ブランドプロミスとは、ヤマハが人々の人生にもたらす価値を語ったものです。ヤマハは、「個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとする人々の勇気や情熱を後押しする存在でありたい」との思いを込め、人々が心震わす瞬間を“Make Waves”という言葉で表現しました。内なる思いを自分なりに表現して周りにインパクトを与え、日々の積み重ねによって成長し、より広い世界と響き合う。“Wave”とは、そのために、自ら新たな一歩を踏み出す時に感じるワクワクと心震える状態を表しています。

また、企業理念、顧客体験、ヤマハクオリティー(品質指針)、ヤマハウェイ(行動指針)の4つにより構成される「ヤマハフィロソフィー」があります。中でも大切なのが「顧客体験(愉しさ、美しさ、確信、発見)」です。顧客体験を実現するために、ブランドプロミスを作った、といってもよいくらいです。

ヤマハのブランドマーケティングでは、ヤマハフィロソフィーをより具体的にした「3×3の法則」というブランドポリシーを全世界で共有しています。前半の3は、3つの「ブランド・トゥルース」を指します。「プレイヤーへの情熱・先進的イノベーション・音楽における影響力」。ヤマハのマーケティングコミュニケーションには、この3つのブランド・トゥルースを必ず織り交ぜることを求めています。後半の3は「お客さまに感じてもらいたい3つのこと」です。お客さまには、私たちの商品・サービスを活用すれば、お客さまの「自己成長・自分自身の表現・世界の方々とつながること」を実現できる、と知っていただきたいのです。

ヤマハでは「3×3の法則」とスタイルガイドを守りさえすれば、世界各地のマーケターが広報物や映像を自由に作ってよいことになっています。私たちはこのようにして、ヤマハのPHILOSOPHYを現場に展開しています。

PHILOSOPHYに基づいたビジネス戦略を教えてください。

現在の取り組みやこれまでの成果の一部をお話しします。

私たちは今、“Make Waves”に基づいて、社外のさまざまなパートナーとの「共創」を推し進めています。多種多様な共創があるのですが、一例として、カナダのグレン・グールド・ファウンデーションとともに行った「Dear Glenn」プロジェクトを紹介します。私たちは2019年、伝説的ピアニストのグレン・グールドらしい音楽表現で、任意の楽曲のピアノ演奏ができる「グレン・グールドAI」を開発しました。そして、芸術・先端技術・文化の祭典アルスエレクトロニカ・フェスティバルにて、世界で初めての演奏会を行いました。グレン・グールドAIは自動演奏だけでなく、人間と協調して合奏することも可能です。

また、東京藝術大学COI拠点とは「だれでもピアノ®」を共同開発しました。自動伴奏追従機能のついたピアノで、一本指でメロディーを弾くと、伴奏とペダルが自動で追従して、熟練したピアニストのように華麗な演奏が可能です。障がいのある児童・生徒や高齢者でも気軽に楽しめるピアノです。

この共創と同じくらい重要視しているのが、「ブランド体験」です。私たちは今、店舗をブランド体験エリアへと大胆に作り変えています。その象徴がヤマハ銀座店です。

以前のヤマハ銀座店は、楽器販売と音楽教室がメインでした。現在はそれに加えて、ブランド体験ができるカフェ「NOTES BY YAMAHA」を展開しています。NOTES BY YAMAHAでは、誰でも自由に演奏できて、演奏者と聴く人が心地よく時を過ごせるようデザインされたピアノ「key between people」、飲み物をテーブルに置くと音を奏でる「music table」、バーチャル映像と連動した楽器の自動演奏によって生演奏さながらのアーティストライブを聞かせる「Real Sound Viewing」、音・音楽に関する700冊の本を集めた「ライブラリー」などの仕掛けを用意し、お客さまに楽しんでいただいています。特に楽器演奏に縁のない方々にも、気軽にヤマハブランドを体験していただけることを目指しています。

さらに、ブランド体験エリアなどで流すブランディング映像の充実も図っています。たとえば、支援する新星アーティストの楽曲制作の様子と、彼らの成長や葛藤を映しだすドキュメンタリー映像シリーズ「WAY UP」が好評を得ています。

社内でPHILOSOPHYをどのように浸透させていますか?

毎年10月を「ブランド月間」と定めています。中でも会社設立日の10月12日は、「ヤマハブランドのことだけを考える日」になっており、現場を離れられる従業員は全員、社長表彰会・役員対談・ブランドに関する動画などの視聴を通して、終日、ヤマハブランドに想いを馳せます。テレワークになったことでオンライン視聴者数が増え、より多くの従業員が参加してくれるようになりました。10月には他にも多岐にわたるイベントを詰め込んでおり、演奏動画の投稿など、従業員が主体的に参加できる場も用意しています。

また、テレワーク環境に合わせて社内イントラサイトを一新し、社内外のどこからでも見られるようにしました。社長は毎月、そのイントラサイトに自ら撮影したメッセージ動画を掲載しています。またグローバルでは、世界各地にブランド活動を推進する「ブランドコミュニケーションアンバサダー」を設置し、各国での交流サイト制作、イベント開催などをお願いしています。このように、あの手この手でPHILOSOPHYのさらなる浸透を狙っています。

 

philosophy04_04オンラインレッスンなどを駆使した新しい音楽体験を創りたい

今後の新しい取り組みについて教えてください。

これは私自身の最大のミッションなのですが、「音楽体験のイノベーション」を起こしたい、と考えています。オンラインレッスンやAIセンシングを駆使した画期的指導法などを開発し、時代を先取りした新しい音楽体験を創りたいのです。ヤマハは長年音楽教室を運営してきました。音楽普及はヤマハにとって極めて大事な領域ですが、音楽教育のイノベーションが、次のヤマハを形づくることは間違いありません。また、メタバース上で生の音楽体験ができるライブ空間を作ったり、世界中のミュージシャンと出会えるバーチャルの場を用意したりもしてみたいですね。

これらのイノベーションは、外部のデジタル企業とパートナーシップを組んで共創していきます。私たちヤマハには、1を10にする力があります。世の中をより良くする0→1のアイデアを持った人たちと一緒になることで、私たちの力を社会のためにより活かせると考えています。そのために今、私たちは外部のいろんな方とお話しする機会を頻繁に設けて、素晴らしいアイデアを日々探索しています。

同時に、世の中の流れを敏感に捉えることも大切にしています。たとえば最近、楽器を所有したくないが演奏はしたい、という方が増えています。演奏体験だけを求めているのですね。こうしたニーズに応えるサービスも用意した方がよいのかもしれません。いろんな方向に向けてアンテナを立てながら、イノベーションの可能性を探っています。

どんな方を求めていますか?

一言で言えば、「私たちと一緒にMake Wavesしてくれる方」ですね。ヤマハの事業やPHILOSOPHY、ブランドに対する共感があり、ビジネスの実行力があり、自らも音楽を愉しんでいる方であれば、きっと協働できるはずです。その上で、今のヤマハにない風を吹き込んでくれる方だと、なお嬉しいです。周囲から「訳の分からないことを言う人だ」と思われるような人を、むしろ大歓迎しています。

Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング

ヤマハ株式会社

物質消費の時代ではなくなり、ヤマハのビジネスも大きく変わりつつある 大村さんのご経歴を教えてください。 ヤマハ本社のある静岡県で生まれ育ちました。子どもの頃は文学好きで、星新一などを読んでは妄想を膨らませる日々でした。大...

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