INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
マース ジャパン リミテッド 大井 健司

グローバル企業人事が語るPHILOSOPHY Vol.01

マース ジャパン リミテッド

1911年、米国ワシントン州タコマでフランク・マースが創業。1920年代に息子のフォレスト・マースも事業に参加し、「ミルキーウェイ®」を発売。その後、海外展開、新分野のペットケアや食品などに事業を拡大し、世界で450億ドル以上の売上を達成。お菓子「スニッカーズ®」「M&M'S®」、ペットフード「カルカン®」「シーバ®」「シーザー®」「ニュートロ™」など多くのブランドを世界80以上の国と地域で展開している。マースのアソシエイト(従業員)は14万人超でありながら、非上場の家族経営企業のまま運営している。日本の拠点、マース ジャパン リミテッドは1975年に設立。ペットケアと菓子の2つの事業を担っている。

大井 健司人事部(People&Organization)ディレクター

北海道大学大学院修了後、1998年大手外資系消費財メーカーに入社。一貫してパッケージの研究開発に携わる。2011年にマース ジャパンに移り、パッケージの製造・開発マネジャーに就く。2018年に人事部マネジャーとなり、2019年から現職。特定非営利活動法人アサーティブジャパンの理事・認定講師も務めている。



公開日:2022年9月8日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

philosophy01_04過去と今。日本マーケットの世界的位置

昨今の日本やグローバルの変化をどう見ていますか?

私が働き始めたのは1998年ですが、その頃は日本マーケットがまだまだ強い時期でした。ところが、それから日本マーケットの世界的地位は落ち続けています。私の一貫した大きなテーマは、「どうしたら日本マーケットを強くできるのか」ということです。

マースは、日本マーケットが世界をリードできることを証明している稀有な会社です。実は、日本は「ペットの家族化」が世界で最も進んでいます。たとえば、ペットの室内飼いが当たり前になり、都市部の住宅事情から小型犬・超小型犬が主流となっていくことで、ペットとの距離が近づいたことから、ペットにも家族同様により良い生活を送らせてあげたい、と思う飼い主が多くいます。そのため、ペットのためのさまざまな製品やサービスがいち早く生まれているのが日本マーケットです。また、ペット寿命が長く、シニアの犬や猫が大変多くなっています。こうした流行は世界的で、その先頭を走るのが日本です。日本の5~10年後に、世界でも同じことが起こっています。

そのため、私たちが日本で創出したペットケア製品やサービスのイノベーションが、その後世界に広まる流れになっています。一例を挙げると、私は入社後、パッケージの製造・開発マネジャーとして「プレミアム製品」の開発に力を入れていました。なぜなら、ペットの家族化が進む日本では、比較的安価でシンプルな製品の売上が落ちており、それぞれのペットの特徴や好みに合ったプレミアム製品の売上が増えているからです。そこで新パートナーを探索し、彼らと一緒になって、新たなプレミアム製品をどうやって生み出すかを考えていました。今では、こうしたプレミアム製品のニーズが世界的に高まっており、日本独自のプレミアム製品開発ノウハウもグローバルで活用されています。マースでは、グローバル各国がこうして日本マーケットに注目しているのです。

働く上での変化はどうですか?

注目すべき変化は、世界中のカルチャーがどんどんフラットになっていることです。外資系企業で働き続けて実感することですが、グローバルチームであっても、同じ目的に向かって作業しているときには、文化や言語の違いはもはやそれほど関係なくなってきています。最も大事なのは、相手の主張や考えをよく理解して、お互いの折り合いをつけるプロセスなのだと実感しています。

世界のフラット化に合わせて、会社や個人の「PHILOSOPHY」がますます重要になっています。会社のPHILOSOPHYが明確で、全員がそれに深く共感していれば、世界中の仲間とともに同じ目的に向かって動けます。特に、会社と個人のPHILOSOPHYがしっかりとリンクしているとき、私たちは目的やミッションにワクワクしながら働くことができます。

philosophy01_02組織のインテグレーションを支えてきたPHILOSOPHY

マースのPHILOSOPHYを教えてください。

マースの根幹には、「マースの五原則(品質・責任・互恵・効率・自由)」というPHILOSOPHYがあります。マースでは全員が心の底から五原則を大事にしており、常にマースの五原則に立ち返ることを習慣にしています。特に難しい状況や大変なときこそ、マースの五原則をもとに考えます。

私自身、転職時のインタビューで、多くの社員から「マースの五原則さえ守っていれば成功できるから」と言われて驚きました。インタビューした全員が同じように話すものですから、「この会社ならPHILOSOPHYを重視して、日本のマーケット価値を向上できる」と確信し、価値観が自分とフィットしていることを確認した上で、入社できました。

マースの五原則はさまざまな局面でプラスに働いています。たとえば、私たちは過去何度か大きなM&Aを行っています。2015年には、P&G社から日本における IAMS®(アイムス)と EUKANUBA®(ユーカヌバ)のブランドを取得しました。2016年には、90年以上の歴史を誇るニュートロ™とグリニーズ™を扱うグループ会社と経営統合しました。どちらのときにも、私たちはスムーズな組織インテグレーションを実現できましたが、その成功の裏にはマースの五原則の存在があると感じています。

たとえば、責任の原則は「個人として責任を持って行動し、アソシエイトとしてお互いが責任を遂行できるよう協力し合います」というもので、仲間を支援することを責任の一つとして定義しています。そのおかげで、周囲の困っている人を助けたり、新たなメンバーを丁寧にサポートしたりするのが当たり前の文化が根付いています。PHILOSOPHYをベースとした文化が、組織インテグレーションを促したわけです。

最近の取り組みについて教えてください。

ビジネス面では、コロナ禍以降の原材料価格や物流費の高騰と円安の進行は、私たちにとっても、インパクトの大きな問題です。今まさに生産拠点などと話し合いながら、最善の道を探っている最中です。こうした話し合いの軸にも、マースの五原則があります。

人事・組織面では、コロナ禍でのリモートワークへの対応がやはり大きな課題でした。リモートワークでも、社員の皆さんにマースの五原則を守りながら活躍していただけるように、かなり多様な支援を行いました。たとえば、専用のシステムを導入しているお客様相談室を数カ月でフルリモートに変更し、FAXの受け取りなど出社必須だったカスタマーサポートの皆さんにもリモートワークをしていただけるように投資をしました。また、リモートではどうしても人と疎遠になり、かつ運動不足になりがちなので、ウエルビーイングアクティビティとして簡単にできるエクササイズ時間を設けたり、グループで達成した歩数に応じてひとり親世帯へチョコレートを寄付するチャリティウォーキング等みんなが自然とつながる機会を創出し、身体を動かす習慣づくりを促したりもしました。

また、リモートワークでは、上司・部下間やチーム間でのコミュニケーション量がどうしても少なくなりがちです。そこで、リモートでのコミュニケーション活性にも力を入れてきました。たとえば、私たちは2019年から「グロース・マインドセット(自分の才能や能力は経験や努力で伸ばすことができるとする考え方)」を育むみらい共創プログラムを進めてきましたが、コロナ禍でもこれをオンラインで継続し、その結果を社外にも公開する「みらい共創オンラインフォーラム」まで開催しました。ほかにも、毎週チーム内で仕事のことに限らず、プライベートのことも含めて自分の近況を共有する雑談時間を設けるなど、各チームが自律的にさまざまな工夫を凝らしています。中には、コロナ禍にむしろコミュニケーション量が増えたチームまで出てきました。

現在は、リアルとリモートの「ハイブリッドワーク」を目指して、さまざまな取り組みを行っています。

philosophy01_03ハイブリッドワークで必要な能力

ハイブリッドワークの課題は何でしょうか?

コロナ渦中に、オフィスはコラボレーションとイノベーションを促進する場であることを再定義し、アソシエイトのほとんどが在宅勤務をベースにした働き方になりました。現在も、その方針は継続していますが、人事としては、上司や部下との1対1の面談、チームミーティングやチームビルディング、部署を超えたプロジェクトチームの会議など、できるだけタイミングを合わせてオフィスに来てもらうことを推奨しています。これは、オフィスに来ることで、一緒に働く仲間と直接対話をする楽しさや一体感を感じてもらう、その感覚を思い出してもらうことが目的です。もう一つの目的は、効率の原則に基づいたものです。在宅勤務は個人作業の効率を上げることにかなり貢献していることは、誰もが認識していることだと思います。一方、チームや会社全体の効率で考えた時には必ずしも効率的ではない場合があります。例えばオフィスにいれば、相手の様子を見ながら「ちょっといい?」と気軽に声をかけて解決できる小さな問題も、双方が在宅勤務だと、オンラインステータスを見て「忙しそうだな」と感じて遠慮してしまい、判断やスピードを鈍らせてしまうことがあります。事実、定期的にオフィスでの対面の会議を取り入れているメンバーからは、「対面だと早く決まることがたくさんある!」などのコメントも上がっています。このように、在宅が良い、オフィスが良い、と一義的に考えず、全体の質と効率を上げるために、アソシエイト同士で責任を果たしていくという考え方が重要になると考えています。新しい働き方が求められている中、私たちは今、リアルとリモートの最適なバランスを模索している最中です。

一方、上記のコミュニケーションだけでは、何もないのに出社するアソシエイトは決して多くないのが現在の課題です。そこで私たちは最近、オフィスイベントを増やしています。たとえば先日、「オフィスで犬と遊べる日」を開催しました。また、犬を通じてコミュニケーションを学ぶ「動物介在トレーニング」もオフィスで行いました。こうしたイベントを開くと、業務上関わりのない人同士でも会話が生まれ、そのうちリモート会議を開くまででもないような業務の話をする人が現れたりします。偶発的な出会いのきっかけになるわけです。こういう仕掛けも大切です。

それから今、「ハイブリッドワークにおいて新たに必要な能力は何か」を議論して、3種類の新たなトレーニングを始めつつあります。1つ目は「フィードバックトレーニング」です。オンラインだからこそ、日頃の細かな賞賛やフィードバックがより大事になります。合わせて、グローバルへのエスカレーションの質なども高めたい。そこで、フィードバックカルチャーとセレブレーションカルチャーを醸成するためのトレ―ニングを始めています。2つ目は「ファシリテーショントレーニング」です。リアルでもオンラインでも、会議の場にファシリテーターが複数いると、会議の質が如実に高まります。そこで外部講師を招聘してトレーニングを実施しています。3つ目は「メモライティングトレーニング」です。オンライン会議が増えたことで、メモの重要性が増しています。ラインマネジャーが中心となって、メモライティング技術の高め合いを計画しています。

今後の課題と取り組みを教えてください。

1つ目の課題は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。今後の私たちの継続的な成長を実現するためには、ペットとペットペアレント(飼い主)についてより深く理解し、より深くつながるためのデータ活用など、今までの考え方や働き方を変えていく必要があります。組織全体のデータリテラシー向上はもちろん、社内のワークプロセス、社内外のステークホルダーとの新たなビジネスモデルを構築するため、DXに継続して注力する予定です。

2つ目の課題は「インクルージョン&ダイバーシティ推進(I&D推進)」です。私たちのI&D推進は、「自分らしく働く」がテーマです。コロナ禍のリモートワークの間に、人生で大切にしたいものや価値観が変わった、という社員が数多くいます。自分はどう生きたいのか、何を成し遂げたいのかを考える良い機会になった、という社員の声もよく耳にします。そこで、ジェンダーや人種はもちろんのこと、子育てや複職などについても話し合う場を設け、各自が自らの人生をどうマネジメントするのかをさらに深めてもらっています。

3つ目の課題は、「会社と個人のPHILOSOPHYの一致」です。先ほど、「会社と個人のPHILOSOPHYがリンクしていると、私たちはワクワクしながら働ける」という話をしました。社員の皆さんには、ワークショップ、トレーニング、サーベイなどのいろんな場で、自分のPHILOSOPHYや使命(Purpose)を何度も表出してもらっています。そうしたコミュニケーションを重ねる中で、会社と個人のPHILOSOPHYのつながりを感じ、よりワクワクしながら働いてもらいたいと思っています。それがエンゲージメントにつながり、個人の成長と会社の成長につながると信じています。

Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング

マース ジャパン リミテッド

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