INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ジョンソン株式会社 鷲津 雅広

マーケティング×経営 ~マーケティング戦略を語る Vol.1

ジョンソン株式会社

代表取締役社長

鷲津 雅広

『スクラビングバブルトイレスタンプクリーナー』は便器に直接ジェルをスタンプするだけの画期的なトイレクリーナーです。

公開日:2014年1月9日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

『スクラビングバブルトイレスタンプクリーナー』とはどのような製品でしょうか?

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従来のトイレ用芳香洗浄剤は、トイレタンクの上に置き、水を流すと薬剤が溶け出して便器を洗浄するという「置き型」が主流でしたが、この商品は専用の器具を使って便器に直接ジェル状の薬剤をスタンプする商品です。トイレの水を流すたびに洗浄・防汚成分を便器全体に行き渡らせ、便器をいつもピカピカに、清潔に保ちます。これは、この商品の最大の特徴である「マラゴニー効果」*といわれるものです。

この商品は、まずヨーロッパで「ダック・フレッシュディスク」という商品名で発売されました。欧米ではタンクのない便器がほとんどで、便器のふちにケージ(カゴのような入れ物)をかけて、薬剤を入れるタイプが主流です。しかし、ケージタイプですと薬剤の交換が面倒であり、またケージ自体も便器内に留まるので不潔だという消費者の声を受けて、スタンプ型の製品を開発・販売しました。スタンプ型なら清潔で、装着も簡単。しかも1つの製品に6回分のディスクが含まれているので、6週間は面倒なトイレ掃除をしなくていい。これは便利だということで人気になり、いまは世界中で販売されています。

これを日本でも売り出すことになったのですが、欧米で消費者に喜ばれた「清潔」「簡単」という商品特徴は、日本の置き型ではごく当たり前のことなので、とても差別化にはつながらない。どう売り出していけばよいか、どう差別化したものかと頭を悩ませ、いろいろ調べていった結果、先程のマラゴニー効果があることがわかったのです。

置き型だと上から水を流すので薬剤は薄まりますし、その薬剤が水と一緒に流れて排出されてしまう。ところがスタンプクリーナーは、水を流しても薬剤がすぐには薄まらないし、マラゴニー効果で水が流れた後も濡れている便器の表面を伝って全体に広がり、効果を発揮する。そこがこの商品の画期的な特徴なのです。

このように科学的な効果が判明したので、日本ではこれを「バブルくん効果」と名づけて、その「洗浄力」と「持続力」を前面に打ち出すことにしました。

商品名も欧米とは変えていますが、マーケティング戦略をかなり日本流にアレンジされたのでしょうか?

scj04グローバルでの戦略商品ですから、商品名にせよ、仕様やパッケージング、広告も、グローバルと同じにするほうが効率的です。しかし、先ほどお話しましたように、この商品の場合は欧米で消費者に訴求した差別化ポイントを使うことができませんでしたので、日本の消費者向けに、新たな差別化ポイントを打ち出す必要があったわけです。そこで、日本の市場にヒットする戦略を立てることにしました。

まず商品名ですが、フレッシュディスクといっても日本人には具体的にどういったものなのかイメージしにくい。そこで、使用時のアクションを示す「スタンプ」という言葉に着目し、クリーナーのブランド名を冠して『スクラビングバブルトイレスタンプクリーナー』にしました。

仕様はグローバルと同じです。ただしテストの結果、香りが強すぎるという意見があったので、最初は香りを調節しました。ところがその後、バリエーションとして海外と同じ香りのものを出したら、意外に受け入れられた。よって、後に発売した商品はすべてグローバルと同じ仕様です。パッケージについても、説明書きは日本語にしていますが、デザイン等はグローバル規格と同じで、海外で製造しています。

商品はスタンパーと6回分のジェルがセットになっていますが、スタンパーを使い捨てるのはもったいないので、ジェルだけを売ってほしいという要望が数多くありましたので、日本限定で詰め替え用を作りました。環境への配慮に敏感な、日本市場ならではの特徴だと思います。

また、プロモーションの仕方も日本流にしています。海外ではクーポンを使ったプロモーションが主流ですが、日本ではブランドキャラクター「バブルくん」の関連グッズ、つまりノベルティグッズに力を入れています。クッションやティッシュボックスなど、全てブランドチームの女性メンバーが考案したものです。ユニークだなと思うのがクリーナー専用のスタンド。使用したスタンパーを立てておく機能的なスタンドです。これも日本人ならではの感性でしょうね。

日本で販売して3年になります。おかげさまで、2012年に、トイレ用芳香洗浄剤のカテゴリーで花王を抜き、市場シェア第2位になりました。また2013年11月には、過去最高のシェア13%を達成しました。この勢いで次は、シェア70%でダントツの小林製薬を追い越したいと思っています(笑)。

売れ行きは最初から順調だったのですか?

scj05発売当初は物珍しさも手伝って、売れ行きは好調だったのですが、一旦落ち込みました。原因の一つとして、コンパクトな商品のため、売り場や店頭で見つけにくかったことにありました。そこで、商品が目立つように売場に陳列される面積を広げようと、2種類だった香りのバリエーションを3年かけて7種類にしました。これが当たって、既存品とのカニバリゼーションもなく、新しい種類を出すたびに、売上げがどんどん上乗せされていきました。嬉しい驚きでしたね(笑)。また、同時に売場を思い切って変えてみる工夫もしました。他社の製品は、種類も多く芳香剤コーナーに陳列されていますが、当初スタンプクリーナーは、住居用クリーナーのコーナーに陳列されていました。よって、お客さまは店頭で見つけにくく、わざわざ探さなければなりませんでした。そんなときに営業の現場から、「トイレットペーパー売り場に置くといいのではないか?」、というアイデアが提案されました。トイレットペーパーを買いにきたお客さまの目に留まり、さらに興味を持っていただける。トイレットペーパー売場専用の陳列ケースも開発し、結果的に購入数が伸びましたね。

トイレスタンプクリーナーを売り出して3年経ちましたが、「使ってみたいけど本当にきれいになるのかわからない」、「だから、購入するのはちょっと・・・」、というお客さまがまだまだ多くいらっしゃいます。商品の認知度は70?80%あるのに、実際に使ってくださっている方々は7?8%です。対策として、マラゴニー効果をもっとわかりやすく紹介するCMを作成して、「本当にきれいになる!」という説得力を高めたいと考えています。

グローバルな商品をたくさんお持ちだと思いますが、その中でなぜこれを日本で発売しようと考えられたのですか?

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もうひとつ、商品自体の魅力です。マラゴニー効果が判明するまでは、世界中で売れているのに日本での売り方が見つからず苦しみましたが、明らかになってからは、「絶対に売れる」、「消費者に共感してもらえる商品だ」と、確信しました。パテントで守られていることもありますが、他社では似たようなコンセプトの商品は作れないと思います。

規模を拡大する為のマーケティング戦略には、「既参入市場でシェアを拡大する」、「既参入市場の市場サイズを拡大する」、そして「未参入市場に参入する」の3つしかないと思っています。この商品の場合、当時、当社がトイレ用芳香洗浄剤カテゴリーに未参入だったことが第一の要因です。当社がシェア第1位を保有するカビ取り剤市場の規模が約100億円に対して、当カテゴリーは約200億円と大きいことも魅力的でした。

トイレスタンプクリーナーが成功した理由は何だと思われますか?

scj09商品が売れるためには、商品自体の魅力や広告・プロモーションなどももちろんありますが、社員、消費者それに当社の顧客である販売店、そして地域社会というステークホルダーが満足できるがどうかが重要です。これはスタンプクリーナーに限らず、どの商品にとっても同じ考えです。ジョンソンの企業理念では、これらのステークホルダーに対して責任を果たし、信頼を得なければならないと謳っています。

社員にとっては、プライドを持って、かつ、楽しく仕事に専念できる商品が、良い商品であり、ヒットすれば本望ですよね。努力して結果がついてくれば、さらに前向きな提案が出てきて次につながる。結果として、社員の成功体験につながります。スタンプクリーナーは、30代前半の女性がブランドリーダーですが、彼女を中心としてチーム全体が、ブランドや商品を心から愛していて、プロモーション企画を考えるミーティングなども実に楽しそうに行っています。次々に新しい手法、新しいツールを使って、いろいろなアイデアを出して、実行しています。

一方、消費者が求めているのは、他とは違う魅力のある商品。つまり差別化されていて、共感できる商品です。スタンプクリーナーは、マラゴニー効果でキレイが長く続く、だからトイレ掃除がラクになるという点で、条件を満たしています。

では、販売店はどうか。販売店にとっては、カテゴリーが拡大して、市場全体のパイが大きくなる、つまり、自社の売上増につながる商品が必要。スタンプクリーナーは、購入者の3割が新規購入者で、カテゴリーの拡大につながっています。加えて、今後普及するタンクレスの便器に対応できる商品ということで、販売店から期待が寄せられています。

そして地域社会のメリットとしては、環境負荷の軽減に貢献する商品であることです。ジョンソンでは、”Greenlist™”という独自の基準を設けて、原材料が環境や人に安全であるかどうかを4段階で評価し、基準に満たないものは使用しません。

これらのステークホルダーを満足させることこそ重要なサクセスファクターであり、スタンプクリーナーは全ての基準をクリアしたからこそ、ヒットしたのだと考えています。

新商品発売のチームづくりにおいて、心がけていることは何ですか?

scj03特定のチームだけで仕事を完結させるのではなく、クロスファンクショナルな広がりを持てるようにすることですね。トイレットペーパーの売り場にスタンプクリーナーを置くという提案が営業社員から出たように、商品が売れていたり、話題になっていたりすると、いろいろなところから良い知恵やアイデアが出るものです。それを逃さずに聴く。

知恵やアイデアを提案しやすい機会や環境をつくることを、いつも心がけています。今では若い社員を中心に、楽しみながらアイデアや意見を出し合って、良い雰囲気になっています。

あとは、提案を実現させることですね。自分の意見や提案が取り入れられたら誰でもうれしいし、さらに頑張る気になりますから。逆に、ほったらかしにされたらモチベーションは下がります。だから、これはいいアイデアだなと思ったら即、実現のためのサポートをする。

ただ、実現にはいろいろな形があります。商品として市場に出ることだけが実現ではありません。アイデアを提案してもらい、フィードバックを提供するのも実現ですし、消費者テストの段階までもっていくのも実現です。どんな形であれ、失敗したとしても、学ぶことは必ずあります。

グローバルな開発力を含め、ジョンソンの強みはどこにあるとお考えですか?

新しい製品開発の手法を素早く取り入れられるのが、ジョンソンの強みです。流行のデザインや異業界、大学発のアイデアなども積極的に取り入れて、「しかけ」にこだわったユニークな商品を開発しています。

たとえば、2013年2月に発売した、『カビキラー電動スプレー』。浴室のカビを取り除くには、通常タイプの製品だと、200回ほどスプレーする必要があります。電動スプレーであれば、単純に1回トリガーを引けば、モーターの力でスプレーされ続けますので手が疲れず、手間がかかりません。これは革新的な商品ですよ。

それから、いま当社でいちばん売れている消臭芳香剤の『グレードセンサー&スプレー』。これは製品の前を人が通ると、センサーが感知して芳香剤が自動的に噴霧されるという優れものです。香りも、最近のトレンドであるベリー系の「KAWAII STYLEベリーマッチ」や、甘く優しい香りの「I LOVE YOU」とバリエーションを増やしています。前者は「大人可愛い」を演出する、後者は「恋をしたくなるような」ロマンチックな気持ちになる、というようにストーリー性を盛り込んだのですが、どちらも非常に好評です。

我々の業界では、春と秋に新製品を発表するのが一般的ですが、当社の看板であるクリーナーと芳香剤のカテゴリーでは、最低でも1点ずつ新商品を揃えたいですし、ヒット商品を少なくとも年に2点は出したい。現在は、ビジネスがうまく上昇気流に乗っていますので、この勢いでさらにヒット商品を増やしていきたいですね。

※「マラゴニー効果(Maragoni Effect)」とは、流体において表面張力の大きさが異なる場合に、一定になろうとする働きのこと。

ジョンソン株式会社
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ジョンソン株式会社は、一般家庭向け住居用洗剤用品、芳香剤用品、殺虫剤用品、食品保存用品、シューケアー用品などの世界的有力メーカーである SC Johnson ?Son, Inc.(以下、SCジョンソン社。本社:米国)の日本法人です。1962年に日本でビジネスをスタートして以来、SCジョンソン社の世界共通の理念、「This We Believe」に基づいてビジネスをおこなっています。ジョンソン株式会社は、日本市場で得た50年以上の経験と、グローバル企業の一員としての強みを活かし、日本の市場と消費者の信頼を得られる革新的な製品の導入に注力しています。

代表的なブランド:

カビ取り剤『カビキラー』、住居用クリーナー『スクラビングバブル』、排水パイプ用クリーナー『パイプユニッシュ』、消臭芳香剤『グレード』、風呂釜洗浄剤『ジャバ』、虫よけ剤『スキンガード』、台所用廃油処理剤『テンプル』、シューケアー製品『KIWI』

代表取締役社長 鷲津 雅広氏プロフィール:

東京都出身。早稲田大学卒。 85年現プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社入社。ブランドマネージャーやマーケティングマネージャーとして広くマーケティング分野で活躍。 95年ジョンソン株式会社に、マーケティングディレクターとして入社。その後、セールスディレクターを経て、SCジョンソン社の米国本社にて、アジアパシフィックのマーケティングディレクターとして活躍。日本に帰国し、05年1月に代表取締役社長に就任、現在に至る。

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