女性総合職として最初から責任ある仕事を任せてもらった
NECに入社するまでのご経歴を教えてください。
小学校2年生のとき、1年間だけロサンゼルスで暮らしました。英語が全然分からないのに現地校に入り、遊びながらみんなと仲良くなっていきました。帰国後、性格が変わったと言われるくらい大きな経験でした。
大学時代は、ESS(英語会)に所属していましたが、かなりハードでしたね。合宿して夜中までスピーチの練習をしたり、ディベートの準備をしたりしていました。まるで社会人養成講座のようでした。部員が入部時の10~20%くらいしか残らないハードな部でしたが、人間関係が濃密で居心地も良く、自由で個性豊かな友人と切磋琢磨しながら過ごしました。
振り返ると、この2つの経験で、私は多様な環境に対する耐性が身についたと思います。
なぜ新卒入社でNECを選んだのですか?
NECが、早くから女性総合職を積極的に採用していたからです。OB・OG訪問でさまざまな企業の先輩方から話を聞きましたが、NECが最も好印象で、第一志望で入りました。
入社後、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。
入社以来、ほぼ人事一筋です。最初は勤労部という部署に配属され、労働組合対応や残業管理などを担当しました。入社2年目には育児・介護休職や短時間勤務の制度設計を任せてもらいました。入社5年目からは横浜事業場での無線事業の部門人事を務めました。当時は、まだまだ社内に女性総合職は少なかったのですが、若いうちから責任ある仕事を任せてもらえました。私は入社以来、女性だということを理由に仕事面で区別されたり、必要以上の配慮をされたりしたことはあまりありません。女性活躍推進の取り組みに関しては古くから取り組んでいた会社だと思います。
横浜事業場で勤務していた時期に出産し、産休・育休に入りましたが、子供が生後5カ月の時に職場に戻りました。育児は好きでしたが仕事も好きで、仕事を持っていない自分が想像できず、また当時は後進の人のためにも頑張らなければと思っていました。実家の近くに引っ越したり、ヘルパーさんにお世話になったりして、仕事と子育てを何とか両立させました。思えば、上司や同僚にも恵まれ、その時々で自分にとってチャレンジングな業務とフィードバックを受けられたおかげで、仕事も頑張ることができたのだと思います。仕事と育児の両立は大変でしたが、自分に負けたくない、という気持ちで乗り切りました。
働いているうちに、人事という仕事の重要性、奥深さが次第に分かってきました。適材適所を実現できたとき、社員はものすごく成長し、組織は急速に活性化します。そうした実例をいくつか目の当たりにして、人事の大切さを実感しました。
もう1つ私のキャリアに大きく影響したのは、経営というものに関してアカデミックなインプットを受ける機会を得たことです。経営研修の企画・運営に携わる中で、私自身もいろんな経営者や経営学の先生方の話を聞く役得に恵まれました。話を聞く中で、たとえば、優れたリーダーは情と理のバランスがとれていること、また利他心が求められることを学びました。他社の事例を学ぶ中で、人事の役割として、リーダーがより良い方向に変わっていけるようにリーダーに寄り添いコーチングをするということもあることを知りました。また、人事のしくみがいかに組織や社員に強い影響を及ぼすか、といったことも学びました。こうして、少しずつ経営と人事の結びつきをより理解していきました。
国内営業部門人事部門長、ビジネスイノベーション部門人事部門長はどのような仕事でしたか?
今の言葉で言えば、HRBPです。国内営業部門人事部門長時代には、3000名規模の国内営業部門の人事リーダーとして、営業人事委員会を運営したり、タレントマネジメント施策の一環としての役員塾を立ち上げたりしました。営業人事委員会は、私たち人事メンバーと営業関係役員、営業部門長等で構成される組織で、いかに女性営業職を増やすか、いかに育成目的でのローテーションを進めるか、などの重要テーマをその都度話し合いました。役員塾もその活動の中でスタートした施策で今も続いていると聞いています。
私は、人事部門の中では生え抜きでの初の女性の組織長、というのを何度か経験してきましたが、女性だからやりにくいということは一切ありませんでした。おかげさまで、私がやろうと声を上げて、配下のメンバーや周囲に協力してもらって推進していくような仕事をいくつも実現できました。相手の期待や要望に真摯に応え、理解を得ながら進めていけば、信頼してもらえるものなのですね。その意味では、どこにいても仕事の進め方の基本は変わりません。
ビジネスイノベーション部門は、国内営業部門とは別の会社かと思うほど、全く雰囲気が異なり、若い新規事業開発やエンジニアの皆さんが実に自由に働いていました。ここでは、事業創出・起業・カーブアウトなどに関する人事サポートを行いました。たとえば、NECはいまAI創薬事業を展開していますが、この事業の草創期に人事として関わりました。また、デザイン部門の立ち上げやビジネスデザイン職という新しい職種の立ち上げにも携わりましたし、当時としてはほとんどやったことのなかった海外人材を日本のポジションに直接採用するというようなことも経験させていただき、大変刺激的な毎日でした。
NECフレンドリースタフの社長も経験されていますね。
NECフレンドリースタフは、知的障がいや精神障がいなどのある方々を雇用する特例子会社です。初めて経営者の立場に立ち、障がいのある方々の働きがいを大きくするにはどうしたらよいかを考えるとともに、単なるコストにならないよう、NECグループにどう貢献するかを真剣に目指しました。法定雇用率の上昇もあり、採用と職域開拓を両輪で進め、障がい者スタフ数を着任時点の約40名から120名ほどに増やしました。従業員スタフに対しては「CSマインドの醸成」に注力しました。彼ら彼女らがやりがいを持って働き、顧客であるNECグループ社員から感謝され、それをとても素直に喜ぶ姿を見るのが嬉しかったですし、私自身が彼ら彼女らの仕事に対する真摯な姿勢や努力する姿に学ぶことも多い4年間でした。
NECを一種の実験場に見立て、先進的な「総務変革」を進行中
原田さんはNECのカルチャー変革に深く関わってきた方とお聞きしました。どのように関わったのかを詳しく教えてください。
2018年、私は人事部長代理としてコーポレート人事に異動しました。その年は新しく策定しなおした中期経営計画の1年目で、その柱の1つに「実行力の改革」という人事アジェンダが入りました。そのタイミングで、「実行力の改革」の目玉である”カルチャー変革”のリーダシップを担う、佐藤千佳が入社してきました。私はすぐに佐藤のリードのもとで「Code of Values(行動基準)」の作成に携わったり、9ブロックを中心とした新しい評価制度を導入したりしました。
組織の中で最も変わりにくいのは、組織カルチャーと社員一人ひとりの意識です。でも、当時の経営トップには、そこを変えない限りNECは生き残れない、という危機感がありました。だからこそ、本気のカルチャー変革をすると決めたわけです。
思えば、当時の人事メンバーには、カルチャー変革のために何をどのように目指せばよいかをイメージする力が不足していました。佐藤が、そのイメージをもたらしてくれました。本人の意思を最大限尊重した人事異動プロセスを作ること、HRコミュニケーションの専門家が必要なこと、現場のリーダーがチェンジエージェントとなって横ぐしを通して主体的に活動をし社内でのカルチャー変革の機運を盛り上げていく手法など、そうしたことを教えてもらいました。中でも大きな気づきだったのは、人事とトップマネジメントとの距離です。経営トップに対し人事がビジネスパートナーとしてその存在価値を示し、トップマネジメントチームとともに組織を変えていくということがどういうことかを目の当たりにしました。
ただ一方で、過去の経緯も踏まえて社内をどう巻き込んでいくか、どのようなステップを踏めばよいか、といったことは、元々社内にいた人たちのほうが詳しいわけです。こうして佐藤と元々いたメンバーが力を合わせることで、カルチャー変革を前に進めてきました。ただ、NECは大組織ですから、変革を簡単に実現できるわけではありません。むしろ、カルチャー変革には5年、10年かかるものだと考えて、粘り強く味方を増やしていくことが大切です。カルチャー変革の取り組みを本格的にスタートして6年目の今、まだ道半ばではありますが、2018年当時と比べると社内の雰囲気も随分オープンで変革の取り組みに対してもポジティブになってきましたし、それが業績向上にもつながってきているものと思います。
現在の原田さんのミッションを教えてください。
2022年に人事総務部長(2023年に人事総務統括部長に改称)に着任し、現在は労務全般とオフィス改革や防災・BCP、渉外活動などの総務、健康経営を担当しています。総務領域では、着任以降「総務変革」に注力しています。人事領域と異なり、総務領域は日本の中ではまだジョブの体系化や育成メソッドの確立が発展途上です。そこで私たちは今、FOSC(一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム)にて定義されている総務のジョブ定義をベースにして社外の総務領域のコンサルタントの支援を得ながら、NECを一種の実験場に見立て、先進的な変革を進めている最中です。
具体的には、総務機能を競争力のある形に移行すべく、総務系のグループ会社も含めた業務プロセスの見直しや総務ジョブの再定義、総務要員の採用強化やリスキリングを進めています。
幸いなことに、コロナ禍で働き方改革やオフィス改革が脚光を浴び、総務変革と戦略総務の重要性を理解してもらえる状況が整ってきました。総務の仕事が社員のエンゲージメント向上に直接的に寄与する時代になってきました。総務が黒子ではなく主役になってもいい、主役として輝くべき時期に来ていると思います。
人事総務統括部の中には、健康経営の方針策定をするWell-Being Designというチームがあり、加えて産業医や保健看護職が所属するウェルネスプロモーションセンターという組織もあって、相互に連携しながらNECグループの健康経営のレベルアップや健康支援サービスの提供を進めています。事業部門と連携して、将来の健康状態をAIで可視化する「NEC 健診結果予測シミュレーション」によって、定期健康診断の結果を生活習慣の改善に役立ててもらうような仕組みも導入しています。またフィジカルな健康だけではなく、ウェルビーングの向上を掲げて、一般的な定義である「社会的健康・身体的健康・精神的健康」に加えて「感情的健康」を掲げ、「周囲と良好な人間関係を築いている個人」と「メンバーを信頼して、尊重できているチーム」をつくることに重点的に取り組んでいます。例えば、感謝と称賛をTeams上で贈り合う仕組みである“Thanks/Praise”をスタートさせました。企画メンバーと医療職が同じ組織にいる強みを活かしてNECらしい健康経営の取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。
壁に当たって乗り越えることもぜひ楽しんでもらえたら
どんな方を求めていますか?
NECの事業や変革の取り組みに興味があって、でも一方で「こういうNECになったらもっといいのに。だから自分のこれまでの経験を活かしてチャレンジしたい」という想いもある方に入社してもらえたら嬉しいです。そういう方なら、私たちと一緒に変革を楽しめると思うからです。
変革の種はいくらでもあります。変革を進める上では、もちろん壁に当たることもありますが、壁に当たって乗り越えることもぜひ楽しんで欲しいですね。変革とは、未来を見据えてチャレンジし、その結果として進化していくことです。そのアクションをともに続けていく仲間を求めています。
Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング