NECの経営層が、本気でカルチャー変革を推進
NECに入社するまでのご経歴を教えてください。
最初は住友電気工業に入社して、8年間人事を務めました。私はここで社会人と人事の基礎を学びました。当時から上司とも話し合いがしやすい風土で、今でも近しくしている方が多くいます。社内でアメリカ人と仕事をする機会を得たことがきっかけで、1年休職してアメリカに行きました。アメリカが気に入って、今度は会社を辞めて渡米し、3年ほど現地で働き、週末は大学で学ぶ生活を送りました。今思えば、若いときの4年間をアメリカで過ごし、多様性に肌で触れられたのはよかったです。相手によって態度を変えない姿勢が身につきました。
帰国後、外資系ベンチャー企業を経て、1996年にGEに入りました。GEを選んだのは、人事を突き詰めてやりたかったからです。当時のGEは事業が爆発的に成長している時期で、日本でもスタートアップのような雰囲気がありました。若手にも大きな仕事が次々に回ってくるのです。GEはその当時から人事が経営チームの一員で、戦略とガッチリ結びついていましたから、人事に責任の大きな仕事がたくさんありました。特に私は選択肢があるなら、より大変な仕事を選ぶタイプで、背伸びしないとできないような仕事にどんどんチャレンジしていました。忙しくはありましたが、伸び伸び働けて楽しい日々でした。ずいぶんストレッチできたと思います。
2011年にマイクロソフトに移り、日本の人事責任者としてダイバーシティ推進にも携わりました。女性社員の採用や昇進を増やすだけでなく、女性技術者を増やすことを目的に、社員有志が高校で授業するなどの活動も地道に積み重ねました。2016年から働いたノキアは、研究開発を極めて大事にする会社でした。人事変革の方向性そのものはマイクロソフトに似ていたのですが、アメリカ企業と北欧企業では土壌が全く違うので、やり方が変わってくるのが面白い点でした。
なぜNECを次の職場に選んだのですか?
あるとき、「カルチャー変革のリーダーシップを執れる人を探している」と声をかけられました。NECの経営層の皆さんと対話してみたら、カルチャーを本気で変えたいと思っていることがひしひしと伝わってきました。ここには私が少しでも役に立てることがありそうだと感じ、入社を決めました。
「この仕事をぶっちぎりでやりたい、やり遂げたい!」という社員を増やしたい
入社してギャップを感じたことはありますか?
よく聞かれるのですが、カルチャー変革に時間がかかることは覚悟の上で入りましたから、その点は基本的に想像どおりで、ギャップや驚きはありませんでした。ただ、良い意味で驚いたことがあります。本社での変革のスピード感や裁量の大きさが、外資系企業とほとんど変わらなかったことです。実はNECは、1899(明治32)年7月17日、外国資本の直接投資が認められた条約改正の発効日に、最初の外資系企業として設立されました。そのルーツは今も息づいていて、外資系っぽいところがある会社なのです。これは入社するまで知りませんでした。
たとえば、私は入社したての頃から、ヒエラルキーを飛び越えて、最初から役員に直談判しに行ったりしていました。役員の皆さんはそんな私をオープンに迎えて、話を聞いてくれました。NECには、そういう行為をむしろ歓迎する面があります。このままカルチャー変革を続けていけば、他社とは一味違う会社になれると手応えを感じています。
カルチャー変革、I&Dの取組みの進み具合はいかがですか?
私たちは、2018年に始めた「Project RISE」を皮切りにして、カルチャー変革を一歩ずつ着実に前進させてきました。たとえば2021年には、社長を委員長とした「I&D推進委員会」を立ち上げ、NECにおけるI&D議論を行い、この場で優先的なアクションについて決定することを継続しています。ほかにもさまざまな取り組みを継続的・段階的に行っています。始めた頃と比べて実際に、たとえば女性役員・管理職比率は上昇しており、明らかに変わってきています。
私は、NECカルチャーの最も大きな特徴の一つは「真面目さ・誠実さ」だと捉えています。また、「テクノロジーに対する誇り・好奇心・やりがい」を大切にする社風でもあります。私たちは、こうした良さを最大限に生かしながら変革を続けています。難易度が高い挑戦ですが、スピーディーに一気に変革するだけでなく、後戻りしないように変革を継続することも大切です。経営層が2025年中期経営計画の大項目に、引き続き「文化」を強く打ち出したことは大きく、経営の強力なコミットがカルチャー変革を推進しています。
「Project RISE」の最大のポイントの一つは「働き方のマインドセットをシフトすること」にあります。ごく簡単に言えば、「私はNECでこの仕事をぶっちぎりでやりたい、やり遂げたい!」というマインドの社員を増やしていきたいのです。私たちは今、働きがいを極めて重視しています。たとえば、働き方改革の進化版として「Smart Work 2.0」に取り組んでいますが、DXやハイブリッドワークで単に働きやすさを高めるのではなく、働きがいの実感を高めることを目指しています。
変化を感じる部分を具体的に教えてください。
前例に捉われなくなってきました。仕事の進め方に多様性が出てきて、柔軟に選択をしながら進めるようになりました。全てを決めて実施する以外にも、失敗を恐れずに、走りながら小さく試して、次第に大きく推進していくプロジェクトが増えてきています。たとえ以前に失敗していても、もう一度チャレンジしてみたらいいじゃないか、新しく小さく始めるところからやろう、という流れになってきました。私のように、いきなり役員に相談しに行くような社員も増えてきていますね。それから、多様でユニークな意見を出して議論を活性化させる人も増えてきました。私たちはキャリア採用にも力を入れており、その割合はどんどん高まり、人材の多様性も高まってきています。彼・彼女たちが外からの新しい風を入れ変化している面もあります。
「NECのリソースを使い倒して、自分のやりたいことを実現したい!」という人に集まってもらえたら
今後の目指す姿、取組みについて教えてください。
NECのビジネスは今、劇的な勢いでグローバル化を遂げています。デジタルガバメント/ファイナンス事業でグローバルトップクラスのVertical SaaSベンダへ、グローバル5G事業ではOpen-RAN市場でグローバルトップシェアを目指しています。ほかにも国内IT事業、社会インフラ事業での新たな価値創造、インバウンドを起点とした新事業開発、ヘルスケア・ライフサイエンス事業、カーボンニュートラル関連事業など社会価値創造に向けた成長事業にも取り組んでいます。多様な人材が集い、イノベーションを追求する会社に向けて、これからもダイバーシティの加速、グローバルで活躍できる人材の育成を実施し、組織のグローバル化を推進していきます。やはり、カルチャー変革・組織変革を継続的に進めることが肝要です。
どんな人を求めていますか?
「先端テクノロジーや大規模ビジネスなど、NECの豊富なリソースを使い倒して、自分のやりたいことを実現したい!」という強い意欲のある人に集まってもらえたら嬉しいですね。先に触れたとおり、NECには手を挙げた人が自由に進めやすい社風が息づいています。NECのあるテクノロジーと社内の別チームを結び付けたら、想定以上の新価値を創造できた、というような可能性が、この会社にはまだまだたくさん潜んでいると思います。
私はそうした皆さんに最適な機会を提供できるよう、これからも責任を持ってカルチャー変革を続けていきます。皆さんが自分らしく働ける環境を用意します。ぜひ一緒に、NECを変えていきましょう。
Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング