暮らしに潤いを与えるブランドに興味を持ってロクシタンに入社
ロクシタンジャポンに入社するまでのご経歴や入社経緯を教えてください。
5歳から12歳までアメリカに住んでいました。臆することなく自分の意見を言える性格は、このときに養われたものです。中高時代はバスケットボールに夢中になり、大学時代は経営学を学ぶ傍ら、ダブルスクールでメイクアップアーティストの専門学校に通いました。そのままメイクアップアーティストになるか、経営学を活かしてマーケターになるかを悩んで、両方の学びを活かせるイミュ(i-mju)に入社しました。デジャヴュ、オペラ、アイプチⓇ、ナチュリエなどのブランドを展開する化粧品メーカーです。
イミュは、マーケティング調査を掘り下げて行い、社員全員で納得がいくまで議論して、本当に売れると確信できたものだけを世に出すスタイルの会社でした。0→1のマーケティングをしっかりと行う社風でした。メーカー機能もある会社で、工場で作られお客さまに届くまで全体を知ることができ、最初にマーケティングを学び、自分を鍛える場として最適だった、と感じています。入社後は、研修のための営業を3カ月経験し、ドラッグストアなど販売先に行き棚をいただく仕事もしました。その後希望していたマーケティング部に配属となり、初めの1年は商品開発部で、アイプチⓇや塗るつけまつげの担当をしました。R&Dと打合せをして新商品開発や既存商品の改良に携わる経験ができました。その後4年間は、日本で売れた商品を海外で展開する戦略チームで海外マーケティングの仕事をしました。社内の海外営業と話し合いながら、各国の文化・法律に即した販売商品選定、販売戦略構築や、コミュニケーション方法の調査と企画、薬事ラベルの作成など、マーケティングプランを企画・実行しました。
イミュでの経験を経て、マーケターとしてよりスピード感と裁量を持って経験を積んでいきたいと感じるようになり、2018年にロクシタンジャポン(以下ロクシタン)に入社しました。私の周囲の人たちも知っているほど知名度が高く、暮らしに潤いを与えるブランドである点に興味を持ちました。南フランスにあるプロヴァンス地方の壮大な自然と、人が共存する豊かなライフスタイルを、製品やサービスを通じてお伝えするというロクシタンの信念に共感しました。また、採用面接がスムーズに進み、きっと私に合っている会社だ、と感じました。実際、やりたいことができる会社でした。
ロクシタンではどのような仕事に就いていますか?
入社以来、プロダクトマーケティング一筋です。最初の6カ月はボディケアを担当し、それ以降はスキンケアを担当してきました。プロダクトマーケティングは、製品戦略の根幹を決める役割です。ジュネーブ本社や日本法人のさまざまなメンバーとコミュニケーションを取りながら、ブランドのメニューシートを開発したり、キープロダクトを選定したり、プロモーションのコンセプトを創出したりしています。ボディケアを担当した後はスキンケア担当となり、2022年秋に、フレグランスチームとスキンケアチームのマネージャーになりました。
外資系企業としては珍しく、日本法人がグローバルのほぼすべての製品開発に関わっている
ロクシタンでマーケターとして働く魅力を教えてください。
ロクシタンのグローバル本社は、日本法人の意見に極めて真摯に耳を傾けてくれます。日本法人が、ほぼすべての製品開発に何らかの形で関わっているほど、ジュネーブ本社と日本法人の関係が密です。本社側が、日本の意見をむしろ積極的に求めています。なぜなら、日本市場はロクシタンにとって非常に大きな重要マーケットで、本社にとって参考になる情報が溢れているからです。外資系企業の日本法人で働きながら、製品開発にまで関われるのは珍しいのかもしれません。マーケターとして、この点が大きなやりがいにつながっています。
一方で、最近は欧米発の「クリーンビューティー」の流行が日本にも来ていますが、こうした流れをいち早くキャッチアップできるのは、フランス発のグローバル企業だからです。日本法人のマーケターが、グローバル企業の強みを活かしながら、グローバルの製品開発にかなり深く関われる環境があります。
私の場合はプロダクトマーケティング担当者として、新ブランドを売り出す2~3年前から、ジュネーブ本社とのコミュニケーションを始めています。本社発の企画アイデアを受けて、「日本人はいま、こんなライフスタイルを希望しているので、こういう製品が好まれます」とか、「これからの日本では、こうした香りやテクスチャーが受け入れられます」といった理由付けをしながら、新製品のアイデアを本社に提案していきます。そうやってコミュニケーションを重ね、販売の約1年前までに新ブランドの精度の高いメニューシートを開発します。このメニューシートには、既にいろんな形で日本側の意向が盛り込まれています。
メニューシートが完成したら、それを社内に展開しながら、キープロダクトを選定し、プロモーションコンセプトを決めていきます。なお、ロクシタンはマーケティングとリテールの関係が良く、マーケティング・PR・リテールが一緒になって、全員で「販売するためのプロモーション」を企画・展開しています。それはグローバル本社にプロダクトを提案するときも同じで、私たちプロダクトマーケティングは、ストアマネージャーやPR担当者などの意見を積極的に取り入れながら、「これからの日本で売れる製品アイデア」を提案しています。
ロクシタンでは、どのようなマーケティング経験を積めますか?
ロクシタンの最も重要な価値観は、「WE ARE CULTIVATORS OF CHANGE(共に変化を育む)」です。時代の変化に合わせて、ワクワクする製品を次々に発売することをポリシーとしており、マーケターにとって楽しい会社です。ロクシタンのマーケターは、自分のアイデアをスピーディーに形にすることができます。しかもDM・店頭・デジタルに全方位で携われるだけでなく、これまでお話ししてきたとおり、グローバル本社とコミュニケーションを取って、製品開発にまで関与できます。自分の実績を存分に作れる会社です。
特にポイントとなるのが、グローバルの新製品開発に関与できることです。ひとつ具体例をご紹介します。2021年、私たちはジュネーブ本社から「高機能化粧水を開発したい」という相談を受けました。実は、欧米はスキンケアにあまり力を入れる文化ではありません。欧米の人たちは、化粧水をほとんど使わないのです。対して、日中韓の女性は化粧水が必需品です。そんな東アジアの文化を見たグローバル本社が、欧米でも売れるような高機能化粧水を作りたい、と私たち日本法人にアイデアを求めてきました。
大きなチャンスだと思い、私たちは積極的に提案していきました。何度も繰り返し本社と折衝して、最終的に完成したのが「イモーテル リセットトリプルエッセンス」という製品です。これは、美容液と化粧水の両方の機能を併せ持つ「美容水」です。美容水というコンセプトは、今回私たちが新たに生み出しました。3層になっており、2種類のオイル層とウォーター層が肌環境を健やかにします。肌の水分補給だけでなく、日中の肌のくすみ・ハリ不足・ゴワつきのケアも手軽にできることが評判となり、日本でも海外でもヒット商品となりました。
もうひとつ、新製品の開発ストーリーをお話しします。ロクシタンでは、ボディケアで新規顧客を獲得し、スキンケアを定期的に購入するファンになっていただく、という大きなカスタマージャーニーを描いています。そのため、ソープ・シャワージェル・ボディスクラブなどのボディケアには季節限定品が多く、対する美容液やクリームなどのスキンケアは多くの定番品があります。
ただ、ボディケアからスキンケアへのお客さまの移行を増やすためには、その間に「スキンケアのエントリー製品」、分かりやすいメリットがあって、手軽に使いやすく、試しに購入しやすい価格帯の製品があったほうがいい。そうした製品を新たに作りたい、と私たちは以前から考えていました。
そこで、私たちが本社に提案して開発したのが、「イモーテル オーバーナイトリセットセラム」です。肌の「ストレスサイクル」に着目し、1日の肌の疲れをその夜のうちにリセットする、というコンセプトの夜用美容液です。この製品は、2018年の発売から1年足らずで、ロクシタン製品で売上世界第1位になるほどの大人気商品となりました。普段の夜のお手入れにプラスするだけの手軽さ、手頃な価格帯、肌に優しい植物成分などが、複合的に人気の要因になっています。私たちが仮説と検証を繰り返した結果、ようやく完成した製品が成功を収めたことは、とても嬉しかったです。
今後、どのようなマーケターを目指したいですか?
最近、私はマネージャーになりました。現在は、上司のサポートを受けながら、マネジメントにチャレンジしている最中です。早く一人前になりたいと日々試行錯誤しています。
マーケターとしては、新たな時代のマーケティングも積極果敢に学んでいきたいです。ロクシタンでもやはりEC比率が高まっています。従来のロクシタンはリテール重視でしたが、お客さまの購買行動が変わった以上、私たちも変わる必要があります。デジタルマーケティングのスキルをより高めていきたい、と考えています。
「チャレンジしたい!」と言い続ける人は、願いをかなえてもらっている
どのような仲間を求めたいですか?
一言で言えば、「やりたいことがある人」です。周囲を見ていると、「チャレンジしたい!」と言い続ける人は、いずれどこかで願いをかなえてもらっています。ロクシタンは、社長と上層部が現場の意向や意見をしっかりと聞き、一人ひとりの願いや優れた意見をきちんと吸い上げてくれる会社です。
私の場合、「本社に行きたい!」と何度も言っていたら、先日チャンスをもらえました。モビリティ制度という人事制度を活用して、2021年3月から5月の約2カ月半、ジュネーブ本社に滞在し、本社メンバーとリアルで一緒に働くことができました。R&Dチームと日々対面でやり取りし、本社マーケティングチームに新製品アイデアやコンセプトを直接提案してきました。
ジュネーブ本社で働くことで、本社の仲間たちが、原料と生産者を本当に大切にしていること、プロヴァンス地方のライフスタイルを心から尊重していることがよくわかりました。たとえば、原料のひとつ「イモーテル」という花は、イタリア・コルシカ島の10軒ほどの契約農家と手を取り合って作り続けています。ロクシタンの担当者は、現地で農作業も一緒にしながら、彼らとの絆を深めています。そうやって地球に優しい優れた原料を調達しているわけです。そうしたことがよく理解できた、素晴らしい2カ月半でした。
付け加えると、ロクシタンはビジネスと組織が常に変わり続ける会社、トライ&エラーをし続けける会社ですから、変化を楽しめる方、自ら変化に向かっていけるような方がロクシタンに合っています。「WE ARE CULTIVATORS OF CHANGE(共に変化を育む)」というロクシタンの価値観に共感できる方なら、きっと活躍できるはずです。
Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング