自分でキャリアを切り拓きたい欲求が強くなった
アッヴィに入るまでのご経歴を教えてください。
学生時代は、バスケットボールに打ち込んでいました。バスケットボールは、日頃の練習での習慣づけが大事な「ハビットスポーツ」と言われています。このスポーツを通して得た経験が、私の考え方のベースになっていると感じます。働く上でもやはり、日頃の取り組み方や考え方が本番に出ます。だからこそ、私は日々の姿勢を大切にしています。
大学卒業後はりそな銀行に入りました。私はここで社会人の基礎を学びました。MBAをベースにしたケーススタディ型研修も豊富にあり、本当に勉強になりました。当時のロジカルシンキングのテキストは今も手元に持っているほどです。ただ、3年経ったころ、「個々人の異なる個性が活かされる組織をつくりたい」「人事で仕事をしてみたい」という欲求が強くなり、りそなを飛び出しました。本当はすぐに人事部へ入りたかったのですが、未経験の人事募集はなかなか見つからず、MRとしてブリストル・マイヤーズ スクイブに入社しました。
最初に配属された部署では全然売上が上がらず悔しい思いをしましたが、半年後に異動した別の事業部門では売上も上がり、トップMRに選ばれました。ロジカルに説明する私の営業スタイルが、豊富なエビデンスを持つその部門に適していたのだと思います。ドクターとの信頼関係もしっかり築き、2年にわたって売上全国トップ3入りを果たしました。適材適所の重要性を身をもって実感しました。その後、当時の私のジョブレベルより上の人事部門のポジションの公募を見つけ、思い切って応募しました。そうしたら人事部長が、近いうちに声をかけると言ってくれたんです。本当に半年後、人事部から声がかかって異動になりました。2007年のこと。私の人事キャリアはここから始まります。
人事としてどのようなキャリアを積んでこられたのですか?
ペイロールを経験してから、報酬企画に異動し、労務や労働組合、報酬ベンチマーク、等級ベンチマーク等の知識と考え方を実地で学びました。研究開発部門のHRBPとしては、グローバルラインの研究開発部門トップとローカルラインの日本法人トップの間で挟まれることがよくあり、そのなかで人事としての考えを示し、社員に説明ができる決定を促すことが求められるポジションでした。この時期に、人事部長がするような大きな責任を任せてもらえたのは良い経験になりました。
その後、タレントアクイジション(採用)を担当しました。私は、採用の仕事は、人材市場を把握し、自社の魅力を伝えることで、候補者が個性と能力を発揮できるポジションを提供する、という観点でマーケティングの仕事に近いと思っています。面接では、まず候補者が何を求めて転職活動をしているのかを聞きます。候補者のニーズに対して、自社の魅力がそれに答えらえるのかが最も重要な選考ポイントです。私が勤めてきた会社はいずれも拡大期にある会社ばかりで採用に力を入れていたこともあり、社長に対して直接採用プランを提案し、結果をレポートする経験が沢山できました。
フェリング・ファーマで人事部長を2年半務めた後、2017年にアッヴィに入社しました。
アッヴィの社員は働きがいを強く感じているから、自らもう一歩先にチャレンジする
アッヴィはどのような会社ですか?
アッヴィは、すでに125年の歴史のあるヘルスケアカンパニー、アボット ラボラトリーズ社の分社化により、2013年に誕生した新しいバイオ医薬品企業です。現在、日本法人は1,200名を超え、その半数近くが5年以内に入社しています。一言で言えば、若く、可能性に満ちた会社です。
当社の強みは、革新的な製品群と開発パイプラインにあり、社員が高い情熱と誇りをもって業務に取り組んでいる事です。製品群には、自己免疫疾患領域では、関節リウマチをはじめ11の適応症をもつ製剤や乾癬を治療する製剤、新生児領域ではRSウイルス感染の重症化を抑制する製剤、肝疾患の領域ではC型肝炎を治療する製剤、神経疾患の領域では、進行性のパーキンソン病を治療する製剤、がんの領域では慢性リンパ性白血病を治療する製剤などがあり、世界中の多くの患者さんの治療に貢献しています。また、バイオファーマとして研究開発にも大きな力点を置いています。業界でもトップレベルの研究開発費を投資し、その研究開発力が豊富なパイプラインを生み出す原動力となっています。そして、医薬品の提供にとどまらず、患者さん、そのご家族、地域社会、そして社員、一人ひとりの人生をもっと豊かなものにすることを「Our Principles」の一つとして、取り組みを行っています。
多くの成功の裏には、多くの失敗があります。私たちはそれが当然だと考えています。私たちは行動規範(The Ways We Work)の1つに「Make Possibility Real」を掲げていますが、可能性を形にするためには、失敗を恐れずにどんどんチャレンジする姿勢が欠かせないことを経験から理解しています。その姿勢を持ち「自らチャレンジする社員」が多いことも、アッヴィの大きな特徴です。
人事として取り組まれていることを教えてください。
2015年にジェームス・フェリシアーノが日本法人の社長に就任し、中期経営計画「5-Year Focus」を立てましたが、2つの大きな柱のうちの一つは、社員のエンゲージメントを高めることです。
たとえば、エンゲージメント向上施策の一環として、2018年に日本法人の社員から約1000枚のアンケートを集め、社員の声から「アッヴィの魅力」を3点に集約しました。これらは、アッヴィの真の姿を表しています。
● 一人ひとりに、成長を。
個人のキャリアを、可能性を、大切にする。
社員からのアイデアを、挑戦を、応援する。
一人ひとりが成長を実感できる会社です。
● 社員が育て、創っていく会社。
誰もが意見を自由に出し合うオープンなカルチャー。
新たな歴史を創る喜び。
一人ひとりがこれから育て、創っていく会社です。
● 革新的な製品とパイプライン。患者さんに新たな希望を。
「難しい領域へ挑む」。
だからこそ生まれた革新的な製品とパイプライン。
患者さんに新しい希望を届ける誇りとやりがいを持てる会社です。
このアッヴィの魅力を言語化したことで、社員一人ひとりがアッヴィの魅力を再認識し、社内が全体的にポジティブな雰囲気になりました。「社員から選ばれる会社」に一歩近づけたという実感があります。
私たちは、このアッヴィの魅力を、「More Innovation, More Potential.」というキーメッセージと共に「フライングペンギン」のビジュアルで表現をしました。また、GPTWジャパンの「2019年版 日本における『働きがいのある会社』ランキング(大規模部門)」では13位となり、社外からも働きがいのあるトップ企業として認められてきています。
多種多様な人財が活躍する時代、自分の働き方を自分で選択できるMy Journey, My Choiceによって、自己実現を果たす
今後はどのようなことに取り組む予定ですか?
超少子高齢化を背景に労働人口減少と多種多様な労働者が増えていくなか、アッヴィではどんなバックグランドを持った方も活躍できる環境を作り、選ばれる会社になるため、自分の人生を自分で選択できるMy Journey, My Choiceプロジェクトを開始しました。このプロジェクトにおいては、「5つの新しい働き方」を実現します。
1つ目は「いつでもどこでもワーク」です。コアタイムなしのフレックスタイム制度とし、働く場所も自宅にとどまらず会社のセキュリティに沿っていればどこでも働けるテレワークを可能とします。これにより、自身の生活スタイルに合わせて、働く時間と場所を自由に選択できるようになります。まさに、My Journey, My Choiceです。
2つ目は「MRの居住地選択制度」です。本来は転勤があることが前提のMR職において、一時的にキャリアアップを休み、介護や育児の大きなライフイベントを優先して、必要な居住地を選択できる制度です。会社は社員が選択した居住地に通える担当地域にアサインします。ライフイベントが一段落したら、いつでもキャリアジャーニーに戻ることができます。
3つ目は、「MRの働き方改革」です。営業現場において、ライフイベント/性別などに関わらず皆がお互いを尊重し、自身の働き方を選択できる文化を醸成し、実際の働き方を変えていきます。講演会や顧客の要望に応えるべき営業現場においても、自身のライフとのバランスをとった働き方に変革することにチャレンジします。
4つ目は、「インクルーシブワークプレイス」です。多様なバックグラウンド(LGBT、障がい、疾病、国籍など)を持つ社員が相互に尊重し、全員が自分らしく働き続けられる安心安全な職場環境と風土を醸成します。一人一人の個性を活かすことが当たり前と思える職場環境を作ることで、自身のバックグランドを公開したり、共に助け合える風土を醸成します。
5つ目は、「ネクストキャリアプラン」です。どんな世代の人財も次のキャリアを考え、もう一歩先にチャレンジするために、キャリアプラン、フィナンシャルプラン、そしてライフプランの3つをしっかりと建てて、自身の将来を設計していきます。
これからの多種多様な人財が活躍する時代において、自分の働き方を自分で選択できる、柔軟な労働環境をつくることは「選ばれる会社」になるためにとても重要です。社員を信じ、働き方を委ね、生産性をしっかりと評価するピープルリーダーの在り方についても、しっかりと教育をしています。
どのような方を求めていますか?
「勇気を持って、コンフォートゾーン(自分の心地よい場所)から一歩飛び出していける方」を求めています。たとえば、本業のMRに100%コミットしながら、自ら手を挙げて、ダイバーシティ&インクルージョン委員会(社員ボランティアで構成される)の委員長になった社員がいるんですが,こうした社員を一人でも増やしたいという想いがあります。
勇気を出してコンフォートゾーンから一歩を踏み出すためには、助け合う仲間と失敗が許容される安心安全な環境が必要ですが、アッヴィにはその環境があるのです。その一歩が新たなチャレンジとなり、大きな成長につながります。リーダーは、一歩先にコンフォートゾーンを出るように努力します。そのとき、一緒に出てくれる方が増えたら、本当に嬉しいですよね。そういう方が仲間になってくれることを願っています。