戦略や仕組みづくりのマーケティングを実践。
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング(以下、ユニリーバ)に入社したきっかけ・理由は何ですか。
大学のゼミでマーケティングを専攻し、就職活動では業界にこだわるというより、戦略や仕組みづくりから関わるマーケティングの仕事をしたいと思っていました。ユニリーバに入社を決めたのは、ユニリーバは外資系かつ消費財メーカーであり、コンシューマーマーケティングの要素が多く、自分がやりたい戦略や仕組みづくりから関わるマーケティングができると確信できたこと。もう1つの大きな理由は、面接で話をした社員一人ひとりのパーソナリティに魅力を感じたことです。単純に、私もメンバーの一人として一緒に働きたいと思いました。
入社後のキャリアを聞かせてください。
入社後は紅茶ブランドの「Lipton(リプトン)」を担当しました。リプトンでは、ブランドの核である、ティーバッグ・リーフ、そしてビジネスパートナーとの缶・ペットボトル飲料、また製品の垣根を超えたマスターブランド・コミュニケーションを担当し、ビジネスマン、マーケターとしての基礎を築きました。
次に、パーソナルケアへ異動となり、「Dove(ダヴ)」「AXE(アックス)」「Lux(ラックス)」を1年半から2年位の期間で次々と担当し、5年間で3つの基幹ブランドのマーケティング経験を積むことが出来ました。その後、スキンケア、デオドラント、メンズグルーミング(男性化粧品)、ホームケアのカテゴリーダイレクターを約3年経験し、Eコマース&デジタルマーケティングのダイレクター就任を経て、2017年から現職となります。
グローバル規模でデジタル化を加速。
ユニリーバがこれから目指すデジタル戦略についてお聞かせください。
デジタル化 ― 特にモバイルの普及によって、消費者の情報接触行動や購買行動が大きく変わってきています。それに合わせ、ユニリーバでは世界全体で「Digital 2.0」というプログラムを進めています。全社にかかわる重要なテーマとしてグローバルチームがイニシアティブを取り、担当部署だけでなく各国のCEOも巻き込みながら、デジタルマーケティングやE コマースのシステムや仕組みの開発、さまざまなデータの管理・活用、コンプライアンスの強化などを進めています。
ユニリーバ・ジャパンのEコマースは、ユニリーバ・グローバルの中でもEコマースの成長が大きく、グローバルからも注目を集めています。また、例えばあるECサイトのヘアケア部門ではユニリーバ・ジャパンが売上げトップとなっているなど、確かな実績を有しています。私は日本に「Degital2.0」をローンチしていく過程で、ユニリーバがデジタルマーケティング、Eコマースに力をいれていることを発信していきます。今後もっとそのプレゼンスを高めていきたいと思っています。
ユニリーバにおけるEコマースの役割について教えてください。
Eコマースはユニリーバにとって最も成長している販売チャネルであり、同時に重要なマーケティングチャネル、コミュニケーションチャネルでもあります。その流れの中で、私の部署の役割は、Eコマース及びデジタルマーケティングのアンビションを描き、戦略とアクティビティを立案・実施すると共に、デジタルに関わる全社のケイパビリティ(能力)を上げていくこと。さらに、大手ECサイト様とは、売上目標の設定を含めて協働し、アカウントマネジメントを行っています。実店舗を持つ小売店様と売上を取り合うのではなく、Eコマースだからできる方法で成長をめざしています。
最近「ROPA(Research Online Purchase Anywhere)」という言葉を使います。Eコマース上の製品情報や評価・評判は、消費者の「検索する」という行動により、オンライン上での購買を後押しするだけでなく、オンライン・オフラインに関わらず、消費者のブランド選択に影響を与えるものになってきています。また、Eコマースは、新商品の市場導入戦略にも変化をもたらしています。例えば、約3年ぶりとなる新商品、今年の秋に発売する新ヘアケアブランド「ラックス プレミアム ボタニフィーク」は、楽天市場様にて先行販売をさせて頂いております。これは、プレミアム価格の製品であるということも理由ですが、先行でEコマースで発売することで、製品に対する評価や評判を事前に集め、全国発売時に消費者が購入するときの判断材料をあらかじめ用意していくことを目的としています。このようにEコマースは、消費者のコンシューマージャーニーを理解し、そのマーケティング的役割を明確にすることで、単なる販売チャネルとしてではなく、市場導入戦略や販売戦略の一部となり、オフライン市場にも影響を与える活動として営業活動に活用できます。今後も社内およびお取引先企業に、Eコマースの与える影響への理解を浸透させていきたいと思っています。
ユニリーバのデジタル戦略の構想をお聞かせ下さい。
「3+1戦略」を掲げています。1)ファンダメンタル(基礎)の強化、2)集中と差別化、3)モバイル&イノベーション、+1 はデジタル・ケイパビリティです。
1番目、「ファンダメンタルの強化」。ユニリーバでは、Eコマースで製品を販売する際に必ず押さえなければならない「基本」を定めています。例えば、ECサイトのページに消費者が知りたい情報がしっかりと網羅されていること、購買意欲を高める製品画像があることです。そういった基本的だけれども重要なことを強化します。さらに、サブスクリプション(定期購買)やロイヤルティーリワードなど、Eコマースならではの基礎的なプロモーションを徹底していきます。それらのデータから消費者・ショッパー インサイトを読み取り、次のアクションに結びつけていくデータ管理能力を高めます。
2番目の「集中と差別化」。「集中」とは取組みを強化するECサイトを選択して、リソースや投資を集中することを意味しています。また、「差別化」はEコマースを販売チャネルとしても、コミュニケーションチャネルとしても活用していくために、Eコマース向けの製品ポートフォリオをしっかりと充実させること意味しています。Eコマースでは、「重い・かさばる」という理由で製品を購入される消費者が多いことから、ユニリーバでも大容量のつめかえ製品など、Eコマース向けの製品の品揃えを充実させていきたいと考えています。このように差別化を推し進め、他の販売チャネルと売上を取り合うことなく成長させていきたいです。
3番目は「モバイル&イノベーション」です。モバイル端末、いわゆるスマートフォンで製品を購入される消費者が急増していることを受けて、スマートフォンでお買い物しやすい環境をつくっていきます。まず挙げられるのが、製品ページのスマートフォン対応です。広告コンテンツも含めて、画像や動画をスマートフォンでも閲覧しやすいようにしていく必要があります。イノベーションの部分では、新しいビジネスモデルを構築していこうとしています。「Direct to Consumer」、いわゆるメーカー直販もその一つです。現在、「Lipton」では、「公式リプトン楽天市場店」や「公式リプトンYahoo!ショッピング店」に加え、自社でもECサイトを展開しています。将来的には、既存ブランドのメーカー直販に限らず、消費者の購買行動の変化に合わせ、今までにない販売・マーケティングの仕組みやビジネスモデルを開発していきたいと考えています。
最後のプラス1は、今後ECサイトを運営していくにあたり、ECチームメンバーがケイパビリティ(能力)を上げていくのはもちろんのこと、会社全体で社員のITリテラシーのボトムアップを図り、意識改革を進めていくことが必要であると思っています。
ユニリーバで活躍できる方はどんな方ですか。
弊社CEO&プレジデントのフルヴィオは、成長に向けて新しいことにチャレンジする姿勢を推奨しています。例えば、数年前にホームケアのキャンペーンに「ふなっしー」を起用し、「ふなっしー」のデザインをあしらった「ジフ」や「ドメスト」を発売したところ、非常に好評で、売上が大きく伸びました。これは、ボトムアップでいろいろな提案を出してもらって実現したものです。マネジメントが失敗を恐れて管理するのではなく、社員が自主性やオーナーシップ、リーダーシップを発揮することが重視されているのです。そのほうがモチベーションが上がる気がしませんか?
Eコマースや新しい流通の開発には、これさえしていれば良いという「正解」がありません。自ら新しい機会を探して、熱いパッションをもって、スピード感を持ってドライブしていけるような人が、活躍できると思います。新しいことを提案し、周囲を説得し、困難にぶつかっても前に進み、消費者のために、お取引先様のために、新しい価値を世の中に届けたい、新しいモデルをつくりたい、イノベーションを産み出していきたい、そういう気概があるメンバーと働きたいです。