違う個性を応援するブランドになりたい
「CLEAR(クリア)」はどのような製品でしょうか?
クリアは2014年に日本で販売開始した、スカルプケアを目的とした製品です。ブランドとしては「強さは美しい」をミッションとして掲げています。日本では昔から「出る杭は打たれる」じゃないですけど、飛び出たものを良しとしないカルチャーがありましたが、ここ10年ほどで少しずつ変わってきました。そんな変化が起きた今だから、人はそれぞれ違う個性があることを標榜して応援していくブランドになりたいというのが大きなところです。「強さは美しい」という言葉通り、人としてエッジがたっているのが良いことだということを伝えたいですね。製品としてはスカルプケアがここ5年ほどトレンドとして出てきていますが、まだ全てのニーズに応えられてない部分があります。フェイスケアやボディケアで乾いたお肌を潤すように、頭皮に栄養を与え、健やかな頭皮を実現するための処方開発をしています。もう一つ特徴として、同じブランドから男性用と女性用の製品をそれぞれ出していることがあります。
スカルプケアにフォーカスしたのはなぜですか?
大きな理由はヘアケアのポートフォリオを拡充させることです。弊社のヘアケアシリーズを見ると、ダメージケアのLux、うるおいのDove、自然志向のTimoteiなどがある中で、スカルプケアというセグメントが大きなホワイトスペースになっていました。そこを埋めることで、ユニリーバとしてお客様が求めているものを提供したいと考えました。
クリアのスカルプケアは、頭皮の奥3層※1に着目し、髪と頭皮を根本からケアするのが大きな特徴です。髪のケアだけでなく、髪の土台である頭皮のケアもすることが美髪を保つことにつながると考えています。
今後はスカルプケアでも、フェイスケア同様、混合肌用や乾燥肌用、オイリー肌用などの細かいニーズに応え、バリューを広げていきたいと考えています。
※1 角質層内の上・中・下層
媚びない美しさの訴求
男性向け製品にもフォーカスした経緯を教えてください。
男性向け製品を投入したのは、今後伸びていくであろうセグメントに早めに入っていきたかったからです。パーソナルケア市場は、市場規模でもブランディングの観点から見ても、女性向けが主でした。しかし、この5年ほどで男性向けの製品が急激に伸びてきています。ヘアケアはもちろん、スキンケアや、男性用ファンデーションなどの化粧品へのニーズも増えています。男性がスカルプケアに求めるものも変わってきました。従来の製品は増毛や育毛、フケなどへの効果をうたったものが主でした。それはそれで引き続き大きなニーズがありますが、時代と共に、男性にも美しくありたいというニーズが増えてきています。そのニーズに対応するため、同じブランドから男性用と女性用を発売して、男女ともに「強く、美しい髪」を訴求しました。 販売方法にも男性用と女性用の製品がある点を活かしています。男性用の製品、男性が自分で買う場合と、奥様やパートナーの方が買う「代理購買」があります。クリアは、「代理購買」をしていただきやすいよう、女性用製品と同じ棚に男性用製品も並べるようにしています。
「CLEAR(クリア)」のブランドイメージや広告戦略はどうやって生まれたのでしょう?
ブランドが持つエクイティーであり信念である「強さは美しい」を伝えるため、媚びない美しさや強いイメージが記憶に残るようにしました。だから、女性用製品であってもカラフルで可愛らしい色ではなく、あえて黒を基調にしています。広告にも、一般的には柔らかくてナチュラルなイメージがある宮崎あおいさんに、キリッとしたメイクをして出演していただきました。「あの人にこんな一面があるんだ」と思っていただけたら嬉しいですね。
クリアに限らず、ブランディングを考える時、万人に愛されるブランドは存在しない、嫌いな人がいないとそのブランドの意味はないと思っています。特にクリアのような、エッジの効いたブランド、出る杭になろうというようなブランドの場合には、賛否両論があるくらいのほうが正しいんじゃないかと思っています。
クリスティアーノ・ロナウドの起用もそうです。彼は、クセがあり、好きな人もいるし嫌いな人もいる。インタビューですごく強気なことを言ったりして、メディアに嫌われたりもするけれど、彼のことが本当に好きなファンも世界中にたくさんいますよね。エッジが効いている上に、グローバルなセレブリティーだということで起用しました。
クリアはまだ若いブランドなので、メッセージモデルでも冒険ができたと思いますし、地方の営業と連携して各エリアそれぞれに効果的なマーケティングをしていく戦略も実行できました。今後もチャレンジを続けていきたいです。
ターゲットは「消費者」ではなく「人」
御社のマーケティング戦略とはどのようなものでしょうか?
“Put People First”、 “Build Brand Love”、 “Unlock the Magic”という3つの大きな柱があります。
一つ目の“Put People First”は、お客様をマーケティング戦略や消費者調査にでてくる「消費者」「お買い物客」としてではなく、日常生活のなかにいる「人」として見るということ。「人」に製品の存在が伝わるコミュニケーションをすることを大切にしています。
2つ目の“Build Brand Love”は、「ブランドそのものを好きになってもらう」ブランディングをすることです。Doveに入っている成分が良いからDoveを買うではなく、Doveが好きだからDoveを買う。「欲しい製品」ではなく「愛されるブランド」になるのが理想です。
3つ目の“Unlock the Magic”は、マーケティングにはロジックだけではなくマジックも必要ということ。データやロジックだけで印象や記憶に残るものを生むのは難しいものです。その国々での状況や、その時々の変化に応じて、クリエイティビティを活かしていかなくてはいけません。
クリアのマーケティング戦略もこの三つの柱に基づいて作られています。
御社のビジョンや取り組みについてお聞かせください。
グローバルCEOのポール・ポールマンが 導入した「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」により、環境や社会への取り組みを加速しています。例えば、ユニリーバはヘアケア製品や食品の原料としてパーム油を使用していますが、適切に管理して育てられたパーム油を選んで購入しています。これは森林破壊をなくし、オランウータンなどの動物の住処を守ることにもつながります。また、日本では、昨年11月から国内の全事業所の電力を100%自然エネルギーに切り替えました※2。短期的にはコストが増えますが、企業として長期的に成功するためには、とても重要なことだと考えています。
※2 日本国内の全事業所で使用する電力約600万kWh分を、グリーン電力証書を利用して100% 自然エネルギーに切替。使用電力量は2014年実績に基づき算出。
ユニリーバが求める人材像を教えてください。
まず、「アントレプレナーシップ(起業家精神) 」があることが大事だと思います。ヨーロッパ企業の特徴なのかもしれませんが、プロセスやルールがガチガチに決まっておらず、結構ゆるいところがあります。その広い振り幅の中で、どれだけアントレプレナーシップを持って進めるかで、戦略を実行できるかどうかや結果が変わってきます。どう仕事を進めるのか、どこまでするのか、誰を巻き込むのかには、毎回答えがありません。ですから、「マーケティングの責任範囲はここまで」という線引きがないとキツい人には少し厳しいかもしれません。ゼネラルマネージングを経験したい方には向いていると思います。社内は何でもオープンに話せる雰囲気ですし、何か頼んでも「No」と言われることがほぼありません。人をうまく巻き込んで、采配してドライブできる人は活躍できますし、仕事を楽しんでいると思います。
もう一つが「レジリエンス」があること。へこたれても短期間で立ち直れることが大切です。仕事をしていれば、失敗することなんて何回もあります。それをポジティブに捉え、失敗から学んで、次に活かして行動できる人ですね。
最後に、人を通して結果を出せる「チームプレーヤー」であることも大切です。自分の仕事で、自分のチームだけではなく、他の部門の人たちやお客様もハッピーにしたいと思える人が向いています。今は大変でも、1、2年後に成果が出て、多くの人に製品を届けられれば笑顔も増えるから、頑張るんだと。そういう風に人を幸せにしたいと心から思い、行動できる人。そんな人と一緒に仕事をしていきたいです。