BBは電力技術・オートメーション技術で世界のインフラを支える企業
ABBという会社の歴史や事業についてお聞かせください。
ABBは、スウェーデンの電灯と発電機の製造会社であるAseaと、スイスの高圧送電会社であるBrown Boveriが合併し、世界初の高圧送電会社として1988年に設立されました。現在は世界約100カ国で展開、合計14万5000人の社員が働くグローバル企業です。
電力技術とオートメーション技術で世界中のインフラを支えており、電力のインフラと、産業用のインフラ、プラントや工場・交通機関に関わる機械やシステム、それにまつわるサービスの提供を行っています。具体的には、「Power Products(変圧器、開閉装置、その関連設備等)」「Power Systems(変電所とその自動化システム、フレキシブル交流送電システム等)」「Discrete Automation & Motion(ドライブやモーター、発電機によりオートメーションアプリケーションに電力、制御技術を定常すること、産業用ロボット)」「Low Voltage Products(電力サーキットブレーカー、スイッチ、制御製品等の製造)」「Process Automation(オイル・電力、化学、紙、船舶等の業界の顧客に、生産性向上と省エネ効果に優れたソリューションを提供)」の5つの部門で事業を展開しています。
ABBのなかで、日本向けに技術を提供するのが、私たちABBジャパンです。インフラ領域において外資系企業の参入が難しいといわれる日本市場ですが、前身企業の時代から過去100年以上にわたって市場開拓を進めてきました。
御社の強みや優位性についてお聞かせください。
事業領域が広いため、電力、産業分野に関わることはほとんど一気通貫してできる点が大きな強みであり優位性です。特に、当社が60年前に開発した直流送電(HVDC)の分野では圧倒的な強さを持ち、グローバルNo.1のポジションを確立しています。海底送電プロジェクトもNo.1で、世界中で送電プロジェクトに携わってきました。ABBのHVDCテクノロジーは送電ロスが少なく、据え付け費用が安いという評価をいただいています。また、何かひとつの分野に特化するのではなく、5つの事業でそれぞれ収益構造が成り立っているという点で、とても安定的なポートフォリオを持っています。また、それぞれの事業において利益率がしっかり確保されているのも特徴的で、そういった部分が企業の体力に繋がっていますね。
現在は、元々の強みであるオペレーションテクノロジー(OT)と、ITの融合領域を強化しています。アセットマネジメントをITで行う企業を買収するなど、技術というハードを入り口に、ソリューションやオペレーションへ参入し、電力事業領域でのIT活用を拡大していきます。このヴィジョンを達成するために、M&Aなどの経営戦略はもちろん、人と組織力を強化することにも重点を置いていく方針です。
また、組織としてみたABBの優位性は、世界の各拠点との風通しの良さにあると思います。スイスのチューリッヒにある本部からのトップダウンではなく、世界各地にあるビジネスの拠点でビジネスの戦略を立てることができるのが特徴です。本社が決めたグローバルスタンダードを一方的に押し付けられて、成果だけが求められるということはありません。本部が提案するフレームワークに対しても、それがそれぞれのビジネスの状況や国の状況に当てはまるかどうかを話し合う場もあります。
私が驚いたのは、本部のマネジメントとの会議の際、「第一言語が英語でない人がなんとか発信しようとしていることを汲み取れるかどうかは、私たちの能力にかかっている」という発言があったことです。言語以外のこともそうですが、相手を受け止めて主張を引き出すのはリーダーの役割だというスタンスを全世界的に取っているのがABBなのです。世界中の拠点とフラットに意見を交換できるカルチャーが、ここの最大の魅力ではないかと思います。
将来のチェンジエージェントを育成したい
ABBの人財開発戦略について教えて下さい。
ABBの人財開発戦略の根底には「人は財産であり、育てていくもの」であるという想いがあり、人財開発戦略の目的は社員が「成長」し、より創造的で強固な組織をつくり、ビジネスを成功に導くことです。ABBの考える「成長」とは、人間としての幅が広がることを指しています。できなかったことができるようになるのはもちろん、何かを見る時の視野が広がることも「成長」です。そうして視野が広がることで、変化に対応する柔軟性が増し、創造力がつきます。その結果として、リスクをとれるようになるのです。そこまで含んで「成長」と定義しています。このABBという14万5,000人のネットワーク、5つの事業部の総力を結集して、ビジネスチャンスを探ることのできる人間を育てるのがABBの人財開発です。
ABBの社員の育て方は、採用時の専門分野に特化してキャリアパスを築いていく他の外資系企業と比べると、非常にユニークです。「人は動かして育てるもの」であるという考え方をベースに、新卒の方でも中途の方でも、5つある事業部のうちいくつかを横断しながらキャリアパスを築いてもらっています。組織を動くという変化に断続的に直面することで、新しい知識が入り、新しい経験を通じて「成長」していきます。また、人は飽きがくるとどうしても成長が止まってしまいます。成長が止まってしまった人の目の色ってすぐわかるじゃないですか。いつでも社員の目が輝いていられるように、どんどん人を動かして成長を促進するのがABBの人の育て方なのです。
また、ABBは社員に「パーソナルリーダーシップ」を求めています。パーソナルリーダーシップとは、「人に対するリーダーシップ」です。人は当然一人では仕事はできません。組織を率いるリーダーシップのみならず、人との関わりのなかで誰もがリーダーシップを発揮すべきだと考えているのです。3日間かけてこの「パーソナルリーダーシップ」をはじめとしたABBのリーダーシップの考え方を学ぶ世界共通の「リーダーシップチャレンジプログラム」という研修がありますが、これは全世界の社員が必修となっています。
ABBでリーダーを目指すにはどのような資質が求められるでしょうか?
「仕事へのモチベーションがあること」「リーダーを目指すモチベーションがあること」、それから「ラーニングアジリティ(学習の機敏さ)が高いこと」の3点があげられます。単に仕事の能力が高いだけでなく、経験から学んで概念を構築し、次を見越してどういう変化が必要なのかを考え、変えていく人財、すなわちチェンジエージェント(改革の推進者)になれる社員が、次世代のリーダーを担っていきます。
リーダーにとってもうひとつ大切なのが「共感する能力があること」だと私は考えています。例えば、とてもポテンシャルが高く、仕事の能力も高い社員がいたとします。しかし、部下の立場に立って噛み砕いた説明ができなかったり、業績が伸び悩んでいる部下を受け入れることができないと、チームとしての仕事は成り立ちません。そうすると、いくらチェンジエージェントになろうとしてもなれません。ABBはポジションによるヒエラルキーがあまりない社風なので、権力がある、仕事ができるというだけでは人は動きません。仕事は一人では完結しませんから、人間関係のなかでいかに自分の能力を効果的に発揮できるか、人という変数のなかで自分をどうやって生かしていくかということもリーダーは問われます。共感する能力を育てるためには、色々な環境に身を置いてもらうという方法を採っています。例えば、今までとは全く違う領域を担当する、海外赴任の経験を通じて文化的背景が異なる現地の人と一緒に仕事をする、など新しい環境で人間関係を構築するなかで、少しずつ自らを省みつつチームで他者と協働することがいかに重要かを理解していくことができるようになると思います。そういった意味でも、組織を横断して人を動かすという戦略は有効だと思います。
世界100カ国・14万5,000人のなかで、いかに自分を輝かせるか
ABBで活躍できる人財とはどのような人財でしょうか。
基本的な素養として、主体性があること、変化に対して柔軟であること、そして自立した個人として健全な自尊心を有していることです。ABBは会社がキャリアのレールを敷くのではなく、自らのキャリアに対する責任は自らが負うという考え方の企業です。決まった道がないことを楽しめたり、曖昧さに対する耐性が高く、また適応力の高い人が活躍できる環境だと思います。そのためには、ハンドルの“遊び”を多く持っていることや、常にモチベーションを高く維持できることも重要です。会社はそれぞれの人々が自分の人生を生きるための土壌で、仕事はツールです。「仕事を通して、自分の人生のオーナーになる」という気持ちで働ける人を求めています。それが、プロフェッショナルな仕事につながると考えているからです。自分の人生を生きているという意識を持ってほしいと思っています。
あとは、情熱がある人。仕事とプライベートをキッパリ切り離す人や休日をしっかり取りたいという人よりも、土日も仕事のことを考えてしまうくらいの情熱がある人が輝ける場所だと思います。実際にそういった情熱のある社員がたくさんいる環境でもあります。時に社内で言い争いになることもありますが、喧嘩できるくらいの情熱がある人が集まれば、ビジネスはきっと成功するでしょう。そのような強い情熱を受け止めてくれるカルチャーがあるのがABBの良いところでもあります。
最後に、転職を考えている方にメッセージをお願いします。
ABBは自分の能力を存分に発揮したいという人に、色々な機会を提供することができる会社です。働き方、扱う商品、キャリアパス、グローバルな活躍など、魅力を感じる部分は人それぞれだと思いますが、「自分で何かをやりとげたい」「自分の可能性を伸ばしたい」「仕事を通じて楽しみたい」という人には、非常にいい環境だと思います。整いすぎている人より、多少エッジが立っている人のほうがいいかもしれません。粗があってもその粗を勢いで補ってしまうような人。変化を楽しむ“遊び”があり、組織をかき回してくれるような人をお待ちしております。