INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ダイソン株式会社 遠藤 亮介

人事×経営 〜人事戦略を語る vol.17

ダイソン株式会社

Head of HR

遠藤 亮介

大学卒業後、日系企業での営業職を経て、米系ヘッドハンティング会社に入社。ヘッドハンターを経験した後、2005年に独系製薬会社に転職し、人事としてのキャリアをスタートさせる。その後、米系ラグジュアリーアパレルのHRビジネスパートナーのディレクター職、英系FMCG(日用消費財)のジャパンHRディレクターを歴任し、2016年から現職。

公開日:2016年12月8日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

大胆さと慎重さを使い分ける

はじめに人事に携わるまでのご経験を教えてください。

hr18_02幼少期は大阪府で育ち、小学校高学年から香川県に住んでいました。香川の風土・文化は今でも好きで、時折地元に帰っています。小学6年生の時に選抜され、それ以降、高校3年生までは陸上部に所属し、短距離走者として県代表で四国大会に出たこともあります。その頃から「ある特定の分野で一番になりたい」という志向が強く、どんな過酷なトレーニングにも絶対についていくという気持ちで頑張っていました。基本的には落ち着いている性格ですが、今でも仕事や勝負ごとになると、本来の志向性が出てくることが頻繁にあります。

大学では新たなことにチャレンジしようと決めておりましたので、大学側からの陸上部入部へのお誘いをお断りし、違う運動部に入りました。そして、学業とアルバイトにも専念しました。学んだのは異文化間コミュニケーション。専攻した理由は、対人コミュニケーションを磨いていきたいという思いがあったことと、漠然とですが、日本発信で海外との何らかの架け橋になりたいという思いがあったからです。アルバイトも対人コミュニケーションをという観点で接客業ばかり選んでいました。

大学卒業後、日系企業で、営業・営業企画職として5年半働きました。3年目にマネジャーとなり、24歳にして突然の年上部下の方々のマネジメントに苦労したのを覚えています。その後、海外との架け橋になりたいという学生時代からの思い、コミュニケーション力、5年半で培った営業力等を活かすため、米系ヘッドハンティング会社に転職。海外経験がプライベートの旅行以外無かったため、外国人や帰国子女ばかりの職場環境下で、特に最初のうちはビジネス英語でたくさんの恥をかきました。今振り返ると、20代のうちにそうした経験ができて、本当に良かったと思っています。最終的にはそこでHR専門のヘッドハンターとなったのですが、それが私のキャリアを大きく左右しました。

はじめて企業人事としての仕事に携わったのは、2005年のことです。ここで、事業会社に転職することが最善の選択だと考えたからです。ヘッドハンターの仕事をすることで、事業会社側で働きたい思いが強くなり、30代半ばになると、事業会社に入るチャンスは減っていきますから良いタイミングでした。事業会社の経験を踏むことはヘッドハンターとしてもプラスになりますから、企業人事として性に合わなければヘッドハンターに戻ればよいのです。HR担当ヘッドハンターの私が転職すべきなのは、当然「人事」、と心に決めて転職したのが、独系製薬メーカーのベーリンガーインゲルハイムでした。

人事としてどのようなご経験をされましたか?

ベーリンガーインゲルハイムは今でも本当に良い会社だと思っています。5年近く在籍し、前半は採用、後半はビジネスパートナーを担当しました。当時のベーリンガーは毎年80?150名の新卒採用を行っていました。それだけ採用するためには、10,000人以上の学生をセミナーに動員しなくてはなりません。新卒採用は期間限定のように思えるかもしれませんが、実際は1年がかりの大イベントでした。さらにキャリア採用も受け持っており、とにかく体力勝負の仕事でした。1年中、日本各地を飛び回りながら、数多くの学生や社会人の方々と接しました。おかげで会社のこと、人事のことをよく学べましたし、「インターナルカスタマー」である社員の皆さんとのコネクションも増え、人事キャリアのスタートとしては申し分のない経験ができたと思っています。

2008年からはビジネスパートナーとして、事業企画本部やマーケティング本部の方々に寄り添った人事施策を進めていきました。ここで学んだのが、「出るところは出る」けれども「出ないところは出ない」ということの大切さです。「大胆さ」と「慎重さ」をうまく使い分けることの大切さといってもよいかもしれません。重要なシーンでは、人事が主導して積極的に新たなチャレンジを大胆に起こしていく必要があります。しかし一方で、どれほど優れた施策でも、新しい取り組みにはネガティブな反応が出てくるものです。いつも人事の視点だけで進めていくのがよいわけではありません。ときには、冷静になって周囲の意見に耳を傾ける必要がありますし、場合によっては人事が前面に立たず、全てをビジネスサイドの部門の方々が進めているように見せる必要もあるのです。大胆さだけではダメですが、慎重なだけでも良くありません。人事には、大胆さと慎重さを使い分けるバランス力が必要なのだと思います。

次に、米系ラグジュアリーアパレルのラルフ ローレンに転職しました。HRビジネスパートナーの責任者としてキャリアアップできることと、リテールビジネスを学べることが魅力でした。また、ベーリンガーとは真逆と言ってよいほど違うカルチャーとリテールビジネス、しかもラグジュアリーアパレルへのチャレンジが興味深く、転職を決めました。今思い返せば、毎日がドラマに満ちていて楽しい日々でした。スピーディーでめまぐるしく変化していく環境は私に合っていたと思います。途中からは、HRビジネスパートナーの日本法人のトップポジションで、海外に向けてレポートしたり、APACやニューヨーク本社と協働や折衝をしたりするといった経験を積めたことは、今でも大きなプラスとなっています。

2012年末頃、英系FMCGのレキッドベンキーザー・ジャパンから声が掛かり移りました。生活に身近な日用品を扱うのがこれまた新鮮に映りましたし、何より30代の私にとって、日本の人事部門のヘッドと日本のリーダーシップチームの一員というポジションは惹かれるものがありました。この会社での私のミッションは体制・風土改革。そのため入社直後に私がまず決めて実行したことは、120名ほどの日本の社員全員と1on1セッションを行い、一人ひとりに耳を傾けた上で、試行錯誤しながら組織を変えていくことでした。人事には果たして正解があるのか分かりませんが、それがHR責任者としての難しさであり、魅力であり、面白さであり、大きなチャレンジなのです。この3年半の経験で、人事は、「人」、「組織」、「カルチャー」を「描き」「模範となり」「伝達し」「変革させ」「浸透させる」ことを体現できる大きなミッションと責任を持っていることが分かり、その自負を持って責任を果たせました。

2016年5月にダイソン日本法人のHead of HRに就任しました。グローバルの中での日本法人の存在感が大きいこと、イコール、HRとしてもAPAC内や全世界のダイソングループに対して模範となり率先して存在感を出せること、そして、成長著しい組織とビジネスであること、私が貢献できる可能性、成長できる可能性の両方が十分にあること、そして何よりも、常に革新的で驚きを与える会社の姿勢に共感し、入社を決断しました。

サプライズの仕掛け人になれる会社

ダイソンにはどのような特徴がありますか?

第一に、ご存知の方が多いとは思いますが、ダイソンは「エンジニアドリブン」の会社です。グローバルで6,000名を超える社員がいますが、そのうち約3分の1がエンジニアで、彼らが日々取り組む研究開発を通じ生み出されるテクノロジーが大変重視されており、全てがテクノロジーからスタートする点は明らかに独自性があり他社と異なります。テクノロジーが重視されているからこそ、技術立国・日本がリスペクトの対象となっており、日本法人の優位性が高いのです。特に創業者・ジェームズ・ダイソンが日本人のテクノロジーに対する理解や姿勢をこよなく愛していることが、私たち日本の社員にとってポジティブに働いています。

第二に、ダイソンは未知のカテゴリーにチャレンジを続ける会社です。掃除機からスタートしましたが、現在は羽根のない扇風機から始まった「空調家電」、ハンドドライヤー、ライト、そして2016年春に周囲を驚かせた「ヘアドライヤー」と次々にカテゴリーを増やしています。おそらく今後も新たな領域に挑んでいくでしょう。ダイソンに入れば、そのサプライズの仕掛け人となれる可能性が十分にあります。たとえば、ヘアドライヤー「Dyson スーパーソニック」は、世界で初めて発表・発売したのが日本でした。そのため、日本法人のメンバーが製品仕様の変更などに大きく関わっています。今後もそうしたチャンスはきっとあるはずです。

第三に、現在グローバルで大きく成長を遂げています。グローバルでは2020年までに組織を2倍にすることを目標に動いており、日本法人も同様に、積極的に組織を拡大していっております。グローバルでは新卒採用含めた若手社員の登用に力を注いでおり、日本法人もこの数年以内に初めての新卒採用に取り組む予定です。また、近隣のアジア諸国のビジネスも爆発的に伸びています。今後の日本法人は、それらの未完成な組織・ビジネスをサポートしたり、ロールモデルを担ったりすることにもなるでしょう。

人事戦略としてはどのような施策を進めているのですか?

人事の責任者として私が最もクリティカルだと考えているのは、「エンプロイヤーブランディング」です。日本にはダイソン製品に興味を持つ方はたくさんいるのですが、社員としてダイソンの一員となるイメージが湧く方は少ないのが現状です。この大きなギャップを埋めるため、タレントドリブンで外部に情報を発信していき、ダイソンで働きたい方を市場に増やしていきたいと考えています。目標は、社員からの紹介だけでも十分に採用できるだけの企業ブランド力を身につけることです。また、エンプロイヤーブランディングはインターナルコミュニケーションにも効果があり、従業員のリテンション施策として有効です。もともと外資系企業の中では珍しいくらいの良好なリテンションが出来ている優位性のある組織です。ただ、そこに更なる組織力・独自性のあるカルチャーを築いていくことがロイヤリティを高めることに繋がるはずです。この2つの目的から、エンプロイヤーブランディングに力を入れています。

私たちは今、さまざまなエンプロイヤーブランディング施策に取り組んでいますが、ここではそのうちの2つをご紹介します。1つは、「主体的なキャリアディベロップメント」です。従来の人事評価制度には、「点数をつけるフラストレーション」があったと考えています。上司の一方的な期末評価は、部下の不満を大きくするだけでなく、部下が自発的に動くチャンスを奪っていたのではないかと思うのです。また、上司が常に正当に評価できるとは限りません。さらに言えば、評価すればよいと考えて、上司と部下がコミュニケーションを疎かにしていた面もあります。

そこで私たちは今年から、スタッフが自分のキャリアを「主体的に考え」、上司と「対話をする」方式に変えました。しかも、上司はそれを評価するのではなく、年間を通して常に部下と1on1をすることで、タイムリーにフィードバックを与え、話しあいをするのです。私はこの方式が、本来あるべき姿だと思っています。上司と部下がキャリアについて話しあう時間が増え、上司が部下のメンターとなる機会が増え、主体性を持った組織風土にすることが、長期的に見て、社員のキャリアには確実に良い効果があるはずです。

この改革を進めるにあたって、Dysonカンバセ―ションの5コアスキル(コネクト/アクティブリスニング/クエスチョン/タイムリーフィードバック/サマライズ)を、この秋に全管理職にトレーニングしました。色々な体感やロールプレイも通して、このセッションの評判は上々で、コアスキルを社内の共通言語にして、施策の価値を広める上で一定の意味があったと考えています。来年第一四半期には、全スタッフ層を対象にしたトレーニングも行う予定です。

もう1つは、「カルチャービルディング」です。もちろん、グローバルに共通するダイソンカルチャーはあるのですが、カルチャーはローカルごとに違う面があり、各国の法人にはいかにローカライズするかが問われています。ことカルチャーに関しては、トップダウンだけでなく、ボトムアップの社員コミットメントが重要となってきます。そこで私は、トップダウンとボトムアップの双方向コミュニケーションを促すために、今年夏に「ダイソンジャパン カルチャービルディングコミッティー」を立ち上げ、全社員からメンバーを募りました。その結果、12名もの社員が自ら手を挙げてくれたのです。彼らは「自分たちが会社のカルチャーを作り上げる」という想いを持って、さまざまなカルチャービルディング施策を立ち上げ、率先して熱心に取り組んでいます。私は、サポーターとして彼らを後ろから支える役目に徹しています。重要なのはボトムアップですから、ここでは意図的に前に出ないようにしているのです。また、企業カルチャーは、HR施策の1つとして各社取り組んでいるかと思いますが、どうしても後回しになり優先事項から落とされがちです。私は、カルチャーこそが「軸」であり且つ時間を要することと考え、ダイソンのHead of HRに就任後、すぐに着手する決意をしました。迅速に且つインパクトのある「仕掛け」をすることは常に心掛けております。

カルチャービルディング施策の例として、先日は、日本法人本社オフィス内で「ダイソンジャパンハロウィン・デイ」を設けました。意外なことに、初の試みだったそうです。その日は皆が仮装して仕事に臨み、カフェスペースでランチと夕方にパーティーを開催して、ベストコスチュームアワード、ベストクリエイティブアワードを決めました。2つの賞を獲得したのは、ダイソン製品の様々なパーツを全身に鎧のようにまとったコスチュームを創り上げた研究開発の若いスタッフたち。革新的でクリエイティブなダイソンを象徴するシーンでした。

また、現在は「クロスファンクショナルランチ」を開催中です。社員同士のつながりを増やすことを目的とした施策で、全く違う部署の6?8名が集まってランチをするというものです。もちろん、ただ単にランチをするだけではありません。ある題目に対して、力を合わせてアウトプットを出してもらうのです。このランチ企画は、組み合わせは無限大ですから、来年以降も継続実施していきます。他にも、ダイソンジャパン公式運動クラブも先日設立しました。来年以降は、全社員運動会といった施策を検討中。今のところ、カルチャービルディングコミッティーは極めて順調で、間違いなくエンプロイヤーブランディングにも良い影響を及ぼすでしょう。

「探究」「企画」「実行」する方が活躍できる

どのような方がダイソンで活躍できるのですか?

hr18_05ダイソンには6つの「Behaviours」があります。Ingenious(独創家)、Explorer(探検家・探究家)、Architect(建築家・企画者)、Attuned(順応者)、Fighter(戦闘家)、Shrewd(洞察者)の6つです。

私自身がそのうちで特にダイソンらしいと考えているのが、「Explorer」、「Architect」、「Fighter」の3つです。ダイソンは「エンジニアリングを通じて日常のフラストレーションや疑問を解決する」会社です。そのためにまず欠かせないのが「好奇心・探求心」です。第一に「Explorer」であることが大切なのです。その上で、企画を立て(「Architect」)、物事を実行し(「Fighter」)、初めて成果が出るというわけです。たとえば、カルチャービルディングコミッティーに「好奇心」を持って参加し、「主体的に企画を立て」、「施策を実行」していくにはこの3つが必要ですし、主体的なキャリアディベロップメントもまったく一緒です。さまざまな制約を乗り越えて日本のビジネスを大きくしていくには、「Explorer」、「Architect」、「Fighter」の3つを軸に、この6つの「Behaviours」をバランス良く備えた方が特に活躍できるのがダイソンです。

最後にメッセージをお願いします。

今後、組織の拡大に伴い、新規ポジションが増えていきます。それに合わせてエンプロイヤーブランディングをさらに加速させていきたいと考えています。また、日本法人に所属しながらグローバルで活躍できるチャンスを増やしたり、逆にアジアの優秀な人材を日本に引っ張ってきたりといった「グローバルモビリティ」の活性化を図っていきたいとも考えています。

繰り返しになりますが、ダイソンは日本法人の優位性が高い会社で、日本法人に入社したら、ダイソンの画期的なプロダクト、想定外のサプライズがあるプロダクトを世に出していく一員としておおいに活躍できる「可能性」があります。きっと飽きさせない環境の中で、活躍しながら成長していただけると思います。ダイソンにご興味をお持ちの方にお会いできることを楽しみにしております。

ダイソン株式会社

1978年のスタートから5年と5127台の試作品を経て、ジェームズ ダイソンは世界初のサイクロン掃除機「G-Force」の開発に成功しました。「G-Force」が初めて売られたのは最新テクノロジーへの関心が高い日本でした。そして、「G-Force」の売り上げをもとに設立されたのがダイソンです。ダイソンは、他が軽視する日常の問題を解決する会社です。掃除機の紙パックが目詰まりをおこし吸引力が低下することや、扇風機の風がムラを作っていることに着目し、これらの問題を解決しました。現在、ダイソン製品は75カ国で販売されています。ダイソンは、一人のエンジニアのアイデアからスタートし、今ではグローバルで従業員6000人、そのうち約3分の1がエンジニアや科学者であるテクノロジーカンパニーへと成長しました。しかし、そこで立ち止まって現状に甘んじることはありません。今後もエンジニアと科学者を増やし、新しいアイデアから革新的な製品を生み出します。

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