INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ギャップジャパン株式会社 志水 静香

人事×経営 〜人事戦略を語る Vol.16

ギャップジャパン株式会社

Gap人事部 シニアディレクター

志水 静香

西南大学文学部卒業後、日系ソフトウェア・サービス会社に入社。入社とともに米国オハイオ州シンシナティ市に勤務。その後、AMD、マイクロソフトなどの外資系IT企業を経て、1995年にゼネラルモーターズに入社。人事部にて職務評価、報酬制度設計などの主要プロジェクト業務に従事。1999年ギャップジャパンに入社し、採用、研修、報酬管理などをはじめとする人事全般の管理業務をプロジェクトリーダーとして牽引するとともに人事制度基盤を確立。2011年現職のシニアディレクターに着任。2013年よりGapブランドの本社および店舗部門人事を統括する。2013年3月法政大学大学院 政策創造研究科雇用政策専攻。修士課程修了時に最優秀論文賞を受賞。非正規社員の能力開発・キャリア開発、女性活躍推進、ダイバーシティ経営などを中心とする雇用政策を研究。

公開日:2016年10月14日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

5年で組織の土台をつくる

ギャップジャパンに入社するまでの経緯を簡単に教えてください。

cg_077_05大学卒業までは福岡県で過ごしました。子どもの頃から人前で話したり、友達を作ったりするのが苦手だったので、それを改善しようと大学ではコミュニケーション学を専攻。大学卒業後に上京し、大企業からのオファーを断り、100名規模の日系のソフトウェア・サービス会社を選択し就職しました。規模が小さい会社のほうがさまざまな経験をさせてもらえると思ったのが理由です。予想どおり、入社研修後いきなり米国で働くチャンスが訪れました。新入社員全員が尻込みするなか、好奇心が強い私は自らそのアサインメントに手を挙げました。米国では、当時の副社長のサポート担当としてさまざまな管理業務に携わり、多くの失敗を通じ、日々たくさんのことを学びました。なかでも日米協働チームで働く環境において価値観や仕事に対する考え方の違いに強いショックを受けました。どんなに忙しくても早めに仕事を切り上げ教会に行く、家庭や地域のイベントを重視する。一方で、将来何をしたいのか、どこを目指すのかを常に考えていて専門能力を磨き続ける。就職する前から自身のプロフェッショナリティを高めようとしているアメリカ人の仲間の人生観や職業観はその後の私のキャリア形成において強い影響を与えました。

帰国後、「何の専門性のない自分はこのままでは何も成し遂げられない。自分の武器になるようなスキルや能力を磨かねば」と一念発起して、複数の外資系IT企業に勤務。それらの企業で英語、プレゼン、問題解決能力、そしてITスキルなどを教わると同時に業務外でもビジネススクールに通うなど、とにかく自身の専門性を高めるために学び続けました。それらを使ってこれから何をやろうかと考えているとき、機会にめぐまれ人事でキャリアをスタートすることになったのです。まったく人事経験がないにも関わらず、いきなりエグゼクティブ報酬制度のプロジェクト・職務・評価制度の設計から始まり、人事機関システムの導入など人事制度・企画業務などに深く関ることができたのは非常に幸運でした。先進的な人事制度をもつ米国企業において人事エグゼクティブや外部の人事専門家から学んだことが今も基盤になっています。そして1999年、縁あってギャップジャパンに転職しました。

入社当時ギャップジャパンでの仕事はいかがでしたか?

当時、ギャップジャパンは日本に進出して間もない状況で、企業創成期という感じでした。店舗展開は急速に進んでいたのですが、本社の部門は規模も小さく、システムや制度面においてバックオフィスの整備が追いついていない状況でした。「5年で組織の土台をつくる」と決めて、とにかく就業規則や各種ポリシー制定、評価報酬制度の設計、人事システム導入など基本的な人事サービスを提供するための基盤づくりに奔走しました。成長を実現する強い組織をつくるためにもまずは環境を整備する必要があったのです。何もないところ、ゼロから組み立てていくプロセス自体が非常に面白かったです。多様な価値観を持つ人たちがさまざまなアイディアを出し合って一つの目標に向かって仕事をするのは、時間がかかって大変なこともありましたが、一方で学びも多く、Gapのブランドと価値観に共感して集まった仲間との毎日は刺激的でした。自分たちが知恵を出し合って考えた仕組みや制度が現場で運用され企業経営に必要なインフラが徐々に整備されることによって、働く環境が改善し、従業員のモチベーションが高まる。自分たちのやった仕事が働く人たちを通してカスタマー、そしてビジネスにつながっていくのを仲間と実感できました。会社の成長に貢献していることも感じられ、それが大きなやりがいでした。

2013年、勤続年数も10年を超え、ある程度の達成感を感じていました。その一方で、「自分は居心地のよい空間(カムフォートゾーン)で自己満足しているのではないか?」という問いが常に自分の中にありました。さらに「知識社会において知識や技能は陳腐化するのが早く常にアップデートするには継続学習が不可欠である」というドラッカーの言葉を思い出しては、危機感がいつも渦巻いていました。一度これまでの経験や知識をすべて捨て、経験だけでは対応できない新しい知識を体系的に学び、物事を俯瞰的に見通す高い視座を持ちたい。社会科学的なアプローチを身に着けたいと思うようになりました。以前から、非正規労働者増加や女性・外国人などの雇用に関して日本の現状に強い問題意識を感じていました。そこで、一度会社を離れ、雇用そして労働法の第一人者である法政大学大学院の諏訪康雄先生(当時。現在は中央労働委員会会長)に師事すべく大学院の門を叩いたのです。ところが退職後まもなく、日本における経営陣の刷新があって、新たな経営陣から声をかけていただき、大学院と仕事の両立を条件で再びギャップジャパンで働き始めました。会社そしてGapのことは大好きでしたから、大学院に通いながら働けるのであれば、また学校で学んだことを実務で生かしたいという思いもあり、ぜひ戻りたいと思いました。

ギャップジャパンとGapブランドの特徴、風土について

Gapブランドの特徴・優位性を教えてください。

cg_077_03一言でいえば、Gapは「いつもクリエイターであり、社会に変化を起こしてきたブランド」です。例えば、「SPA(製造小売)」という概念そして造語を生み出したのは創立者であるドン・フィッシャー氏です。今では一般化していますが、アパレルショップの店員がお客様に「こんにちは」と呼び掛ける挨拶を日本で最初に始めたのも私たちのブランドです。「いらっしゃいませ」ではなく、お客様と会話を交わしながらニーズを見極め商品の提案をしていきたい、お客様にわくわくするようなショッピング体験を提供したい、その導入には何がいいだろうと議論を重ねてたどりついたのです。また1997年に「ギャップ財団」を立ち上げ、世界中の十分な環境のないコミュニティに暮らす人々が、自らの人生を変え、自分たちの未来に当事者意識を持つようサポートを始めたのも、革新的な動きでした。私たちは、こうした先駆的な変革をいくつも起こしてきた「クリエイター」「チャレンジャー」の精神をもった情熱にあふれる人々の集まりといえます。

ギャップジャパンの人事面での優位性を教えてください。

ストアのスタッフを含め、全員にキャリアアップできるチャンスがあるという点です。現在のディストリクトマネージャー(地域を管轄する職務)の多くも、最初はストアで時給社員として働いていた経験があります。社内でのチャンスが開かれていて、その機会を得て成長していくケースが長い年月を経てしっかりと根付いています。これは会社の成功と従業員の成功を同時に成し遂げてきた歴史が作り上げたもので、ギャップジャパンの大きな強みと言えます。

それ以外にも、夏季期間中の金曜日は毎週午前中でオフィスをクローズする「サマーアワーズ」をはじめとしたワークライフバランスに関する仕組みが働きやすい環境があることは優位な点として挙げられます。

ギャップジャパンの社風を教えてください。

第一に、「意欲と能力のある人材に公平なチャンスを与える会社」です。これは日本だけでなく、グローバルで言えることです。米国本社には、時給社員からスタートしたエグゼクティブも数名います。Gap Inc.は「リテールのハーバード」と呼ばれており、リテールビジネスを実地で学ぶために必要な知識を体系立てて習得することができる、人材輩出企業として認知されています。リテール業界で成功するためにGap Inc.でキャリアを開始する人もたくさんいらっしゃるようです。日本でも、「意欲と能力のある人材に公平なチャンスを与える」ことを人材マネジメントの中枢においてさまざまな施策を運用しています。年齢や国籍、性別などの属性にかかわらず、人材が発揮した成果で評価しています。

第二に「変化」を楽しみ、自身の「成長を求める」人の集まりであることも私たちの会社の特徴です。もちろん、ブランドが好き、創業者のフィッシャー夫妻が培った理念や文化に共感するという根本的な部分は変わりません。それに加えて、挑戦すること、学ぶことを止めてしまったら、それ以上の成長はないという思い、成長へのパッションをもった人材がたくさん働いています。ビジネスの世界では「過去に成功を収めた企業はその後で失敗しやすい」とよく言われますが、これだけ組織の外がめまぐるしいスピードで変化しているなか、私たちも変わり続けないとグローバル舞台で勝つことは難しい。個人の成長が会社の成長につながる、そのために常に一歩上をめざし成長し続ける必要があるという考えは広く組織の中で共有されています。とはいえ、従業員の挑戦や成長をさらに促す仕掛けづくりが重要であることは間違いありません。新しい評価制度を導入後、部下を持つマネジャー全員にコーチングのトレーニングを実施していますし、コミュニティ活動を通した能力開発など学びを推奨する施策を人事は積極的に登用しています。個人が常に学び、成長し続ける、そしてそれによって学ぶ組織であり続けることを目指しています。

第三に、自分の意思や考えをオープンに伝えることができる環境があります。お互いに率直にフィードバックし合う姿が職場のあちこちで見られます。これは「信頼と尊重」を大切にする会社の風土が根付いているからです。たとえば人事部、経営チームも現場のリーダーや社員から、「この制度はここがまずい、変えたほうがいいと思います」と直接はっきり言われることがしばしばあります。改善に向けて率直でオープンなフィードバックをいただけることは非常にありがたいです。個人が自身の考えや意思を明らかにする、他者にフィードバックをすることはそこに責任が発生します。そのため自らが考え抜いて行動することが求められるわけです。現状に満足せず常に一歩上をめざす姿勢を全員が持つことは先にのべたように会社の成長につながります。個人の意見や意思を尊重することで、動機づけの向上を図る同時に従業員のエンゲージメントが高い組織を可能にすることができるのです。

成長意欲がある人材には必ずチャンスが訪れる会社

現在の取り組みを教えてください。

cg_077_042014年、私たちは「GPS」という仕組みをグローバルで新たに導入しました。GPSとはGrow(成長)、Perform(実行)、Succeed(成功)の略で、「グロースマインドセット(成長させる考え方)」を基盤とした、まったく新たなパフォーマンス・マネジメントプロセスです。評価レーティングによる報酬配分に時間をかけるのではなく、上司と部下が頻繁に対話を持ち、目指すべき目的地に向かいながら一人ひとりがより力を伸ばし成長することに時間をかける画期的な仕組みです。

Gap Inc.はこの仕組みを導入した際、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックが提唱している「グロースロースマインドセット」に着目しました。ビジネス、アート、スポーツなどあらゆる分野で著しく優れた成果を発揮する成功者のマインドセット(思考の枠組み)「グロースマインドセット」が、他の多くの方々と異なることが脳科学的に明らかになっているのです。

プロ野球選手のイチローさんなどが良い例ですが、卓越したパフォーマンスを継続して発揮する成功者は能力が向上すると信じ、高い目標に向かって日々努力し続けています。一方で、優秀な人でも、自分は優れている、能力は生まれつきだと思った瞬間にその成長は止まってしまうそうです。従業員の成長を促すには、組織にグロースマインドセットを醸成することが最も重要であり、その理念を反映した新しい制度GPSが必要だったのです。評価結果に満足するのではなく全社員がグロースマインドセットを持ち、よりチャレンジな目標に向かって努力することを奨励しています。

GPSは今のところ順調に進んでいますが、改善が必要な部分もあります。GPSを機能させるためには、マネジャーの優れたコーチング能力が欠かせません。マネジャーは、部下を権限やタイトルで動かすのではなく、どうしたら各人が主体的に動いてもらえるかを考えなくてはならないのです。そのため、先ほども触れましたが、マネジャー全員がコーチングの訓練を受け学んでいるところです。さらに管理をするマネジャーだけでなくメンバーひとりひとりがリーダーシップを発揮することが重要だと考えています。誰でもリーダーシップをとれる環境が変化の激しい環境で求められているのです。優れたリーダーは崇高なビジョンや目的を持っています。現在は、高いパフォーマンスを発揮できるようにそうした最新の脳科学や心理学で実証されたリーダーシップ理論をもとに新しいトレーニングにも力を入れています。GPSはマネジャーのみならず全員にリーダーシップと成長を求めるシステムなのです。

どのような人材を求めていますか?

私たちを取り巻く外部環境の変化がこれまで経験したことのないようなスピードで進んでいます。グローバルの舞台で優位性を保つためには組織も人も常に進化しつづけなくてはなりません。これまでは、変化をリードし、自身の成長に対して情熱をもって取り組む人材を求めていました。これからはそれらに加えて「変化を自ら生み出し、リスクを負って新しいことにチャレンジすることで周囲に良い影響を与えられるリーダーシップのある人材」を探しています。それぞれの役割で求められる知識・経験やスキル、コンピテンシーに多少の差はありますが、変化を生み出す力、チャレンジ、そしてリーダーシップは不可欠な要素です。私たちはマネジャーだけでなく社員のひとりひとりにリーダーシップを求めています。現状に満足して居心地のいい場所にとどまり、自分を磨く努力をしない、上司の指示をただ待つ受け身の姿勢。そのような人々から成る組織では外部の変化のスピードに負けてしまいます。新しく、創造的な方法を見出し、より優れた成果を求めてチャレンジする人。社内外でにおいて意欲を持って学び続け、自身の枠組みを超えて成長できる人。待たずに変化への一歩を常に踏み出せる人材を積極的に組織に登用・育成し、戦力化していくつもりです。

Gap Inc.とギャップジャパン株式会社について

ドン&ドリス・フィッシャー夫妻がGap第1号店をオープンしたのは1969年のことでした。その理由はいたってシンプル。ドンが自分に合うジーンズを見つけられなかったからです。ファッション業界の改革などを思い描いてもいなかったにも関わらず、業界に変化を起こす偉業を成し遂げました。現在、Gap Inc. はGap、Banana Republic、Old Navy、Athleta、INTERMIXの5つのブランドを傘下に持っています。

ギャップジャパン株式会社はGap Inc.の日本法人です。日本においては「Gap」「Banana Republic」「Old Navy」のブランドの下、男性、女性、子供そしてベビー向けの衣料品、アクセサリー及びパーソナルケア商品を販売しています。1995年、東京・銀座にGap 1号店をオープンして以来、着実な成長を遂げています。

ギャップジャパン株式会社

ドン&ドリス・フィッシャー夫妻がGap第1号店をオープンしたのは1969年のことでした。その理由はいたってシンプル。ドンが自分に合うジーンズを見つけられなかったからです。ファッション業界の改革などを思い描いてもいなかったにも関わらず、業界に変化を起こす偉業を成し遂げました。現在、Gap Inc. はGap、Banana Republic、Old Navy、Athleta、INTERMIXの5つのブランドを傘下に持っています。

ギャップジャパン株式会社はGap Inc.の日本法人です。日本においては「Gap」「Banana Republic」「Old Navy」のブランドの下、男性、女性、子供そしてベビー向けの衣料品、アクセサリー及びパーソナルケア商品を販売しています。1995年、東京・銀座にGap 1号店をオープンして以来、着実な成長を遂げています。

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