INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ロクシタンジャポン株式会社 西口 一希

成長する企業のビジネス戦略 Vol.19

ロクシタンジャポン株式会社

代表取締役社長

西口 一希

1990年に大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパン(株)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとしてパンパース、パンテーン、ヴィダルサスーン、ヴィックス、プリングルズ等のブランドマネジメント担当。また、90年代後半に流通戦略として日本初のECRプログラム導入のマーケティング担当、2000年初頭に日本と韓国においてショッパーマーケティング部門創設。2006年にロート製薬(株)に入社、執行役員マーケティング副本部長を経て本部長として、肌ラボ、OXY、オバジ、50の恵、デオウ、メンソレータムブランドのリップクリームと日焼け止め、ロート目薬ブランド、40以上のブランドマーケティングを担当。期間中、肌ラボブランドは40億から140億ブランドへ売上拡大し、日本No1の化粧水ブランドとなり、アジアから海外展開し、7期連続の増収増益を牽引。2015年4月より現職、ロクシタンジャポン株式会社にて代表取締役社長として従事。

公開日:2016年2月15日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

個人の成長によりイノベーションをおこし、継続的に成長する組織を作る

キャリアについて教えてください。

cg_063_02まず学生時代に家庭教師の派遣業を立ち上げました。当初からビジネスをやりたいという気持ちがあり、企画サークルで出会ったさまざまな方々に触発されて始めることにしました。しかも当時は、日本がとても元気な時代でしたからね。

私自身も家庭教師をしていましたが、私が紹介する側になった方がいいのではないかと思いついたのです。コンセプトは“大阪大学と神戸大学の現役学生のみ“。名称を「阪大・神大家庭教師の会」として、自分で応対スクリプトを書いて、広告やチラシも作って配りました。

そんな活動を面白いと思ってもらえたのでしょう。大学でマーケティングを勉強してはいないのですが、P&Gに採用されたのです。この会社はマーケティングトレーニング、ファイナンスなど、いわゆるジェネラルマネジメント系のトレーニングが充実していました。新しいことを理解するというモチベーションの大切さを、自分自身が肌身で感じていましたね。

入社後、幾つかのブランドを経験し、アシスタントからブランドマネージャーへと昇進したのですが、ここで初めての挫折を味わいます。時代を先取りするアンチエイジングの新製品だったのですが、最後には開発に無理をさせる形で商品を世の中に出してしまいました。当時はチームを強引に引っ張っていくのもマネージャーの役割だと勘違いしていたんですね。結果は散々で、社内評価もひどく、自分自身の立て直しが必要だと強く感じました。

それでも、もう一度チャンスを与えてもらうことができました。当時、低迷していた「ヴィダルサスーン」というブランドを受け持つことになったのです。あの時はもう開き直っていて、出世欲などもなく、この後はないだろうから後悔がないようにやってみようとおもっていました。ブランドマネージャーになって初の仕事を失敗させてしまったので、自分のキャリアは終わったと思っていたのです(笑)。結果的にはこのヴィダルサスーンで評価を得ることができました。これが転身の機会ともなり、その後のロート製薬を経て、現在に至ります。

ロクシタンの魅力とはどのようなところだとお考えでしょうか。

私はブランドの捉え方にあると思っています。 “ライフスタイルの提案”とはよく言われることですが、ライフスタイルが本当に存在しているブランドとはそれほど多くはないと思うのです。その点において、ロクシタンはプロヴァンス地方の自然と暮らし、伝統、生活習慣が土台になったブランドです。

つまり単なるプロダクトメーカーではないということです。しかもブランドイメージをゼロから作っているのではなく、実在する生活スタイルからヒントを得て製品を作っているわけです。もちろんゼロから作ることも楽しいのですが、そうしたものの多くは一過性のファッションで終わってしまうのです。

ロクシタンのブランディングは、現在どのようなフェイズにあるとお考えでしょうか。

継続的な成長に移行する時期だと思っています。組織が育ち、さらなる結果を出す時期である、と。これまではブランドを立ち上げる時期でした。端的に言うならば、アントレプレナーシップによりブランドを作り上げてきたのです。しかしここからは、このブランドを組織のメンバー全員が本当に理解し、新たなロクシタンの魅力を伝えていかなければいけません。その意味では、今やっていることの繰り返しだけではダメなのです。どういう魅力を引き出すのか、どのように伝えていくのかを、全員で考えていく組織になりたいと思っています。

社員の声を聞き、価値観を共有して、パートナーシップを築く

今後、どのようなことに取り組んでいかれるのか、教えてください。

cg_063_03私がやるべきこととは、社員が成長していく仕組みと、そのきっかけ作りです。端的な言葉で表現するならば“オーナーシップ”。まずは自分をどのように育て、どう成長していくのか、そうした自分に対するオーナーシップに焦点を当てて、全員が学んでいける組織にしていきたいのです。

ロクシタンには、まだまだ引き出すべきポテンシャルがあります。ところが現状では日常の業務があまりにも忙しすぎて、その処理に労力を使い切ってしまい、想像や工夫、新たなことをはじめるということに力が向いていない。社内には無駄なことや、重複してしまっていることもまだまだあります。そうした状況をシンプルにして、個人の能力を解放したいのです。

どのようにしてそのヴィジョンを伝えていくのでしょうか。

すでにスタートさせているプロジェクトもありますが、「えっそんなこともやっていいんですか?」という実例を敢えて話すようにしています。もちろん、いずれも本社の理解を得てやっていることです。例えば、LINEさんとのコラボレーションで、LINEさんのキャラクターが入った製品を限定アイテムとしてリリースしました。あっと言う間に売れてしまいましたが、あれも社内では「そんなこともやっていいんだ」っていうことになっています。この先、どんどんキャラクター製品を作るというわけではないのですが、ロクシタンの素晴らしさを伝えるにあたっては、そういう方法もあり得るのです。ほかにも異業種とのさらなるビッグコラボレーションを近い将来にアナウンスできると思います。

仕事を終えて社員の皆と飲みに行ったりすると、結構そういった話をして、こんなことをやったら面白いとか、いろいろでてくるのです。きっと発想が解放されるのでしょう。でも仕事になるとなかなかできない。オフィスに戻った瞬間に、自分のジョブ・ディスクリプションとプロジェクトタスクを完結することで能力を使い切ってしまうのです。だから、社員の皆がもっと能力を発揮できるようにしてきたいのです。

能力を発揮するためにどのような改革を進めていますか?

これまではブランドが急成長してきたからこそ、余裕が作れなかったのかもしれません。その余裕を作り出すために、いくつか改革を行っています。

ひとつには実質的ヒエラルキーで起こる時間の無駄を減らすことです。オープンオフィスにすることで、実現しています。社長室も取り壊してしまいました。本部長、社長、会長が個室に閉じこもっていると、マインドバリアができてしまいがちです。逆に言えば、私も社員の声が聞きたいのです。何か困ったことが起きたらすぐに助けたい。時にはディスカッションの場に割って入ります。組織としての責任は上長にありますが、実質的な意思決定をする際のヒエラルキーは無視することにしました。意思決定にかかる時間や、逡巡する時間を減らして、余裕を生み出し、能力を発揮する場を作っていきたいのです。

また現場で、直接語ることによって、価値観を共有して、パートナーシップを築くことを大切にしています。組織の問題点については、現場が一番悩んでいます。それをマネージャーに相談し、シニアマネージャー、ディレクターに相談する。それぞれの知見でやっているけれども、社長まできてひっくり返るケースもありますよね。そのようなことでは時間がもったいないですし、モチベーションの低下にもつながります。

結果を出すために、幹部がある程度テンションを高めていって、数字の話をすることも大事なことです。ただそれが100%になってしまうと、誰も何も言わなくなる。ですから基本は全員が何でも考えていることを言っていいよ、と。おかしいと思うことは、その理由をきちんと説明する。いい意見ならば積極的に取り入れる。ひとつひとつ意思決定して、説明責任を果たしていくことで、組織のモチベーションは上がると思っているのです。それは形式知化と同じことです。

逆に、説明を一切せずに経営をハンドリングする方法もあります。実際、そういう手法も私自身、見てきました。ただ、それは自分の経営観とは違うなと思っています。P&Gでは、すべてのことに説明が求められましたが、その根本には、個人に対するリスペクトがありました。とにかく「何でもいいからヤレ」と言われたこともありますが、印象に残っているのは、自分自身の価値を認めてもらってないという不快感です。だから、私は説明します。パートナーシップを築くことにおいて、説明することが最も大事なことだと私は思っています。

アントレプレナーシップとチームワークという2つの価値観を重要視しています

ロクシタンの店舗展開に関して教えてください。

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ロクシタンは、コスメ業界での単店売上として日本国内におけるナンバーワンを誇っています。つまり、日本で最もお客様にいらしていただいているブランドなのです。ブランドにプレミアム感を感じていただいているのと同時に、親しみやすさも感じていただいているのですね。店の雰囲気や接客方法も含め、できるだけ来店していただきやすい環境を作っています。

また商品ラインナップも広範囲に展開しています。スキンケアから、ホームフレグランスまですべてが揃います。ロクシタンの店舗に入れば、必ずビューティに関する某かの提案を楽しんでいただけるはずです。

そうは言っても、今はまだお客様への接客アプローチが十分に行き届いていないと思うのです。そこで店舗のなかでの無理・無駄をさらに軽減していき、店舗スタッフがより深い接客をできるようにすることを大切にしていきます。今は、そのためのオフィススタッフの組織改革を行っているところです。

このブランドの伸びしろは、まだまだ十分にあります。ブランド認知度については90%近くあるなかで、実際の購買体験はまだ20%にとどまっています。ということはロクシタンを知っていて、ロクシタンに興味があり、ロクシタンを好意的に思っているのに購買体験がない方々が70%近くもいるということです。そういうお客様に購買体験のきっかけとなるコミュニケーションをしていくことが、これからは必要ですね。

プロダクトについて、これからの方向性を教えてください。

cg_063_06驚きがあるものを作っていきたいです。単に機能性が優れていることだけではなく、お客様が過去に感じたことのないような驚きや新鮮さを提案していきたい。それは製品をどう作るかだけではなく、どう伝えていくかについても引き続き注力したいと思います。

例えば、今回発売した美白製品『レーヌ ブランシュ』が好例ですね。ナチュラル系のブランドから美白という医薬部外品の製品が出ること自体、驚きだと思うんです。そうしたことを誰も期待してなかったでしょうし、考えもしなかったでしょう。その意外性が高く評価されているのだと思います。レーヌデフレの花弁が、紫外線を浴びれば浴びるほど白くなるという、ストーリーづくりもいいですね。これは本社だけでつくった話ではなく、我々日本のスタッフも一緒に手掛けてきたものです。このような製品をどんどん増やしていきたいと思います。

我々は日常生活における特別な時間を提案しているのです。つまりプロヴァンスのライフスタイルの良さを提案していても、実際にプロヴァンスを訪ねる方はごく少数ですし、全員が全員行けるわけでもない。そうしたなかで、プロヴァンスの製品だからできる特別な時間、体験を日常の中にとりいれる提案していきたいと思っています。そのことが需要の創造なのです。これまでになかった価値を感じてもらう、そして、これまでにない体験をしてもらう。それはプロヴァンスのライフスタイルを標榜しているロクシタンだからこそできることなのです。

今後のロクシタンが求める人材について教えてください。

まずは正義感が強い人ですね。正しいことを正しくやりたい、という気持ちがしっかりとある人。それがあった上で、お客様にさらに喜んでいただくためにどんなことができるだろうと考える人と一緒に働いていきたい。忙しくなると、正義感が優先されにくい状況が起こります。お客様の満足感を置き去りにして、目先の売上目標にとらわれてしまったりします。本来、やらなければならないのは、お客様に継続して購買していただくことであり、また新製品を手にとっていただくことです。つまりはロイヤルカスタマーを増やすことなのですが、それは明日の売上と必ずしもイコールではない。でも、双方を同時に成り立たせることが正しいことなんです。たから正しいことを正しくやろうという原点にこだわる人が欲しいですね。

また我が社は、アントレプレナーシップとチームワークという2つの価値観を重要視しています。これはロクシタン本社会長のレイノルド ガイガーが全世界で打ち出していることです。アントレプレナーシップとは、自分の思い、夢をどんどん実現していく実行力。そしてチームワークとは、仲間と力を合わせて頑張っていくこと。この2つを実現するところにイノベーションも起こるし、持続可能な組織になるとも考えています。その土台として、個人の成長に期待していきたいですね。

インタビュー:『人事』×『経営』?人事戦略を語る? Vol.13 ロクシタンジャポン株式会社はこちら

西口氏が講師を務める
GAISHIKEI LEADERS「ビジネスパートナーとして企業価値を上げる」
ワークショップセミナー 2017年2月16日(木)19:00?21:00開催。

ロクシタンジャポン株式会社
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南仏プロヴァンスの豊かな自然の恵みとライフスタイル、その価値観を提案するロクシタンは1976年にオリビエ・ボーサンによって設立されました。プロヴァンスを中心に地中海沿岸地方で採取される自然原料を用い、そこに継承されている伝統的な西方によって、今ではスキンケアからボディケア、ヘアケア、バスケア、フレグランスの幅広い製品を生産・販売しています。現在では90カ国以上以上の人たちに愛されるブランドとなりました。日本では1998年ロクシタンジャポンが誕生しました。現在では90店舗以上を展開しています。その他、国内線での機内販売、ホテルアメニティ事業、TVショッピングや通信販売、eコマース、カタログギフトなど幅広チャネルで事業展開しています。また、ロクシタンショップと併設した、世界初のロクシタンカフェをオープンさせるなど、人の五感に働きかけるロクシタンの世界は、可能性に満ちた事業へと広がっています。事業展開のほか、ロクシタンファウンデーションを設立し、貧困や障害者支援といった社会活動にも力を入れています。

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