どこでも通用する企画書を作れるように
シュナイダーに入社するまでのご経歴を教えてください。
中国・上海で生まれ育ち、上海の復旦大学を卒業した後、留学で日本にやってきました。東京工業大学大学院でインダストリアル・エンジニアリングを学び、修士・博士を修了しました。大学に残る道もありましたが、インダストリアル・エンジニアリングを実践するビジネス現場を直に見たいと思い、1991年にP&Gに入社。明石工場でERP (Enterprise Resource Planning:基幹業務管理システム)の生産管理システムを導入した後、神戸本社に移ってアジア諸国へのERP導入を担当しました。ERPの仕組みを知るのも、現場に導入して変革を実践するのも楽しい経験でした。最初は、多くの現場がERP導入と業務変革にネガティブな反応を示しましたが、ERP導入によって現場の課題を解決できると伝えていきました。それがわかってもらえれば、信頼関係を築くことができ、導入も比較的スムーズに進むんですね。そのプロセスに本当にやりがいを感じました。
私の場合、ERP導入提案の企画書を作ることは、大学院で論文を書くことに似ていると感じていました。ただP&Gでは企画書を会社のルールに従い厳密に書くことを求められました。社会人経験の浅かった私ですが、様々な指摘をいただけたおかげで、どこでも通用する企画書を作れるようになりました。
P&Gは温かい組織で、自由闊達に意見を言い合える文化がありました。上司を含めて、誰とでもお互いを尊重しながら、率直に対話できました。働きやすく、仕事内容にも満足していましたね。しかし、10年働いた頃から徐々に別の場所でチャレンジしたいという想いが大きくなってきました。そこで、2003年にフィリップスモバイルディスプレイシステムズ神戸に移りました。ITシニアマネジャーとして、ネットワーク、インフラ、アプリなど、社内システム全般を見る役割を担いました。社内インフラ、ERPシステム管理、セキュリティと監査対応など、やりがいのある仕事でした。
ただ、買収で経営が変わってしまったことなどがあり、2007年にシュナイダーに転職してきました。P&G時代からずっと神戸に住んでおり、シュナイダー入社時も今も、勤務地は大阪です。シュナイダーがかつて買収したデジタルの本社が大阪だったため、シュナイダーには以前から大阪オフィスがあるのです。
クレームには部門の壁を越えて誰もが協力して動く
シュナイダーではどのような役割を担われていますか?
入社当初は、ITヴァイスディレクターとしてITインフラ全般の管理を担当し、システム監査対応・セキュリティ・情報ライフサイクル管理などの変革を実行しました。シュナイダー傘下となったエーピーシー・ジャパンと買収、あるいは連携関係のあるいくつかの会社のインフラ統合も大きな仕事でした。次に、アプリケーション管理も担当し、グローバル案件の導入を実施しました。
その後、カスタマーケアセンター(コールセンター)のマネジャーを経て、現在は、コールセンターと品質管理部門が合体した「カスタマーサティスファクション&クオリティ」のマネジメントを担当しています。シュナイダーはカスタマーファーストを掲げていますが、ご存知の通り日本のお客様は品質に厳しく、私たちは日々チャレンジの連続です。お客様から品質に関するクレームが届いたときには、必ず、お客様のためにできうる限りの行動を起こします。必要があれば、私たちだけでなく、部門の壁を越えて誰もが協力して動くのが当たり前だという文化がシュナイダーにはあります。その上で、お客様に満足していただける対応、納得していただける回答を用意して、最善を尽くします。当然ながら、対応の仕方はお客様によってきめ細やかに変えていきます。十分な説明資料を用意できれば大丈夫というお客様もいれば、その方の上司に直接説明し、しっかりと理解していただく必要があるお客様もいらっしゃいます。
お客様の満足と同じくらい大切なのが、同じミスやトラブルを繰り返さないことです。原因追及と再発予防を徹底し、一度問題が起きたら、次に起きないようにプロセスを改善します。この取り組みは、メンバー個人の成長にもつながります。私自身も、原因追及と再発予防はとても大切にしています。マネジメントする上で、過去に起こった事柄から推測してプロアクティブなアクションを取るようにしています。問題はいつ起こるかわかりません。起きてから対応していては遅いんですね。「ああなったらこうしよう」などと日頃からイメージしながら、準備を進めておくことが大切だと感じています。
なお現在、コールセンターでは、グローバル共通の最新型CTI (Computer Telephony Integration)ツールを活用して、電話の振り分け自動化、通話の自動録音、顧客情報へのスムーズなアクセスなどを実現しています。CTIで得たデータからお客様対応の分析ができ、定期的にスタッフへフィードバックをすることによりスキルアップとお客様満足度の向上にもつなげています。
ピープルマネジメントで重視していることは何ですか?
1つは、メンバーの成長支援です。先ほども述べたように、ミスやトラブルを繰り返さないように学び、行動することが成長につながります。また、コールセンターはお客様との対話がすべてですから、コミュニケーション力の向上が極めて重要です。お客様の要求を深く理解する力。こちらのメッセージをお客様に理解していただく力。お客様の問題をグローバル本部にしっかりと伝える力。これらの力を高めることに力を入れています。たとえば、同じ製品が故障した場合でも、使っている場所によって緊急度は変わってきます。すぐに交換しなければならない製品と、そうでない製品があるんですね。単に故障したことだけでなく、使っている現場や状況もストーリーで伝えてはじめて、グローバル本部のサポートチームに適切な対応を取ってもらえます。製品が故障したことを伝えるだけだと、緊急対応を取ってもらえないケースが出てくるわけです。私のチームでは、こうしたコミュニケーション力の向上が重要なのです。
もう1つは、メンバーが成果を出すための支援です。一人ひとりが組織の戦略に沿って、チームのゴールに向けて行動できているかを確認しています。たとえば、問題が解決できず行き詰まったメンバーがいたら、一人で悩まず、いったんそれを手放して、優先順位の高いタスクに取りかかるようにアドバイスします。また、グローバル本部とのコミュニケーションが苦手なメンバーには、事前に要点をまとめてメールで伝えるといった工夫をするよう促します。これらの支援もメンバーの成長につながっていきます。
「Act Like Owners」を実践できる方を求めている
シュナイダーの社風や働き方について教えてください。
現在、日本のシュナイダーには、シュナイダーが買収したHMIのグローバルリーダーである日本企業(株)デジタルと、同じくシュナイダーが買収したUPSのグローバルリーダーである米APCの日本法人エーピーシー・ジャパン、そしてシュナイダーの様々なグローバル製品を日本に展開しグローバル組織の一員として共に働くシュナイダーエレクトリックという、主に3社の社風が入り混じっています。旧デジタルの社員は、スピーディーで行動力の旺盛なタイプが多い。旧エーピーシー・ジャパンは外資系らしく、業務プロセスがしっかりしていました。そして、グローバル組織の一員として共に働くシュナイダーエレクトリックの文化は、自由闊達で日本法人の意見を尊重してくれます。それぞれの文化の良いところが合わさったのが、シュナイダー日本法人だと感じます。
私はこれまで自分の意見を伝え、実現のために行動してきましたが、辛いと感じたことはあまりありません。周囲のメンバーに恵まれたことも大きいですが、やはり自由を与えてくれる会社だからだと思います。あえて言えば、仕事と家庭・育児との両立が、私にとって大きなチャレンジであり続けてきました。
働き方に関して言えば、シュナイダーは何年も前から、DXやBCPにグローバルで莫大な投資を続けてきました。それが働き方にも大きく影響しており、たとえば昨今の情勢にいち早く対応して、4月8日からコールセンタースタッフの在宅勤務を実行しました。実現できたのは、2019年にコールセンタースタッフの在宅勤務をすでにテストしていたからです。在宅勤務ができるようにCTIを整備したり、ネットワークを増設したりしていたんですね。いつでもコールセンターのリモートワークを行える準備が整っていたというわけです。
リモートワーク開始後、私は特にメンバーとのコミュニケーションをとても大切にしています。毎日30分のチームミーティングを行い、現在は週一回、会社で集うようにしています。さらに、シュナイダーはグローバルレベルでもマネジメントに注力しており、オンラインのタウンホールミーティングが頻繁に開催されています。
ですから、リモートワークでも、私たちは以前とあまり変わらずに働き、成果を出していますが、日々会って話ができない分、チームの交流にいろいろなツールを使って仕事に支障が出ないように工夫しています。
どのような方を求めていますか?
会社の貢献と自分の成長のwin-winを目指して、自分なりの問題意識のもとで主体的に行動できる方です。シュナイダーには、「Act Like Owners」という考え方があります。シュナイダーは、社員一人ひとりが経営者のように自律的に考えて行動し、最大の能力を発揮することを望んでいます。特に現代では、コールセンター部門や品質管理部門のようなバックオフィスでも、クリエイティビティが要求されます。誰もが新たなアイデアを生み出し、行動する力を身につける必要があります。
とはいえ、最初から100%の力を発揮するのは難しいかもしれません。その場合は、80点を目指すことから始めてもいいんです。小さなチャレンジでよいから、まずは一歩踏み出すことが大事です。その積み重ねが大きな成果に繋がります。