MBAで傾聴スキルは長所だと知った
シュナイダーに入社するまでのご経歴を教えてください。
小さな頃から海外に興味を持っていて、大学時代には1年間、カリフォルニアに交換留学に行きました。海外旅行にもしょっちゅう出かけましたね。自分とは違う考え方、違う価値観に触れるのが面白かったんです。ただ、海外で働いたり、外資系企業に入ったりするのは後でもできると考えて、新卒時はさくら銀行(現・三井住友銀行)に入行しました。銀行を選んだのは、いろんなお客様企業に関わることで、会社や社会を見る目を養えるのではないかと考えたからです。思ったとおりでした。入社してすぐ、社会人の大先輩である社長や財務担当者の方々とお話しすることができ、本当に勉強になりましたね。人材教育もしっかりしている会社で、日々楽しく働けました。ただ、5年ほど経験を積んだら、欲が出てきたんです。金融をもっと本格的に学んでみたいと思うようになりました。それで銀行を退行し、シカゴ大学のMBAコースに飛び込みました。
シカゴ大学を選んだのは金融に強いからでしたが、自分でも意外なことに、金融以上に興味を持ったのがマーケティングでした。振り返ると、銀行時代もお客様のビジネスの現場が好きで、お客様の強み、現場の強みをどうやったら企業価値に変えられるのかを考えるのが好きでした。ですから、マーケティングに惹かれたのは当然なのかもしれません。それから、シカゴ大学でよくわかったのは、「人間はそれほど変わらないんだな」ということでした。最初はとても優秀に見えた同級生たちも、深く知り合うと、意外と弱点があったり、ミスしていたりするんですね。一方で、私はあまり多く発言することはできなかったんですが、その代わりに、会話によく耳を傾けて、本当に必要だと感じたときにはしっかり発言するようにしていました。そうしたら、あるとき先生から高く評価されたんです。傾聴スキルは長所なんだ、傾聴スキルを磨いていけばグローバルでも成果を出していけるんだ、と認識できた良い機会でした。
MBA取得後は、帰国してシティバンクに入行し、ビジネス改善プロジェクトのリーダーやカスタマーサティスファクション、マーケティングなどに従事しました。ここでは主に、留学経験を活かして、上層部の外国人メンバーと現場の日本人スタッフをつなぐ役割を担いました。このとき、経営視点でビジネス全体を俯瞰できたことは、間違いなくいまに生きています。
2008年にGEキャピタルに入社し、リーダーシップ・プログラムを受けました。それから2018年までの約10年間、私はGEグループ内でさまざまな職場を経験しました。GEキャピタルの次は、スマートメーターを扱う富士電機とのジョイントベンチャー・GE富士電機メーターに移りました。父が電力会社で働いていたこともあって、以前から電力やインフラには興味を持っていましたから、願ってもないことでしたね。富士電機でマネジメント経験を積めたことも良い経験で、彼らのモチベーションが高まったり、成果が出て評価が上がったりするのは本当に嬉しいことでした。それからGEパワーに移って、事業開発の目線で、統合した企業ともともとGEで強みがあったガスパワーシステムでの日本での新たなビジネスモデルやビジネスパートナーの検討に奔走したりしました。
その後、ABBを経て、2019年からシュナイダーで、マーケティング事業開発本部のディレクターとして働いています。
なぜシュナイダーを選んだのですか?
職歴を見ていただければわかるとおり、私はスペシャリストではありません。主に金融業界とインフラ業界で、営業・マーケティング・マネジメントなどのさまざまな経験を積んできました。シュナイダーのマーケティング事業開発本部なら、その経験のほぼすべてを活かせると思ったんです。それがシュナイダーに来た最大の理由です。さらにPRやM&Aなど、新たな業務にチャレンジできる余地があったことも魅力でした。
それから、シュナイダーの考え方や戦略に共感したことも大きかったですね。シュナイダーはフランス発の巨大グローバルカンパニーで、その最大の特徴は、一貫して自分たちの得意分野に特化していることです。たとえば、配電設備や石油・ガスプラント、データセンター、自動車、食品・飲料等製造の現場を熟知しており、かゆいところに手が届くソリューションを揃えています。足りないソリューションがあれば、積極的に企業買収を行ってポートフォリオを拡大する意欲もあります。また、自分たちのビジネスを通して、「サステナビリティ」「グリーン」などの社会貢献を本気で実現しようとしているのも、明確な特徴ですね。先ほども少しお話ししたとおり、私は現場が好きで、現場の皆さんをサポートすることにやりがいを感じるタイプなんです。それができる会社なのが嬉しかった。しかもそれだけでなく、ここで働くことで、社会や環境を良くすることにも大きく貢献できる。そうした会社の姿勢に魅力を感じたこともあって、入社を決めました。
私がいなくても勝手に動いていくチームを作りたい
どのような業務に携わっているのですか?
私が所属するマーケティング事業開発本部は、一言でいうと、社内全体の「コマーシャルビジネスパートナー」です。当たり前のことですが、各ビジネスのマーケティング戦略は、各事業部のマーケターたちが決め、実行します。私たちマーケティング事業開発本部は、そうした個別のマーケティング戦略ではなく、全社的に取り組む必要があるマーケティング施策を企画・実行するチームです。
たとえば、わかりやすいところから説明すると、ニューノーマル時代に突入したいま、私たちがどのビジネスのどんなニーズに注力したら、最も日本のお客様の役に立てるのかを見極めて、今後1~2年の重点ビジネスを定めることが現在のミッションの1つです。
また、日本での事業ポートフォリオの拡大のために、まだ日本に本格導入していないビジネスの導入を検討し、その実現のためにどのような社内チームを結成するか、どの企業とアライアンスを組むのが最適か、といったことを考え、実際に導入を進めるのも重要な仕事です。たとえば、今後有望なビジネスの1つに、実践的な再生可能エネルギーソリューションを提供する「エネルギー&持続可能性サービス(ESS)」があります。このビジネスは、まだ日本では本格導入しておらず、現在は私が日本特有の事情やお客様のニーズを咀嚼してインサイトとしてグローバルのチームメートに伝え、話し合いを重ねながら、何社かのお客様に個別対応しています。そうしながら、いつどのように日本で展開していくのがよいかを、まさに考えている最中です。ESSは、サステナビリティやグリーンに直結するビジネスで、シュナイダーも重視しており、私自身も大きな関心を抱いています。それに深く関われているのは嬉しいことですね。
それから、マーケティング・営業関連のデジタルトランスフォーメーションの推進やマーケティング・営業活動の効率化を具現化する「コマーシャルエクセレンス」活動も重要な任務の1つです。最近の大きな動きとしては、セールスマーケティングオートメーション(SMA)の仕組みを導入したことが挙げられます。SMAを活用することで、イベントと営業活動などをシームレスに融合させることが可能になります。このような改善を常に進めています。
さらに、PRやコーポレート・コミュニケーションを行い、会社とビジネスの知名度を高めることも大切な仕事です。マーケティング事業開発本部のミッションは、このように多岐にわたっています。
働く上でどのようなことを重視していますか?
1人ではたいしたことは実現できません。ディレクターとして、社内外のチーム全員で価値を出していくことを大切にしています。そのために、社内メンバー、社外パートナー、お客様に多くの質問を投げかけ、その返答にしっかりと耳を傾けて、一人ひとりがいま何に興味を持っているか、何を成し遂げたいと思っているのかをよく聴くようにしています。その上で、相手にとって良くなるようにリードしていくことが私の信条です。その際、営業のワクワク感などがわかっていることは私の強みだと思いますね。
また、チームをマネジメントする上で気をつけているのは、「マネジャーやディレクターというのは単なる役割である」ということですね。本来、マネジャーとメンバーに上下関係はないんです。メンバーは、私にはない専門性を持っています。私の役目は、彼らの専門性を引き出したり高めたりして、より大きな価値を生み出すタレントになってもらうこと。そのためには、一人ひとりをリスペクトし、信頼して任せることが大事だと思っています。ただし、彼らが全体を見えていなかったり、間違った方向に向かっていたりするときには、私がリードする必要がある。たとえば以前、本国からあるシステムを導入してほしいと言われて、嫌々対応しているメンバーがいました。彼に「本当に嫌なら時間の無駄だから止めたほうがいい。そうでないなら、前向きに進めていこうよ」と声をかけたところ、少しずつ自発性が高まり、本国との関係もポジティブになっていきました。こうした変化を起こすのはマネジャーの仕事だと思います。
最終的には、私がいなくても勝手にどんどん動いていくチームを作りたいですね。そうすれば、私は次のステージに向かうことができますから。
「まずは腹落ちすることを目指しなさい」と言われた
シュナイダーはどのような会社ですか?
第一に、良くも悪くも複雑でわかりにくい会社です。一言で説明することなんて、まったくできません。本当に多岐にわたるビジネスを展開しており、なおかつ常に変わっていますから。
第二に、だからこそですが、私は入社した当初、周囲から「焦らなくていいから、まずは腹落ちすることを目指しなさい」と言われました。なぜシュナイダーがこうしたビジネスを行っているのか、なぜこういうやり方をしているのか、なぜこんなに複雑なのか、何が強みで、どこに向かっていて、どうしたら日本のマーケットに付加価値を提供できるのか。そうしたことが明確にイメージできるようになるまで、徹底的に周囲に質問しまくりなさい、と言われたんですね。私は言うとおりにしました。そうしたらあるとき、ピンと来た瞬間があったんです。不思議なことに、そのときからすべてが動き始めました。たとえば、本国が私の意向を受け入れてくれるようになっていきました。
ですから、「腹落ち」は重要なキーワードですね。私はメンバーにもよく「もし腹落ちしていなかったら、言ってほしい」と声をかけています。私は、メンバーが腹落ちさえしていれば、あとは信頼して任せればいい、と思っているんです。
どんな方を求めていますか?
一言で言えば、「オーナーシップ感覚が高い人」ですね。シュナイダーのコアバリューの1つに「Act Like Owners」があります。まさにこれを体現する方、つまり自ら判断できる方、自分ごととして考え、周囲を巻き込み実現しようとする気概を持った方を求めています。
もう1つ大事だと思うのは、シュナイダーのビジョンへの共感です。シュナイダーは、エネルギーとデジタルへのアクセスを基本的な人権であると考え、すべての人がエネルギーとリソースを最大限に活用できるように支援し、いつでもどこでも、誰にでも、「Life Is On」を実現することを目指しています。また、何度か触れたとおり、ビジネスを通した「サステナビリティ」「グリーン」などの実現を重視しており、循環型経済の推進と気候変動への取り組みに対するコミットメントを強化しています。そうしたことに興味・関心がある方なら、きっと腹落ちしやすいと思います。ビジョンへの共感が、働く上での原動力となるはずです。
最後にお伝えしたいのは「働きやすさ」です。私たちは、決して仕事のために生きているわけじゃありません。シュナイダーはそのことをよく理解してくれています。たとえば、現在はフルリモート、完全在宅勤務で働いている社員もいます。生活のためにそうする必要があれば、そして成果を出してさえいれば、働き方にはかなりの自由があります。もちろん、女性の働きやすさも私が保証します。そうした面での不安や心配は一切必要ありません。安心して飛び込んできてください。