過去から学び、今できるベストを尽くせば、結果は後からついてくる
ビー・エム・ダブリューに入社するまでの経緯を教えてください。
イギリスで生まれ育ち、大学では経済史を学びました。昔から歴史が好きで、出来事の流れや背景に興味があったからです。ある物事が、どこからどのように始まったのか、あるいはどこでなぜ失敗したのかといったことを理解することは、非常に重要です。私たちは、過去からさまざまなことを学べるのです。その意味で、大学時代に経済史を学んだことは、今のビジネスにもおおいに役立っています。また、ラグビーやラクロスなど、チームスポーツを楽しんだ学生時代でした。
大学卒業後、フィリップスに入社しました。大学時代に家電販売店でアルバイトをしており、そこで家電に興味を持ったからです。フィリップスでは、Graduate student programの一環で、いくつかの仕事をローテーションしましたが、最も印象深いのはセールス部門です。セールスをするなかで社内外のさまざまな人に出会いました。すばらしい上司や同僚、逆に自身のキャリアや環境に不満を抱える上司や同僚と、世の中にはさまざまな人がいることに気づき、私は常に周囲の皆さんの良い行動を真似しようと努力していました。その日々が、今の私を形作っています。当時、若い私のキャリアを助けてくれた先輩方やクライアントには、本当に感謝しています。今はその恩返しとして、若手社員に同じことをしようと心がけています。
もちろん失敗も数多くありましたが、今でも忘れられない努力が報われたこともありました。あるとき、「1年前、あなたが一生懸命説明してくれたから、あなたからフィリップスの商品を買いたい」と連絡をいただいたことがありました。その経験から、今このときにベストを尽くすことが、後で良い影響につながる可能性があることを学びました。日々、そうした学びを少しずつ得ながら、セールスが大事な仕事であることを知ったのです。「Pay it forward」この概念は、BMWのリーダーシップ研修でも言われていることでもあります。
しかし、ある日の朝、自分のモチベーションが上がっていないことに気づきました。1人でエリアを担当するセールスの仕事に物足りなさを感じていたのです。私はチームで働きたいのだ、と気づきました。その夜にエージェンシーに電話して、転職活動を開始。セールスとファイナンスにつながりを感じて、フォードクレジットのインタビューを受け、入社を決めました。それから約30年経ちますが、ずっと同じ業界にいますね。
フォードクレジットでは、エリアマネジャーから始めて、いろんな機会を得ることができました。26歳でマネジャーとなり、チームマネジメントをするチャンスをいただき、その後はオランダとベルギーでもマネジャーを務めました。20代半ばでマネジャーになった私は、知識や経験が多くなかったため、周りの方々に敬意を払うこと、周りの方に気持ちよく働いてもらうことを大切にしました。他のリーダーたちが、どのように決定するのかを学べたことは大きな学びでした。周りの人に敬意を払い、周りの方から学ぶ「学習意欲」を高く持ち、自分に与えられた課題を着実に実行していく。実績と評価を確立していけば、チャンスは巡ってくる。そのことがわかった10年でした。
その後、機会とタイミングが合い、BMW Group Financial Servicesに移りました。
イギリス・中国での新規事業立ち上げを経験
ビー・エム・ダブリューに入社を決めたのは、なぜですか?
当時のBMWはまだ小規模で、ファイナンス事業を開始したばかり。今で言うスタートアップに近いフェーズでした。私は、BMW UKでファイナンス事業を新規で立ち上げるという魅力的な話を聞き、入社を決めました。
イギリスでファイナンス事業立ち上げなど10年程経験を積んだ後、欧州各国の本部の人たちで運営するプロジェクトへ参画。その後、南アフリカ・中国・マレーシア・シンガポールでの事業拡大に携わりました。当時拡大期に入ったBMWは、世界中のマーケットに同時期に並行して進出したため、大きなチャンスを何度もいただけたのです。今振り返ってみても、イギリス、中国、人生で2度もファイナンスビジネス立ち上げに関われたことは、本当に幸運です。特に中国で、自らの手で最初の契約、最初のカスタマーを得ることができたのは、想い出深い経験です。当時の中国オフィスは10名ほどでしたが、今や500名の大組織となっています。その礎を築くことができたことは、私の誇りの1つです。
その間に、私は自分なりのブランドを確立してきました。オートファイナンスの世界では、セールス・オペレーション・ファイナンスの3分野のうち、2つができれば有能だと言われます。私の場合は、セールスとオペレーションの2分野でキャリアを積み上げ、強みを発揮してきました。それが今のポジションにつながっています。
さまざまな国で経験を積みながら、私はカントリーマネジャーとなりました。マネージングダイレクター以上の立場になると、誰かを頼ることができません。自分がすべての意思決定を行わなくてはならないのです。それは簡単なことではありません。例えば、マネージングダイレクターとなってから、私は自分の行動や気分によく気づくようになりました。なぜなら、それがすぐさま組織に伝染していくからです。自分の一挙手一頭足が、思わぬ結果につながりかねない仕事なのです。細かな気遣い、心遣いが求められるポジションだと思います。
そして2016年、私はビー・エム・ダブリュー・ジャパン・ファイナンスへやってきました。日本には想像以上に快適な住環境があり、全般的によく組織化されていて、礼儀正しい方ばかりです。そのおかげで、ビジネス環境にもプライベートの環境にも、スムーズに馴染むことができました。
さまざまな切り口からビジネスと組織を創造
ビー・エム・ダブリュー・ジャパン・ファイナンスについて教えてください。
ビー・エム・ダブリュー・ジャパン・ファイナンスは、お客様がBMWを所有し運転するという夢をかなえるお手伝いしています。オートファイナンスは、言ってみれば「自動車のオイル」のようなもので、お客様のBMWの購入を滞りなく進めていくために欠かせないビジネスです。BMWを所有したいお客様をサポートし、できるだけ簡単に、スムーズに、気持ちよく、楽しく購入していただくことが、私たちのビジネスの変わらないゴールです。これに加え、法規定に遵守して、お客様の支払能力を的確に評価しながら、正しい意思決定をスピーディーに行うこと、お客様に対して、必要なときに必要な情報を提供することも大切にしています。
いま大きく変わり始めているのは、「デジタル化への対応」です。ご存知の通り、いま自動車業界は大きく形を変えつつあります。電気自動車が広まってきており、自動運転技術の開発が進んでいます。こうした進化に合わせて、オートファイナンスの世界もイノベーションを起こしていかなくてはなりません。そこで私たちは今年、スタートアップ企業との協同プログラム「BMWイノベーション・ラボ2018」を開催しました。10週間にわたって、5つのスタートアップ企業と私たちのメンバーが、新しいビジネスアイデアを一緒に考え合いました。例えば、ある企業とは、お客様にオートローンなどの商品を説明するための「AIチャットボット(お客様の質問にAIが的確に回答するシステム)」を導入するにはどうしたらよいかを検討しました。そのチームは、お客様により楽しく、よりわかりやすく、より的確な商品を選んでいただくことを追求し、最終的にはゲーム性を持たせたAIシステムを導入するのがよいのではないか、といったアイデアをいくつも生み出しました。BMWイノベーション・ラボは、社内にエネルギーを注入することを目的に行いました。参加した社員たちは、最初は不安がっていましたが、スタートアップ企業の皆さんとすぐに意気投合し、エネルギーに満ちていきました。その意味で、これは大成功だったと考えています。
今後はどのようなことをしたいと考えていますか?
私としては、「BMWイノベーション・ラボ2018」だけでなく、さまざまな切り口からビー・エム・ダブリュー・ジャパン・ファイナンスのビジネスと組織を変えていきたいと考えています。ただ、そのときに注意しなければならないのは、変化のスピードです。日本社会は良くも悪くも安定を好み、急激な変化を受け入れにくい風土があります。例えば、中国ではこの数年で一気にキャッシュレス化が進みましたが、日本ではそこまでの変化は起きていません。そうした日本固有の変化スピードに合わせながら、私たち自身も着々と変わっていくことが重要です。
もう少し具体的に言えば、伝統的なビジネスを好むお客様に対しては、従来どおりのサービスを展開する一方で、若年層を中心としたお客様に対しては、新たなアプローチを新たに開発していきたいと考えています。特に、これからは日本でもカーシェアリングの需要が増えてくるでしょうから、カーシェアリングに合わせたプロダクトの開発が必須です。また、先ほどもお話ししたように、AIなどを絡めたデジタル・イノベーションを起こすことも欠かせません。こうしたことに積極的に取り組んでいきたいと考えています。
積極果敢にチャレンジできるチーム
どのような組織にしていきたいですか?
これまで以上に学ぶ意欲が高く、積極果敢にチャレンジできるチームをつくりたいと思っています。私としては、この組織に長期間良い影響を残せたら光栄です。そのために、これまでの私の経験・ノウハウをできる限りメンバーに共有し、全員のモチベーションをより高めていきたいと考えています。
どのような方を求めていますか?
私はさまざまな国でマネジメントを経験してきましたが、どの国のメンバーも基本は同じだと感じています。もちろん個人差はあるのですが、誰もが相手に感謝されたいと思っていますし、能力ややる気を高めたいという気持ちを持っています。メンバーのそうした想いに上手にコミットできる方なら、日本だけでなく、他の国々でもマネジャーが務まるでしょう。そうしたことが得意な方に来ていただけたら嬉しいです。
また、プロジェクトやアクティビティ、イベントのオーガナイズなどに対して、積極的に手を挙げる姿勢も、重要だと思います。それから、できない理由を探すのではなく、どうすればできるのかを追求する姿勢も極めて大切です。そして最後にお伝えしたいのは、英語を学ぶ姿勢です。英語ができなくては、日本以外のどこへ行くこともできませんし、グローバル企業で活躍するのは難しいでしょう。このような姿勢を持った方に是非お越しいただけたらと思います。