ロクシタンL’OCCITANEブランドの情熱と
True Storyを届ける
重要なのはみんなが楽しく働ける環境をつくること
ロクシタンに入社するまでの経緯を教えてください。
実は一度、フランスの大学に入ってビジネスを学んでいたのですが、途中でエンジニアリングを学びたいと思うようになり、イギリスのオックスフォード大学に移りました。なぜエンジニアリングを選んだかといえば、論理的に理由づけして問題を解決する方法を考えることと数学が好きな私が実用的に経営を学ぶのであれば、エンジニアリングから入るのがよいのではないかと考えたからです。フランスとイギリスは文化がかなり違いますし、オックスフォード大学は800年以上前から存在する学び場で、伝統的な学び方や物事の見方が根づいている場所で、実に楽しい日々で、いまでも大学時代の友人とはときどき会っています。
大学卒業後、これから何をすべきかを考えるために、数学の教師になりました。私が着任した学校は貧困層、移民としてやってきた世代の家族や子供が多い地域にあり、さまざまな意味で大変な場でしたが、困難な状況だからこそ自分のリーダーシップを開発できると考えて、チャレンジしました。私自身の想いを生徒たちに率直に伝え、ともに明確な目標を共有し、そこに向かいながら教えていった結果、生徒たちとは友人のような深い関係を築くことができ、彼らからリーダーシップとは何かを学ばせてもらいました。実はそのときの生徒の1人がいま、ロクシタンUKで店長を務めています。
その後、コンサルティングファームに入りましたが、自分は単にアドバイスするだけでなく、自ら企業チームの一員となって行動したいのだと悟り、スイスのスキー関連企業でセールスディレクターとなりました。スキーも好きで、スキーリゾートについての販促活動、新規リテール店舗開発といった仕事も肌に合っていたので、実に楽しい日々でしたが、さらに経営について学びたいという想いから、父も通った国際性豊かなINSEADの門を叩きました。INSEADではファイナンスやマーケティングなどのスキルを学びましたが、最も大きかったのは才能溢れる多くの方々と出会えたことです。彼らとはいまでもときどき会っています。INSEAD修了後、オーナーである父に、「ロクシタンに入社したいが応募していいか」と聞き、「ぜひ入社して欲しい」と返答をもらい、入社を決意しました。入社を認めてもらい、入社しました。
では、ロクシタングループでの職歴を教えてください。
まず、2011年にロクシタンブラジルに赴任しました。父や経営陣の皆さんが、本社から遠く、経営トップの家族であることを周囲がそれほど気にしない市場を選んでくれたのだと思います。自分自身の力で成長していくことを求められる環境で、まさに私が望んでいたところでした。ブラジルには6年間いましたが、前半の3年はロクシタンブロヴァンスのために働き、主にロクシタンのビジネスを学ぶ期間でした。後半の3年はロクシタンブラジルのジェネラルマネジャー兼ブランドマネジャーとして、営業、ショップ、工場、ラボのすべてを見ていました。
私が赴任した当時のブラジルでは、ロクシタンの従来製品がなかなか受け入れられず、苦戦していました。ブラジルが保守的なマーケットで、プロヴァンスの商品だからといった高価格帯では売れず、しかし競合は多くなく、多様性を受け入れる文化でした。そこで私たちは、性能面でも価格面でもブラジル市場に適した、ブラジル国産植物を使いブラジルで製造した独自製品「ロクシタン・オー・ブラジル」を開発することにしました。リテール戦略も実施し、その結果、売上は3年間で何十倍にもなりました。
この6年で、私は、組織を作る上で最も重要なのは、社員のみんなが楽しく働ける環境をつくることだと知りました。そのために、私はみんなの目線を同じ目標に合わせ、各メンバーに権限とイニシアティブ(裁量)を与えました。各個人のイニシアティブで実施したことが全体目標達成に貢献できるようにしました。結果として一体感のあるチームを築くことができました。このチームは2年続けてロクシタングループ最高の成長率を叩き出し、見事に目標を達成したのです。日本でも、同じようにみんなが楽しく働ける環境をつくりたいと思っています。
全部門の協力体制を築きたい
ロクシタンジャポンと日本の印象を教えてください。
ロクシタンジャポンへの就任オファーを頂いたときは、複雑な気持ちでした。当時はブラジルで楽しく働き、楽しく暮らしていましたから、そこを離れて未知の環境に飛び込むというのは不安がありました。私はそれまでに2回、来日したことがありました。とはいえ、私にとって日本のマーケットはブラックボックスで、ほとんど未知の世界。心配がなかったといえば嘘になります。
ただ一方で、ロクシタンジャポンは、ロクシタングループ内で最も成功を収めているケース。そのマネジメントに携われるということは、オーナーの息子だからというよりも、自分のパフォーマンスが認められている証であり、コンフォートゾーンを離れてより多くを学ぶ機会、次の大きなチャンスを与えてもらったのだと感じました。その意味では、とても嬉しいことだったのです。
来日して1年ほどになりますが、日本という国には何度も感動しています。インフラが極めて整っていますし、文化遺産も素晴らしい。来日当時はすべてのことに驚いていましたが、日本で過ごすうちに、道理にかなっていると思えるようになったことがたくさんあります。まだ日本や日本のマーケットについてすべて理解できたとは思いませんが、その独自性や特徴は少しずつわかってきました。
ロクシタンジャポンの今後の戦略について教えてください。
ロクシタンは、原料生産者の方々と一体となって製品を作る唯一の自然派ブランドです。私は、ロクシタンの情熱やTrue Storyを日本の皆さんと共有しさらに広めていきたいと思っています。生産者が丹精込めて作ったローズやラベンダーなどを使った素晴らしいコスメティックスを産み出しているという、そんなTrue Storyをもっと広めていきたいのです。将来的には、見せかけでは無い (not fake) 、人々が本当に望む生活を創りだす、ライフスタイルコスメティックブランドとなることを目指しています。高品質だからという理由で選ばれるだけではなく、ロクシタン製品を使うことが、あるがままに自然に暮らす姿 (be yourself) を体現するために必要なブランド、生活を楽しく豊かにするブランドになるよう育てていきたいと思います。
戦略としては、第一に決めているのは、「店舗数を増やす戦略は取らない」ということです。既存店舗の強化と、「Back to Basic」基本に立ち返っての改善に取り組みます。既存各店舗でできることを追求し、その結果として売上・利益を高めていきます。具体的には、まずオペレーション、マーチャンダイジング、セールステクニックなどの基本を全店舗で徹底的に改善していきます。ロクシタンは日本全国に120ほどの店舗があり、全店で基本にフォーカスするのは決して簡単ではありませんが、これをやり遂げたいと考えています。また、店舗の特徴を生かした店づくりにも力を入れていきます。当然のことですが、フラッグシップショップ、来客数の多いターミナル駅近くの店舗、ツーリスト向けの店舗では、それぞれ目指すべきショッピング体験が異なり、店づくりも変わってきます。その店舗だから体験できる独自性あるコンセプトを持った店作りとして、実は、他店と比べて明らかにエンターテイメント性の強いショップがすでに存在するのですが、今後はそうした差別化された店作りをより実施していきます。
第二に、日本市場に向けて強力な「新製品・新シリーズを開発する」ため、こちらから本国に積極的に提案していきたいと考えています。製品開発には少なくとも2年はかかり長期戦略となるため現時点で具体的に語るのは難しいのですが、いずれにしても日本のお客様の声を吸い上げる形で、日本独自の新製品を作っていく予定です。この新製品・新ブランドが立ち上がれば、ロクシタンの製品や店舗体験をより楽しんでいただけるようになるはずです。
第三に、ロクシタンの原料生産者の声・情熱、消費者の声・情熱、店舗スタッフの声・情熱などを継続的に伝えていきながら、日本市場においてのブランドへの情熱をより高めたいと考えています。日本ほどロクシタンに対する情熱や興味が高い国は、他にはありません。日本の消費者の皆さんは製品への期待が総じて高く、ロクシタンは、その期待に応えられるだけのユニークネスを持った製品・ブランドだと考えています。私たちは、かわいらしくフレッシュな「チェリーブロッサム」から高級リッチな「テール ド ルミエール」、フレグランスや、夏にぴったりな「ヴァーベナ」、素晴らしいヘアケア製品、ハンドクリーム、化粧水などの基礎化粧品からオーガニックエッセンシャルオイルを使ったスキンケア「イモーテル プレシューズ」まで、幅広い製品ラインナップを用意しており、そのすべてで原料選び、製品化、ディスプレイの全工程にこだわっていることを、さまざまな視点から伝え続けます。そして、日本の皆さんに、ロクシタンに対する理解と愛情を深めていただきたいと願っています。
第四に、ロクシタンジャポンで「働く皆さんのマインドセットを変えたい」という想いがあります。とはいえ、上から押しつけるつもりはまったくありません。従業員の皆さんの意見を吸い上げて、日本法人の良い部分を残しながら、一方でグローバルの視点を取り入れ、ロクシタングループの一員であるという意識を強くしたいのです。例えば、私が日本で最も感銘を受けたのは、日本チームのそれぞれが1つの方向に向かって力を注いだとき、本当に大きな成果が出ることです。私は大学生時代、チームメンバーの協力体制が試される8人制ボートの選手でした。ボート競技に全力を注いで以来、私はチームで何かを成し遂げるのが好きなのです。その私から見ると、日本人のチームワークは素晴らしいの一言です。私はこの特性を活かして、全部門の責任者に権限を与えながら、同時に全部門が足並みを揃えて進んでいく協力体制を築きたいと考えています。
社会や世界のために働きたい方に期待している
どのような方を求めていますか?
基本的には、さまざまな才能や特性を持った方を広く求めています。組織には多様な人材が必要ですし、各部署で求めるスキル・特性が異なるからです。とはいえ、入社する方に共通して求めたいスキルや特性も何点かあります。1つ目は、「チームと目標を共有し、みんなとともに動けること」です。私たちはいつも協力して仕事を進めていますから、チームワークはぜひ重視していただきたいと思います。2つ目は、「組織に貢献したいという意欲」です。楽しく働くというのは、楽をするということではありません。権限やイニシアティブをもってタフワークさえも楽しめる方、力を尽くして組織に貢献することに幸せを感じる方に入社していただきたいと思います。
3つ目に、「オーナーシップ」を持っている方に来ていただけたら嬉しいです。オーナーシップとは、リスクを恐れずに新たなアイデアを提案・実行して、それがうまくいかなければ失敗を認め、その失敗から何かを学習できる力です。失敗したことを隠すのではなく、失敗の責任をとった上で、その後の成功に結びつけていただきたいのです。
最後に読者へメッセージをお願いします。
いま世界中で、若い世代を中心にして、コミュニティや社会のために、世界のために働きたいと考える人が増えています。もちろん、日本も例外ではありません。私は、そうした方に最も期待しています。ロクシタンの製品・ブランドを広めることは、日本と世界にとって良いことだと確信しています。その想いに共感する方と一緒に働けたら、私は幸せです。