まず、マイクロソフトのこれからの事業展開について教えてください。
上田氏:
大きくは2つの方向があって、1つはユビキタス社会への対応です。そこではコンピュータが各種家電機器や、携帯電話、自動車電話などのモバイル機器と融合していきます。それに対してマイクロソフトが貢献できる部分は大きいと考えています。ユビキタスは人間の可能性を広げますが、それを具現化するためには適切なソフトウエアが絶対に必要です。そのためには人間の習慣に合う、利便性・機能を考慮したユーザーインターフェースで、誰でも簡単に、ナチュラルに使えるようにしなくてはなりません。日本の家電メーカー、モバイル機器メーカーと信頼できるパートナー関係をつくり、お互いの専門分野で協力し、エンドユーザーに最大のバリューを提供していきたいと考えています。
もう1つは企業のナレッジマネジメントを支援すること。最近ではデータベースの活用が進んでいますが、そこに格納されている情報は全体の2割でしかないと言われています。残りの約8割は社員個人のPCファイルやEメールの中にとどまっているのです。それを50人ぐらいのグループ単位でスピーディーに検索し、ウェブ上で共有できるようにする。それが実現すれば、企業のナレッジマネジメントに大きく貢献できるはずです。
今回の大量採用の目的はどこにあるのでしょうか?
上田氏:
1つはMSN、Xboxなど、OSやアプリケーションというマイクロソフトのベースビジネス以外のサービスの充実・強化です。MSNはユビキタスにおいてキーコンポーネントになってきますので、総合ポータルとして更なる成長が必要と考えています。そのために人員を強化して、検索エンジン、コンテンツを充実させていく予定です。また、12月に発売するXbox360の拡販があります。カテゴリーとしてはゲーム機ですが、機能的にはそれ以上でホームサーバーのような役割を担う製品ですから、できるだけ多くの家庭に普及させたいと考えています。 それから、先ほど申し上げたナレッジマネージメント・プロジェクトの人員や、開発を含めたアライアンス事業のための人員も必要としています。
品川氏:
マイクロソフトは今後も新製品を開発し、一つひとつの製品が相互に連携して、「サービス」というカタチで、世の中のビジネス、さらには人々の生活を大きく変えていこうとしています。このマイクロソフトの挑戦はまだまだこれからです。だからこそ、IT業界の経験者だけでなく、いろいろな業界・分野のスペシャリストに私たちの仲間になっていただくことで、営業やマーケティング活動の充実を図っていくことも、今回の大量採用のベースにあります。
具体的にはどのような人材を求めておられますか?
上田氏:
「ITと社会の融合」となると、家電業界はもとよりエンターテイメント、広告、リテールなど、あらゆる業界の知識やノウハウが必要になります。ですから今回は、IT業界以外からできるだけ多くのエキスパートに来てほしいと思っています。これは私たちにとってもチャレンジですが、このようにして社内のダイバーシティを広げていかなければ、会社のポテンシャルも大きくなりません。IT専門家が集まった同質的な文化ではなく、未知の異分野を開拓していける多様性と広がりのある社風を目指しています。
品川氏:
通常WordやExcelを使って仕事をする人たちが、その機能をフルに活用して仕事の効率を高めているかというと、必ずしもそうではありません。WordやExcelというマイクロソフトの製品によって、どれほど業務の効率化が果たせるのか、どれほどの生産性の向上が図れるのかをプロダクトの性能とともに伝えていかなければなりません。ですから、お客様の立場に立ってわかりやすい言葉でコミュニケーションを取れる人材を求めています。
それから、「マイクロソフトで何をしたいのか」「どういう経験を積んで将来自分がどうなりたいのか」という目標意識を持っている方に来ていただきたい。自主性を大事にする社風なので、意欲と能力さえあれば自分で仕事を動かすことができます。仕事では個人の裁量権が大きい分、自分でやり遂げるという強い意志がなければ難しい。それを持っている方は、必ず伸びて行きます。また、どんな仕事でも営業・マーケティング・プリセールスSE・コンサルタント、そしてビジネスパートナー様と共に進めて行く必要があります。だからこそチームワークの重要性を理解できる方に来ていただきたいと思います。
トレーニングやキャリアプランはどのように行われていますか?
上田氏:
自分のキャリアプランは自分で責任を持つ、というのが基本的な考え方です。各事業部門の人材募集情報は社内外に公開されていますから、それを見た社員が応募します。マネージャは、自分の部下が「異動したい」と言ってくれば、それをサポートしなければいけません。と言っても、採用にあたって社員を優先することはなく、外からの応募者と対等に比較してポジションに合う方を選びます。異動のルールは、1年間はそこに在籍すること。反対に、5年も同じポジションにいる人に対しては、キャリアアップのために人事が異動を促しています。
人事評価については年度単位で行っています。環境変化が激しいIT業界では四半期評価が一般的ですが、マイクロソフトはワールドワイドで年度評価です。それだけ長期的な視野を持って、社員が自分の目標に向かって行けるようにしています。また、結果ではなくプロセス重視の評価を行います。いかに優れた結果を出しても、そのプロセスを再現できるか、ほかに応用できるか、他の人に広められるかも問われます。
トレーニングについては、製品の技術的な解説から英会話まで、非常に幅広いプログラムがイントラネット上にあり、自分でプランを立てて受講できるようになっています。周りから勉強しろと言われることはありませんが、みんな自己責任で利用しています。