INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社 久保田 美紀

人事×経営 〜人事戦略を語る Vol.46

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

人事本部 本部長代理

久保田 美紀

大学卒業後、小売サービス業で人事を経験してから、テーブルコーディネーターの世界へ飛び込む。専業主婦を経て、SAPジャパンでふたたび人事の世界に入り、採用・教育・部門人事を経験。そして2010年、スターバックス コーヒー ジャパン入社。人材開発部長としてリテールおよびサポートセンターの人材開発・組織開発に従事した後、2016に人事部長就任。2019年より現職。米国CCE, Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

公開日:2020年8月24日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

アルバイトがミッションに基づいて自発的に考えながら働く「奇跡のような会社」

スターバックスに入るまでの職歴を教えてください。

hr45_02大学時代は放送研究会に入って、DJやラジオドラマ制作を行いました。そこで、みんなで話し合いながら自分たちが表現したいものを作りあげていく面白さを知りました。また部長を任せられたことで、チームづくりの楽しさや喜びも覚えました。何かを人に伝える仕事に関わりながら働きたいと思い、就職活動では出版関係を回りましたが、自分の想像していた世界とは違うと感じ、最終的には女性が活躍しやすい環境があると言われていた小売業に絞り、就職しました。店舗の立ち上げを経験した後、人事部から声がかかり、社員教育や研修企画、採用業務に携わりました。ある研修プログラムの導入に関わる中で、独立して働く素敵な女性スタイリストとタッグを組む機会があり、その方との出会いから「私もこんな風に、手に職をつけて誰かを幸せにする仕事がしたい」という自分の仕事観みたいなものが芽生えました。

そんな時に選んだのが「テーブルコーディネーター」の世界でした。クニエダヤスエさんの本に影響を受けたのがきっかけです。私は、あるテーブルコーディネーションの事務所に入り、テーブルコーディネートやフラワーアレンジメントを現場で学んでいきました。とても面白い仕事でしたが、厳しい世界でもありました。結婚を機に退職し、いったんは専業主婦に。しかし、1年ほどで働きたくなって派遣会社に登録し、出会ったのがSAPジャパンでした。まず自分の経験で活かせることから考え、人事の仕事が適しているというアドバイスを受け、新卒採用担当として働き出しました。IT企業も外資系企業もはじめてでしたから、最初はかなり緊張しましたが、魅力的な上司や同僚が多く、少しずつ馴染むことができました。

キャリアの転機は、1年後に正社員になったところからです。人事という仕事がどのようなものかもよく分からず飛び込んだ世界でしたが、企画から実行まで全て担当者に裁量が任せられており、採用の仕事が本当に楽しいと思うようになりました。そして、次の転機は、2004年にHRBP部署の立ち上げメンバーとなったことです。当時の日本では、HRBPという職種はまだほとんど知られておらず、何をしてよいのかわかりませんでした。それで私は上司と共にSAPのドイツ本社に赴き、日々英語を学びながらHRBPの研修を受けたんです。帰国後、私はSAPジャパン初のHRBPとなりました。担当部署のビジネスを理解した上で、部門長と一緒になって組織をどうすべきかを考え、組織変革を実行する。その一方で、現場社員のキャリアもサポートしていく。HRBPは、実際にやってみるとやりがいの大きな仕事でした。私はコンサルティング部門の担当として、キャリアパスの複線化などの変革を行いました。また、ドイツ本社などと頻繁に連絡を取るうちに、英語力も少しずつ身についていきました。

その後、私は人材開発マネジャーとなりました。以前から、現場社員の皆さんの育成に携わりたいと思っており、念願のポジションでした。振り返ると、SAPで長く続けることができたのは、さまざまなチャレンジの機会を得られたことと、人事という仕事が誰かを幸せにする仕事であることに気づいたからです。約10年間に、採用・HRBP・教育と、様々な経験を積ませていただき、自分の大切にしたいことが見えてきたことがきっかけで、2010年にSAPを離れ、スターバックスに入りました。

なぜスターバックスを選んだのですか?

SAP時代の元上司から話を聞いたのがきっかけです。「スターバックスは、多くのアルバイトが、ミッションに基づいて自発的に考えながら働く、奇跡のような会社なんですよ。人材開発を本気でやりたいなら、一度この会社を見てみるのは損にならないと思うよ。」という言葉に惹かれ、それは興味深いと思い、面接を受けて入社を決めました。

入社後はどのような経験をしてきたのですか?

hr45_06最初の5年は人材開発部長、2016年からの4年は人事部長でした。入社当時、スターバックスには、日本独自のしっかりとしたバリスタ教育プログラムが根づいていました。人材開発部長としての私の最初のミッションは、そのプログラムを変え、グローバル基準のバリスタ教育を導入すること。当然ながら、新任の部長が大きな変革を進めることには、社内から抵抗や反発がありました。そこで私は、現場から厚く信頼されているリーダーを一人連れてパイロットカントリーの海外店舗に赴き、グローバルのバリスタ教育を一緒に視察したんです。その結果、そのリーダーが「この教育プログラムを日本に導入したい」と考えるようになってくれた。社内の空気が一気に変わり、新プログラムの導入がスムーズに進みました。私は、スターバックスのリーダーシップとはどういうスタイルなのか、この経験を通じて学び、チームメンバーのなりたい姿ややりたいという気持ちを大事にすること、その実現を支援することがリーダーの役割であると気づきました。

2015年には、「ノーレーティング」を視察するため、1カ月シアトル本社で働く機会がありました。このとき衝撃を受けたのは、「シアトルでノーレーティングが機能しているからといって、日本でそのまま導入しなくてもいいよ」「日本にとって何が大事なのかを考えた上で、ノーレーティングを導入するかどうかを決めていいからね」と何度も言われたことです。たったの1カ月でしたが、シアトル本社ではリーダーとして最も重要な視点を教えられたと思っています。帰国後、私は人事部長となり、そこからは経営・現場の両方を念頭に、日本に最もフィットする仕組みや制度を考えつづけて、ここまでやってきました。

一人ひとりのオーナーシップを高めるために

スターバックスの特徴を教えてください。

hr45_05先ほども少し触れましたが、最大の特徴は、スターバックスの「ミッション&バリューズ」に基づいて、パートナー(社員・アルバイト)の一人ひとりがオーナーシップを持って働いていることです。コーヒーの淹れ方の基本は決まっていますが、接客マニュアルは存在しません。各自が主体的かつ自由に接客するのがスターバックスなのです。また、私たちは広告を展開していません。私たちにとって店舗こそが広告塔なのです。店舗での体験が良いものなら、お客さまは次も足を運んでくれる、と信じています。その結果、全国のスターバックスの店舗で感動的な瞬間が生まれています。

私たちが常に心掛けているのは「Learner-driven(学習者主体)」の考え方です。店長や時間帯責任者は、パートナーに対して、問いを投げかけることしかしません。「いまの接客はなぜうまくいったと思いますか?」「これから磨きたいのはどんな力ですか?」などと問いかけて、パートナーに自ら考えてもらうんですね。こうした対話を日々繰り返すことで、パートナーのオーナーシップが少しずつ高まっていきます。

おおまかに言うと、キャリアステップは次のようになっています。新人バリスタは、最初にロールモデルとなる先輩の後に付き、先輩がお客さまと接するところを観察します。その次に、ロールモデルが横について、自ら接客をしてもらう。これを何度か繰り返して、うまくできるようになってくると自信がついてきます。そうしたら独り立ちです。上手な接客ができるようになったら、ロールモデルとして新人を見る立場になります。さらに熟達したパートナーは、時間帯責任者としてリーダーシップを発揮するポジションに就きます。スターバックスの場合、学生アルバイトが時間帯責任者になることも決して珍しくありません。そこまでいった学生パートナーは皆、就職活動では引っ張りだこですね。リーダーシップが身についており、日々のコーチングや1on1の対話で自己理解も十分出来ているからです。

hr45_07

Our Valuesを表した5つのカード(左)と、すばらしい行動をお互いに認め合うThank youカード(右)

スターバックスとパートナー一人ひとりのビジョニング(価値観のすり合わせ)が行われており、優れたロールモデルが存在し、学習者主体のコーチングが日常的に行われている店舗は、例外なくうまく回っています。忙しくても活気があり、多くのお客さまに「また来たい」と思っていただけるような対話・接客がなされているのです。全店舗をこのような状態で維持しつづけるのが、私たちの変わらない目標です。

人事の役割について教えてください。

当然のことですが、私たちも売上目標・利益目標を掲げています。店舗ごとの達成目標もあります。しかし、私たちはその数字を達成しろとは言いません。また、仮に未達であっても、そのことで店長を責めたりはしません。

なぜなら、数字を持ち出すと、店長やパートナーが自発的に考える時間と心の余裕を奪ってしまうからです。私たちの体験ビジネスで重要なのは、お客さまにより良い接客をするための「時間と心の余白」です。この余白を消してはならないんですね。ですから、売上があまり良くない店舗があったら、店長やパートナーに対して、「どうしたらもっとお客様に喜んでいただけると思いますか?」などの問いを投げて、改善策を主体的に考えてもらうことが大切だと思っています。その意味で、人事の役割は、パートナーの体験をより豊かなものにすることであり、主体性を育むコーチングやトレーニングを通じて、パートナーの可能性を引き出すお手伝いをする存在だと思います。

「お客さまに喜んでいただくために何ができるか」を考え尽くす

どのような方を求めていますか?

hr45_03やはり第一に、私たちの「ミッション&バリューズ」に共感していただけるかどうかが重要です。「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。」「勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。」「誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。」「一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。」この4つのバリューズを日々体現したいと思っていただける方とともに働きたいと考えています。

その上で、なかでもこれから重要になってくるのが、「何が求められているかを自ら考えて行動を起こす力」です。いま世界があらゆる面で激しく変化しています。このスピーディーな変化には、組織全体が対応するとともに、現場のパートナー一人ひとりも素早く対応していかなくては間に合いません。

ただいつの時代も、私たちのビジネスの根本は変わりません。「お客さまに喜んでいただくために何ができるか」を考え尽くすのが、スターバックスの姿勢です。私たちのイノベーションは、常にお客様との関係性のなかから生まれます。レジカウンターにお客さまが並んでいる時にはメニュー表をお渡しする、ドリンクを提供するカウンターでお客さまに話しかける、といった工夫も、その姿勢から自発的に生まれたものです。最近はUber Eatsも活用していますが、パートナーたちはそこでもカップに一言メッセージを書くことを忘れません。

こうした「ケア」によって、「あのパートナーにまた会いたい、あのお店にまた行きたい、スターバックスをまた使いたい」と思っていただくことが、私たちの提供価値なんです。簡単なことではありませんが、自分もスターバックスの価値観に共感する、と思う方ならどなたでもきっとスターバックスで活躍できます。

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

1971年にアメリカのシアトルで誕生したスターバックス(Starbucks)。日本法人であるスターバックス コーヒー ジャパン(Starbucks Corporation)株式会社は1995年に設立され、翌年には日本での1号店を出店。ブランドMissionは「人々の心を豊かで活力あるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」。2015年にスターバックス・コーポレーションの完全子会社になっています。

転職のご相談、求人応募・お問い合わせには、
まず無料登録をお願いします。

1分で登録完了転職サポートお申込み

SNS

企業インタビューやセミナー
業界転職情報をお届け!

Arrow