INTERVIEW
企業インタビュー

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株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 島谷 泰史

人事×経営 〜人事戦略を語る Vol.18

株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

人事部 エグゼクティブディレクター

島谷 泰史

1988年ソニー株式会社入社。人事本部、工場人事などを経験した後、2001年からインドネシア、シンガポールに海外駐在し、アジア・パシフィックのリージョナル人事責任者を務める。そこでは東南アジア、オセアニア、インド、中近東、南アフリカのエレクトロニクス事業の製造・販売オペレーションの人事サポートを行う。2011年1月より米国Sony Pictures Entertainmentの日本法人である?ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの人事責任者として着任し現在に至る。

公開日:2017年1月23日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

アイデアと行動で人の気持ちに働きかける

現職に至るまでのキャリアを教えてください。

cg19_02大学時代、カナダにホームステイしたのですが、ホストファミリーが本当に親切で、海外での生活は貴重な経験となりました。それが、いつかはグローバルな環境で仕事をしたいという思いにつながったのだと思います。就職活動では積極的に海外展開しているメーカーを志望し、ソニーに入社しました。当時のソニーは丁度、海外での音楽事業や映画事業を買収し事業を多角化している時期で、自由闊達な社風にも惹かれて、迷うことなく選びました。配属は人事で、最初の3年間は本社で給与・勤怠管理、労務などの業務を経験しました。当時はまだコンピューター化が進んでおらず、手作業の実務処理も多く大変だったところもありますが、何事にも妥協せず真剣に取り組んだと記憶しています。このときの実務経験は、今の人事プロフェッショナルとしての専門性の基礎になっています。

入社4年目からは、社内の自己申告面談の場で上司と相談した結果、愛知県にあったテレビ工場の労務担当として勤務することになりました。ソニーのビジネスの根幹はものづくりであり、一度、その現場である製造事業所を経験する必要があると強く感じていたからです。本社勤務のときはソニーの製品開発やビジネスが遠く感じられていたのですが、工場で日々テレビが生産され出荷されていくのを目の当たりにして、自分がソニーの一員であることを再認識しました。また、2000名規模の工場で、社員の顔と名前が一致する距離で働くことができたのも貴重な経験でした。自分が実施した人事制度変更などについての社員の反応を直接肌で感じることができたからです。

テレビ工場時代で特に記憶に残っているのは、ある年末の出来事です。テレビの販売が非常に好調で在庫が不足し、増産に次ぐ増産を行っていました。年の瀬も押し詰まってくると、社員も連日の残業や休日出勤で疲労がたまってきて、出勤率が徐々に下がってきます。そこで、私はあるアイデアを実行に移しました。近くの家電販売店に行き、テレビの在庫がなく空になった商品棚の映像を撮影しました。さらに製造ラインの社員へ増産をお願いする店長からのメッセージを録画しました。それを工場に持ち帰り、製造ラインの社員に見せて休日出勤の協力要請をしました。嬉しいことに、皆が帰省したい時期にもかかわらず出勤率は100%になり、無事に増産に対応することができました。これは、私たちの製品を待っているお客様がいることを知れば製造ラインの社員もきっと理解してくれるのではないかと考え思いついたものでした。人事も、アイデアと行動力次第で社員の心を動かすことができるのだと知った瞬間です。

その後、私は放送局・業務用ビジネスの事業本部人事を経て、2001年から東南アジアに赴任し、念願のグローバルなビジネスの環境に身を置くことになりました。

海外駐在時の経験を詳しく教えてください。

cg19_03インドネシア駐在のミッションは、当時起きていた工場の労働問題が原因で分断されていた社員間の融和策を進めることでした。私は、現地のメンバーと対話して融和を図っていくため、インドネシア語が必要だと思い勉強して行きました。インドネシアの社員の多くはイスラム教徒ですから、「ちょっと一杯いこう。」と言ってお酒に誘うわけにはいきません。そこで、「一緒にフライドチキンを食べよう。」と誘って、できるだけインドネシア語で対話するようにしました。最終的には、基本的なコミュニケーションをとるには困らないくらいに上達しました。今でも、バリ島へ旅行で行くと言葉が使えるのでとても助かります。赴任した地に馴染むには、現地の言葉を覚えることと、その地の食べ物を一緒に楽しむことが一番の近道だと思います。

その後、今度は3年半ほどシンガポールに転任となり、アジア・パシフィックのリージョナル人事責任者となりました。東南アジア・オセアニア・インド・中近東、さらに南アフリカまでをカバーし、日々、各地の人事担当者とコミュニケーションをとり、様々な人事労務問題に対応してきました。また、グローバルな環境に身を置き、各国のありとあらゆる文化や考え方をもつ方と意見を交わし交流することにより、世界のスタンダードが何であるかを理解し、日本を客観的に捉えることができるようになった意味でも本当に良い経験となりました。

この期間によくわかったことは、結局、日本人も、シンガポール人も、タイ人も、インドネシア人も、マレーシア人も、インド人も、基本的には同じように喜びを感じ、腹を立てる原因も同じということです。人間の基本的な感情は共通で、人事という仕事は、それに対処するわけですから、必ず普遍的なところがあるのです。ただし、一方で、文化・慣習・法律・宗教などは各国で違います。従って、表面に表れる見え方は異なります。インドネシア人・フィリピン人はおおらかで寛容ですし、タイ人は微笑みの国というだけあって、日本人以上に自分の気持ちを表さない国民性で、行間を読み取り本心を察しながら接する必要があります。シンガポール人は自分のキャリアに野心的で昇給、昇格を強く要求しますし、インド人はよくしゃべり、主張する人たちです。表面的な違いがどこで、共通する内面の本質がどこなのか。その感覚とこつさえつかめれば、初めて訪問する国でもすぐに入り込んでいけると信じています。

帰国後、オーディオ事業本部 人事課 統括課長、ソニーDADC 人事総務部長を経て、2011年1月に?ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下ソニー・ピクチャーズ)に着任し現在に至ります。

外資系企業と日系企業双方の文化をもつ会社

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントについて教えてください。

cg19_04ご存じの通り、映画・テレビドラマ・アニメなどのコンテンツを扱うエンタテインメント事業を行っています。映画製作、劇場配給、ホームビデオ販売、ライセンスセールス、それからアニメ専門チャンネル「アニマックス」・海外ドラマチャンネル「AXN」、「AXN Mystery」などのチャンネル放送運営を手がけています。本社はロサンゼルスで、もともとはコロンビアピクチャーズというハリウッドのメジャー映画スタジオで、それをソニーが買収したという経緯があります。2015年に映画部門のトップマネジメント体制が変わってから、「よりインターナショナルで(北米以外でも)売れる映画をつくる」「ローカルプロダクションに注力する」という経営方針となり、現在は邦画の製作にも力を入れ始めています。

映画業界は今、ビジネスチャンスの時期を迎えていると思います。数十年前は、映画や映像コンテンツを楽しむためには、映画館に行くしか方法がありませんでした。それが、テレビ放送が始まり、また家庭でホームビデオを楽しむことができるようになり、最近では技術革新のおかげで映像デジタル配信サービスが普及してきました。スマートフォンやタブレット端末を使って、自宅以外に電車の中でも楽しむなどのように、個人がそれぞれ好きな作品を好きなときに視聴することができます。映像コンテンツを楽しむ機会が一気に広がったのです。これは私たちにとって大きなビジネスチャンスだと捉えています。私たちも現在、デジタル配信領域とデジタルマーケティングに注力し、ビジネス拡大を進めています。

ソニーグループであることのメリットは何ですか?

やはり「One Sony」として、さまざまなソニーグループ会社とのシナジーを活かせることです。たとえば、2016年夏に私たちは「ゴーストバスターズ」を公開しましたが、そのプロモーションの一環として、エイプリルフールに、「ソニーが、ゴースト退治の装置である“プロトンパック”の開発に成功した!」というニュースを流して、ずいぶん話題になりました。また、このとき4月1日の一日限定で、ソニーのウェブサイトの「SONY」ロゴの「O」の文字にマウスを移動させると、ゴーストバスターズのマークに変わるというアイデアも実施されました。ソニーは何よりもブランドを大切にしており、ソニーロゴの変更は過去許されず聖域であったのですが、それを特別に許可していただきました。このようにして、グループ全体で協力できる体制が整っていることはとても心強いことです。今後も、たとえば、PlayStation®VRに使われているようなVR技術が映画・ドラマ・アニメコンテンツと結びつくと可能性がさらに大きく広がるのではないかと考えています。

それから、組織としては、外資系企業と日系企業双方の文化をもち、いいとこどりができているのはメリットの一つです。たとえば、外資系の効率的で早い意思決定の文化をもつと同時に、日系企業の中長期的な人事制度、人材育成・活用の文化をもっています。ソニーは、人材活用や人材への投資を重視する会社ですが、その社風を受け継いでいます。

映画、テレビドラマ、アニメが好きなら最高の職場

人事方針・人事施策について教えてください。

cg19_05まず採用については、新卒採用は行っていません。すべて経験者採用となります。映画・放送業界をはじめ、外資系、日系企業など本当にさまざまな業界から多種多様な人材が集まってきています。全員に共通するのは、映画・テレビドラマ・アニメが好きで、情熱を持っていることです。また、何をするにも遊び心をもって自分たちで楽しむことが好きです。私たちはお客様にエンタテインメント作品をお届けしている会社ですので、私たち自身が楽しく仕事をしたいと考えています。

人事戦略では、タレントディベロップメントが鍵だと考えており、先ほどもお話しした通り、中期的な人材育成施策に力を入れています。その一環として、私たちは「C3」というコンセプトを導入しています。C3とは、コネクト(Connect)・コンバース(Converse)・クリエイト(Create)のことで、コネクトはチームやビジネスにどのように貢献できるかを一人ひとりが考えて行動することを指します。コンバースとは、年2回の定期面談だけでなく、必要に応じていつでも上司と部下が対話し、コーチングを行うことを促します。上司と部下の関係を変えていくため、上司は「コーチ」であるべきだと私たちは考えています。クリエイトは、社員が自分の成長機会を自ら考え、創出していくことです。

社員の成長を促すために、「E3」というコンセプトがあります。これは、人材の成長要因は70%が経験、20%が上司・先輩・ロールモデルからの薫陶、残りの10%が教育研修であるという「70:20:10の法則」を基にしたもので、エクスペリエンス(Experience)・エクスポージャー(Exposure)・エデュケーション(Education)の3つより構成されます。社員は毎年期初に「E3」に基づき自分の成長プランを立てます。このようなしくみを使い、私たちは長い目で社員の成長を促しています。たとえば、「70」の「経験」でいえば、他部署のプロジェクトに連携・参画することや、社内留学的なものを実施して社員の成長を支援することも進めようとしています。それぞれの部門によって宣伝・パブリシティ、マーケティングの手法やノウハウは異なり、部門をまたいで互いに専門性を高めることは大いに意義があると感じています。

なお、「C3」はアメリカの人事制度の潮流である「ノーレーティング(人事評価自体を廃止する動き)」を受けたものですが、日本ではまだ従来の人事評価とフィードバックが一般的な運用となっていますから、その辺りは日本的制度の良さを残した制度に修正しています。それぞれのローカルの組織が最良のパフォーマンスを出すためには、ロサンゼルス本社の方向性に沿うと同時に、ソニーの創業者である故 盛田昭夫さんが語っていた「グローバル・ローカライゼーション」という考えが重要だからです。そういう意味でも、ソニー・ピクチャーズは外資系と日系企業双方のよい文化をバランスよく組み合わせた組織だと自負しています。

どのような方を求めていますか?

第一に、やはり映像コンテンツが好きで、情熱をもって仕事に取り組めることが大切です。映画・テレビドラマ・アニメが好きな方にとって、これほど楽しい職場はないと思います。求められるスキルセットは職種ごとに違うのですが、共通項をあえて挙げれば、専門性があると同時に「チームプレイヤー」である方、「新しい解を求めて常に前に進む方」を求めています。それから現在は特に、デジタル配信やデジタルマーケティングに詳しい方にぜひ来ていただきたいと考えています。

ソニー・ピクチャーズは組織的に大変オープンな職場で、誰とでも気軽に話しができる会社だと思っています。社員の誰もが年齢、性別にかかわらず映画・テレビドラマ・アニメの共通の話題で盛り上がれるのは、ソニー・ピクチャーズならではの特長だと思います。また、素のまま飾らない「普段着」の自分で働くことができる社風でもあります。遊び心を大切にして働きたい方に、ぜひ仲間になっていただきたいと思います。

株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、米国Sony Pictures Entertainment (SPE)の日本支社として、日本における映画、ホームエンタテインメント、テレビジョン ディストリビューション、テレビジョン ネットワークの事業を展開しています。SPEが製作する映画、テレビ番組等のオリジナル・コンテンツに加え、国内外から買い付けた作品も幅広く提供しています。また、ソニーグループ企業として、ソニーグループの持つ様々なテクノロジーやコンテンツ、サービス、グローバルなネットワークを背景に、あらゆるメディアやチャンネルを通じて、皆様に感動をもたらし、好奇心を刺激する映像コンテンツをお届けします。

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