『テクノロジーで進化するビジネス』セミナーレポート
社会が大きく変化する時代、いかにビジネスを進化させていくのか。どのような共創(Co-Creation)が、今までにない新しいビジネスを生みだすのか。技術革新は、どんなイノベーションを生みだすのか。セミナーでは、注目の各分野をリードする5企業の登壇者と共に、2つの共創型パネルディスカッションを行いました。
セミナー実施時2019年10月5日の御所属・役職名にて記載させて頂いております。
第2部
新しいビジネスの
創造2025
第2部パネルディスカッション
「新しいビジネスの創造2025」
第2部は、2025年のビジネス創造について、第1部に引き続き5名のパネリストの方々に、一個人として、より自由に語り合っていただきました。
PANEL DISCUSSION
《 パネルディスカッション 》
2025年は「バリューコンシャス」の社会になるのでは
関口今回のセミナーのサブテーマにも挙げている「共創(Co-Creation)」が新しいビジネスを創造するうえでとても重要になってきています。パネルリストの皆様方が「共創(Co-Creation)」したら、どんな可能性があるのでしょうか。
豊浦先日、ある電動自転車を買いました。これがカッコよくて速く、セキュリティがものすごく手厚いんです。まさに私の望みを叶えてくれました。2025年は、こうしたバリューの高さが重視される「バリューコンシャス」の社会になるんじゃないかと思います。
外村最近実感したのは、レベル2の自動運転を搭載していると、ドライブが本当に楽になるということです。ただ一方で、セキュリティ面は怖いですね。やはりセキュリティも含めたバリューがブランドを左右すると思います。
笹豊浦さんの電動自転車は、既存テクノロジーの組み合わせによって新しい「イノベーション」を生み出した良い例で、外村さんの自動運転は、まったく新たなテクノロジーを生み出した「インベンション」ですね。この違いを意識することは、1つの鍵になるのではないでしょうか。
山本その意味では、一人だけで全てを「インベンション」するのは難しいですが、得意分野を自分でつくり、残りをパーツ化したものを当てはめたり、企業のコラボレーションでつくれるようなプラットフォームが整ってくると、バリューの高い商品が多くなっていきそうですね。
東京に住まなくても東京の企業で働ける社会になれば
社員の幸せは向上するだろう
川嶋自治体との取り組みに関して言えば、2025年には「豊かさとは何か?」がしっかりと棚卸しされ、多様に定義されていることが重要だと感じています。
山本たとえば、「つながること」も豊かさですよね。実はメルカリには、「自分の宝物を好きな人に譲りたい」というお客さまも数多くいらっしゃいます。彼らはメルカリを利用することで、お金だけでなく、同好の士と交流する機会も得ているんです。私たちは、こうしたこともビジネス価値の1つだと捉えています。
豊浦私はよくキャンプをするんですが、キャンプはわざわざ不便なことをして、心が豊かになる面白い体験ですよね。こういうことがもっと大事になるのではないかと感じています。
山本キャンプの好きな方は、きっともっと自然の多いところに住みたいのでは。2025年には5Gや自動運転などのおかげで、東京に住まなくても東京の企業で働ける時代、キャンプを楽しみたい方が自然の近くに住める時代が来るのではないでしょうか。
笹東京一極集中型が、利便性向上を阻んでいる部分があります。都市に住まなくてもよい社会を作るには、東京一極集中型の解消が必要かもしれません。
川嶋イノベーションによって、遠隔においても視覚・聴覚だけでなく、触覚・嗅覚・味覚も共有できるようになれば、働き方、住み方も多様化し、テレワークもさらに普及するはずです。2025年にはそれもある程度は実現できるのではないでしょうか。
外村サイバーセキュリティの専門家として気になっているのは、「セキュリティ問題は不幸せな人が起こすケースが多い」という事実です。また、これまでのマネジメント経験からわかったのは、社員が幸せに働ける環境を用意すれば、必然的に成果が出るということです。これからの経営者は、社員の幸せをもっと重視する必要があるでしょう。それがセキュリティ問題を予防し、ビジネスを伸ばす一番の近道になるのではないでしょうか。東京に住まなくても東京の企業で働ける社会になれば、社員の幸せは向上し、セキュリティ問題も減るのではないでしょうか。
信用をさまざまな軸で評価して加点法で見ることが
良い社会づくりにつながるのでは
関口「豊かな社会」を目指しうみだされるビジネスに必要な観点とは?このことをこの場でもう少し深められたらと思うのですが、いかがでしょうか?
外村大前提として、この数十年で「選択権が大衆に移ってきた」ことは間違いありません。以前は、多くが同じテレビ番組を見て、同じ音楽を聞いていました。選択権があまり多くなかったからです。現在は、誰もが多様なテレビ番組、多様な音楽から選ぶことができます。その結果、大企業の力が個人に分散し、データも個人のものになりつつあります。「パーソナライゼーション」という観点は重要な点だと思います。このことが個人の豊かさに直結しているように思います。
山本「豊かな社会=なめらかな社会」ということでいえば、先日アメリカで「Amazon Go」を体験してきました。商品を手に取って退店するだけで決済が完了するニューリテール店舗です。私は、ここに決済の未来があると感じています。おそらく近い将来、どこでも好きなことをしていれば、自動的に裏側で決済が完了する時代が来るでしょう。レジなどがなくなるのです。ただ、そのためには「本人確認サービス」と「データ共有サービス」が必須です。この2つのサービスが今後の鍵になるはずです。
笹その面では、やはりアリババの信用スコア「芝麻信用」が参考になるでしょうね。中国ではアリババが実際にスマートシティを作ることはすでに現実的な話になってきていると思います。日本でも、データ共有が進めば、近所での助け合いなどももっと進むでしょう。たとえば、今日だけクルマを使いたい人が、近所の誰かからクルマを借りる、なんてことが当たり前になるかもしれません。ただ、中国のように個人情報を全面的にオープンにすることには、やはり不安がありますよね。
山本私は、本人確認と信用は別だと考えています。信用に関して言えば、先ほど外村さんがおっしゃっていたことに近いですが、多軸にすることで、初めて意味がでてくるものだろうと思います。例えば、資本主義の社会では、お金を持っているかで測られますが、Facebookは人のつながりをもっているか、またYouTubeではチャンネル登録者数で評価されます。全部の軸で満点じゃないといけないだと、監視社会になってしまいますが、個人が自分の評価される軸を自ら選ぶことができる。このように選択権があると、より良い社会をつくれると思っています。
川嶋健康の視点でいえば、いまはまだ、AEDを使って人を助けたことが美談になる時代です。2025年には、AEDが必要になりそうな時刻・場所を予測し、適正配置され、美談でなくあたりまえにひとりでも多く命が助かるような社会を創りたい。もちろん簡単ではありませんが、IoTやAIを駆使すれば実現不可能ではないと考えています。それが、私が考える豊かな健康まちづくりの一端であり、それを可能にするビジネスを創造していきたいですね。
日本マーケットでのビジネス創造の可能性
関口ところで、山本さん以外の皆さんは外資系企業に所属しているわけですが、ビジネス創造はしやすいのでしょうか?
笹セールスフォースの創業者、マーク・ベニオフは大の日本好きで、日本法人は極めて行動しやすい環境にあります。その意味では、外資系企業では例外的かもしれませんが、自由な環境がありますね。
豊浦コカ・コーラもローカルの意見をおおいに尊重してくれる会社です。その証拠に、「ジョージア」、「い・ろ・は・す」、「綾鷹」をはじめとして、売上の約70%が、日本市場向けに開発されたローカルブランドなんです。情報共有さえきちんとすれば、基本的にはこちらで意思決定できる環境があります。
山本私もこれまでは外資系企業にいましたので、その経験から言えば、製品・サービスの開発拠点が本社かローカルかで大きく変わると思います。コカ・コーラさんのように、日本に開発拠点がある場合は、意思決定権限も日本にあるケースが多いはずです。
川嶋「健康課題先進国」の日本マーケットも世界から注目されていますし、日本の健康課題から新たなソリューションを生み出す取り組みを始めたことで、グローバルの注目度もさらに高まっています。
関口お時間になってしまいました。新しいビジネス戦略・経営戦略を考える上で非常に参考になる、示唆に富んだお話が伺えました。皆さん、本日はありがとうございました。