メンバーのやる気と能力を引き上げるマネジメントが最も重要
Chubb 損害保険(チャブ)に入社するまでの経緯を教えてください。
高校1年のとき、英語を本気で勉強するなら留学する道があることを知り、アメリカの大学へ進学しました。最初の2、3週間、おそらくホームシックだったのだと思いますが、体調を崩してしまいました。帰るという選択肢は一切考えもせず、何とかしよう、何とかなるだろうと思いながら勉強を続けていくと、1年経った頃には余裕が出てきて、アメリカでの生活を楽しめるようになっていきました。その時、続けること、あきらめないことの大切さを感じました。大学ではファイナンスを専攻し、金融に興味を持っていた私は、AIU(現・AIG損害保険)に入社しました。そうしたら人事部に配属されたのです。まったくの想定外でしたが、今振り返れば、この配置に本当に感謝しています。今もこうして人事を楽しく続けられているのは、適性をきちんと見てくださったからだと思います。
その後、大学で専攻したファイナンスを活かせる仕事がしたいという想いが強くなり、1997年に米系の機関投資家向け情報サービス会社に転職しました。驚いたのは、会社が急成長を遂げたため、私は入社2年目で、いきなり10名の部下を持つことになったことです。ここで私ははじめて、マネジメントの重要性を痛感するとともに、メンバーを動機づけ、やる気を高めて、リードしていく重要性に気づきました。そうするうちに、人と組織についてもっと深く学びたいと思うようになり、タワーズペリン(現・タワーズワトソン)に移りました。ここから10年ほど、私はいくつかのコンサルティングファームで様々な企業の組織・人に関するあらゆる課題に取り組みました。とにかく無我夢中で、目の前のプロジェクトに対応する日々。厳しいビジネス環境の中で、「やると決めたことはやる」姿勢を貫き、コンサルタントを10年続けられたことは自信になっています。それに、思考力やプレゼンテーション力などはずいぶん鍛えられました。
コンサルタントから事業会社に移る際にウォルマート(合同会社 西友)を選んだのは、世界一社員の多い会社が、どうやって社員を惹きつけ、モチベートしているのか、その秘密を知りたかったからです。仕事人生でのターニングポイントを1つだけ挙げるなら、このウォルマート時代です。コンサルタントの姿勢や気持ちのままでは、社員の皆さんに受け入れてもらえないと気づくまでに、入社して1年ほどかかりました。1年後、私は少しずつ変わっていきました。たとえば、横文字のコンサルティング用語は、ウォルマートらしい言葉に置き換えるようになりました。また、相手に伝わるまで、何度も丁寧に説明するようになりました。そして何よりも、メンバーに仕事を任せることでチームが強くなっていく、という貴重な経験をいくつもしました。あるときメンバーに一切を任せてみたら、私が指示するよりもうまくいったことが、変化の大きなきっかけです。それ以来、私は、メンバーが自発的に動き出すまで、待ったり、一緒に考えたり、問いを投げかけたりするマネジメントを心がけるようになりました。メンバーのやる気と能力を引き上げるマネジメントが、最も重要だと考えるようになりました。ウォルマートで、私は大きく成長させていただきました。
そして、ウォルマートで6年働いた後、2017年12月に、私は人事部長としてチャブにやってきました。
なぜチャブを選んだのですか?
理由の1つは、新卒で入った保険業界に少しでも恩返しがしたいという気持ちがあったためです。もう1つの理由は、カルチャーを大事にする会社で、「カルチャー浸透」を進める仕事をしたかったからです。
実は、前職のウォルマートは「ウォルマート・カルチャー」の浸透に極めて力を入れている会社でした。私は、ウォルマートの次も、カルチャーを重視する会社で働きたいと思っていました。人事のミッションは、結局はただ1つで、社員の皆さんに「今日も頑張ろう」と思って、高いエネルギーレベルで会社に来てもらうことだと思うのです。カルチャーや共通の目的(Common Purpose)が浸透すれば、メンバーのモチベーションを確実に高めることができます。チャブでは、カルチャーを広め、社員の皆さんのモチベーションを高めることに、大きなやりがいを感じながら働ける、そう感じました。
カルチャーと共通の目的(Common Purpose)を浸透させていく
チャブでの南さんのミッションは何ですか?
入社時に言われたのは、「制度はある程度整っているので、それを浸透させ、機能させていってほしい」ということでした。また、入社して分かったのは、「なぜその制度が必要なのか?」「なぜそれをすべきなのか?」といったことが、社員に十分に浸透していないということでした。言い換えれば、カルチャーが不明確だったのです。
幸運だったのは、私と同時期に就任したブラッド・ベネット(代表取締役社長 兼 CEO)が、カルチャーを極めて重視していることです。たとえば、彼は就任後、「なぜChubbで働くのか?」という問いを社員に投げかけました。その結果生まれたのが、共通の目的(Common Purpose)です。お客様、代理店やブローカーなどのビジネスパートナー、社員の3方向から、会社として、また社員一人ひとりが共通して目指す姿を具体的な言葉にしました。
また、ブラッド・ベネットは、社員に向けてはもう1つ、「Energy(やる気・熱意)」「Discipline(鍛錬)」「Execution(実行力)」の3つを「カルチャーを体現する行動」として掲げました。Energyとは、簡単に言えば、日々気持ちよく働いたり、周囲に接したりすることです。Disciplineとは、一言で言えば自己研鑽ですが、その第一歩は、きちんと約束を守り、求められている役割を果たして、相手や周囲の信頼を勝ち得ていくことです。Executionは、チャブが以前から重視するカルチャーで、平たく言うと「やると決めたらやる」ことです。社長は、この3つの言葉を、チャブのメンバーが最も大事にすべき原則に据えたのです。
私は、こうした社長の言葉に強く共感しています。だからこそ、これを広め、浸透させていくのが、チャブでの私の役割だと考えています。
浸透させていくために、どのような仕掛けを行っているのでしょうか?
先日、私はタウンホールミーティングの中で、社員の皆さんに向けて、共通の目的(Common Purpose)とカルチャーの重要性についてお話ししました。これを皮切りにして、これから本格的にカルチャー浸透を進めていきます。共通の目的(Common Purpose)やカルチャーは、誰よりもメンバーにとって重要なものです。なぜなら、チャブのメンバーにとって、共通の目的(Common Purpose)やカルチャーが働く上での存在理由であり、これらに沿っていれば、自主的に判断・行動してよいからです。メンバーが主体的に考えたり、行動したりする上で、共通の目的(Common Purpose)やカルチャーは欠かせないのです。まだ道半ばですが、カルチャー浸透の効果は必ず出ると考えています。
他にも、私たちはさまざまな仕掛けを進めています。たとえば、社長と私が、それぞれ毎月一回「インサイトランチ」と呼ばれるランチミーティングを行っています。これは、社長または私と7~8名の社員が月に一度、ランチをともにする場です。これによって、社長や私が社員の声に耳を傾ける姿勢を行動で示し、その場で社員の多様な声を直接聴いています。また、私たちの方から「Chubbが売上2倍を実現するには一人ひとりがどう行動したらよいと思いますか?」といった質問を投げかけて、各自に考えてもらうようにしています。実は、社員の間でもこうした横の繋がりを拡げていく機会は少なかったということで、自己紹介だけでもお互いにはじめて聞く話が多く、刺激になっているという感想を多く耳にします。
それから、営業とアンダーライター(契約引受査定)の合同セールストレーニングも実施しています。なぜかといえば、これまで以上にチームワークを重視して動いてもらうためです。そこで、お互いに「こう動いてほしい」「こうやって連携できたらもっとうまくいく」といったことを、遠慮なく議論できる場を用意しました。「チームスピリット」に関しては、メンバーだけでなく、役員同士も重視するように心がけていて、今も一緒に問題解決に取り組んでいます。
Chubbカルチャーに共感する方に来ていただきたい
どのような方を求めていますか?
一言で言えば、「カルチャーフィット」する方に来ていただきたいと思います。これまでお話ししてきたようなカルチャーと共通の目的(Common Purpose)に共感できる方なら、きっとチャブで気持ちよく活躍できるはずです。中でも私たちは、Execution(実行)を大事にできる方、行動に移せる方を求めています。
それから、強調しておきたいのは、ここは「出る杭が打たれない組織」だということです。どんどん主張し、目立っていただいてかまいません。出る杭タイプの方にとって、ここは間違いなく居心地の良い場です。もう1つ、チャブは極めて「インクルーシブ」な組織で、異なる意見に対しても、必ず耳を傾けてくれます。これは私自身が入社して実際に体感したことですから、確かです。そうした意味では、かなり働きやすい環境が整っていると思います。ぜひ私たちとともに、この会社を2倍、3倍にしていきましょう。仲間になっていただける方をお待ちしています。