ビジネスとして正しいことをやり続ければ、厳しくても結果はついてくる
これまでのキャリアパスを教えてください。
4歳からアメリカで育ち、上智大学卒業後に伊藤忠商事に入社しました。製鉄プラントの仕事に約10年携わった後、シカゴ大学に社費留学してMBA を取得し、帰国後は2年間、組合の専従をしました。ちょうど終身雇用、年功序列の日本的経営システムの転換期で、給与体系や職務体系の見直しに経営の視点でかかわり、とてもよい経験ができました。
その後、ダイレクトセールスを勉強したいと思い、デルに転職しました。デルの日本での知名度は当時低かったですが、メーカーが直接お客様に接して製品の良さを理解してもらい、購買に結び付けるビジネスモデルがこれからの世の中で有効になるだろうと考えたのです。
デルでのビジネスの進め方にはとても刺激を受けました。目標が明確で、すべてを数値化してビジネスを可視化する。そうやって自分がビジネスをコントロールし、目標達成にコミットするのです。かつ、四半期でビジネスをマネージしていくのでスピードが求められ、意思決定も早くなる。いまの自分のマネジメントスタイルは、基本的にデルで培われたと思っています。
そしてアマゾンでは、start from customer and think backwards を基本ポリシーに、お客様が欲しているものを見極め、そこから逆算して行動するビジネススタイルを学びました。欲しいものがそろっていて、それを安く、いつでも簡単に買え、すぐに届く。人間の本能を刺激し、基本的な欲求を満たすビジネスですね。それをグローバルで強固にしつつローカライズしていくやり方を学びました。
それぞれのビジネスにおいて、結果を出すために心掛けたことは何ですか。
デル時代に上司から言われていたことですが、そのときどきの情緒に左右されることなく、ビジネスとして正しいことをやり続けよ。そうすれば厳しくても周りからリスペクトされ、結果はついてくる、ということです。それを今まで、ずっと貫いてきました。
クロックスはそれまでのキャリアパスとは違う路線のように見えますが。
実は自分の中ではそれ程違わないです(笑)。クロックスはテクノロジー・カンパニーですから。いままではIT企業でしたので、Tの前に「I(information)」が付いていましたが、コアの技術を持ち、それを活かした製品を世の中に広めていくという点では同じです。違うのは、自分や家族も含め、周りの人たちがその製品を日常的に愛用しているということですね。技術の裏づけがある製品を社会に提供しているところに魅力を感じました。
クロックスの強みはどこにあると思われますか。
画期的な特殊樹脂素材の「クロスライト」を独自開発した技術力です。この新素材を使うことで防水性、防汚性、防臭性に優れ、かつ快適で軽い履き心地のフットウェアを作ることが可能になりました。履いていて気持ちのいい靴というのは、体にいいのです。体重をうまく分散すると同時に地面からの衝撃も吸収するので、足への負担が少なく、長く履いていても疲れません。アメリカでは人間工学の検証により素足に比べ、直立時に足にかかる負担を62.6%軽減するという結果が出ています。
クロックスでは「履きやすさ」「楽しさ」「革新性」を3本柱にしてユーザーに製品を訴求していますが、こうした機能面の特性を一般ユーザーのみならず、長時間立ち仕事に携わる医療従事者やキャビンアテンダント、調理師といったビジネスユーザーの方々にももっと利用していただきたいと思います。
クロックスの真の良さを理解し、世の中に広めていける仲間を増やしていきたい
技術力と商品力を軸に、これからどのような会社にしていこうとお考えですか。
どんなに優れた商品を持っていても、それをお客様に知ってもらわなければビジネスになりません。ですからサンダルだけでなく、オールシーズンブランドとして、それぞれに履いて楽しんでいただける製品群があることを、もっと情報発信していきたいと思います。そのために全社員がブランドの「アンバサダー」になるべく、仕事中はクロックス製品を履き、毎日その良さを体感するようにしています。
サンダルがメガヒット商品になったことで、お客様の間でクロックス=サンダルというイメージが固定化していますが、そこに安住してしまうと未来が見えなくなります。いまは大きな転換期だと思いますので、季節ごとの商品提案、機能面を強調した目的別の商品構成などで、商品バリエーションの幅広さを訴求していこうと考えています。
トップリーダーとして心がけておられることは何でしょうか。
クロックスを愛する気持ちは誰にも負けないという自負を持ち続けることです。
その中で、物事を数字や事象といったファクトベースで見ることです。報告を聞くときも、ファクトと本人の判断によるコメントを分けて受け取るようにしています。個々人の直感的な判断を根拠にすると、汎用的な大きな判断ができにくくなりますから。もちろん本人の判断は意見、提案としてとても大事で尊重しますが。
あとは、オプティミストであることですね。会社が進もうとしている方向、自分たちがやろうとしていることが間違っていない、必ず成功すると信じて、周りからノイズが入ってきても惑わされずにやりきることが大切だと考えています。
会社を変えていくために自分がすべきことは何だとお考えでしょうか。
社員に対しては、チームワークの大切さと、そこでの自分の役割をしっかり意識するように求め続けていくことです。私はアメリカンフットボールをやっていたので、それを例に引いてよく言うのですが、タッチダウンするのは1人のプレーヤーだけれど、あとの10人はただそれを見ているのではない。それぞれのポジションで、ボールを持っている人間がタックルされないように敵からガードしています。一人ひとりのプレーヤーがゲームの流れを見て、その瞬間、瞬間に自分がどう動けばチームの得点につながるかを考え、すべきことを的確に行っているのです。それがあって初めてタッチダウンが生まれるわけです。
まさにビジネスも同じです。チームの得点、すなわち会社の業績をどうすれば上げられるかを、いろいろなポジションにいる人間が考え、自分の役割を理解して的確に実行します。共通の目標に向かってお互いにサポートし合う組織にしたいと考えています。
トップがすべきこととしてもうひとつ考えているのは、リソースの問題です。既存の社内リソースだけで最高のチームができたとしても、それだけでは必ず限界が来る。ビジネスを大きくしていくためには、自分たちが提供できる付加価値を最大化しながら、外部の人々と共にしっかりしたチームをつくっていくことが必要です。そのために、どういうパートナーを選び、どう連携していくかを決め、実際に関係を築いていくことになります。それをするのは私の重要な役割だと思っています。
クロックスで活躍できるのはどのような方ですか。
自分で考えて行動する人です。この会社は100%中途採用であり、個々人がそれまでに身につけてきた経験や知識がとても貴重です。それが個性になって互いを刺激し合えば切磋琢磨できます。ほかの人と異なる経験を持ち、違う見方、考え方ができることを自信を持って主張し、それが従来の考え方とぶつかることがあっても、それはそれでいいと思います。それを堂々とできる人、そして周りを納得させられる人がクロックスでは活躍できると思います。
営業について言えば、提案営業ができる人。新しい発見を提供でき、こうすればお客様のビジネスにこれだけ価値を付加できるということを論理的に、資料などを使ってプレゼンできることが大切ですね。
クロックスが求めている人材について教えてください。
敢えて例えるなら、富士山を上空から見ることができる人、或いは見ようと努力する人でしょうか。クロックスは富士山を下から一生懸命登ってきて、いま何合目かにいる段階です。これから更に頂上を目指していくわけですが、登っている最中の者にはどういうルートをどう進めばよいのかがわかりません。富士山を俯瞰できませんから。いま歩いている登山道を行くことはできるけれど、それ以外にもルートがあるかもしれません。自らの経験でそれを適用できれば、より大きな成長につながる可能性が広がります。
つまり、クロックスがこれから大きくなっていくためにすべきことを、我々とは違った視点、回路で考えられる人です。それには、急成長したビジネス、規模の大きなビジネスなどを経験している人は有難いです。従い異業種から来ても、そのことがけっしてハンディにはならず、むしろ付加価値になると思います。
クロックスで働きたいという人たちにメッセージをお願いします。
クロックスの真の良さを理解し、クロックスを心から愛して、それを世の中に広めていける仲間を増やしていければと思います。我々は楽しさ・快適さ・革新性を世界中の足元にご提供することをミッションとしていますので、クロックスが大好きという人は大歓迎です。クロックスを扱う人自身が楽しいと感じなければ、本当の良さをお客様にお伝えしきれないと思うからです。そういうパッションを持って頂ける人に、ぜひクロックス・ファミリーの一員になって頂ければと願っております。
ありがとうございました。