ナイキのリーダーは、方向性も決断もスーパーシンプル
みなさんナイキのリーダーについてどのような印象を持たれていますか。
ゲーリー氏
私のグローバルでの上司は、ボードメンバーに対しても、我々に対してもビジョンと方向性を明確に打ち出していて、どこを目指せば良いのかとてもわかりやすいし、助けが必要なときにはすぐ助けてくれる。非常に影響力のある、すばらしいリーダーだと思います。またナイキジャパンのジム・ゴッドバウト社長もビジョンをはっきり打ち出しますから、これはナイキのリーダーの特長だと思いますね。
小西氏
アメリカで仕事をしていたとき、これがJust do it! なんだって実感したことがあるんですよ。ゲーリーが言ったようにリーダーは方向性とビジョンをはっきりと示してくれるのですが、じゃあそこに向かうために何をどうするのかと聞くと、それはあなたたちの仕事でしょ、Just do it! って。でもそれは「とにかくやれ!」という意味じゃなくて、「いろいろあるだろうけど、さあやろう!」というメッセージですね。それは創業以来、ナイキのリーダーたちが持っているオーラみたいなものだと思います。
小林氏
僕は毎週、グローバルの副社長とカンファレンス・コールをしていますが、こちらは今こういう問題があるんだと話すとすぐに、「どうすれば解決できる?」って聞いてきますよ。それで、いくつかやりたいプランを言うと、「わかった、そのうちAとBとDはすぐやっていいよ」って返ってくる。だからとても仕事がやりやすい。グローバルも立場が上に行けば行くほど、方向性も決定もとてもシンプルなんですよ。あとは自分を含め、ローカルのリーダーたちがそのシンプルさを保っていかに組織に伝えていくかが大事だと思いますね。
甲田氏
ちょっと違う視点からですが、ナイキの社員は仕事以外でも仲良しですから、個人のダメなところをあげつらって切り捨てることはせず、少しでもいいところを見つけてチャンスを与えたり、その人が輝ける場所に連れていこうとする。そういう会社ですから、リーダーはみんな自分のチームだけじゃなく全体を見渡して、個人にとっても会社にとってもいいシナジーが生まれるように、適材適所を図っていますね。
みなさんがリーダーとして心がけていることは何でしょうか。
甲田氏
私は立場が上の人たちに迎合するようなことはあまりしたくなくて、一現場担当としてチャレンジングな姿勢を持っていたんです。でも、チームを持つようになって、上と対立してばかりいるのはよくないなと思うようになりました。自分の考えに固執してネガティブな主張を続けていると、チームにも悪影響があると気づいたので改めました。自分が上司たちと良い関係を築くことで、チームが本領を発揮できるような環境を作ることもリーダーの責任の一つだと思いますね。
ゲーリー氏
私はストアも入れると1000人を超えるチームのリーダーですが、大切にしているのは、ストアに頻繁に顔を出し、みんなと直接コミュニケーションをとることですね。特にストアでお客様に接する人たちは会社の代表ですから、いつもエネルギーを持って仕事をしてもらえるよう、自分がお手本になるんだという意識でいます。
また、カスタマーがいま何を求めているのか、商品やオペレーションの何を変えればより良くなるのか、といったフィードバックを現場からもらい、それをプロダクト開発やマーケティングに伝え、その結果をまた現場に戻す、といったツーウェイ・コミュニケーションを心がけています。そういうコミュニケーションの中から良いアイデアが多く出てきますし、現場とプロダクト開発・マーケティングとのコラボレーションの質も上がると考えています。
小林氏
部下を育てるということも重要ですよね。仕事をしていく中で身に着けなければならない基本的なことってあると思うんです。教育研修では教えられない、現場のOJTでしか身につかないものが。もちろん相手のいいところを見て伸ばすのも一つですが、怒るところは怒らないといけない。例えば、失敗することよりも、意見やプランを持ってないことのほうが良くないとさっき言いましたが、ときには失敗したことを上司から怒られる必要があると思うんですよ。自分のプランで自由に動いていいと言っても、それはあくまで基礎的なことが全てできている、それからの話なんです。そこを本人が勘違いしないように教える、勘違いしていたら指摘するというのはリーダーの責任だと思いますね。もちろん、意見を伝える時には相手のことを本当にわかったうえで、お前に期待しているんだという気持ちをちゃんと伝えるよう心がけています。
甲田氏
ナイキには幅広い可能性があるから先走る人が結構いるんですよ。みんな2年後、3年後にはこうなりたいというビジョンがあるから、そこに早く行きたがる。その意欲は買いますが、目の前の仕事が出来ていないのにあれもやりたい、これもやりたい、という先走りにはブレーキをかけるのもリーダーの仕事。一対一で話して、目の前の仕事の積み重ねが自分をそこに運んでくれるのだから、いまはこの仕事を120%やろうよって教えることが必要なんです。私の場合、クリエイティブをやる人間は個性が強いので、相手によってはガチンコ勝負になりますね(笑)。でも、ぶつかり合うことで相手の知らなかった部分が見えるようになるし、お互いをより深くわかり合えるということもある。ちゃんと聞いてみたら相手の主張のほうが正しいということだってありますよ。だから私は、一対一で話すことをけっこう重要視しています。
周りを巻き込んでいく影響力やパワーを持っている人が活躍する
ナイキで活躍しているのはどんな人材ですか。
小西氏
小林さんみたいな人ですね(笑)。私は部下として一緒に仕事をさせてもらったことがありますが、明るいキャラクターで、とにかくコミュニケーションが上手で周りを巻き込む力がある。だから自然と周りに人が集まるし、その人たちを動かすことができるんですよね。あと、会社の情報を下に落し込んで共有させるのがうまい。仕事に直接かかわらないことであっても知っておいたほうがいい情報であれば、自分たちに関連付けて、ちゃんと腹に落ちるように伝えてくれるんです。
ゲーリー氏
コミュニケーションがうまく、プランを持っていてそれをはっきり打ち出し、「これで行こうよ!」って周りを巻き込んでいく影響力やパワーを持っている人が活躍していますね。あと、ストアの店長の中にもすごく輝いていて尊敬できる人たちがいるんですが、彼らに共通しているのは、ナイキが大好きで、仕事に情熱を持っていること。店舗に行くたびに、その気持ちを強く感じます。
甲田氏
悪く言えばやりたい放題なんですが、自分がやりたいことに貪欲で、そこに至るまでのプロセスを惜しまないし、絶対に手を抜かないという人がいたんですよ。彼は自分がそれを実現するための細かな作業を、みんなからは見えない所で懸命にやっていたんですね。活躍するというのとは違うかもしれませんが、すごいプロ根性だなって思いました。仕事に対して強い思いを持っている人はナイキで活躍していると思いますね。
小林氏
自分でプロジェクトをちゃんとドライブしている人ですね。どのポジションでも、どんな仕事をしていても、そういう人は輝けると思います。逆に、会社に寄生しているような人はダメ。そういう人は自分のプランや意見を持っていないし、持とうともしないんですよ。入ってきた時点では知識のない素人でもかまわないんですが、そこからは自分なりに勉強を重ねて、こうしたらいいんじゃないか、僕はこうしたい、というプランを話の中で出せるようになってほしいですね。
最後に、転職を考えている人、ナイキで働きたいという人たちにメッセージをお願いします。
甲田氏
いろいろなものを創り出すことに喜びを感じられ、それを楽しみながらやれる人にぜひ来てほしいです。私は面接のとき、毎週末どういう遊び方をしているか聞くんですよ。それでその人の創造性がだいたいわかる。遊び方の工夫は創造性に繋がっているから。いつも同じことを同じ場所でするのではなく、常に新しい遊び方や遊ぶ場所を考えているような人、それも本から情報を得るんじゃなくて、いろいろな経験を積んでいて、そこから発想できる人は強いと思います。
小西氏
ものづくりは、最後は白黒をはっきりさせなくては商品に仕上がらないので、決断力が求められます。いままで誰も考えつかなかったことをやる勇気も必要です。そういうことをやりたいという人は、ナイキで活躍できると思います。あと、情報をキャッチする必要があるので、そのアンテナを張ってちゃんと見られる人ですね。深い興味を持って消費者を見られる人、興味の切り口はファッションでもなんでもいいんですが、その深さがアンテナの感度になりますから。
ゲーリー氏
エネルギーのある人ですね。そしてナイキというブランドに強い興味を持っている人に来てもらいたいですね。あとのことは入ってから教えられるけど、エネルギーと興味は教えることができませんから。
小林氏
転職を考えている人には、悩んだときは行け、悩んでいるんだったらやってみろ、と言いたいですね。ナイキに興味がある人は是非ナイキにチャレンジしてください。
ありがとうございました。