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CxO Dialogue Series Vol.04

「マーケティングは人を幸せにする仕事」と語る河合氏が振り返るキャリアの軌跡と、次世代に託すメッセージとは。

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マース ジャパン リミテッド
Chief Marketing Officer
河合 英栄氏

P&Gを皮切りに、L 'Oreal、Diageo、Levi Strauss、Audi、Google、Coca-Cola などのグローバル企業でブランド統括、マーケティング本部統括、バイスプレジデントIMC統括、グローバル イノベーション、グローバル ブランディング職などを歴任。2022年11月より現職。同社が展開するペットフード及びスナック菓子のマーケティングを統括。

公開日:2025年10月20日
※インタビュー実施時の御所属・役職名にて記載させて頂いております

化粧品、酒類、自動車、IT、飲料、そしてペットフード。多様な業界を横断し、常に新しい挑戦を選び続けてきた、マース ジャパン リミテッドのチーフ マーケティング オフィサー (CMO)、河合英栄氏。P&Gで学んだマーケティングの基礎、ディアジオでの多国籍プロジェクト、アウディでの試行錯誤、Googleでのデータドリブンな知見、コカ・コーラでの大規模キャンペーン──それらの経験を経て、彼女が今たどり着いたのは「人とペットの幸せをつなぐ」という使命でした。

原点を形づくった留学と家族の影響

現在CMOとしてご活躍される河合さんのキャリアの原点について伺います。大学時代にアメリカへ留学から最初のキャリアの出発点はどのようなきっかけがあったのでしょうか。

早稲田大学の交換留学プログラムを利用して渡米しました。小学校の頃に父の仕事の関係でアメリカに2年間滞在し、現地の小学校に通った経験があり、いつかまた海外で学び働きたいという思いを持ち続けていたのです。その機会が大学時代に訪れました。

様々な刺激を受けて帰国したのですが、実は就職活動を始めた当初は、自分が何をやりたいか明確ではありませんでした。社会学を専攻していたので、調査や分析に関心はあったのですが、なんとなくサラリーマンになるイメージはあまりなく…。そんなある日、<浅草花やしき>のローラーコースターの広告が目に留まりました。かつて乗った際、スピードが遅く、正直あまり楽しいと思えなかった日本現存最古のローラーコースターが「日本一怖い」というコピーで打ち出されていたのです。スピードではなく、体験価値が“恐怖”という切り口で再定義されることで、まったく異なる価値に昇華されている。その瞬間、同じ体験であっても伝え方次第で市場におけるポジショニングや消費者の認識が大きく変わることを実感しました。広告・マーケティングの持つ力の大きさに衝撃を受けました。

そこから広告代理店やマーケティングの道へ進む決意を?

はい。大学の先輩に相談すると「広告代理店や企業のマーケティング部門がまさに考えることだよ」と言われ、進路を絞りました。特にP&Gは当時から部門別採用を行っており、面接でケーススタディを体験する中で「マーケティングはこんなに面白いのか」と実感しました。その出会いが、今につながるキャリアの出発点だったと思います。

新卒でP&Gに入社された当時、どのような環境でしたか。

当時はまだP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の知名度も低く、家族に就職先を説明しても「ギャンブルの会社?」と本気で勘違いされたほどです(笑)。ただ社内には優秀で個性的なマーケターが集まり、学びの宝庫でした。最初はマックスファクターのブランド担当として五反田のオフィスから社会人生活をスタートしましたが、同ブランドを買収した直後だったので、社内にはP&G社員と旧来のマックスファクター社員が混在していて、緊張感がある独特な環境でしたね。長年化粧品に携わってきた方々から見ると、新卒で知識もない私がいきなり配属されるわけですから、当然厳しい言葉をいただくことも多かったです。ただ、そうした経験があったからこそ、同業他社に移った後に「業界あるある」として腑に落ちることも多く、今となっては大切な学びになり、また、ブランドの成長とともに、自分自身も大きく成長できた時期でしたね。

P&Gで最も学んだことは何でしょうか。

まずはマーケティングの基礎。そしてもう一つは「人を育てる」ことの重要性です。当時、マネージャーは時間の半分を部下の育成に充てるべきだと言われていました。部下が成長すれば上司の負担は減り、それが最終的に自分の利益になるという考え方です。私は「言われたことをやるだけでは成長ではない。自ら考え答えを導き出す力をどう育むか」を常に意識していました。これは今も変わらず、私のマネジメントの根幹となっています。

マーケティングが生み出す「価値」と「幸せ」

ご自身のキャリア初期は化粧品やお酒など嗜好品カテゴリーを中心に担当されたとか。どんな学びがありましたか。

非常に難しく、同時に最も楽しかった分野でした。化粧水ひとつとっても、100円で買えるものから数万円するものまで幅があります。見た目だけでは違いが分かりにくいのに、それでも高額な製品が選ばれる。この差を生み出すのがマーケティングの力なのです。成分、技術、パッケージデザインやブランドのストーリー、そこに付随する世界観が価格の根拠となり、消費者に納得していただける。そこに学びと大きなやりがいを感じました。

マーケティングが生み出す価値とは、消費者にとって何なのでしょうか。

それは「幸せ」だと思います。もちろん不便を解消することも価値ですが、それは入り口にすぎません。同じ製品を消費するにしても、何も知らないで消費するのに比べて、つくり手の技術や込められた思い、どのようなストーリーや価値があるのかを理解し共感して消費することで「幸せ」が生まれます。価格以上の物語を感じ取ってくださることで、消費が自己実現や喜びにつながる。マーケティングはその橋渡しをする仕事だと考えています。

例えば、お酒は単なる嗜好品ではなく、人間関係や自己表現と直結しています。友人と乾杯してつながりを深めるリレーショナルな役割もあれば、高級品を選ぶことで自らのステータスを示す役割もある。根源的なモチベーションに関わる製品カテゴリーだからこそ、マーケティングの果たす役割も非常に大きいと感じています。

ディアジオ社では、具体的にはどのようなプロジェクトに取り組まれたのですか。

最初に大きく関わったのは、アジアパシフィックのグローバルイノベーションチームで、ジョニー・ウォーカーの新製品をタイでローンチするプロジェクトです。日本から主導しながら、スコットランドの蒸留所、英国本社のブランドチーム、タイのマーケティングやセールス、さらにASEAN各国の経営陣など、多国籍のステークホルダーが関わる巨大プロジェクトでした。最初は3、4人で始まったチームが最終的には40人規模に膨らみ、調整は本当に大変でした。

その困難をどう乗り越えられたのでしょうか。

工夫したのは「担当制」です。例えばタイの社長には、現地セールスディレクターを“担当”としてつけ、週1回のニュースレターをベースに意見や懸念を吸い上げる仕組みを作りました。ステークホルダーが世界中に散らばる中で、直接会話できる回数は限られていましたが、こうした工夫によって早期に火種を察知し、信頼関係を保ちながら前に進めることができました。大変でしたが、この経験はその後のキャリアに大きな財産となっています。

経営判断の難しさと学び

一方で、経営戦略に直結する特命プロジェクトにも携わられたそうですね。

はい。ビジネスディベロップメントの特命アサインメントとして、6カ月間にわたり日本におけるディアジオの流通戦略を再設計する経験をしました。小さな会議室に閉じこもり、コンサルティング会社出身者と二人で議論を重ねる日々でした。課題は、複数の流通パートナーに分散していたポートフォリオをどのように集約し、効率的に最大化するか。選択肢の一つに「ディアジオ・ジャパン」として自社で販売網を持つ案があり、私自身はそれを強く推したのですが、投資負担が大きすぎるという理由で当時のアジアパシフィックの代表に却下されました。

ご自身の提案が退けられたときの心境は。

正直、悔しかったですね。自社でやることでブランド力を最大限発揮できると信じていたので。ただ、結果的には外部との提携案が選ばれ、それによって自分のポジションがなくなるという皮肉な結末も経験しました。自分の提案が組織再編を招き、人が動き、退職者も出る。経営判断が持つ重みを痛感しました。

その経験から学んだことは何でしょうか。

経営判断は「正しい案」だけでは決まらない、ということです。投資規模、人材の動き、組織の未来など多くの要素が絡み合う。時には自身のキャリアすら大きく揺さぶられる。その厳しさを身をもって体験しました。一方で、目的を明確にし「日本で最大の売上と利益をどう実現するか」という軸を持ち続けることが大切だと学びました。難しい判断に立ち会えたこと自体が大きな財産になったと思います。

アウディでの挑戦、そしてGoogleへ

ディアジオ退職後、次は自動車業界へ進まれましたね。

はい。偶然のご縁でアウディに入社しました。正直、車が特別に好きというわけではなかったのですが、惹かれたのは「製品の良さに対してマーケティングが負けている」という状況でした。これまで携わった業界は製品力を十分に伝え切れていたのに、アウディは圧倒的に優れた車を持ちながら、その価値が消費者に届いていなかった。マーケターとして挑戦の余地が大きいと感じました。

採用プロセスもユニークだったと伺いました。

ドイツ本社での最終面接は驚きの連続でした。本物の役者が登場するケーススタディで、部下役やチームメンバー役を演じるのです。“あなたのことを快く思っていない初対面の部下”と一対一の面談を行ったり、異なる背景を持つメンバーと即席でチームを率いたり。丸一日、経営陣が観察する中で行われるので非常にハードでした。昼休みには「もう落ちたに違いない」と思ったほどです(笑)。でも、P&G以来、多国籍チームを率いてきた経験が生き、最終的に合格できたのだと思います。

アウディでは日本のマーケティングのトップを経験されて、その後Googleを選ばれています。

はい。動機は「デジタルを理解しなければ未来のマーケティングは担えない」という危機感からくるものでした。当時、広告予算の大半はテレビに割かれ、デジタルはわずか5〜10%程度。SEOやSEMなどデジタルに関わる3文字のKPIが並ぶものの、実態は担当任せで自分では理解できていなかったのです。これからは必須の知識になると感じていた矢先に、タイミングよくGoogleとのご縁をいただき、挑戦を決意しました。

Googleでの経験とデジタルへのシフト

実際に入社されてみて、どのような環境でしたか。

まず驚いたのは、カルチャーの開放感とフラットさです。どの社員もオープンに意見を述べ、情報が自由に流れる。会議の場でも上下関係にとらわれず、本質的な議論に集中できるのは新鮮でした。また、Googleのプロジェクトはグローバル規模で展開され、スピード感も圧倒的。デジタル広告の最前線で、アルゴリズムやデータドリブンの意思決定に触れられたことは大きな財産になりました。

マーケターとしての視点にどのような変化がありましたか。

それまで「ブランドストーリーをどう語るか」に重きを置いてきましたが、Googleで学んだのは「数字で裏づける力」の重要性です。どんなに良いアイデアでも、データで検証できなければ説得力を持ちません。逆に数字が示す消費者行動を正しく読み解けば、新たな戦略の突破口が見えてくる。ブランドとデータ、この両輪があって初めて強いマーケティングが成立するのだと実感しました。

Googleでの経験は、その後のキャリアにどうつながりましたか。

デジタルの基礎を理解できたことで、マーケティングの幅が一気に広がりました。デジタルを「外注するもの」から「自分で戦略を描ける領域」へと変えられたことが大きな転機です。そして何より、健全な組織文化の中で働けたことで「人間関係のストレスがなく、本質的な仕事に集中できる環境」の価値を再認識できました。これはその後、どんな企業に行く際も軸となる学びになっています。

コカ・コーラでの挑戦とは

Googleを経て、次にコカ・コーラを選ばれた理由を教えてください。

Googleでの3年間は充実していましたが、そろそろマーケティングの現場に戻る時期だと思いました。コカ・コーラを選んだのは、日本にシニアマーケティングのポジションが多くあり、長くキャリアを積めると考えたからです。外資系ではトップに立つとその後の道が限られることも多いですが、ここなら幅広い可能性があると感じました。

最初に任されたのはどのような仕事だったのでしょうか。

インテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーション(IMC)部門のトップでした。年間数百億円規模の予算を預かり、ブランドチームと広告代理店をつなぐ役割を担いました。大規模な広告キャンペーンや渋谷でのカウントダウンイベント、巨大屋外ビジョンの3D広告など、ブランドが活気づくプロジェクトを数多く仕掛けました。社内から「エキサイティングな部署」と期待されていたこともあり、やりがいを強く感じました。

どのようなチームを率いていたのですか。

広告代理店から来たメディアプランナーや、デザインやクリエイティブを専門とするメンバーなど、従来のブランドマーケターとは異なるバックグラウンドを持つ人材が多くいました。自分よりも専門性を持つ部下ばかりに囲まれながら、多様な視点から議論できるのは大きな刺激であり、学びでした。

その後、コーヒー事業に移られたのはなぜですか。

日韓統合の大規模な組織再編があり、当時の上司から「次はブランドマーケティングの経験を積むべき」と提案されたのです。ちょうど私の部下が昇進してIMC部門を引き継ぐことになり、その成長を応援したい気持ちもありました。結果的にコーヒーカテゴリーに異動しましたが、ビジネス規模も大きく、コロナ禍による自販機売上の急減など、非常にチャレンジングな環境でした。それでも大きな責任と影響力を持つ仕事は、私にとって大きな成長の場となりました。

ペットへの想いとマース ジャパンへの転身

コカ・コーラでコーヒー事業を担当された後、大きな転機があったと伺いました。

はい。コロナ禍だったちょうどその頃、在宅勤務でペットの猫と過ごす時間が増え、「こんなに猫は幸せをくれる存在なのに、高齢者は保護猫を譲り受けにくい」という現実に気づいたのです。その時から「私は猫に看取られて人生を終えたい。そのためにペット業界に関わりたい」と強く思うようになりました。

まさに人生観から次のキャリアを選ばれたのですね。

そうですね。最初はペット業界の周辺でも良い、場合によっては自分でペット共生型の住居やコミュニティを立ち上げてもいい、と考えるほどでした。それほどまでに「ペットに関わる仕事をする」というのは揺るぎない決意でした。

2022年11月にマース ジャパンへ入社され、現在はCMOを務められています。CMOとしての役割はどのようなものですか。

マースペットケアには「A BETTER WORLD FOR PETS(ペットのためのより良い世界)」、マース スナック(菓子)には「Inspire Moments of Everyday Happiness(いつもそこにハピネスな世界を)」という使命(Purpose)があります。CMOとしての私の役割は、このパーパスを日本市場に根付かせ、ペットフードブランドを通じてペットのためのより良い世界を作り、スナック(菓子)ブランドを通じてお菓子を通じたハピネスな世界をもたらすことです。単なるマーケティング活動にとどまらず、社会課題の解決にも直結する取り組みを推進できる点が、この仕事の大きな魅力だと感じています。

CMOとしてのミッションと戦略

マース ジャパンのCMOとしてのミッションをどのように捉えていますか。

大きく二つあると思っています。一つはビジネス面での使命、もう一つは人材面での使命です。ビジネス面では、マースが掲げるパーパス──例えばペットケア事業なら「A BETTER WORLD FOR PETS(ペットのためのより良い世界)」というパーパスを、日本市場で実現していくことが前提です。そのために、他社にはないユニークな製品やサービスを通じて利益を生み出し、消費者に「買いたい」と思っていただける需要を創出すること。そしてブランドに対する“LOVE”を育み、長期的に循環させていくことがマーケティングの根幹だと考えています。

人材面では、「マースに来て良かった」と心から思える環境をつくることが重要です。私が入社する前は、製品トラブルや業績悪化の影響を受けてマーケティング予算も削られ、多くのメンバーが「成長機会がない」と感じて離職していました。その中でも「このまま辞めるのは悔しいから残った」と語るメンバーがいたことに強い感銘を受けました。だからこそ私は、「マースのマーケティング部門は大きな挑戦と成長の場だ」と胸を張って言える組織にしたいと考えています。少数精鋭であるがゆえに任される裁量も大きく、テレビ広告には頼らずデジタルマーケティングに特化し、限られた予算の中でいかに効率的に最大のインパクトを出すかが求められる。だからこそ成長の機会は無限にあるはずです。そうした経験を積んだメンバーが外に出て活躍し、「マース出身だから採用したい」と言われるような循環を生み出すのが私のビジョンです。

そのビジョンを実現するために、具体的にどのような戦略を進めてきたのでしょうか。

最初に着手したのは「ポートフォリオ戦略」です。成長が見込め、収益性の高い分野を明確に優先し、逆に伸びしろの少ない分野は撤退する。そのメリハリを徹底しました。以前は「ホワイトスペースを埋める」という発想で新製品を次々と投入していましたが、それでは体力が持ちません。選択と集中により、限られたリソースを最大化する方向に舵を切りました。

次に取り組んだのは「マーケティングのやり方の統一」です。マースには多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっており、やり方もバラバラで共通言語が存在しませんでした。これでは知見が属人化し、組織の資産として残らない。そこでチーム全員で議論を重ね、P&G出身のクー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏が提唱した「パーセプションフロー®・モデル」のフレームワークを取り入れることにしました。ブランドのDNAを再定義し、ストーリーを描き、ターゲットペルソナを具体化し、戦略から戦術、そして「パーセプションフロー®・モデル」に落とし込む。この一連の流れを共通の手法として定着させたのです。

さらに、外部の知見を柔軟に取り入れる姿勢も重視しました。音部氏には講師としてセッションの実施を依頼し、マーケティングチーム全員で著書を読み込み、実践に落とし込む。単なる座学ではなく、実際に作ったブランドプロトタイプを持ち込み、フィードバックを受けながら磨き上げました。これにより、マーケティングの共通言語ができ、メンバー間の会話が格段にスムーズになり、成果が組織の財産として積み上がるようになったと実感しています。

そうした取り組みの結果、チームにはどんな変化が生まれましたか。

「マースで働いて良かった」「ここで成長できた」という実感を持つ人が増えてきたことです。「もっと長くここで経験を積みたい」という声も聞こえるようになりました。挑戦的な環境だからこそ大変ですが、それが確実に成長につながっている。チームの士気が上がり、ブランドの成果にも好循環が生まれていると感じています。

フルファネルキャンペーンと組織を動かす力

マーケティングのフレームを整理した後、実際の施策としてはどのような取り組みを進められたのでしょうか。

2023年にビジネスが回復したことを受けて、マーケティング活動を再開できるようになりました。それまで広告費は主にeコマースに限定されていましたが、より上位のマーケティング投資に広げられるようになったのです。そこで導入したのが「フルファネルキャンペーン」です。2024年からはパーセプションフロー®・モデルを基盤に、認知から購買までを一貫して設計したキャンペーンを展開しました。

社内で新しい考え方を浸透させるのは難しかったのでは。

確かに最初は「なぜ営業も一緒に?」「店頭も関与するのか?」といった戸惑いの声もありました。しかし逆に良かったのは、マーケティング部門だけでなく、コネクテッドコマースやリテールメディア、営業、トレードマーケティングまでが一緒に学び、一緒に取り組む形をとれたことです。プロジェクトのディレクションは広告代理店任せにせず、ブリーフ段階から全員でレビューし、提案も共同で見極めました。その結果、店頭施策とデジタル施策が連動し、非常に強力な実行力を発揮できました。グローバルからも「日本の実行力は素晴らしい」と高く評価されています。

現在は中期計画にも取り組まれているとか。

はい。各ブランドについて5年後を見据えた中期戦略を策定しています。カテゴリーのライフサイクルを分析し、今どのフェーズにあり、これからどう成長させるべきかを議論しました。ここでもクロスファンクションで意見を出し合い、未来像を描く過程を重視しています。こうした経験を通じて、メンバーは「どこに行っても通用するマーケター」に育っていると感じています。

全社的な取り組みにも関わられたそうですね。

昨年から今年にかけて、マース ジャパンとして初めてビジョンとミッションを策定しました。これはマーケティング部門に限らず、全社員が参画するプロジェクトでした。2035年にどんな社会を実現したいのかを議論し、パーパスを各ブランドにどう落とし込むかを考えました。単なる製品戦略にとどまらず、サービスや社会全体を含めて未来像を描けたのは、非常に貴重な体験でした。

CMOとして、組織を巻き込む際に心がけていることは何ですか。

一番大事なのはパッションだと思います。ロジックが正しいだけでは人は動きません。「あの人があれだけ本気でやっているなら手伝おう」と思ってもらえる熱量こそが、人を巻き込む力になるのです。実際、広告代理店との関係でも「ナンバーワンのパートナークライアントになりたい」という思いを常に持ってきました。その姿勢が伝わることで、自然と協力を得られ、結果的に大きな成果につながります。

マース ジャパンで働く魅力はどこにありますか。

役割の線引きが厳密ではなく、情熱さえあれば営業やマーケティングの枠を越えてプロジェクトを動かせるカルチャーです。これは他社ではなかなか得られない経験ですし、自分の可能性を大きく広げてくれる環境だと思います。だからこそ私は「ぜひ仲間になってほしい」と胸を張って言える。マーケティングの枠を超え、会社全体を動かす醍醐味がここにはあるのです。

ビジョン、ブランド戦略、そしてマーケティングが担うべき視点とは

マース入社時に抱かれていた「ペット業界で実現したいこと」は進展しているのでしょうか。

少しずつですが、実現に近づいていると感じます。たとえばLIFULL HOME’S(ライフルホームズ)さんと協働して、ペット飼育可能な賃貸物件を見つけやすくするサービスを支援しました。これは単なるマーケティング施策ではなく、社会課題の解決につながる取り組みです。また、社内でも「私たちが本当に優先すべきことは何か」という会話が始まり、ビジョン・ミッションを基盤にした事業活動が根付いてきました。

一方で、スナック菓子事業も担当されています。マーケティングの特徴はどのような点にありますか。

スナック菓子のマーケティングは「楽しい」という要素が何より大切です。ペット事業は市場規模も大きく、構造的にも複雑ですが、スナック菓子はチーム規模も小さく自由度が高い。その分、ブランドの個性を大胆に表現できます。たとえばスキットルズ®のキャンペーンでは、ブランド特有のシニカルなキャラクター性を前面に押し出し、「おいしい不要品」といった挑発的なキャッチコピーで展開しました。地下鉄を使ったトレインジャック広告では、多くの消費者が写真を撮ってSNSに拡散し、大きな話題を呼びました。グローバルのテーマ「Taste the Rainbow」に忠実でありながら、日本独自の仕掛けで成功させた事例です。こうした「消費者の口から自然に広がる仕組み」をつくれるのは、スナック菓子のマーケティングならではの楽しさですね。

社内においても、マーケティングが担うべき視点はありますか。

マーケティングは常に「消費者が主語」でなければなりません。会社が意思決定を行う際に「社長がこう言っているから」ではなく、「消費者にとって正しいことかどうか」が判断基準であるべきです。その視点を一番持つべきなのは、現場に近い若手のマーケターだと思っています。ですから私は「消費者の声を代弁するのはあなたたちの役割だ」と伝えています。会社の意思決定に対して違和感があれば、勇気を持って声を上げてほしい。それがマーケティング部門の存在意義だと思います

ネットワークについても重要性を強調されていますね。

はい。マーケティングに携わる人々の多くは、自分のネットワークを惜しみなく広げ、そこで得た声を大切にしています。これは単なる情報交換ではなく、自分の視野を広げ、新しい発想を得るための営みです。AIが進化しても、人と人との間に生まれる関係性や信頼は代替できません。好奇心を持って人に向き合い、出会いを重ねることが、自分のキャリアを豊かにし、未来を切り開く力になるのだと思います

経験の価値と人間関係がもたらす財産

マーケターとしての根本的な資質について教えていただけますか。

やはり「好奇心」だと思います。マーケターにとって好奇心は、呼吸のように欠かせないものです。常に周囲に目を向け、世の中で起きていることに関心を持つ姿勢がなければ、本当に消費者を理解することはできないと思っています。

経験と並んで、人との関係性も大切にされていると伺いました。

はい。マーケティングの仕事は「人を理解する」ことが核にあります。消費者の思いや行動を理解しなければ、本当に意味のある提案はできません。そのためには、常に人に興味を持ち続けることが必要です。自分とは全く異なる考えを持つ人に出会ったとき、「なぜそう思うのか」「どんな背景があるのか」と探る姿勢がインサイトにつながります。そしてその興味は、消費者だけでなく、同業のマーケターや異業種の仲間にも向けるべきだと思います

これまでのキャリアを通じて、若い世代に伝えたいことは何でしょうか。

まず「自分のパッションを見つけてほしい」ということです。パッションがあれば困難に直面しても踏ん張れますし、働くこと自体が幸せにつながります。そしてもう一つ大切なのは「経験に意味がある」ということです。私は様々な出来事が起きてもあまり動じないタイプだと言われますが、それは多くの経験を経てきたからです。どんな経験も無駄にはなりません。大切なのはそこから学びを得ること。失敗しても構いませんが、必ずラーニングを持ち帰る。私は過去に「失敗と学びのコンテスト」をチームで開いたこともあります。それほど経験から学ぶ姿勢を重視してきました

新しいことに挑戦する、異なる業界に身を置く、普段会わない人と出会う――そうした一つひとつの経験が引き出しを増やし、器を大きくしてくれます。どんなことが起きても落ち込まずに前を向けるのは、過去に積み重ねてきた経験があるからです。

そして、ぜひ「人に興味を持つこと」を大切にしてほしいです。人の考え方や行動に好奇心を持ち続けることで、自然と学びが増え、ネットワークも広がっていきます。そしてその人脈や経験は、必ず将来の自分を支えてくれます。人は財産です。マーケティングはもちろん、人生そのものを豊かにしてくれるのは、人との出会いと関係性なのだと思います。

好奇心とネットワークが切り開く未来

最後に、ご自身にとってのキャリアの総括を一言で表すとすれば?

一言で言えば「好奇心に導かれた旅」だと思います。化粧品、酒類、自動車、IT、飲料、そしてペットフードとスナック菓子へ──一見バラバラなようでいて、すべては「もっと知りたい」「もっと挑戦したい」という好奇心が導いてきました。その過程で出会った人々とのネットワークが、次の扉を開いてくれた。これからもその姿勢を大切にしながら、マーケティングを通じて社会に貢献してゆきたいと思っています。

ありがとうございました。

マース ジャパン リミテッド

マース ジャパン リミテッドは1975年に設立し、ペットフード事業とスナック菓子事業(スニッカーズ®やM&M’S®、BE-KIND®(ビーカインド™など))を展開しています。ペットフード事業では、「ペットのためのより良い世界(A BETTER WORLD FOR PETS)」の実現を目指し、カルカン®/ウィスカス®、シーザー®、シーバ®、プロマネージ™、アイムス™、ペディグリー®等のトップブランドや、ニュートロ™、グリニーズ™などの主にペット専門店で扱われているブランドを展開しています。
ホームページは、http://www.marsjapan.co.jp

親会社のマース インコーポレイテッドは、世界70以上の国と地域で事業を展開。世界における年間総売上高は 約500億米ドルで、その製品は世界中で販売されています。総従業員数は約15万名。
http://www.mars.com

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