デジタル変革期における
リーディングカンパニーの経営戦略
セミナーレポート

業界のリーディングカンパニー

3社合同セミナー

  • DIGITAL×経営

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  • DIGITAL×マーケティング

    BCG

デジタル変革期における
リーディングカンパニー
経営戦略
セミナーレポート

世界を動かすリーディングカンパニーは
何に注目し、何を見据えているのか

製造業・経営・マーケティング業界のリーディングカンパニーである3社が集い、業界TOPを走る各社の戦略と、
その戦略をリードするビジネスパーソンのキャリアについて
「今、なぜデジタルが必要とされているか」「今後の展望」「未来に向けたデジタルの取り組み」についてプレゼン・ディスカッションを行いました。

SEMINAR REPORT

セミナーレポート

第一部
世界を動かすリーディングカンパニー
3社が語る
デジタル変革期における経営戦略とは

〈企業戦略プレゼンテーション〉

デジタル変革期における
リーディングカンパニーの
経営戦略

  • 佐々木 靖氏

    ボストンコンサルティンググループ

    パートナー&マネージングディレクター

    佐々木 靖

    慶應義塾大学経済学部卒業。
    ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士並びに欧州経営大学院(INSEAD)経営学修士を取得。
    日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)を経て、BCGに入社。
    BCGジャパンの保険プラクティスリーダー並びに金融プラクティスのコアメンバーを兼務。
    ITや金融業界を中心としたプロジェクトを手掛け、デジタル戦略、全社ポートフリオ再構築戦略、営業改革、アライアンス買収サポート等、多岐にわたるマネージメントイシューを解決。
    グローバルな視野を持ち、自ら機会を作り出し、自らが世の中を変える、という気概で日々クライアントに向き合っている。

デジタル時代の戦略は適応的に変えるべき

最近、お客様からデジタル戦略のご相談を受ける事が非常に多く、金融業界を担当する私の仕事も、今や半分はデジタル絡みになっていますから、本日はそのことについてお話ししたいと思います。

ご存じの通り、IoTやAIなどの技術革新がものすごいスピードで進んでいます。こうしたデジタル技術が戦略に与えるインパクトは大きく、ダイナミックに戦略を変えていかなくてはなりません。マイケル・ポーターは、堅牢な戦略の基本的条件の1つに「継続性」を掲げていますが、デジタル時代では、戦略は継続せず、適応的に変えるべきものだと私たちは考えています。

実際、金融業界では、すでに昔ながらのストラテジーでは戦っていけません。なぜなら、「バリューチェーン間の競争」から「スタック間の競争」へと急速にルールが変わってきているからです。インターフェイス、アプリケーション、インフラなどのレイヤー(スタック)ごとに競合企業が出てきており、各レイヤーで強みを持たないと、彼らに勝つのが難しい状況になっています。このように競争ルールが変わった以上、従来のビジネスや組織を壊して、新しく創りかえる必要があります。そこで、私たちはデジタルを使って、ビジネス・組織変革のお手伝いをしているのです。

「BCGデジタルベンチャーズ」を立ち上げた

かく言う私たち自身も、適応的に組織変革を進めています。従来のコンサルティング組織とは別に、グローバルで新たに「BCGデジタルベンチャーズ」を立ち上げ、東京センターもオープンしました。UI、AIなどのデジタル技術に長けた人材を採用して、新たなBCGを形成している最中です。

私たちが、BCGデジタルベンチャーズと協業するデジタルのコンサルティングで特に重視しているのは、ユーザーが何を欲しているかをディープダイアログする「エスノグラフィック・リサーチ」です。そのリサーチで得たインサイトをベースに、従来のビジネスを壊し、デジタルとユーザーの間に新たなビジネスを生み出していく事が出来ます。ただ、メインストリームにいる方々が自分たちでビジネスを壊すのは難しい。そこで私たちは、お客様の組織外、あるいはメインストリームとは違うところに新組織を立ち上げ、新たなデジタルビジネスを立ち上げる支援をしています。

次世代製造業に向けたGEの挑戦

  • ショーン・キム氏

    GEインターナショナル・インク

    北アジア・パシフィック地区代表 GEアビエーション

    ショーン・キム

    2014年3月より、GEアビエーションの北アジア・パシフィック地区代表として、日本及び韓国のセールス部門を統括し、また同地区の顧客ならびに社内におけるGEアビエーションの代表も務める。
    2008年にGEエナジーの日本及び台湾におけるグローバル・セールス部門のアプリケーション・エンジニアとして入社。GEエナジーが取り扱う全ての製品に対する技術的なコンサルタント業務を通じて、新規ビジネスの特定と開発を行う。2011年にGEメジャメント・アンド・コントロール(M&C)の日本代表に就任。日本独自の事業戦略の展開や顧客関連の問題に迅速に対応できるよう、日本のM&C部門を調整・リードし、お客様だけでなく、M&Cの社内部門の代表としての職責を担う。
    シカゴ大学で物理学の学士号を取得。ミシガン大学で航空宇宙工学の修士号と博士号を取得。

デジタル・インダストリアル・カンパニーへ

2017年、GEは125周年を迎えました。GEは、1892年に、発明家のトーマス・エジソンが創業した電気照明会社と別のもう一社が合併したことにより誕生しました。彼は「世界がいま本当に必要としているものを創るのだ」という言葉を残しています。対して、10代目のCEOであるジェフ・イメルトは、5〜6年前から「デジタル」というキーワードにフォーカスし始め、そして今、私たちはデジタル・インダストリアル・カンパニーへ大きくシフトしています。イメルトがデジタルを重視するのは、一つは「危機感」からです。GEはいつの間にか、スピードが遅く、内向きの会社になってしまっていたという危機感がありました。そこでイメルトが出した方針は、シリコンバレーのスピードある顧客志向の会社に習い、ハードウェアにソフトウェアを加えたカンパニーになることでした。

具体的には、私たちは4つのことに力を入れています。1つ目は「事業ポートフォリオの集中と選択」で、キャピタルビジネスを手放し、インダストリアルに集中しています。2つ目はデジタルで、「インダストリアル・インターネット」を推進しています。3つ目は「GE Store」で、人材や技術など他のビジネスや部門でも活用できるリソースを横展開で活用しています。4つ目にカルチャーチェンジを推し進めており、仕事のやり方をシンプルに変える「シンプリフィケーション」の徹底をめざしています。

世界がいま本当に必要としているのがデジタル

2011年、私たちはGEデジタルを立ち上げましたが、このときは研究機関の一つでした。それが2015年に一ビジネス部門に格上げされて、今に至ります。そのGEデジタルは、大きく3つのビジネスを手がけています。1つ目は「GE for GE」で、社内のプロダクティビティを上げるためにデジタルツールを活用することに取り組んでいます。2つ目は「GE for Customers」で、ハードウェアの知見を活かして、ソフトウェアソリューションをお客様に提供するビジネスを推進しています。たとえば、ある航空会社の航空機エンジンから得られたデータを解析することで、予期せぬエンジン整備を40%減らし、エンジンを飛ばせる日数を1年で12日間伸ばしました実例があります。大型航空機を1回飛ばすと数億円の売上が上がりますから、これは大きなビジネスインパクトです。3つ目は「Platform」で、私たちは「Predix」というインダストリアル用に最適化されたオープンソース・プラットフォームを開発しました。これを今、世の中に広めようとしています。

GEはインダストリアル・インターネットを戦略の柱にしています。これはまさにエジソンのビジョンの通り、「世界がいま本当に必要としている」ハードウェアとソフトウェアを融合したソリューションを創る取り組みです。

BUSINESS STRATEGY IN CHANGING WORLD

  • 岡田 久雄氏

    プロクター・アンド・ギャンブル・
    ジャパン株式会社

    ヘアケア事業部 アソシエートディレクター

    岡田 久雄

    2005年に東京大学工学部卒業後、P&G入社。SK-Uへ配属され、スキンケア部門でマーケティングを担当。入社2年目でシンガポールへ赴任し、アジア各国からの人材で構成されるマルチカントリーチームのリーダーを務めた後、ヘアケア部門へ異動。パンテーンのアシスタントブランドマネージャーとして活躍後2010年にパンテーン・ウエラのブランドマネージャーに昇進。2012年よりブランドマネージャーとしてパンパース、ファブリーズ、ジョイを担当後、2016年よりヘアケア事業部全体のアソシエートディレクターとして活躍中。

私たちの感情や欲求は変わっていない

180年前にP&Gが設立されて以来、世界にはさまざまな変化がありました。たとえばメディアの世界では、まず新聞が生まれ、たくさんの情報が届けられるようになりました。ラジオの登場は情報の鮮度を高めました。さらにテレビが出てきて、映像メディアが一般的となりました。そして今や、双方向のインターネットが広まっています。

こうしたメディアの変化によって、私たちのライフスタイルは大きく変わりました。しかし、私たちの感情や欲求はこの180年間、いや何千年もの間、基本的には変わっていません。ですから、デジタル時代だからといって、マーケティングの醍醐味も変わることはありません。お客様に寄り添い、お客様をどうハッピーにしていくか。お客様すらも気づいていない悩みをどう解決するか。マーケターにとって重要なのは、昔も今もこのことに尽きるのです。

お客様の「変わらぬ悩み」をデジタルで解決

たとえば、「SK-II」というスキンケア・化粧品のブランドがあります。このブランドでは今、「SK-II スキン コンシェルジュ カウンセリング」を行っています。これは、お客様の肌DNAスコア(肌本来の傾向)とマジックリングのスコア(今の肌分析結果)を測り、お客様の肌本来の姿を知っていただいた上で、今後はどのようなスキンケアをしていけばよいか、どの商品が適しているかをカウンセリングするサービスです。「私の肌はこれからどうなっていくのか?」ということは、消費者の皆さんの普遍的な悩みです。私たちは、デジタル・アプリケーションやビッグデータを使って、この悩みを解決するサービスを開発したのです。

もう1つ、事例をご紹介します。「ブラウンオーラルB」は、電動歯ブラシブランドです。デンタル面での私たちの悩みは、「私は果たして、自分の歯をすみずみまで上手に磨けているのだろうか?」ということです。実際、多くの方には歯磨きのクセがあって、あまり磨けていない箇所があり、そこが虫歯や歯周病になってしまうケースも少なくありません。この悩みを解決するため、私たちはアプリを用意しました。オーラルBをオーラルBアプリに接続すると、すみずみまで磨けているかどうかを検証し、ブラッシングスコアを表示します。そのアプリを毎日使用することで、今まで残していた汚れを落とし、虫歯を防ぐことができます。このようにすれば、デジタルでユーザーエクスペリエンスを向上させられるのです。

私たちは、こうしてデジタルを活用し、お客様の変わらぬ悩みを解決しようとしています。

〈ディスカッション〉

ISSコンサルティング 代表取締役社長 関口 真由美がファシリテーターとなり、ディスカッションを展開しました。

お互いへの感想と質問

ショーン:佐々木さんのお話で特に面白かったのは、金融業界でこれまでにないコンペティターが出てきているという点です。実は、我々もまさに同じ状況に直面していて、考えてもみなかった企業が新たなコンペティターになってきています。今、戸惑いながら対応策を練っているところです。

岡田:大企業が自らのビジネスを壊していくのは難しいことだと思います。変革のスピードはなかなか上がらないのではないでしょうか。BCGさんはどのようにコンサルティングしているのでしょうか。

佐々木:岡田さんの仰るとおりですが、とはいえ、企業は変化に適応する他にないのです。特に大きいのは人材ギャップです。適応するには、全く違うタレントを採用しなくてはなりません。そのために別会社、別組織をつくるのです。その意味で、GEさんが古き良き優秀なエンジニアと、新しいデジタル人材をどのように融和させているのか、興味があります。

ショーン:GEでは今、「ファストワークス」という新しいものづくりの試みを行っています。従来のように、時間をかけて全リスクを把握した上で完成品を製作するのではなく、スタートアップのように小さく始め、お客様に評価していただきながら、スピーディーに調整していくのです。当然ながら、社内には、ファストワークスなどありえないというエンジニアもたくさんいます。私は、これは一種のダイバーシティだと思います。お互いを理解しながら、一緒に働ける環境をつくることが大事です。

佐々木:岡田さんのお話では、徹底したユーザー目線に感銘を受けました。デジタルだけではビジネスが生まれないというのはその通りだと思います。

ショーン:GEでは、デジタルによって「サービスの個別化」が進んでいます。たとえば、私たちは航空機エンジン一つひとつに対して、バーチャルの世界に「デジタル・ツイン」という双子をつくり、ここにハードウェアから送られてくるデータをアップデートすることで、それぞれのエンジンにいつどのようなメンテナンスが必要かを判別できるシステムを構築しました。つまり、エンジン・メンテナンスの個別化を実現したのです。消費財の世界でも、やはり個別化が進んでいるのでしょうか?

岡田:確かに、個別化は進んでいると思います。たとえば、Web上では、ニュースや広告などが自分の趣味や嗜好に合わせて届く時代になりました。ただ、それでサービスが人によって大きく変わったかといえば、そうでもありません。結局、近しいサービスを受けている方が多いのが現状です。それから、トレンドで面白いのは、デジタルが広まれば広まるほど、一方で「アンチデジタル」も強まっていることです。たとえば、ビューティーの世界では今、「オーガニック」「ナチュラル」がキーワードになっていますが、これなどはアンチデジタルの代表例です。

具体的な取り組みと今後の展開

ショーン:具体的な取り組みで言えば、2015年にGEデジタルがビジネス部門に格上げされた際、他の各ビジネスにCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を置きました。実は、2017年、GEは「デジタル2.0」に取り組んでおり、さらに組織を改善しようとしています。

佐々木:私たちも、CDOを置くべきだろうかという相談をよく受けています。誰をどのような役割で置くのか、そもそも置くべきか否か。正解はありません。組織やフェーズに応じて考えなくてはならない難しい問題です。

佐々木:ところで、私たちのお客様の多くは、「データ」に対する危機意識が強いと感じています。データについて、皆さんはどう思いますか?

ショーン:私たちは割とシンプルで、航空エンジンのデータや飛行データなどは、基本的に航空会社のものだと認識しています。私たちはデータのシェアをお願いする代わりに、航空会社のお客様にバリュー・メリットを提供しているのです。

岡田:マーケターが気をつけなくてはならないのは、データの渦に巻き込まれることです。データはすべて過去の情報で、そこにマーケティングの答えはありません。仮説を作る上ではデータに大きな意味があるのですが、お客様すら気づかない本質的な悩みを発見するには、データを解析するスキルとは別の能力が必要で、データを見ているばかりではダメなのです。

ショーン:「データだけを見ていても答えは出ない」という意見には強く共感します。私たちがデジタル・インダストリアルの世界で意味あるサービスを提供できるのは、フィジカル世界の現象を熟知しているからです。デジタルデータの意味を知るためには、物理に詳しくならなくてはならないのです。

佐々木:インサイトを見る上では熟練の技と知識が必要というのは、私も共感します。一方で私たちがよく話すのは、今後は「ディープラーニング」が熟練のプロセスを代替できる可能性があることです。

岡田:私たちも、ディープラーニングを使えば、簡単に100種類の商品コンセプトが作れるのではないかということはよく話します。ただ、ディープラーニングの問題は、先ほどの話とつながりますが、過去のデータからアイデアを生み出す点です。結局、どこかで見たことのあるものしか生み出さないのではないかという気がします。違いをつくるのは、やはりしばらくはマーケターの腕になりそうです。

〈Q&A〉

Qデジタルの投資対効果はどう見るべきでしょうか?

佐々木:守りと攻めで分けて考えるべきだと思います。「守り」、つまりコスト削減のためにデジタルを利用する場合は、費用対効果はきっちり算出できるでしょう。問題は、デジタルで新しい取り組みを行う「攻め」のケースです。経営陣が費用対効果を見るのか、将来投資と考えるのかを明確にしない限り、デジタルを攻めに使うことはできないと思います。

ショーン:GEでは「GE for GE」が守りに当たりますが、おっしゃるとおり、費用対効果は明確に出ます。一方、攻めの「GE for Customers」で私たちが注意しているのは、お客様トップのコミットメントです。なぜなら、インダストリアル・インターネットはフル活用しない限り、アウトカムが出てこないからです。フル活用してもらうためには、トップのリーダーシップが必要なのです。

岡田:私たちも投資対効果が重要だと考えていますが、実は、多くのデジタルメディアは効果検証ができないのが現状です。そのため、私たちは最近、効果を検証できるパートナーと優先的に協業するようにしています。

Qデジタルにおける日本企業の課題は?

佐々木:根源的に、「ガバナンス」と「リーダーシップ」の2点に課題があります。有り体に言って、現在の日本企業は経営者が舵取りしにくい仕組みになっています。スピード感を持って決断するのが難しいですし、異文化を取り入れるのも大変です。私としては、日本企業の経営陣の皆さんには、デジタルを梃子にして、ぜひ組織を変えていただけたらと願っています。

第二部
世界を動かすリーディングカンパニーにおけるキャリアとは

〈キャリアプレゼンテーション〉

キャリアのオーナーシップを持つ

  • 長神 真梨子氏

    プロクター・アンド・ギャンブル・
    ジャパン株式会社

    Brand Manager - JOY -

    長神 真梨子

    入社後、アシスタントブランドマネージャーとしてパンパースの日本市場を担当。3年目にシンガポールに赴任となり、パンパースのグローバル部門へ移り、ロシア、インド、中国、日本、ブラジルなど市場でのマーケティング戦略の策定および、パッケージやTVCMの作成などを担当。5年目に日本に帰任してファブリーズを担当。産休育休をはさみ、現在は食器用洗剤のジョイというブランドのブランドマネージャー。
    日々変わるビジネスのダイナミックを分析、理解したうえで、ファイナンス、営業企画、生産管理など他部署のメンバーを巻き込み短期、中長期のビジネスプランを策定、実行するという役割を担う。

私は神戸生まれで、大学までずっと関西に住んでいました。2010年、P&Gに入社し、まずパンパースの日本市場のアシスタントブランドマネージャーになりました。高級品のプレミアムケアを担当し、入社1年目の冬からはリブランディングを手がけました。現在は「パンパースの肌へのいちばん」という名前で販売されている商品ラインナップのブランディングは、私が主体的に関わったもので、今でも強い思い入れがあります。

そのリブランディングに2年目の終わりまで関わった後、3年目にシンガポールへ行きました。なお、このタイミングで社内結婚をして、夫も同時期にシンガポールへ異動となっています。私のミッションは「グローバル本部の立ち上げ」。パンパースのグローバル本部の一部をアメリカからシンガポールに移したタイミングで、世界中からシンガポールに50〜60名のメンバーが集まったのです。そのうち日本人は私ともう1人だけ。イスラエル人、インド人、パレスチナ人、飛び級を重ねて10代のうちに入社したフィリピン人など、さまざまな社員とともに、パンツ型パンパースのグローバル・ブランディングを進めていきました。

2年ほどシンガポールに在籍して2014年に帰国し、今度はファブリーズの担当になったのですが、間もなく出産・妊娠を経験。11カ月間の産休・育休を取ってから、2016年4月に職場に復帰して、現在は台所洗剤、食器用洗剤「ジョイ」の日本のブランド責任者を務めています。

私は、自分自身がキャリアのオーナーシップを持たなくてはならないと考えて働いてきました。入社以来、上司やメンターには、こういった経験を積みたい、このような長期的キャリアを築きたいということを頻繁に話してきました。現在も、3カ月に1回は上司とそうした対話の場を持つようにしています。

GEはずっと勉強の場

  • 園山 雄大氏

    GEインターナショナル・インク

    アビエーション事業部部門
    アビエーション・デジタル部 兼 アビエーション・システムズ部
    リージョナル・ディレクター(日本・韓国担当)

    園山 雄大

    青山学院大学を卒業後、日系航空専門商社にてGE社製エンジンシステムの営業に従事。
    その後 航空機ファイナンス企業を経て、GEアビエーションに入社。 約2年間のリーダーシッププログラム「コーポレート・リーダーシップ・スタッフ(CLS)」にて国内外にまたがるプロジェクトを経験。そして2016年4月よりGEアビエーション事業部部門アビエーションデジタル部 兼 アビエーション・システムズ部リージョナル・ディレクター(日本・韓国担当)として同地区の航空機デジタル関連製品の事業拡大をリードする。

大阪生まれですが、その後は何度も引っ越しを経験しました。小学4年から中学2年までは海外で暮らしています。大学卒業後は山田洋行に入社し、防衛省向けにGEのエンジンを販売する営業担当となりました。実は、このときからGEとの関わりが始まっていたのです。その後、山田洋行のスピンアウトカンパニーだった日本ミライズに移り、ビジネスのスタートアップからクロージングまでを経験。次に、日系リース会社で航空機リースに携わり、金融の知識を得ました。そして、2010年にGEに入社しました。

GEでは、まず2010年に防衛省向けのヘリコプターエンジンの営業担当となり、1年以内に戦闘機、戦術機や輸送機を含む全てのエンジン・プログラムを統括しました。その後、2012年に「コーポレート・リーダーシップ・スタッフ」(CLS)に選抜され、1年強、アメリカのグローバル本社で民間航空機向け製品のマーケティング職を経験しながら、夏と冬にはGEの全社員から選抜された130名ほどの中堅層トップパフォーマーとともに集中的に研修を受けました。帰国後は、エンジン以外のすべての航空関連製品を扱う「システムズ」の営業を務めながら、自ら開拓して「デジタル」の仕事を増やしてきました。デジタルの営業としては、第一部でキムがお話しした「デジタル・ツイン」をはじめとする、航空業界向けのデジタル・ソリューションを日本と韓国で統括しています。そして、2017年3月からはアビエーション・デジタル専属となって、今に至ります。

GEは、ずっと勉強の場です。新入社員や私のような中堅社員はもちろん、役員になっても皆が数多くの研修を受けています。特に最近は、GEが全体的に「デジタル・インダストリアル・カンパニー」へシフトしていることを受けて、デジタルとインダストリアルの両方がわかる人材を育てるプログラムが主流となってきています。成長したい方、学びたい方にとって、GEはチャンスがいくらでもある恵まれた環境です。

日本企業のために力を発揮したい

  • 折茂 美保氏

    ボストンコンサルティンググループ

    プリンシパル

    折茂 美保

    東京大学経済学部卒業。同大学大学院学際情報学府終了。
    新卒で2005年にBCGに入社し、BCGの社費留学でスタンフォード大学経営学修士を取得。
    MBAでの知識も活かし、現在プリンシパルとして主に消費財やテクノロジー関連の案件を担当。
    新規事業戦略、新規事業立ち上げ支援、アライアンスの実現、マーケティング戦略、人事・組織・業務改革等、数多くのプロジェクトを手がけている。
    2015年7月に長女を出産、産休・育休を経て、2016年4月に本格復帰。
    現在は、フレックスタイム制度を活用し、仕事に子育てに奮闘中。

私は2005年にBCGに入社しました。気づいたら13年も在籍しています。現在は、ハイテクメディアや消費財などのクライアントを多く担当していることもあって、デジタルを使った新規事業立ち上げプロジェクトに携わることが増えています。一方で、新卒採用に携わったり、社内のウーマンズ・イニシアチブの活動に関わったりもしています。また、2015年に長女を出産し、2017年には2人目を出産予定です。

これまでのキャリアで転機となったのは入社5年目の2009年、社内の留学制度に手を挙げて、2年間スタンフォード大学のMBAコースに通ったことです。当初は苦労の連続で、モチベーションが下がった時期もありましたが、仲間に恵まれて、ただコンサルタントを続けるだけでは得られない視野や知識を多く得ることができました。帰国時には、今後のキャリアを改めて検討しましたが、「私は日本企業のために力を発揮したい。コンサルタントはその目的に合った職業だ」と思い、BCGに復帰しました。その後はプロジェクトリーダーとしてメンバーの育成にも努めてきました。

BCGについて少しだけご説明します。BCGは48カ国で事業を展開するコンサルティングファームで、実は東京は、世界で二番目のオフィスです。日本とは大変縁の深い会社なのです。日本には約600名の社員がいますが、私が入社した13年前から比較するとメンバー構成はずいぶんグローバル化し、現在は海外出身者が本当に数多く働いています。

BCGにはグローバル全体でプロジェクトにアサインされるシステムは勿論ありますし、また正式にアサインされたプロジェクトメンバー以外の世界中のBCGエキスパートの知見を借りる事が出来ます。例えば、新たなプロジェクトに必要なスキルを持ったエキスパートがニューヨークオフィスにいたら、彼・彼女に日本に来てもらい、一定期間サポートを受ける事が可能です。もちろん逆に、日本のメンバーがヨーロッパや南米などに行くことも珍しくありません。私たちは、グローバルでフレキシブルに助け合っているのです。

〈ディスカッション〉

ISSコンサルティング 代表取締役社長 関口 真由美がファシリテーターとなり、ディスカッションを展開しました。

お互いへの感想と質問

園山:長神さんのお話を伺って、お子さんができても働き続けられるP&Gのサポート体制の充実ぶりを垣間見ました。

長神:P&Gでは、女性社員が子育てしながら働くのがデフォルトなのです。今、多くの日本企業では女性管理職比率の低さが課題になっていますが、実はP&Gは、女性管理職比率が30%を超えています。システムとカルチャーの両方のサポートが充実していることが大きな要因だと思います。

園山:男性社員の育児サポートはどうでしょうか。

長神:社内結婚した夫は1カ月育休を取りました。

園山:実は今度4人目が産まれるもので、私も次は育休は取らないものの、勤務形態・場所が柔軟であるため今まで以上に育児には積極的に関わろうと思っています。

長神:ぜひそうしてください。

折茂:園山さんは、このなかで唯一転職を経験されています。新しい環境に飛び込むとき、何に気をつけていますか?

園山:私は航空ビジネスにフォーカスして、まったく違う分野には転職しないようにしてきました。そうすると、どこに行ってもコアな強みを活かすことができるからです。ただ、そうは言っても、新しい組織に飛び込めばわからないことはあります。そうしたときは、できるだけ早く、わからないことはわからないと周囲に伝えるようにしています。そして、助けてくれる同僚のネットワークを構築していけば、徐々に仕事が好転していくのです。ところで、折茂さんは留学中に苦労なさったという事でしたが、どの様に乗り越えたのですか?

折茂:私も園山さんと一緒で、抱え込まないようにしています。仲間や夫に相談したり、助けてもらったりしながら、乗り切ってきました。

長神:折茂さんがメンバーの育成で気をつけていることは何でしょうか?

折茂:BCGのビジネスは人が商品であり財産ですから、メンバーには10年、15年のスパンで成長してもらうことが重要です。私はいつもメンバーの強み・弱みを把握し、彼・彼女が少しストレッチできる仕事をアサインすることを心がけています。また、2週間に1度は時間を取って、一人ひとりとオープンな対話を行うようにしています。

グローバルな環境で働く醍醐味

ーグローバルな環境で働く面白さ、醍醐味を教えてください。

園山:CLSでは、世界中から130名のトップパフォーマーが集まりましたが、日本人は2人だけ。そこには中国人、インド人をはじめとしてアグレッシブなメンバーがたくさんいて、日本人のように理解できるまで話さないようにしていると、到底発言などできません。彼らに被せて話すくらいの勢いが必要なのです。アメリカ本社で働いたときには、そうした競争環境によく出会いました。本社では雲の上のような方と話せる機会があるのですが、一方で競争相手も多く、自分からどんどん出ていかないと話すことはできないのです。CLSで経験を積んだことで、今ではそうした場でも積極的に発言したり、自ら進んで関係性を築いたりできるようになりました。

それから、GEアビエーション・デジタルチームは、実は日本のメンバーは私一人です。メンバーが世界中に散らばっているのです。朝はアメリカ西海岸、夕方はヨーロッパ、夜はアメリカ東海岸とやり取りしながら、グローバルのメンバーを巻き込んで働いています。また、実はグローバルのアビエーション・デジタルの営業は全員在宅勤務で、原則客先に直行直帰で、社内会議は原則電話会議が主流です。

長神:私は今、神戸オフィスで日本のマーケットを見ていますが、共に働く仲間はインド人や中国人など、様々です。日本にいますが、ビジネス環境はグローバルです。また、私は査定の際、アジアの他のマーケットのメンバーとの対比で評価が決まります。評価軸もグローバルなのです。さらに、私がシンガポールに行ったように、P&Gには海外赴任のチャンスが数多くあります。

折茂:現在、私は日本企業のクライアントを担当し、日本でのサービス立ち上げに関わっているため、仕事自体はグローバルではありません。しかし、先ほどもお話ししたように、当たり前のようにグローバルのエキスパートと連絡を取り合っています。そのエキスパートに日本まで来てもらってディスカッションすることも少なくありません。

グローバルな環境という意味でMBAの話をもう少しすると、スタンフォードのMBAコースはまさに園山さんのCLSと同じような環境で、世界中のトッププレーヤーが集まっていました。最初は、彼らに圧倒されてほとんど発言できずに落ち込んだのですが、友達ができてくると、皆も同じように苦しんでいることがわかってきました。悩んでいるのは私だけではないと知ってから、私は考えを切り替えました。日本人コンサルタントとしてのバックグランドを活かし、貢献できることを積極的に発言するように心がけたことで、授業が一気に楽しくなった事を覚えています。

リーダーシップについて

ーリーダーシップについての意見を聞かせてください。

折茂:私は、入社数カ月目のメンバーにもリスクを取って仕事を任せるようにしています。それがリーダーシップを育てる秘訣だと思うからです。若手社員は、任されると伸びるものです。

長神:私は、リーダーシップとは人を巻き込んで結果を出すことだと考えています。それはリーダーでなくても、誰もが発揮できる力でしょう。リーダーシップのスタイルは人によって違って当然です。私自身は情熱、ポジティブさ、チームのニーズを汲み取る聞く力を大事にしています。

園山:おっしゃるとおり、私もリーダーシップは人それぞれだと思います。私自身はニッチマーケットを狙う性分で新しい物好きです。そもそも航空エンジンビジネスがニッチですし、デジタルもGE社内ではまだまだニッチです。私はそうしたところに自分から首を突っ込み、関係をつくっていくタイプです。

長神:P&Gはマネジャークラスを外部から採用することが滅多にありません。その分、人材育成をとても重視しています。日々のフィードバックやチャレンジといったOJTが育成の中心ですが、それに加えて、マーケティングスキルなどを学ぶ「ハード・スキル系トレーニング」、信頼を得る方法やコミュニケーションなどを学ぶ「ソフト・スキル系トレーニング」が、新人から経営陣までしっかりと体系化されています。そうやってリーダーシップを鍛えていくのです。

折茂:BCGはおせっかいな人の集団で、体系だった人材育成プログラムとは別に、非公式の「私塾」がいくつも立ち上がっているのが特徴です。たとえば、プリンシパルの私が一つ昇格すると「パートナー」になるのですが、パートナーになると突然、営業業務の比重が高くなり、そこで苦労するメンバーが多いという問題があります。そこで、あるパートナーが自主的に周囲のメンバーを集め、自分の営業術の極意を教えてくれる私塾を開いてくれているのです。その他にも、さまざまなメンバーがさまざまな形で私塾を開いています。これはBCGならではだと思います。

〈Q&A〉

Qグローバルの知識をどのように共有しているのでしょうか?

折茂:グローバルナレッジを総動員することでクライアントの課題を解決できるのがBCGの強みですから、そのために必要な情報は手に入れられるようになっています。1つ目に、グローバルの全BCG社員がアクセスできる「ナビゲーター」というプラットフォームがあり、世界中の事例、個人のスキルなどの情報を調べることができます。2つ目に、年に1〜2回、業界・ファンクション別にグローバルカンファレンスが開かれており、そこで優れた事例やナレッジの共有を進めています。その上で3つ目に、キーパーソンに尋ねるといった形で人的ネットワークを使ったナレッジ共有も頻繁に行われています。

園山:GEには、事業レベル、ファンクションレベル、お客様レベルでさまざまな情報共有の場があります。それに加えて、「MY GE」というイントラサイトがあり、そこで情報を検索して手に入れることができます。

長神:その点、P&Gはけっこうローテクで、事業部軸・マーケット軸でそれぞれ人的なネットワークや組織的なネットワークを辿って、事例などの情報を手に入れることが多いです。

Qメンバーのマインドをどのように変えようとしていますか?
また、うまくいっていないメンバーにどう対応していますか?

園山:基本的には、エンパワーして仕事を任せることでモチベーションの上昇を促します。それで難しければ、とことん話し合った上でフォローアップしていきます。

折茂:まずは長所や優れた能力があるはずだと考えて、なぜこのような状況になってしまっているのかを深く対話します。そこで何が問題なのかがわかれば、調整したり、対処したりできるでしょう。

あと、長く採用に携わってきた身としては、そうした人材を採用したことを問題にするかもしれません。特に、苦しい局面でも逃げずにやり遂げられるかどうかを採用で十分に見極めなくてはならないと思います。その意味では、面接官の育成が必要なのかもしれません。

長神:お二人の意見に一つ加えるなら、以前の上司や同僚に、パフォーマンスが高い時期があったのかどうかを確認します。単に、自分との相性の問題という可能性もあるからです。

参加者の皆様からいただいた
コメント

  • 第一部で具体的に各社のカラーが出ていたことと、大きなフレームで見た場合に大なり小なり同じ試行錯誤をされているのだと感じた。また、マーケティング論やコンサルタントとしての目線の違いやスタンスの違いが非常に面白かった。
  • 【デジタル変革期における経営戦略とは】
    • 各社とも環境変化に合わせてどうAdaptiveになろうとしているのか、具体的なCaseをもとに説明があったのが非常にわかりやすかった。
    • どんどんスピードを上げてデジタル変革を社内で起こしていく中で、それをどう社内で喧々囂々諤々し咀嚼するのか、それをこなしていく難しさはあると感じました。特にGEのような生え抜き・中途、既存事業・新規事業とさまざまなプレーヤーがいる会社がどのように社内変革を起こしていくのか、そこをもっと聞きたいし、興味があります。
  • 【世界を動かすリーディングカンパニーにおけるキャリアとは】
    • 三者三様にグローバル、リーダーシップ、ダイバーシティを語っておられて自分のキャリア開発という視点はもちろんの事、自分のマインドセット、部下のマネジメントの仕方に有益な情報が聞けた。
  • 外資系企業との接点がなく、これまで自分で情報をつかむのが難しい事があった(職種、企業の取組みについて)。
    日本企業は大手中小問わず、デジタルをうまく取り入れて業務を進めていくことができれば、もっと働きやすい会社づくりができると思いました。
    今回女性の働き方についても共に結婚、出産を経て働くことを楽しんでいる講演者の方を見て、「自分もそんなふうになりたい」と思いました。
  • トップオブトップの方がどのような未来を考え、どのようなことに課題を持っているのか参考になった。時間があればもっと深くお話を聞きたかった。
  • 3社ともに世界的トップのグローバル企業で、超ドメスティックな典型的大企業にいる自分には大変刺激になるセミナーだった。
    誰もが憧れる3社のみなさんの話を伺いながら、もし、自分がこの会社にいたら、と想像していました。
    • GE(製造業)、BCG(経営)、P&G(マーケティング)は、企業文化や取り組む分野が大きく違っている。しかしながら、「デジタルだけでは何もできない」と同じ認識を持っていた。今までと基本は変わらず、顧客は何を求めていてその解決のためにデジタルを適用していくという認識であることを知ったのは大きな収穫であった。
    • 3社とも人材育成に多くの労力を投資している。機能別、リーダーシップ、コミュニケーションなど、様々なトレーニングがある。実例を多くは知らないが、自分の所属する会社は、機能別、リーダーシップも一度だけのことが多い。そのため、各人の能力差によるため、ばらつきが大きすぎる。
    • 外資系はすぐに実戦に投入される。日本企業はその場面に立つまでが非常に遅い。(若い、経験がないなど)。そのため、経験値が少なく、年齢が上がっても能力が低い事が多いことを再認識した。
    • 外資系企業はフィードバックは頻度が多いため、成長が進むように感じられた。
    • IOTの本質、その利用について、もう少し話を聞きたいと感じた。

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