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ISSコンサルティング主催キャリアセミナー
『ブランドからみえるマーケティング戦略』セミナーレポート

第一部 講演
ヒット商品を生み出すマーケッターが考える「ブランド」とは何か

飲料・化粧品・スポーツそれぞれの業界でトップブランドを多数持つ、日本コカ・コーラ、エスティローダーグループ、アディダス ジャパン3社のマーケティングキーパーソンをお迎えし、各社の「ブランドの強み」についてご講演いただきました。

日本コカ・コーラ株式会社

和佐 高志 氏

日本コカ・コーラ株式会社
コーヒー、ジュース&ニュー・グロース・プラットフォーム バイスプレジデント

新ジャンルを作った「太陽のマテ茶」マーケティング戦略

鈴木 雅則 氏

私は同志社大学卒業後、P&Gで化粧品や紙製品、ホームケア等の事業に携わった後、日本コカ・コーラに入社、お茶カテゴリーの担当を経て、現在はコーヒーやジュースのカテゴリーの統括と新規事業開発を手がけています。今日は、お茶カテゴリー担当時の「太陽のマテ茶」誕生秘話についてお話します。

日本の飲料品市場で、お茶のジャンルといえば烏龍茶や緑茶、麦茶などが代表的です。これに対し、新たなジャンルを作ったと言えるのが「太陽のマテ茶」です。飲料業界では、「新ジャンル」を作った先駆者が20〜30年、そのジャンルのNo.1を獲得し続けるという統計があります。例えば、烏龍茶といえばサントリーさんの「サントリー烏龍茶」。緑茶と言えば、伊藤園さんの「おーいお茶」などです。つまり、爆発的にヒットする新商品を開発するためには、「新ジャンル」を作り出すことが必要不可欠なのです。日本の飲料品市場では、1年に新商品が何百、何千と生み出されています。ただ、1年後に残っている商品は数える程しかなく、1000に3つと言われるのがこの業界です。失敗する確率はなんと99.7%。しかも、3年後に生き残っている確率はもっと低くなる。それほど、新商品企画は難しく、厳しいのです。

では、その厳しい飲料品市場で、マテ茶をどう成功へと導いたのか。実はマテ茶を市場へ投入するまで、企画提案から3年間、ずっと承認が降りなかったのです。ですからこの機会を使い「どう転んでも絶対失敗しない」と言えるほど、徹底的にマーケティング戦略を練り上げました。具体的な商品企画に入る前に、市場のホワイトスペースを見つけるために徹底的に調査・分析したのです。詳しいことは社外秘となりますが、私達の場合、お客様のニーズや市場における商品のポジションを徹底的にマッピングします。市場には一体どんなニーズがあって、そのニーズを満たすどんな商品が存在するのか。その分布図を作るイメージです。例えば、「爽快感が欲しい」というニーズを満たしている商品は「炭酸飲料」だな、といった具合です。その分析の結果分かったのは、「元気が出るお茶」というニーズのカテゴリーが、ホワイトスペースだったということです。その後、適合する商品を議論した上で、マテ茶を投入しました。

実は、マテ茶と私の出合いは大学時代まで遡ります。ブラジルに旅行した際、コパカバーナの海岸で、マチコンリモンと呼ばれるマテ茶とレモネードをブレンドした飲み物でマテ茶の事を初めて知りました。20年前の経験が、新企画のアイデアとして役立ったのです。スティーブ・ジョブズもスタンフォード大学の講演で言っていましたが、新しいモノを生み出すことに必要なのは、点と点をつなぐ「コネクティングドット」です。ジョブズの場合は、カリグラフィーを学んだ経験がマックのフォント作りに役立った。私の場合はブラジル旅行の経験が、お茶の新しいジャンルを開拓するきっかけになったのです。

マテ茶開発の成功体験を通して、マーケティングに必要だと考えるポイントは3つです。1つは、「ホワイトスペース」を見つけること。2つ目は「コネクティングドット」。3つ目は、開発に時間がかかっても諦めない「パッション」です。「太陽のマテ茶」の市場投入の承認を得るには先ほども言いましたが3年間かかりました。しかし何度ダメだといわれても、時間がかかっても「絶対にいける」と挑戦し続けるチーム全体の強いパッションが「太陽のマテ茶」の市場投入を現実にしたのです。

エスティローダーグループ

渡辺 由佳 氏

エスティローダーグループ
アヴェダ マーケティング部 部長

ブランド力を高めるのは「ブランド使命を追求」する姿勢

安田 真一 氏

大学卒業後、シンクタンクでマーケティングの調査やコンサルティングに携わりました。そこでマーケティングの面白さに気づき、大学院で学びなおした後、外からマーケティングに関わるのではなく、内部から直接関わりたいと考えて化粧品会社に入社しました。市場調査や商品企画、モバイルサイト構築などの様々な業務に携わり、「化粧品はやり尽くした」と思っていた時に、出合ったのがアヴェダです。同じ化粧品でも、ビジネスと環境保全の両立を目指すという、他の化粧品会社やブランドとは全く違うアヴェダのコンセプトに惹かれて入社しました。

エスティローダーグループが日本国内で抱える化粧品ブランドは合計で10種類です。どのブランドも高級化粧品として百貨店で展開していますが、アヴェダだけは異なります。アヴェダは、1978年に美容師によって設立されたブランドで、1998年からエスティローダーグループの一員となりました。もとより美容師が製品を開発していますので、ヘアケア製品が中心です。国内に8店舗ある直営ショップと、約300のヘアサロンで販売を行っています。

アヴェダが最も大切にしていることは、環境保全とビジネスの両立という「ブランド使命の追求」です。例えば、アヴェダの製品製造は全て風力発電で行っています。容器は再生素材を活用していますし、製品の内容物も、オーガニック比率を高めるべく日々研究を重ねています。アヴェダの場合、“アヴェダらしさ”の追求こそ他社との差別化に繋がります。ただ、仮に他社にアヴェダのビジネスモデルを真似されたとしても全く問題ありません。むしろ、望ましいことだと思います。なぜなら、その方が世界をより良く変えることができるからです。

アヴェダのブランドとしての本質的な強みは、「ライフスタイルの提案」まで行っていることです。一般的な化粧品や美容用品では、お客様が気づかないところで、健康を害する化学的な原料が使われたり、製品の製造過程で自然が破壊されることがあるかもしれません。しかしアヴェダは違います。地球環境と安全への配慮を何より優先します。アヴェダを使ったお客様は、効果を実感するだけでなく、「自分のことを大切に出来ている」「社会に役立つことができている」という心の充足感も得られます。自分にも環境にも優しくできるのです。製品提案だけでなく、その先にある日常生活の変化や心の変化まで提案していることが、ブランド力の基礎になっていると思います。

ブランドには、お客様の考え方や行動まで変えてしまう大きな影響力があります。短期的な利益のみを追求せず「ブランド使命」を追求することが、持続的なブランドの成長にとても重要だと思っています。

アディダス ジャパン株式会社

河合 健太郎 氏

アディダス ジャパン株式会社
マーケティング事業本部
ブランドマーケティングディレクター

「世界をどうしたいか」というブレないビジョンがブランドを作る

音部 大輔 氏

大学卒業後、広告代理店を経てアディダスに入社して7年になります。最初はランニングのブランド・マーケティング全般をリードしていました。2010年からブランド・マーケティングの統括として、広告宣伝、広報、イベント、店頭販促などを手がけてきました。

アディダスが「アディダス」というコーポレートブランドとしてお客様から支持して頂けている理由は、「ブレない明確なビジョン」を持っているからだと思います。アディダスのビジョンは、「スポーツに対する情熱を通じて世界をより良い場所にする。」ことです。私達はこれを実現するために存在しています。そして、そのビジョンを実現するための「6つのブランドバリュー」があります。行動の軸となる理念と言えますね。すべての商品企画は、これらに照らし合わせて行っています。

6つのブランドバリューとは、次に挙げるものです。一つ目はAuthentic(本物であること)です。アディダスの創始者アドルフ・ダスラーは靴職人です。だからこそ、私達の良質な商品へのこだわりは特に強い。実は、今やアディダスの代名詞とも言える3本線のデザインも、本来は革の伸びを補強するという機能面でのこだわりでした。それが時を経て、デザインに進化したのです。二つ目がPassionate(情熱的であること)。「スポーツが好き」という想いが、全ての土台となります。3つ目はInspirational(創造的であること)。身につけた時、理性を超え、心を揺さぶるものを作りたいということです。そしてInnovative(革新的であること)、Committed(真摯に取り組むこと)、Honest(誠実であること)。

このようにブレない明確なビジョンを持っていることが、成功するマーケティングを生みます。例えば、今年開催された2014FIFAワールドカップブラジルでは、サッカー日本代表ユニフォームの売上は2014年4月末時点で前大会の同時期に比べ、約7倍でした。しかし、皆さんに注目して頂きたいのは数字ではありません。「なぜ、私達はユニフォームを売るか」という理由です。もちろん、企業として利益を得るためという前提はありますが、真の目的は「日本にサッカー文化を根付かせる」というビジョンの達成です。ヨーロッパのように老若男女問わず、一丸となって自国の代表を応援する文化を作りたい。その情熱がガソリンとなって、私達を突き動かすのです。それはユニフォーム作りにも現れています。2014年のユニフォームのコンセプトは“円陣”でした。日本を1つの輪で絆を結ぶことをテーマに、選手がピッチで円陣を組むと背中に入った1本のラインが大きな1つの輪になるデザインを取り入れました。

マーケティングの具体的な方法は、いたってシンプルです。お客様がユニフォームを着たいと思うタイミングは、試合を観戦するときですから、観戦する機会を私達が増やす活動を行いました。パブリックビューイングや様々な試合観戦イベントを、都心から地方へと地道に仕掛けていきました。

ブランド戦略とは、単に売上げを追いかけるためだけの戦術ではありません。「世界をどうしたいか」というブレない姿勢を軸にしながら、時代に求められる価値を世の中に提供することです。

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