INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
DHL サプライチェーン株式会社 石井 秀樹

人事×経営 〜人事戦略を語る Vol.3

DHL サプライチェーン株式会社

シニア・ディレクター 人事総務担当

石井 秀樹

大学卒業後、ソニーに入社。国内最大の製造工場で人事、労務を経験し、本社人事のベネフィットプラニングを担当、その後米国に赴任し、米国内のR&D、製造拠点11か所のインターナショナル人事を担当し、日本の事業部機能の米国への移転の支援等を経験。帰国後は、放送局・業務用ビジネスのカンパニー、情報システムの人事責任者を担当し、ビジネスパートナーとしてビジネスに貢献。2006年に米国系ガラス繊維製造メーカーのオーウェンスコーニング日本法人に転職し、2度の事業買収と2度の事業売却を経験。2013年9月からDHLサプライチェーン株式会社 シニア・ディレクター人事総務担当。

公開日:2014年3月31日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

実力があっても英語が出来ても、コミュニケーション能力がないと人は動かせない

DHLサプライチェーンに入社されるまでのキャリアをお聞かせください。

id_020_02大学卒業後、海外で働き英語を磨きたいという思いがあり、「ものづくり」という姿勢で共感していたソニーに入社しました。最初は工場人事から始め、次に本社でベネフィットプランの仕事に6年ほど携わり、その後米国サンディエゴの工場に5年赴任しました。

サンディエゴは私にとってはベストプレイスだったと思います。もともと社内でも「石井はアメリカ向きだ」と評されていたのですが、サンディエゴは心配していたアジア系への偏見も少なく、自由でオープン・マインドな気風でとてもやりやすかったですね。もちろん、日本との違いも多く人事として学びなおす部分もありました。特にコミュニケーションの違いは大きかったですね。より自分の意見をぶつけて議論して進めていきますから。自分のチャレンジとして、議論のチェアマンシップをとる、ということを自分に課していました。現地のスタッフを巻き込んで自分の存在を認めてもらう目的もありましたし、キャリアプランとして自分が成長するためでもありました。

普段の生活でもとにかく日本ではできないことを学ぼうと、サンディエゴはテレコムバレーとも呼ばれ、ソニーの創業時を思わせる通信系のベンチャー企業のHRが集まる朝食会に出たり、現地の高校の授業で講師のボランティアをしたり、自分の子供を通して現地の子供たちと関わったりと、ここで生まれ育った人がどのように考え、どのような行動をするのか理解しようといろいろチャレンジしました。

例えば、子供たちのパーティなどで年齢によって理解度が違い、大きな子供たちのほうが有利なゲームをすると、小さい子供が「このルールは小さい自分たちにとっては”フェア“じゃない」なんていうんですよ。また、高校の授業では、もう3分も話すと、どんどん質問が押し寄せて準備した資料は不要になったりする。日本ならまずよく聞いて、あとで質問する、というスタンスが普通ですが、アメリカでは「知りたいことはすぐに聞く」のが当たり前で、その場で聞かなければだめだ、という意識が徹底していました。パーティのゲームであっても、授業であっても、もちろん仕事の会議の場であっても、そこで何も言わなければそれは”Yes, I agree”と言う意味にとられる、ということです。その場できちんと発言しなければならない、コミュニケーションは非常に重要であるということを身を持って学びましたね。

今、グローバル・リーダーとして活躍するためにはコミュニケーション力が必要だと言われていますが、当時すでにそれを体験されていたのですね。

そうですね、ビジネスが国境を超え、外資が入ってきてM&Aが進んできた時代になってますますコミュニケーションの必要性が顕在化してきたんだと思います。

どんなに実力があっても英語が出来ても、コミュニケーション能力がないと人は動かせません。英語は単なるツールであって、コミュニケーションが取れないとダメです。日本語でもしっかりコミュニケーションできなければ英語でできるわけがありません。グローバル企業のリーダーシップにおける共通に求められる資質は”Respect”と”Trust”です。まずは日本語自体が明確でなければなりませんし、決断力も求められます。特に企業がグローバル化を進める中でコミュニケーション能力の必要性が顕在化します。きちんと説明しないと人はついてこない。何をしたいかをはっきり伝える力が必要です。それはいわば”Evangelist”のようでなければなりません。そのリーダーについていきたいと思うかどうかが重要だと思いますね。

その後、オーウェンスコーニングジャパンに転職されましたがいかがでしたか。

キャリアパスを振り返り、果たして海外で経験した異文化コミュニケーション、人事の知識、経験が今の仕事で活かされているのかどうかと自問し、40才を過ぎたくらいから漠然とチャレンジングな仕事のチャンスがあれば外に出てみたいと考えていました。オーウェンスコーニングからお話をいただいた際に、事業買収を行って新しいビジネスを立ち上げることに魅力を感じ、また自分のバリューを活かして働けるのではないかと考えて転職しました。

買収後の人事で一番難しいのは「人」の問題でしたね。ビジネス要件、ポートフォリオや数字などは買収前に作れます。買収したほう、売却したほう、双方の気持ちが大切で、人をいかにうまく一体化していくか、ということが重要でした。慣習の違いなどから簡単に摩擦が起きてしまうんですよ。例えば国内のビジネスがほとんどの会社で通達文書などのオフィシャルなものとそうでないものとの区別をすることに慣れている社風がある一方で、買収により国内、海外関係なくメールを受発信するようになったときのメールの扱い方の戸惑いの問題とか、評価は誰が本人に告げるか、などの慣習が身についていて一体化への障害になったりしました。

職場環境には全員が責任を持つべき

そして7年くらいおられてDHLサプライチェーンに移られました。まずはDHLについて教えていただけますか。

id_020_03DHLには大きく3つサービスがあり、一番有名なのは恐らくDHL Expressだと思います。これはビジネスに必要な貨物、ドキュメントなどを届けるサービスです。あとの2つが貨物流通に関するサービスとなります。DHLサプライチェーンが国内のBtoBの企業間物流サービスを行い、通関・海外輸送をDHL Global Forwardingが受け持っています。例えば、中国の工場で作ったプロダクトを、日本の店舗に運ぶ場合は、中国国内をDHLサプライチェーン中国法人が担当し、通関から日本の窓口までの輸送をDHL Global Forwardingが、そして日本についてから店舗に運ぶまではDHLサプライチェーン日本法人が担当、という形で連携してビジネスを行っています。もう一つ、ドイツでだけやっているドイツ・ポストという郵送事業がありますが、これは日本の郵政民営化のモデルになった事業です。

御社の強みとは何でしょうか。

DHLサプライチェーンは、現在、「テクノロジー」、「コンシューマー&リテール」、「ライフ・サイエンスケア」「イメージング&プレシジョン」という4つのビジネスグループに分けてビジネスを行っています。

まず「テクノロジー」の強みのひとつは外資を含むメーカーのスペアパーツの配送業務です。メーカーの工場からの荷物をDHLの倉庫に保管し、これをメーカーの出荷指示によって24時間対応で、ものによっては2時間以内に配送したいというお客様の要求に応えることができるサービスレベルをもっているのが強みです。

「コンシューマー&リテール」のひとつとしてアパレルの物流があります。お客さまがアジアで生産し現地のサプライチェーンから送られたものを日本のユーザーに届けるサービスなどは強みがあります。アパレルは市場が大きいだけに競争も激しい世界です。しかしDHLはグローバルに展開していますので、グローバルで連携を取りこれらの企業のニーズに対応できることが大きな強みになっています。

「ライフ・サイエンスケア」は厚労省認可前の薬剤である、いわゆる「治験薬」の流通です。もともと、治験薬はメーカー自体が流通できなければいけなかったのが、イギリスで治験薬の規制緩和が実施されたのを受けて、日本でも流通を業者委託できるようになりました。現在、治験薬流通ではDHLがNo.1です。治験薬では厳格な温度管理を含む規格内の品質管理が重要なので先行して行っていたイギリスでの経験やノウハウを活かして日本で規制緩和された際にも完全に対応できたことが大きいですね。

「イメージング&プレシジョン」はLLP?Lead Logistics Providerを具現化したビジネスです。LLPとは企業内物流を超えてお客様の製品のサプライチェーンをデザイン、変化、管理、業務実行、継続的改善を実践するものです。お客様のロジスティックスコストを可視化し、事業戦略、SCM戦略と物流企画、管理の連動化、物流オペレーションの柔軟な対応、品質向上を図ります。

具体的なコスト削減の例としては、異なるお客の貨物を共同配送したり、倉庫の天井にカメラを設置して、倉庫のレイアウトや人の動きを撮影し、人間工学的にどうすれば一番効率的か、人の移動時間をいかに短縮できるか、など検討や実証を繰り返して50人かかった作業を45人、40人と減らせる倉庫を設計したりすることでコスト削減を実現しています。

今後の経営戦略の方向性についてはいかがですか

まずはアカウントマネージメントの強化ですね。クライアントリレーションを強固にしてどんどん中に入って行き、スペアパーツだけだった取り扱いを完成品もあつかわせてもらうとか、首都圏だけの物流を全国に拡大するなど取扱範囲を広げていくことが重要だと考えています。また、LLPなどのソリューション提案事業を強化し、新規顧客の拡大も目指しています。そしてこれまでとは異なる新たなインダストリーへの進出も検討していますが、課題として事業の拡大に人が追い付かないという点がありますね。

そのために人事面で戦略的に取り組んでおられることは何でしょうか。

インタビュー写真2

基本的なことですが、ビジネス戦略に合致した人材採用をすることですね。これはシニアクラスも現場レベルでも同様です。人材戦略において5BとしてBuy:採用、Build:育成、Borrow:外部人材の活用、Bind:リテンション、Bounce:退職を打ち出しています。

まず、社内に新しい血を入れる「採用」、そして「育成」では正社員、派遣、契約社員、パート、業務請負という5つの職質の中で人材ポートフォリオの見直し検討、実施しています。また、社員のやる気ややりがいを持たせ、エンゲージメントを高めることを重要視して毎年Employee Opinion Surveyを行い、その結果を分析し、改善につなげています。これはマネージャー、非マネージャーなど各部門から選ばれた社員の会議で改善提案項目を提案してもらい、それをアクションプランとして採用して行くものです。会社のリーダーシップチームと社員から選出した社員がオーナーシップをもって実行していきます。たとえば会社の戦略情報が少ない、という意見が出たら毎月会社の動向を知らせる機会を設ける、といったことです。

職場環境には全員が責任を持つべきです。たとえば挨拶、朝礼、目を見てハイタッチ(笑)など、オープンな職場環境を作るためにこういう基本的なことを励行しています。マネージャーでも間違いをすることがあるわけで、それを早く質すことも重要です。不適切な言動なども、すぐに「それは不適切ですよ!」というようにすぐに言えるような環境です。オープンな職場環境を作ることで社内に“trust“という文化が生まれると思います。

Bindは「リテンション」繋ぐということですが、優秀な人材を繋ぎとめることです。昇給だったり、海外赴任などの機会を与えたり。本人のキャリアパスを助ける思考です。特に当社の場合、案件をもらって新たにオペレーションを組むので、人材のパイプラインが揃っているかどうかが非常に重要なのです。フレキシビリティが求められるし緊急性があります。結果として一人一人がどうしたら自分をより磨けるか、そのためのキャリアパスが見えてくるわけです。

また、人事もソリューション・プロバイダーとして機能すべきなので、ビジネスパートナー(BP)制を採っています。「人事」という狭い役割だけでなくビジネスを知ることがBPには求められます。人事制度、報酬制度、評価制度に一貫性が必要ですが、一方でビジネス側の要望にフレキシブルに対応することが主な役割になるため、BPにはビジネスにおける洞察力が最も重要です。一貫性とフレキシビリティのバランスですね。かつて人事にとって顧客は自社の社員だと理解していましたが、本来の顧客であるクライアントがその先にいるわけです。そちらに向きを変えなければなりません。ある意味、ビジネス側の人間が人事スキルを持てばいいわけです。こうした考えの上に立って新たな人事を考えることでパラダイムシフトが起きます。人事が官僚的だ、と言われたら終わりですから。

最後にDHLサプライチェーンへの転職を考えている方にメッセージをお願いします。

DHLには尊敬と結果という2軸の企業原則があります。まずは尊敬、リスペクトありきですが、もちろん結果も求められます。リスペクトを日本語にすると「尊敬」「敬意」などですが、私はちょっと違う気がします。むしろ「おもいやり」くらいのニュアンスにこの語を理解しています。

去年の10月に新社長が「ウィニング・チーム(Winning Team)を作ろう」と言われました。各人はプロフェッショナルだが、チームとして一緒に働き、失敗したときは皆で悔し涙を流し、成功したら皆で喜ぶ、そういうチームです。そのチームを作るために、はっきり物事を言うことで結果を求めつつも、上から目線ではなく思いやりを持って人に接する人、そういう人材と一緒に働きたいですね。結果主義だけでなく人の成長を見つめる気持ちやそういう思考の背後に思いやりがあればいいと思っています。

DHL サプライチェーン株式会社

実力があっても英語が出来ても、コミュニケーション能力がないと人は動かせない DHLサプライチェーンに入社されるまでのキャリアをお聞かせください。 大学卒業後、海外で働き英語を磨きたいという思いがあり、「ものづくり」という...

製造業界の新着求人を見る

転職のご相談、求人応募・お問い合わせには、
まず無料登録をお願いします。

無料オンライン登録

Arrow