INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG) 佐々木靖

ビジネスを変革する デジタル戦略 Vol.1

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)

パートナー&マネージング・ディレクター

佐々木靖

慶應義塾大学経済学部卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士並びに欧州経営大学院(INSEAD)経営学修士を取得。日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)を経て、BCGに入社。BCG保険グループの日本リーダー、BCG金融グループ、BCGテクノロジーアドバンテッジグループのコアメンバー。金融業界を中心に、デジタル戦略、全社ポートフォリオ再構築戦略、営業改革、アライアンス買収サポート等、多岐にわたるプロジェクトを手がける。

公開日:2017年3月16日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

本質を見極める仕事

BCGに入社した経緯を教えてください。

lcms03_05大学卒業後、入社したのは日本興業銀行です。当時、日本興業銀行は経営者を数多く輩出しており、私自身も将来経営に携わりたいという思いから入社を決めました。日本興業銀行には10年ほど在籍し、国内勤務と海外留学を経て、ロンドン支店でM&Aを担当していましたが、2002年にBCGに転職しました。

BCGに転職したのは、経営の意思決定の重要性を再認識したためです。山一證券の自主廃業やその後の金融危機を銀行員として経験する中で、「経営の原理原則を理解し、よい経営を実践できる人間になりたい」と一層思うようになり、BCGの門を叩きました。自らのキャリアを通じて世の中にどう貢献したいかを改めて考えた結果ともいえます。

BCGに入社して約15年になりますが、常に新しい挑戦が目の前にあるエキサイティングな日々を過ごしています。クライアントが抱える課題は非常に複雑で、解を導くのは容易ではありません。しかし、多くの課題に取り組み、経験を積むにつれ、経営を見る眼が磨かれていくことを実感しています。

入社後のターニングポイントはどこでしたか?

これまでにさまざまなプロジェクトに関与させて頂きましたが、最初から解が見えていることは一度としてなく、そういう意味ではこれまで関わってきたプロジェクト一つ一つが何らかの成長機会となっているといえます。パートナー(一般企業でいう取締役)となった現在もそれは同様です。

なかでも印象深いプロジェクトの一つが、コンサルタントとして駆け出しの頃に担当したゲームソフトウェア会社のプロジェクトです。当時のゲーム業界は、1つのメガヒット作品が企業の業績を大きく左右するビジネス構造になっていました。しかし、メガヒット作品を生める天才クリエイターはごく少数で、ゲーム会社の将来のカギを握るのは、天才クリエイターの質と量といわれていました。クライアントの依頼は、そのゲーム業界のビジネス構造に由来した難題で、「組織として天才クリエイターを再生産する仕組みをどう構築したらいいか」というものでした。今振り返っても、経営の根本について考えさせられる課題だったと思います。

プロジェクトの中で、ヒット作を世に出し大きな成功を収めた伝説の天才クリエイターの方々に直接インタビューをするという貴重な機会をいただきました。そこで衝撃的だったのは、彼らは単にゲーム作りのセンスがあるだけでなく、さまざまなことを深く洞察し判断する経営的基礎能力が身についているということでした。正直、当時の私よりも彼らの方が、ビジネスに対する体感的理解も深く、物事の本質を深く捉えていました。世の中には、さまざまなところにビジネスの達人がいることを知るとともに、経営とは何かを改めて考える機会となりました。

パートナーとなった現在では、クライアントの経営トップの悩みを直接伺いながら、二人三脚で長期にわたり改革に伴走する機会が多くなってきました。経営者の悩みには、さまざまなトレードオフが存在し、唯一の正解がない。一方で、経営トップの意思決定が会社の行く末を大きく左右する。プロジェクトで携わった企業が成功し、成長していくことは、私がキャリアをスタートしたときの「世の中を良くしたい」という想いに通じるところです。会社を良くすることで従業員の満足度が上がり、ひいてはご家族も幸せになる。そのようなことを実現できるのが経営で、だからこそ経営者をサポートしたい、と改めてこの仕事への想いを強くしています。

現在の仕事内容を教えてください。

lcms03_03金融業界担当のパートナーとして、日々、クライアントの経営層の方々とお会いし、その悩みを伺い、課題の本質まで踏み込んだ解決策について考えています。クライアントから頂く課題は難しく、すぐには解が見えないものばかりですが、BCGがグローバルで蓄積しているノウハウと人材を最大限に活用し、経営層の方々と真剣勝負で議論していけば、解けないものはないと自負しています。

経営トップの悩みについて検討する際に極めて重要なことは、それが真の課題かどうかを突き詰めることだと考えています。あるクライアント経営者が「今、私たちには次世代経営人材が不足している」と問題提起されたとしましょう。その時に私たちがまず行うのは、「次世代経営人材とはどのような人材を指すのか」「その課題の背景にあるのは何か」といった議論を通じて課題の背後にあるメカニズムを深掘りすることです。議論を進めていくと、実は次世代経営人材の不足は表面的な現象の一部にすぎず、真の課題は組織のカルチャーやマーケティング、場合によっては経営者自身にあるということが分かってくることがあります。そうなると、私たちが取り組むプロジェクトの内容は全く違うものになります。このように議論を積み重ねて本質的な課題が何なのかを特定することが肝要で、コンサルタントには本質を見極める洞察力が求められています。

しかし、いくら課題の本質を見極めることができても、クライアント自身の変革を通じて目に見える、数字に表れるインパクトを創出できなければ意味がありません。経営層の方々との議論で課題や解決策について合意できた後は、それをベースにクライアントの事業や組織を実際に変えていく支援を全力で行っています。変革を推進するためには、机上のロジックだけではなく、人を巻き込む力や共感する力が重要になってきます。私たちがクライアント経営層にトレーニングを行って対応能力を上げて頂く事もありますし、自ら前面に出て、現場の方々とのコミュニケーションを重ね、粘り強く改革を進めていくこともあります。コンサルティングは、恐らく多くの方々のイメージよりもずっと泥臭い仕事です。

2030年のバリューを今考えることが重要

「デジタル変革期」をどう見ているのでしょうか?

lcms03_04近年のデジタル技術をコアにしたテクノロジー領域における急速な進化には目を見張るものがあります。今後、企業経営や業界構造のあり方を抜本的に変えていく大きな力となることは間違いありません。デジタル技術を活用することで、異業種のプレーヤーが、全く新しいビジネスモデルを持って参入し、既存の業界のあり方を根本から変えていくことが容易に実現できるようになります。アメリカのタクシー業界におけるUberが良い例です。こうした「破壊的(Disruptive)」な動きをする新興企業、破壊的プレーヤーの台頭は、既存の「レガシープレーヤー」にとって、大きな脅威となっています。

この状況をもたらしているのは、AI、ビッグデータ、IoT、それから私が担当する金融業界でいえばブロックチェーンといった最新のテクノロジーです。こうした技術が、今まで不可能だったことを可能にし、画期的なサービスの実現を促しています。今後、これらの技術が世の中をさらに大きく変える可能性は十分にあります。例えば、ブロックチェーンのインパクトは非常に大きく、金融決済のあり方を抜本から変革する力を持っています。しかし、ブロックチェーンによって、金融決済の世界が実際にどうなっていくのかはまだ分かりません。不確実なことが多いのもデジタル変革期の特徴と言えるでしょう。

BCGはこのデジタル変革期に企業をどうリードしているのでしょうか?

私たちは、デジタルを軸とした全社変革、「デジタルトランスフォーメーション」のロードマップを策定し、経営層に伴走することで、デジタル変革期に特有の課題にアプローチしています。そのためにはまず、デジタルを活用して何をしたいのかを特定する必要があります。異業種への参入をしたい、既存の領域を守りたい、他にもさまざまな目的が考えられますが、まずそれを特定した上で、「どのような時間軸で、何をすべきか」を決めることが非常に重要です。デジタルにより新たな市場の開拓をめざす企業が、中国でのビジネス展開を検討しているとしましょう。その場合、中国で従業員を雇うのではなく、デジタルテクノロジーを最大限に駆使して、中国におけるEコマースのプラットフォームをつくるほうが合理的です。さまざまな障壁を飛び越えて、少ない投資で効率的な集客や販売ができるからです。もちろん中国のEC市場で競合優位性を築くのは容易ではありませんが、BCGにはグローバルネットワークとノウハウがあり、適切なロードマップの策定や実行を支援することが可能です。破壊的モデルを提供し、そのクライアントの既存の事業領域や市場を超えたところで破壊的プレーヤーになることを成功させた事例が数多くあります。

一方で、クライアントが「レガシープレーヤー」側だった場合、破壊的プレーヤーに対して反撃をしなければなりません。そのためには組織に新たな血を入れるなどして、今までにないケイパビリティ(組織能力)を身に付ける必要があります。そこで私たちは、クライアントに一体どのようなケイパビリティがなくてはならないのか、どのように戦っていけばよいのか、組織をどう変革していったらよいのかをアドバイスしています。特に最近多いのは、「CDO(最高デジタル責任者)職を新たに設けたい」というご相談です。CDOは、テクノロジーに詳しいだけでは務まりません。テクノロジーを活用して何ができるのか、今までの常識にとらわれないイノベーティブな視点で考える力が欠かせません。ほとんどの場合、そうした人材は外部から採用することになりますが、自社の戦略を鑑み、どのような人材が適任かをよく議論する必要があります。

また、BCGには「BCGデジタルベンチャーズ」というグループ会社があります。大企業と協業して、デジタル領域の新規事業やプロダクトを0から創りあげる専門家集団で、デザイン思考やエスノグラフィックリサーチなど、一般的なコンサルティングとは異なる手法を活用しています。彼らにプロジェクトに参加してもらうことで、クライアントの経営層の方々を強く刺激し、組織の変容が促されることも少なくありません。

いずれにしても、まずはクライアントがデジタルテクノロジーを使って何をしたいのかを明らかにすることが重要です。デジタル以外の課題と同様、課題の「本質」を見極めることがカギになります。その上で、どの程度のスピードでどのように会社を変えていくのか、どのような投資を行い、いつ誰を獲得する必要があるのかを決めていきます。そのロードマップをベースに、経営層の方々に伴走し、クライアントの組織変革を進めていくのです。

2030年はいったいどのようになっているのでしょうか?

2030年には、AIや自動運転技術、ブロックチェーン等の新しい技術が世の中を大きく変えている可能性が十分にあります。だからこそ、そこに向けて今何をしなくてはならないか考えなければなりません。例えば金融業界では、現在は1週間程度を要する融資の審査がたった数分で済むようになるかもしれません。また、ヘルスケア業界では近い将来、短時間で遺伝子解析検査ができるようになるのではないかと言われています。保険業界でも、AIが複雑な保険プランの中から、一人ひとりに最適なプランをすぐに見つけてくれるようになると予想できます。さまざまな分野で変革が起こる事はほぼ間違いありません。

しかし、こうした事態が進んだとしても、事業活動の全てがデジタル化されるとは考えられません。ビジネスでの人間同士のやり取りはなくならないはずです。それどころか、私はヒューマン・インターフェイスが差別化の大きなカギとなる可能性が高いと見ています。その状況を踏まえた上で、各企業は今から「何を自社のバリューとするのか」「そのバリューを強化するためにこれから何をすべきか」を突き詰める必要があるでしょう。審査が短時間で自動的に終わるとしたら、銀行の融資担当スタッフは一体何をすべきなのか。最適な保険プランを導き出すAIのプログラムが開発されたとき、保険の営業職員は何を価値として提供すべきか。その差別化の根本にあるのは人間同士の信頼だと思います。デジタル化が加速しても、だからこそ「ヒト」がこの先も重要な要素だと考えています。経営者には、このようなデジタル化を前提とした差別化やバリューを強化するため、10年、20年という先を見通す力がこれまでになく求められています。

パッション、インテグリティ、テナシティ

コンサルタントとして佐々木さんご自身が大切にしている事は何ですか?

lcms03_02私が大切にしている事は3つあります。1つ目は「パッション(情熱)」です。コンサルタントには、クライアントの組織をより良くしたいという熱い想いがなくてはなりません。なぜなら、クライアントの経営層にも現場の方にも、「クライアントを変革していこう」という私たちの本気度はおのずと伝わるからです。この想いを基盤としてクライアントとの間に十分な信頼を築けてはじめて、互いに腹を割った対話ができます。経営課題の本質に行きつくためにはクライアントへのパッションが絶対的に必要なのです。

2つ目に重要なのは「インテグリティ(真摯さ、誠実さ、軸をぶらさずに追求する姿勢)」です。特に変革の過程では、周囲の思惑に左右されず、正しい道すじからずれないように確認しながら進めることが欠かせません。どうすればクライアント企業を、そして最終的には社会を良くすることができるか、という本質的な課題を見失ってはならないのです。また、クライアント企業、そこで働く従業員、社会全体のwin-win-winの関係、三方よしの関係を一貫して追求することも大切です。

3つ目は「テナシティ(粘り強さ、不屈の精神)」です。最近流行している言葉で言えば、「GRIT(やり抜く力)」といってもよいかもしれません。諦めずに考え抜くこと、しつこく関わっていくこと、最後まで細かい部分をないがしろにしないコンサルティングを追求することが、プロジェクトの成否のカギを握っています。

BCGではどのような人材を求めていますか?

「考えることが好き」な人、ということが大前提にあります。BCGには、さまざまなバックグラウンドのメンバーがチームを組み、一丸となって議論し、考え抜き、思考や仮説を進化させていく風土があります。また、クライアント企業内で多くの人を巻き込んで変革を推進していくためには、人に対する興味も必要です。加えて、最近はビジネス環境が複雑化している背景から、スピーディーに本質にたどり着くために、IT知識や業界知識などの「専門性」が求められています。

その上で、自分がこの仕事を通じて何を実現したいのかという「想い」がなければ難しいと思います。これは先程のパッションに通じるところです。知的刺激が受けられそうだから、面白そうだから、グローバルだからといった理由だけでは、コンサルタントを長く続けるのは恐らく難しいでしょう。クライアントからいただく課題は難題ばかり。最初は解決できるかどうか必ず不安になるものですし、常に大きなプレッシャーの中でプロジェクトを進めていくことになります。このプレッシャーに打ち勝つには、強いモチベーションが欠かせません。現に、私の周囲を見る限り、何を成し遂げたいかが明確なメンバーほど成功しています。優れたコンサルタントは皆、クライアントのために何ができるかを24時間考えています。そうなる覚悟をもって飛び込んできていただきたいと思います。その覚悟があれば、専門性やネットワークは後からいくらでも身に付けることができます。

最後にコンサルタントを目指す方に向けたメッセージをお願いします。

いろいろと厳しいことを言いましたが、コンサルタントは、企業変革を介して世の中に貢献できる、その実感が持てる仕事です。大変なことはもちろんありますが、自身がクライアントに提供できるケイパビリティが日々向上している実感や、何かしら社会の役に立っているという喜びのほうが勝っているからこそ、私も今までコンサルタントの仕事を続けることができました。そうした仕事がしたい方には、是非BCGをお勧めします。

BCGは「Shaping the Future. Together.」というグローバルスローガンを掲げています。デジタルに限らず不確実性が高まっているビジネス環境の下で、BCGは、クライアント、さらには業界そのもの、そして社会を変革していくことに全力を傾けています。この理念に共鳴する方に是非入ってきていただき、一緒に未来を創っていきたいと思っています。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)

ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、世界をリードする経営コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな業種・マーケットにおいて、カスタムメードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力(ケイパビリティ)を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行っています。1963年に米国ボストンに創設、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年には名古屋に中部・関西オフィスを設立。現在では、世界48ヶ国に拠点を展開しています。

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