INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
ダイソン株式会社 杉山 祐子

マーケティング×経営 ~マーケティング戦略を語る Vol.16

ダイソン株式会社

ブランドマネジャー

杉山 祐子

「Dyson Supersonic™ヘアードライヤー」(以下、Dyson Supersonic)は、ダイソンが開発した初めてのヘアードライヤーです。「常識を変える」ヘアードライヤーで、具体的には「髪の輝きを守る」「速く乾かす」「バランス」の3つを実現しました。そのために、ダイソンはまったく新たなモーター「ダイソン デジタルモーターV9」を開発し、独自の「インテリジェント・ヒートコントロール機能」や「Air Multiplier™テクノロジー」を搭載しています。

公開日:2016年7月28日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

異例の高価格だが、売れ行きは順調

Dyson Supersonicは、どのような商品でしょうか?

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Dyson Supersonicを開発するにあたって、私たちはヘアードライヤーを根本から考え直しました。その結果、3つの大きな特長を持ったヘアードライヤーの開発に成功したのです。特長の1つ目は、過度の熱によるダメージを防ぎ、「髪の輝きを守る」こと。2つ目は、他のヘアードライヤーより「速く乾かす」こと。3つ目は「バランス」を重視した設計です。

日本では、この製品を2016年4月に発売しましたが、実は世界で一番早く発売したのが日本で、イギリス本国の発売は2カ月後の6月でした。日本市場への期待の大きさがおわかりいただけるかと思います。この後、アメリカや中国でも順次発売していきます。価格は48600円(税込)。ドライヤーとしては異例の高価格ですが、今のところ売れ行きは順調です。

なぜ過度の熱によるダメージを防ぎ、髪の輝きを守れるのでしょうか?

第一の要因は、Dyson Supersonicの送風温度が最初から低めに設定されているからです。風量、風圧が強いため、温度が低くても十分に髪を乾かせるのです。その上で、独自の「インテリジェント・ヒートコントロール機能」を搭載しました。Dyson Supersonicには1秒間に20回、発熱体(髪の毛)の温度を測るガラス球サーミスター(温度センサー)がついており、そのデータをマイクロプロセッサに送っています。そして、発熱体が一定以上の温度になったのを感知すると、マイクロプロセッサが風の温度を下げるのです。つまり、もともと温度が低いうえに、温度が一定以上に上がらないようになっているというわけです。加えて、マイナスイオンが静電気を抑え、仕上がりを良くしています。

髪を速く乾かせると聞きましたが?

cg_072_03コントロールされた風圧の強いパワフルな風を出せるからです。今、日本人が髪を乾かす時間は平均8分と言われています。ロングヘアになると、20分以上かける方も少なくありません。しかも、高温多湿の日本では、髪の毛を毎日洗う方が大半です。ヘアードライヤーの時間を短縮できれば、生活の質を向上させることができます。Dyson Supersonicは、ダイソン独自の「Air Multiplier™テクノロジー」で吸い込む空気の量を3倍に増幅。さらに、このドライヤーのために開発された新型モーター「ダイソン デジタルモーターV9」の高速回転が加わって、風圧・風量ともに強い風を送りだすのです。状況や個人差で乾く時間は大きく異なるので、一概にどのくらい短縮できるとは言えないのですが、ドライヤーを使う時間がだいたい半分くらいになったという声を多く耳にします。

バランスを重視した設計を実現できた理由はありますか?

デジタルモーターV9が500円玉くらいと極めて小さいため、ヘッド部分ではなく、ハンドル部分に搭載できたからです。一般的なヘアードライヤーは、ヘッド部分にモーターが入っているため、重心が安定せず、バランスを保つのが難しい、長時間持っていると手が疲れるという欠点があります。それに対して、Dyson Supersonicは、手に近いハンドル部分に小型モーターを持ってくることができ、バランスを良くすることができました。さらに、モーターをハンドルに移したことで、ヘッド部分の小型化にも成功しています。結果的に、軽く、使いやすく、腕の疲れにくいデザインを実現できたのです。

ヘッド中央部分に穴が開いているのはどのような効果があるのでしょうか?

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バランスを重視した設計もそうですが、ダイソンが開発する製品は、デザインの多くに機能的な意味があります。たとえば、従来のヘアードライヤーの欠点の1つに、風の吸い込み口からロングヘアの方の髪の毛を吸い込んでしまうということがあります。Dyson Supersonicのヘッド中央に穴が開いているのは、この髪の毛の吸い込みを防ぐためです。

また、コンセントの根元部分を太くしているのは、ヘアードライヤーはここから壊れることが多いからです。製品をより長持ちさせるために、コンセントの根元部分を強化しているのです。もう1つ、実はドライヤーは定期的な掃除が必要な製品ですが、掃除しているユーザーは決して多くありません。そこで簡単に掃除できる構造にするとともに、掃除を促すようフィルターに蓄積されたホコリ等の量を検知し、掃除をするタイミングをお知らせる機能もあります。

高価なドライヤーを買う層が一定数存在している

なぜDyson Supersonicを開発しようと考えたのでしょうか?

ダイソンは、エンジニアリングカンパニーです。扇風機・空気清浄器を既に発売していますが、この技術を応用して、今市場にあるヘアードライヤーの問題点をいかに解決できるかに注力して、製品開発をしてきました。また、この風量やデザインを実現するには、欠かせなかったのがデジタルVモーターの開発です。ここまで小型、しかも毎分110,000の回転をする強力なモーターが仕上がったからこその商品開発でした。最終的には103名のエンジニアが、50カ月をかけて完成させました。もちろん、製品化を進める際には、一般的なマーケティングプロセスを辿っていくのですが、最初は必ず技術からスタートする。これがダイソンの特徴です。

日本での売り上げが好調と聞きますが、課題はありますか?

私たちの目標は、プレミアムカテゴリーで25%のシェアを取ることです。発売開始からの2カ月については、目標をほぼ達成しています。成功の要因としては、ダイソンならではの製品力、全く新しい市場に参入するという世間の注目の活用、口コミを創出するプロモーションなどが挙げられます。

ただ、この製品が売れているのは、決してそうしたプロモーション活動の成果だけではないと私たちは考えています。日本は「美容大国」で、美容に価値をおく女性が多く、価格に見合う価値が感じられれば、高価なドライヤーを買う層が一定数存在しているのです。これまでの売れ行きを見る限り、この仮説は間違っていないと思います。とはいえ、もちろんシェア目標を持続的に達成していくのが簡単だとは考えていません。特に、潜在層のマインドセットを変えていく必要があります。

日本はダイソンにとって特別な市場

ダイソンらしさとは、何でしょうか?

cg_072_05先ほどもお伝えしたとおり、技術力が中心となった「エンジニアリングカンパニー」であることが一番の特徴です。さらに言えば、私たちは「問題点改良型」のビジネスを行っています。つまり、新たな市場を生み出すような製品を作るのではなく、掃除機、扇風機、ヘアードライヤーなど、すでに存在するカテゴリーの問題点を解決し、その市場に存在しなかった画期的な製品を提供するのが、ダイソンのやり方なのです。そのため、「対比広告」が多いのも私たちの特徴です。コンペティターに勝っている技術を積極的に打ち出すプロモーションで成功を収めてきたのは、多くの方もご存じのことだろうと思います。

それから面白いのは、ダイソンがCM撮影やパンフレット制作などをすべてインハウスで行っている点です。つまり、アートディレクター、Webデザイナー、カメラマンなどが社員として在籍しており、自社スタジオで撮影し、自社で広報物を制作しているのです。一貫したダイソンらしさを出すための工夫です。

ダイソンでの日本の位置づけは?

そもそも日本は、ジェームズ ダイソンが開発した世界初のサイクロン掃除機「G-Force」が初めて発売された国で、ダイソンにとって特別な市場です。現在も、イギリスやアメリカと売上トップを争っています。本国からの期待やプレッシャーが大きい分、日本としての意見が通る可能性も大きいのは、ブランドマネジャーとして働く上で確かなメリットです。

実際、私は2015年6月に入社したのですが、入社1週間でイギリスに飛び、3カ月間、Dyson Supersonicの製品開発及び発売戦略に関わってきました。その時点で主要な製品開発は終わっていましが、日本市場にも適した製品に仕上げるための変更には携われました。例えば、このドライヤーにはマグネット式アタッチメントが3種類ついていますが、これは私が要望したものです。「髪を乾かす」という行動において、様々な違いが国によって異なります。例えば、日本人の多くは髪が太く、多い。毎日髪を洗い、手ぐしで乾かすことが多いです。欧米人は髪が細く、髪を洗うのは2、3日に一度で、最初からブラシを使って乾かしていくという特徴があります。そんな中、手ぐし、ブロー、パーマヘア、など様々なニーズに応えられるように、3種類のアタッチメントを用意することになったのです。

臨機応変に対応できるかどうかが問われる

どのような社風ですか?

入社して1年足らずの私の感想としては、真面目で、普段は黙々と集中して仕事をしている方が多い印象が強いです。それから最も特徴的なのは、みなダイソン製品が大好きで、営業の方もスタッフの方も、その製品をどう見せるのがよいか、どう売るのがよいかを、日々各自の立場で考えています。そのため、皆さんプロモーションやマーケティングに大変協力的で、忙しくても相談に乗ってくれる方が多いのは嬉しい点です。

マーケティングに関して言えば、カントリー間の仲が良いのも特徴的です。CMや広報物が万国共通で、成功や失敗を共有しやすいことが大きいと思います。現在は、この製品の発売が日本が先行したため、次に発売する中国やアメリカのブランドマネジャーに成功要因や失敗要因などをシェアしています。

どんな方を求めていますか?

良くも悪くも、方針がスピーディーに変化していく会社です。たとえば、週ごとに結果を追いながら、マーケティングプランの成果が出なければ、すぐに違うプランを検討します。Dyson Supersonicに関して言えば、発売後予想以上に反響が大きかったため、最大の可能性を求められるようなプランに変更している最中です。スピード感があり、常にベストな結果を求めるために、追求し続け、柔軟な考え方ができる方が活躍できると思います。ジェームズ ダイソンの思想に共感でき、ダイソンの製品が好きである方と、共に成長しながら楽しく働きたいですね。

ダイソン株式会社

1978年のスタートから5年と5127台の試作品を経て、ジェームズ ダイソンは世界初のサイクロン掃除機「G-Force」の開発に成功しました。「G-Force」が初めて売られたのは最新テクノロジーへの関心が高い日本でした。そして、「G-Force」の売り上げをもとに設立されたのがダイソンです。ダイソンは、他が軽視する日常の問題を解決する会社です。掃除機の紙パックが目詰まりをおこし吸引力が低下することや、扇風機の風がムラを作っていることに着目し、これらの問題を解決しました。現在、ダイソン製品は75カ国で販売されています。ダイソンは、一人のエンジニアのアイデアからスタートし、今ではグローバルで従業員6000人、そのうち約3分の1がエンジニアや科学者であるテクノロジーカンパニーへと成長しました。
しかし、そこで立ち止まって現状に甘んじることはありません。今後もエンジニアと科学者を増やし、新しいアイディアから革新的な製品を生み出します。

ダイソン株式会社
ブランドマネジャー
杉山 祐子氏:

大学卒業後、日本の家電メーカー、外資消費財メーカーでのBrand Manager等を経て、日本ロレアルにて高級化粧品のProduct Manager、Group Managerを経験。MBA取得。2015年6月よりダイソンへ入社。Brand Managerとして日本市場におけるブランド戦略を牽引。

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