INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社 齋藤 貴

成長する企業のビジネス戦略 Vol.1

リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社

代表取締役社長

齋藤 貴

一橋大学卒業後、東レ株式会社に入社。エイボン・プロダクツ株式会社に転じ、経営企画部長として経営戦略を作成するなど、経営者としての基礎を築く。ロエベ・ジャパン株式会社でマーケティング・ディレクターとして頭角を現すと、数々の外資系企業で要職を歴任。ブランドマーケティングのプロフェッショナルとして、新規ブランドの立ち上げ、および既存ブランドの立て直しに次々と成果を残す。2010年8月よりリーバイ・ストラウス ジャパンに入社。同年10月、代表取締役社長に就任。

公開日:2014年8月11日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

ブランドマーケティングとは、もともと持っている強みを掘り起こし、その価値を磨き直すこと

これまでのキャリアについて、お聞かせください。

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大学卒業後、東レでキャリアをスタートさせました。東レでは、企画、営業と幅広く経験をつみ、ビジネスパーソンとしての基礎力を大いに鍛えてもらいました。その後、エイボンにビジネスアナリスト・マネージャーとして転職し、英語でのコミュニケーションをはじめ、プレゼンテーション術やアメリカ流の経営手法、マーケティングを身につけ、ルイ・ヴィトン傘下のロエベ・ジャパンに転職しました。ルイ・ヴィトンの一度つけた価格は変えず、安売りなしで売切るフランス流のラグジュアリーマーケティングは、非常に刺激的で面白く、“価格に頼らない”“価格を下げない”売り方、本当のブランドマーケティングを、身をもって学びました。

その後、バリー・ジャパンやフランスの老舗ファッションブランドLACOSTEの株式会社ファブリカで社長を勤め、企画から生産、販売を指揮しました。バリー・ジャパンもLACOSTEも売上が縮小し、長期低迷の真っ只中でしたが、それまで積み重ねてきた経営手法、ブランディング手法を実践し、大きく方向転換を図ることで立ち直らせることに成功しました。

デニムのオリジン、リーバイス®にしかない「本物感」を提供する

その後、リーバイ・ストラウス ジャパンの社長に就任されましたが、当時リーバイス®はどのような課題を抱えていたのでしょうか。

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業績が悪化するブランドは、自社の一番の価値・強みを生かさず、ぞんざいに扱っているという共通点があります。リーバイス®もまさに、その状態に陥っていました。「リーバイス®が、世界で初めてのデニムである」。これは、誰にも動かせない事実であり、リーバイス®のauthenticity(本物感)は、ブランドの最大の強みです。ところが、私が社長に就任した当初、自社の顔であるリーバイス®501®は、量販店で山積みになっているような状況でした。当時は、リーマンショック後のデフレブームにより、他のあらゆる商品と同様、デニムも低価格路線での価格競争が激化している時期だったため、リーバイス®も安売り競争に参戦し、毎年大きな赤字を出している惨状でした。

当時は、どのブランドも価格を抑えることをに躍起になっていましたが、自らの強みを最大限に生かすためには、リーバイス®をそういった売り方とはまったく違うステージにポジショニングしなおす必要がありました。リーバイス®がお客さまに提供すべき価値は、購入時の「この値段でデニムを買える」という「値打ち感」ではなく、購入後に「本当に良いものを買った」と実感できる「満足感」です。リーバイス®を履くことの誇り、自分は本物を身につけているんだという自信を与えられるブランドにならなければ、と感じました。

リーバイス®の強みを生かすために、どのような戦略を打ち出したのですか?

それまで採用していたディスカウント戦略から、プレミアム戦略へと大きく舵を切りました。ブランドビジネスは、ファンをつくる仕事です。自社のアイコン商品である501®を安売りするようなブランドは、絶対にファンからリスペクトされません。すべてのデニムのルーツであるリーバイス®は、“クオリティの高いものを作り、きちんとしたサービスで売る”という王道のマーケティングをすべきだと考えました。

具体的には、着任後すぐに、市場にある501®の余剰在庫を1本残らず買い取るように指示しました。徹底的にやりましたから、半年後には、安売りされている501®は見かけなくなっていたはずです。その後、商品のクオリティを上げ、グレードアップさせた501®を市場に再投入すると同時に、「すべてのジーンズは、このリーバイス®からはじまった」をキャッチコピーに、リーバイス®のauthenticity(本物感)を前面に打ち出したプロモーションを行いました。その結果、リニューアル後の501®は1万円を超える高価格にも関わらず、多くのリーバイス®ファンから支持を得ました。それ以降、501®はセール時期でも値引きすることなく、ノンディスカウントを貫き通していますし、501®の売り上げが弊社の事業全体の安定化にも寄与しています。

プレミアム戦略へ転換することへの抵抗はなかったのでしょうか?

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リニューアルしてクオリティが上がったとはいえ、価格帯を上げてノンディスカウントで売ることには、社内から不安の声も上がりました。リーバイス®に限ったことではありませんが、ブランドの新しい方向性を打ち出すとき、社員たちは期待の一方で、大きな不安を感じてもいるでしょう。ですから、ブランドの再生にあたって大切なのは、ブランドがこれからどうなっていくかを鮮明にイメージできるように、社員たちに伝えることです。社員や販売スタッフたちには、リーバイス®が目指すプレミアムブランドとはどういうものなのか、目指すべきビジョンを共有するよう努めました。「今のままのディスカウント戦略では、リーバイス®のファンは作れない。価格に惹かれて購入していたお客さまが、一時離れてしまうとしても、価格の安さを競う市場とはまったく別のステージで勝負する。リーバイス®のauthenticity(本物感)を愛するファンの期待に応えるブランドに生まれ変わる」と。

私たちが目指すプレミアムブランドのあり方とは、自分の娘や息子が、「お父さん、お母さんはリーバイス®で働いているんだ」と友達に言ったとき、「かっこいい!」と言われるようなブランドであろう、ということです。リーバイス®は憧れられる存在でありたいのです。目指す姿が明確にイメージできると、プレミアムブランドになるために何をすべきか、何をすべきでないか、社員たちが自然と考えて動くようになるのです。アイコン商品を常に安売りしているようなブランドは魅力がない。サービスする販売スタッフも、店の内装や雰囲気も、しかるべきクオリティを保っていなければ、プレミアムブランドとは認識していただけない。接客方法や売上金額に細かい指示をするよりも、イメージできるビジョンを社内で共有することが大切なのです。

方向転換の結果、お客さまは新しいリーバイス®についてきてくださいました。そのことが、社員・販売スタッフの「我々がやっているプレミアム戦略は間違っていないんだ」、という自信に繋がったと思います。

リーバイス®は、デニムブランドからファッションブランドへ、そしてライフスタイルブランドへ

リーバイス®をプレミアムブランドとして立て直した今、次はどのような経営戦略を取ろうとお考えですか?

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501®を主軸とする定番デニムビジネスに加えて、シーズンごとに新鮮なスタイルを提案するファッションビジネスへ取り扱い商品を拡大させています。まずは足固めとして、シルエット、カラー、サイズを自由に選べる定番デニムのプラットフォームを整えました。全国のリーバイス®の店舗には、どんなお客さまがいらしてもベストな商品を提供できるよう、これらのコアデニムが取り揃えられています。

そのうえで今年からは、トップス、レディースファッションなど、流行を意識したアメリカンカジュアルウエアを展開しています。定番のデニムと、それ以外のファッションアイテム。この2つを並行させるハイブリッドな商品展開は、501®という揺ぎ無い定番商品を持つリーバイス®にしかできない、最大限強みを活かした戦略です。まだまだ踏むべきステップは多くありますし、ひとつずつ積み上げていく必要もありますが、中長期的にはさらに領域を拡大させて、バッグや靴、時計、アクセサリーまで展開するライフスタイルブランドにまで成長したいと考えています。

進化を続けるリーバイス®で活躍している人材とは、どのような人でしょうか。

まずひとつめは、会社が示すビジョンをいち早く共有し、自分の仕事に結びつけて行動できる人です。「プレミアムブランドとは、こういうことだ」と伝えたら、「じゃあこういうことをすればいいんだな」と行動に移す。具体的な指示を待つのではなく、会社が発信したビジョンを、自分の仕事の中で素早く実現してしまう人ですね。

もうひとつは、しっかりとした現場感覚を持っている人です。リーバイス®でいう「現場」とは、お客さまと商品が出会う店頭です。販売スタッフはどう商品の良さを伝えるのか、お客さまがどんなことを期待して来店するのか、販売スタッフとお客さまの間でどんな会話が生まれるのか。そういった具体的なシチュエーションやそのときのお客さまの気持ちまでイメージして、店頭でのプロモーションを考えられるかどうかで差が大きくつくのです。概念的なアイデアに留まらず、店頭のオペレーションまで落とし込まなければ、そのプランは実効性を持ちません。リーダーやマネージャーは課題を解決するためにいるのです。ですから、現場感覚を持っていない、本質を突いていない、ソリューションになっていない提案は何度でもボツにします。その意味では、厳しく感じることもあるかもしれません。しかし、それだけやりがいもあり、どこでも通用する市場価値の高い人材になるためにインプットをするには、申し分のない環境だと思います。

リーバイス®が求める人材像を教えてください。

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まずリーバイス®が大好きなことです。これは絶対条件です。そして商品知識があること。商品知識についてはリーバイス®ファンのほうがよく知っていますよ。自分で自分に合う商品を吟味し、自分で購入しますから。ですから社員にも同じことをしてもらいたい。その為ユニフォーム価格としてかなりの低価格を設定しています。試着して自分にあう1着を探す過程で商品知識はついていきます。商品の知識を詰め込むトレーニングを行うより、よほど効果があります。販売スタッフを見ていても、お客さまに説得力のある説明ができている商品は必ず自分で買っていますね。

そして会った瞬間に感じがいい人です。お客さまが店舗に入った瞬間に「感じがいいな」と思うのと同じです。ブランドは「快」をどれだけ作り出して提供するかが大切です。「快」を提供するには自分自身がハッピーでないといけません。そういった「人となり」は会った瞬間にわかります。人は「清く楽しく美しく」あることが大切だと考えています。「清く」は正直であること。そして何かを継続するには「楽しく」ないと続きませんし、「美しく」勝つことにこだわる。そうある為には理屈ではなく感性が重要です。物事にはそれぞれ推進力となるポイントがあります。感性を磨き、その感覚に正直でいれば直感的に「これをやるとうまくいく」というポイントが見えますし、それをどう動かしていけばいいかわかります。また、逆になにか違うと違和感を感じます。そこで面倒くさがったり場の雰囲気を壊したくないといった「大人の感覚」を捨てて正直に「なぜ」を考えることによってそれをどう取り除けばいいのかがわかるのです。こういった感性を大事にできる人に来てもらいたいですね。

最後に、転職を考えている方にメッセージをお願いします。

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社長になるまで、私にとって会社は、あらゆることを実学できる最高の学びの場でした。転職はキャリアアップと捉え、足りない部分を補い、新しい知識を吸収し、得意なことに磨きをかけることで、ビジネスパーソンとしての自分を形づくってきました。マーケティングも、経理も、企画も、経営戦略も、商品開発も、すべて会社の仕事を通して実学で学んだことばかりです。

私の経験から言うと、40代後半からが、一番仕事が面白い時期です。それまで積み重ねてきた経験や知識をフルに活用して、会社の最前線でマネジメントを張る世代になってくるからです。この世代までに、多くの経験、失敗を積み、自分の中にどれだけ多くの引き出しをつくって、有用な武器を準備しておけるかが、マネジメントする立場になってからどれだけ活躍できるかの分かれ目になるのです。それまでは自分のインフラを整える下積み時期なんだ、と腹を括って地道にやっていくほうが、結果的にはビジネスパーソンとして成功すると思います。基礎がしっかりしていれば、成長の角度が大きくなります。年齢が上がるほど決定的に、知識や経験のインプットをしていない人との差は開いていきます。

もうひとつ、弊社に限らず、外資系企業を目指す方には、「夢」ではなく「志」を高く持つことを奨めます。こんなビジネスパーソンでありたい、こんな仕事を手がけたい、という「志」は、自分なりに日々実現させていくことができます。思い描く“ベストな自分”を追求する高い志は、日々仕事をする上での強い推進力となります。そうして仕事をしていくと、徐々に自分なりのシンプルな成功のフォーマットができてくるはずです。それを遂行すれば自然と結果がついてくるような、自分なりの勝ちパターンです。いいプロセスを重視して、いい仕事をしていれば、必ず結果はついてきます。

リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社

ブランドマーケティングとは、もともと持っている強みを掘り起こし、その価値を磨き直すこと これまでのキャリアについて、お聞かせください。 大学卒業後、東レでキャリアをスタートさせました。東レでは、企画、営業と幅広く経験をつ...

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