INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
日本マクドナルド株式会社 足立 光

成長する企業のビジネス戦略 Vol.24

日本マクドナルド株式会社

上席執行役員 マーケティング本部長

足立 光

一橋大学商学部卒業。P&Gジャパン(株)マーケティング部に入社し、日本人初の韓国赴任を経験。ブーズ・アレン・ハミルトン、及び(株)ローランドベルガーを経て、ドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケル(株)に転身。2005年には同社社長に就任。赤字続きだった業績を急速に回復した実績が評価され、2007年よりヘンケルジャパン(株)取締役 シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。(株)ワールド 執行役員 国際本部長を経て、2015年より現職。

公開日:2016年10月11日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

立て直しのプロフェッショナルになる

日本マクドナルドに入社するまでのご経験を教えてください。

cg_079_02大きくまとめると、大学卒業後、まずP&Gで経験を積んだ後、戦略コンサルタントとしてブーズ・アレン・ハミルトン、ローランドベルガーの2社で更に経験を積みました。次に、世界的化学品メーカーであるヘンケルで10年ほど、その後、日系アパレルメーカーのワールドを経て、2015年に日本マクドナルドに入社しました。

私はゲームが好きなのですが、働き始めてから一貫して、「仕事はシミュレーションゲームとほぼ同じ」だと感じてきました。どの職場でものめりこんで仕事をするので、労働時間も長くなってしまうのですが、それが苦であると思ったことはありません。むしろシミュレーションゲームと同じように、課題を設定し、解決方法を考え出して、解決していくプロセスが楽しくて仕方ありませんでした。また、仕事がうまくいかなくてストレスを感じることも滅多にありません。それは、アンコントローラブルなこと、例えば天気や為替の変動や経済危機などですが、そのようなことは考えないようにしているからです。自分ができる範囲で対応していけば、ストレスを溜めることはありません。P&G時代、韓国事業を立て直すために2年間たった1人の日本人として韓国P&Gに赴任しました。韓国のメンバーたちと話し合いを重ねながら仲良くなり、さまざまな改善策を進め、「さあこれから成果が出るぞ」というときにアジア危機が訪れて、すべてがいったん白紙に戻りました。しかし、それは私にはどうしようもないことです。半年もすると韓国経済が回復を始め、私の打った施策の効果も少しずつ出てきて、最終的には韓国の担当ブランドのビジネスを立て直すことに成功しました。実際にビジネスが回復したのは私が韓国を離れた数か月後でしたがこれは立派な成功例だと思っています。

P&Gを退職して戦略コンサルタントになったのは、MBAに行かなくても、MBAに近い体験ができるのではないかと考えたからです。実際、経営に関する幅広いことを短期間で集中してインプットすることができましたし、さまざまな企業の全社戦略、海外戦略、マーケティング戦略、コスト削減計画などに触れることができ、入社前に思っていた以上の「濃い」経験ができたと感じています。

なぜ戦略コンサルタントの次に、ヘンケルを選んだのですか?

cg_079_04次にヘンケルを選んだのは、世界的に有名な会社なのに、当時の日本ではビジネスが行き詰まっていたからです。いわゆる「ターンアラウンド(再建)」期にあったのです。P&Gの韓国赴任や戦略コンサルタントの時代にもうすうす感づいていましたが、このあたりで自分が「立て直し(再建)屋」であることを明確に意識しました。何より自分自身が、低迷気味だったビジネスを復活させていくのが、面白くてたまらないのです。

まずは、ヘアケア・ヘアカラー製品を扱うシュワルツコフヘンケルの社長に就任しました。ここではじめて、マス・マーケティングのP&Gとは一味違う、ニッチ・マーケティングをできたのは良い経験になりました。また、経営者としてコスト削減や営業再編などを実践できたのもプラスになっています。2007年にプロフェッショナル事業(ヘアサロン向け)の責任者を兼任してからは、当時はまだ珍しかったFacebookアプリや3Dアプリをいち早く開発するなど、独自の施策を次々と打ち出して、急速に業績を回復させていきました。同時に、カンボジアのストリートチルドレンを美容師としてトレーニングし、自国で独立を促すプログラムを開始するなど、社会貢献事業などにも力を入れました。

ヘンケルジャパンの経営幹部を経て、2011年からはコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括しました。このときは、特に東南アジアの国々が、一見似ているようで、実は一つずつかなり違うことを痛感しました。「サロン用シャンプー」というコンセプトがない国があったり、主力商品が異なる国があったりと、一律の横展開ができないのです。ローカライズの難しさを知りました。一番重要だったのは採用で、コスメティック業界、ヘンケルという会社、各国の文化・風土という3つの要素のうち、2つをよく知っている優秀な経営者と経営幹部さえ雇うことができれば、ビジネスをうまく回せることを学びました。

続いて、ワールドにも立て直しのスペシャリストとして入社しました。ここでは、国際事業の立て直しと本社のスリム化という2つの目的を持って入社し、その役割をほぼ果たしたところで退職しました。そして、次の立て直しの場を求めて、日本マクドナルドに入社したのです。2015年当時、日本マクドナルドは数年間も売上が落ちていて、過去最大の赤字になるなど、まさに「どん底」にいました。その状況が、私にとっては大きなチャンスに見えたのです。それに、私は昔からずっとマクドナルドが好きですから、その立て直しに貢献できたら嬉しいという想いを抱いて、久々のマーケティング責任者として入社を決めました。

より目立ち、より楽しいプロモーションを

日本マクドナルドのマーケティング戦略をどのように変えたのですか?

cg_079_03端的に言えば、より目立ち、より楽しいプロモーションに変えていっています。なぜかといえば、マイナス成長が続いていた間、マクドナルドはずっと安全策を取っていて、あまりうまくいっていなかったからです。例えば、お客様からは「もっと健康的なメニューを作って欲しい」というご要望がよく届きます。それをそのまま受け取って、健康的な新商品や期間限定品を生み出していたのです。それは、社内外の誰からも文句が出ない「安全策の商品」ですが、安全策であるがゆえに目立たず、状況を変えるだけのインパクトはありませんでした。

実は、多くのお客様は、マクドナルドに健康的であることよりも、おいしくて、楽しい商品、ワクワクするような商品を求めているのです。メインの新商品に、マクドナルドらしい、おいしそうでワクワクするものを用意して、より目立つ広告、より楽しいキャンペーンを打つことが最も大事なのです。全体的にこうした方針に変えてから、ビジネスが上向いてきました。

他にも、方針を変えた点があります。それは、発売前のマーケティングに注力することです。なぜなら、新商品発売後、1週目の売れ行きが成否を決めるからです。今は口コミで情報が広まる時代。特に短期間勝負になる期間限定商品の場合、初週の伸びがなければ、爆発的な成功を収めることはありません。最近で言えば、「グランド ビッグマック」は、大相撲の白鵬関をアンバサダーとして起用するなど、発売前のマーケティングに力を入れて大成功を収めた例です。実は、グランド ビッグマックは、発売前に社内で大反対を受けました。価格が高くサイズが大きいため、女性やお子さんに売れないのではないかと考えられたからです。しかし、グランド ビッグマックこそ、お客様が本当に求めている楽しくてワクワクする商品です。その商品を、白鵬関が登場するインパクトの大きな広告キャンペーンに乗せてお伝えすることで、多くの方の話題になることができ、めでたく大ヒット商品となりました。

一方で、「信用」を高める施策も重視しています。というのは、マクドナルドを含む大企業に対しては、特に理由もなく、疑念を持っている方が多いからです。そこで、一般の方々に安全性を確かめていただいたり、料理人の方に安全性を語っていただいたりといった広報キャンペーンを行って、安全な食材であることを伝えています。また、単に安全なだけでなく「おいしい」ことをアピールするために、「danchu」や「食べログ」など、おいしいものを探している方々が見るような媒体への露出も始めました。こうした施策を通して、ブランド力を高めることも大切だと考えています。

話題の「ポケモンGO」とのコラボレーションについてお聞かせください。

cg_079_06あのコラボレーションはまったくの偶然から立ち上がったものです。というのは、私の友人ネットワークの中に「ポケモンGO」の中心人物とのつながりがあって、たまたまお会いする機会があったのです。私は当時、ポケモンGOのデモを見せて頂き、「これは絶対に当たる」と確信を持ちました。なぜかというと、冒頭にも触れましたが、私はゲーム好きで、「ポケモン」のファンが日本にどれほど多いのかはもちろんのこと、ポケモンGOの下敷きになっている「イングレス」というゲームでよく遊んでいて、イングレスに根強いファンが多いこと、また他社が「イングレス」を使ったマーケティングで実績を出していることもよく知っていたのです。ですから、ほぼ私の一存で、すぐさまコラボレーションを決断しました。そして、2016年7月から、日本のマクドナルド全店が、ポケモンGOの唯一のパートナーとして、「ジム」または「ポケストップ」となりました。

このエピソードから言えることは2つあります。1つは、リスクを取ることの重要性です。ポケモンGOとのコラボレーションは、おそらく多くの人には、リスクの大きなチャレンジだと思われたでしょう。少なくとも皆が納得するアイデアではなかったと思います。しかし、皆が納得するような「安全なアイデア」は、どうしても目立たないものになりがちです。消費者調査を重視するマーケターは多いですが、消費者調査からは斬新なアイデアは出てきません。大事なのは、自分が良いと思ったアイデアを、思いきってやってみることです。

もう1つは、世の中をよく知ることの重要性です。もし私がイングレスやポケモンのことを知らなければ、このコラボレーションはなかったでしょう。マーケターにとっては、何が流行しているか、世界がどのように動いているかについて、常にアンテナを張り巡らしていることが大事なのです。

お客様をもっと巻き込んでいきたい

今後、チャレンジしたいことはありますか?

cg_079_05圧倒的に面白いことを仕掛けたいと思っています。すでにいくつか新たなプロモーションやアプリ施策などを検討しています。特に推進したいのがお客様を「巻き込む」ようなアイデアです。お客様と一緒に考えたり、お客様に参加していただいたり、お客様に語っていただいたりすることを狙った施策を行おうと考えています。例えば、2016年のはじめに、ポテトにチョコをかける「チョコポテト」を発売しました。これはお客様に自ら、ポテトにチョコをかけていただく商品で、味は賛否両論がありましたが、それも含めてかなりの話題となりました。これはお客様自身の手を使っていただくという意味でも、多くのお客様に語っていただくという意味でも、巻き込み系の成功例と捉えています。

同僚として、どのような方を求めていますか?

3つの能力を求めたいと思います。1つ目はマクドナルドが好きなこと。社員は全員マクドナルドが大好きです。新たに入社する方も、マクドナルド好きでなくては、ついてこられないと思います。2つ目は、自分の意志を強く持って、アイデアを実行できること。先ほどからお話ししているとおり、良いと思ったことはリスクを背負って実行することが大切で、それができる方を必要としています。3つ目は、ピープルマネジメントが得意なこと。マクドナルドはロジックだけでは動かないタイプの社員が多いところです。マーケティング施策を成功させるためには、ロジカルに説得するだけではなく、チームの皆に気持ちよく同じ方向に動いてもらうことが大切になります。そのためには、周囲を楽しませる力、仕事以外の部分で仲良くなれる力、いざという時に情熱を見せられる力が必要です。

マクドナルドには、マーケターにとって大変な魅力があります。日本人のほぼ全員がブランドを知っているだけでなく、多くが近所の店舗の場所を知っており、全国で毎日、数百万人ものお客様に御来店いただいています。プレスリリースを出すだけで、新商品のほとんどをニュースに取り上げていただけます。結果として、社外の方々から「新商品が出ましたね」「あの商品、好きです」とよく言われます。しかも、新商品は毎月2?3つも出ますから、自分が考えたマーケティングを実践するチャンスは無限にあります。それに、私も入社して驚きましたが、自由度が大変高い会社です。海外によく行く方ならご存知だと思いますが、マクドナルドは国によって商品ラインナップがかなり違います。各国に大きな裁量権が与えられているのです。おそらく、他では滅多に巡り会えないようなマーケティング環境です。こうした素晴らしい環境で働いてみたい方と、一緒にアイデアを語り合える時を楽しみにしています。

日本マクドナルド株式会社

マクドナルドは、クイックサービスレストランとしての最高の店舗体験の提供により、お客様にとって「お気に入りの食事の場とスタイルであり続けること」をミッションとします。そしてQSC&V(Quality品質,Serviceサービス,Cleanliness清潔さ,Value価値)をレストラン・ビジネスの理念としそのミッションを達成します。

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