INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
レノボ・ジャパン株式会社 留目 真伸

成長する企業のビジネス戦略 Vol.12

レノボ・ジャパン株式会社

代表取締役社長

留目 真伸

総合商社、外資系戦略コンサルティング、外資系ITでのマーケティング統括、製造小売での企業買収・統合業務を経て、2006年レノボ・ジャパンに入社。2011年からは、NECパーソナルコンピュータの取締役を兼任。
レノボ・グループ本社(米国ノースカロライナ)の戦略担当部門のエグゼクティブ・ディレクターを経験し、レノボ・ジャパン株式会社執行役員専務に就任。2015年4月より、レノボ・ジャパン株式会社代表取締役社長およびNECパーソナルコンピュータの代表取締役執行役員社長、レノボ・グループ バイスプレジデント。

公開日:2015年6月1日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

日本人のアイデンティティを持ってグローバルで働く

これまでのキャリアについてお聞かせください。

it_034_02新卒時は漠然と「大きな仕事がしたい」という気持ちで日本の総合商社に就職し、発電プラントの海外プロジェクトに従事していました。主に国内の重電メーカーの製品をアメリカや東南アジアに販売する仕事です。この時期に日本の社会人としての基本を叩き込んでもらえたと思います。それは立ち振る舞いだけでなく、考え方、モチベーションの持ち方、価値観など、日本の組織人としてのアイデンティティです。後に外資系の会社に移り、グローバル企業の一員として働くことになるのですが、日本の企業で働いた経験は、顧客企業をはじめパートナーシップやM&A等において携わる日本の企業や組織の動き方、そこで働く社員の気持ちを理解できるという点でとても役に立っています。また、それはグローバル・チームで働く上でも強みになっています。

数年間商社で働いたあと、自分にとっての「大きな仕事」の定義が変わり、「経営」に携わりたいという意識が強くなり、外資系戦略コンサルティングファームに転職しました。当時 若くて勢いのある会社で、多種多様な業界のプロジェクトを経験することが出来ましたね。ただ、戦略コンサルティングは経営そのものではないんですよね。戦略コンサルティングの経験を活かし、事業会社で自ら経営の核となる意思決定を行いたいと考え、外資系IT企業に転職し、マーケティングや営業戦略を担うようになりました。初めは、なかなか自分が考えたプランが完遂されずに苦労しました。組織には実行できることとできないことがあり、実行能力とスピードを見極めた上でプランを組み立てていくことが大切なのだと気付かされました。また、人の集まりである組織を動かしていくには、コミュニケーションの取り方、モチベーションの高め方といった、人に関わる能力が極めて大切であるということも学びました。プランを立てるだけではなく、自らも実行し、人にも実行してもらい、最終的に結果を出していくところまでやって初めて意味があるのだということを実感しました。

その後、もう一度日本の企業で働きたいと思い、製造小売業に転職しました。そこで担当したのは、企業買収や統合後のオペレーションです。そのとき学んだのは、統合する双方の企業にはそれぞれアイデンティティがあり、その違っている部分にこそ成長の可能性がある。ただ効率化・同質化させるのではなく、1+1=3にすることが理想的だということです。お互いのいいところを残しながら相乗効果を上げていくというシナリオを作ることが、様々な組織で仕事をしてきた自分の使命だと思いました。

その後、入社されたレノボではどのような仕事をされていたのですか。

it_034_03以前一緒に働いた方とのつながりで、レノボに入社することになりました。レノボは、アメリカのノースカロライナ州モーリスビルと中国北京とに本社を置くテクノロジーカンパニーです。今でこそ、レノボはPC市場で世界NO.1、NECレノボ・ジャパングループも日本でNO.1の会社ですが、私が転職した2006年はIBMからPC事業を買収したちょうど1年後で、まだまだ困難な状況にありました。そこに、日本における戦略の立案や、マーケティング、スタッフ部門など、オペレーションを統括する立場で入ったのです。日本に長く根付いていたIBMの一事業を中国企業が買収したということで、国内でのリブランディングも必要でしたし、事業の効率化もしていかなくてはならない段階。つまり、事業の統合と再生を同時に行うということです。入社してまず行ったのは、経営の効率化とスリム化です。サプライチェーンを統合して効率を上げたり、バックオフィスの機能を大胆に中国の大連に移行して人件費を抑えたりしました。リストラも行いました。事業再生はなかなかスムーズに進まず、とても苦労しました。しかし、厳しい状況が続きながらも、私はこの会社は絶対によくなると信じていたのです。レノボには、1992年にIBMが発売した「ThinkPad」という製品があります。これは日本の大和研究所というところで日本人によって開発されたものですが、製品の研究開発・設計の部分で、使う人への気配りや、繊細さ、正確さなど日本のものづくりならではの強さが集約されています。そのような素晴らしい製品なら、オペレーションさえきちんと整えれば売れないはずがないと思ったのです。また、欧米の企業とアジアの企業が一つになったレノボという会社は、今後のグローバル企業の先進事例になると感じていました。その確信が私のモチベーションのひとつでした。

事業の統合と再生を終えた後、営業統括という立場で営業部門に移りました。もともとIBMのパソコンのビジネスは自社の営業マンが大企業を中心に販売活動を行うというスタイルが中心でしたが、今後 中堅・小規模の法人や一般消費者など、多くのお客様にレノボの製品を販売していくために、販売代理店のネットワークを拡大していきました。また、その際、販売代理店とお互いの戦略を理解した上で、本当にWin-Winのパートナーシップを築いていくことを心がけました。

新たな体制に変えるときに活かされたのが、日本企業で働いていた経験です。例えばアメリカの企業は中央集権でトップダウン的なところが多く、本社同士で協議してプログラムや目標、アクションを合意すれば、そのまま指示が落ちて現場が動いてくれます。しかし、日本の企業ではトップ同士の協議でアクションを決定しても、その指示はなかなか現場まで伝わらないですし、伝わったとしても現場は現場で違う意思を持って動くことが多い。背景にあるのは、個人ベースの売上によって大きく変動することのない給与制度、さらに、短期的なインセンティブを重視しないという文化でしょう。そこで上から「本社の戦略として、レノボの製品を売って下さい」と指示を出すだけではなく、販売拠点やエリアで力のあるリーダーの心を掴むという戦略を立てました。日本人には短期的なインセンティブよりも、義理人情を重視するという性質があります。中長期的な信頼関係を築くことが大切になってくるのです。そこで、私達はパートナーとしっかり顔を突き合わせて、日本の市場やビジネスに対する考え方や、提携することで生まれる将来的なメリットなどを説明して回りました。そして、信頼を得ることができてからは結果がどんどん出てきて、いいサイクルで回り始めたのです。グローバルのCEOの前で日本のやり方をプレゼンテーションする機会にも恵まれました。

多様性を大切にすれば、お互いの強みを引き出すことができる

NECとのPC事業の統合も手がけられましたが、いかがでしたか。

it_034_042011年からNECとのPC事業統合のプロジェクトが始まりました。そこで、NECパーソナルコンピュータの取締役を兼任し、統合プロジェクト全体を統括することになったのです。日本国内でトップシェアを誇るNEC。その企業とのM&Aのプロジェクトに携われることは非常に誇らしいことです。実際始めてみて、とても大変なプロジェクトだとわかりました。レノボとNECでは組織の形態がまったく違うのです。レノボは研究開発から製造、物流、サービスといった機能別組織と、地域別組織が交差するマトリックス型組織。一方でNECのPC事業はNECパーソナルコンピュータ(当時はNECパーソナルプロダクツ)というひとつの会社にコンパクトに集約されていたのです。レノボのグローバルの機能別組織の役員は日本のビジネスを知らないので、スタートから一つの組織として動けるようオペレーションをすぐに統合するように、という困難な要求をつきつけてくる役員もいました。私はレノボの機能別組織のオペレーションをすぐに導入してしまうと、日本市場に対する戦略が機能しなくなってしまうと感じていました。NECの良いところ、日本のビジネスに対して大切なところをいかに残して、その上で、統合シナジーを最大化するかに注力しました。統合するところ、しないところ、優先順位とスケジュールを明確にし、全体のプランを立て、各組織のトップにいるエグゼクティブに働きかけて合意を取っていきました。大規模な統合だったので、何百人も参加する電話会議をファシリテートすることもありました。戦略をロジカルに説明することと、それぞれの組織のリーダーと直接話をすることが、上手く乗り切れた秘訣だと思います。前職で培った経営コンサルティングの経験も活かせましたし、レノボの日本全体のオペレーションを俯瞰的に見ていた経験も役立ちました。

結果として、統合は非常に上手く進み、スタートからシェアも伸びて利益率も大幅に改善。レノボの世界シェア第二位の獲得にも貢献することができました。これまでのPC業界のM&Aの歴史の中で、最も上手く行ったケースだと言っていただきました。2012年6月にはレノボ・グループ本社(米国ノースカロライナ)の戦略担当部門に赴任、全世界の事業統合を担当するエグゼクティブ・ディレクターとして新たな挑戦が始まりました。今後もレノボ・グループとして多くのM&Aを経て成長していくために、私がリーダーとして成功したNECとの事業統合のプロセスを移植し、標準化していったのです。日本で積んできた経験をもとに遺憾なく力を発揮することができました。

数々の経営統合を成功させてこられたと思いますが、M&Aにより会社を発展させる上で重要なことは何だと考えますか。

多様性を大切にするということでしょうか。双方の会社にアイデンティティがあり、強みがあります。経営においても様々な意見や考えがあることで、戦略とオペレーションに深みが出て、会社が伸びていくと考えています。かつてのように単純にグローバルで画一的なオペレーションを目指すのではなく、それぞれの市場の文化的背景にあったオペレーションと、また、各地域の社員が心から賛同できるビジョンと快適に働けるような場を提供してこそ、グローバルで成長する会社になれるのです。また、それぞれ個性や強みのある人々が一つのチームを組んで、ものの見方と知恵を共有することで初めて、グローバル規模のビジネスにベストな解答を出していけるのだと信じています。

シェアNO.1だからこそ、日本をさらに豊かにする義務がある

アメリカ赴任を経て、日本に戻られたのはどのようなきっかけだったのでしょうか。

it_034_05自分が以前手がけたオペレーションが失われてしまったり、上手く機能しなくなったりしてきたので、それを立て直すためでした。その状況を見て思ったのは、開発部門の人もプランニングの人も、また他の部門の人も、皆優秀で、誰もが会社のために貢献したい、いい仕事がしたいと思っているということ。しかし、各部署がバラバラに良い仕事をしようとしても、全体として調和がとれないと売上と利益につながらない。どういう技術がどのタイミングでほしい、市場と単価を予測した上で、機能とコストのバランスはこれくらいにしてほしい、そのために、どのような原価低減や効率化を実現してほしい、こういう戦略で売って欲しい、というディレクションを会社の全体戦略に添って各組織に落としていく役割が必要なのです。一人ひとりの社員が優秀だから自分はやることが無いという経営トップもいますが、私はそうではないと思います。正式なプランニングのサイクルとも必ずしも合わない場合においても、経営トップがリードし、時には自らの直感も活用しながらも、ディレクションを行っていくことの重要性を再認識するとともに、自分がしなくてはならないという使命感に駆られました。

2015年4月より代表取締役社長に就任されましたが、今後レノボをどのような会社にしていきたいと思っていますか。

レノボはPCではもう世界でNO.1であり、NECレノボ・ジャパングループも日本でNO.1です。しかし我々のミッションはシェアを取ることではなく「コンピューティングパワーを一人ひとりのお客様の生活の中に落とし込んで、その生活を豊かにしていくこと」だと考えています。なぜまだ日本では紙のアルバムが主流のままなのか、デジカメに撮った写真がSDカードに入ったままになっているのか、クラウドがなぜまだ一般ユーザーに普及していかないのか、スマホやタブレット、PC等もなぜ、目的がはっきりしている時でないとスイッチを入れられないのか等、考えれば考えるほど、デジタルライフを普及させるためにやらなければならないことは大いにあると思います。そういった意味で、パソコンを新しくすることだけが仕事ではない。お客様のためにコンピュータはどういう「カタチ」になっていくべきなのか、改善すべきはアプリケーションなのか、サービスなのか、そのコンビネーションなのかをしっかり見極めながら、業界トップの会社として、デジタルライフをお客様に提供していかなくてはなりません。もちろん、法人のIT活用もさらに促進できると思います。東京五輪が開催される2020年までに本当に日本の生活者であり、法人のIT活用力を世界でトップにし、みなさんを豊かにしていきたいですね。

最後に、転職を考えている方に向けてレノボが求める人材像を教えてください。

一番求めているのは、楽天的でもいいので「このような世の中になったらいいな」ということを想像して、そのために貢献したいという強い思いをもってチャレンジし続けられる人。あとは、好奇心が旺盛な人。本当に思いのある人、好奇心がある人は、物事の本質を探ろうとします。例えば、あるニュースがあると日本のメディアだけの情報を信じるのではなく、本当はどうなのか、海外ではどう報じられているのかをフェアな視点で見たくなるものです。そして、本物の情報を得るためには、英語が必要になりますよね。私はよく社員に言うのですが、目的もはっきりしないまま英会話を習う前に、グローバル社会で起きていることに興味を持つ必要がある、そして、そのために英語のニュースを読んだり聞いたりすることを毎日の習慣にするほうが、言葉としての英語の身に着け方として早いし、グローバル社会で活躍できる人材になれる。スポーツの世界では日本人選手が世界のトップリーグで多く活躍するようになってきましたが、ビジネスの世界では残念ながらまだまだです。ビジネスの世界でのメジャーリーガーを目指し、日本のアイデンティティを持ちながらも、グローバル社会との調和の中で学習し、活躍していけるポテンシャルを持っている人と一緒に働きたいですね。

レノボ・ジャパン株式会社

日本人のアイデンティティを持ってグローバルで働く これまでのキャリアについてお聞かせください。 新卒時は漠然と「大きな仕事がしたい」という気持ちで日本の総合商社に就職し、発電プラントの海外プロジェクトに従事していました。...

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